ステアリン酸グリセリル(SE)とは…成分効果と毒性を解説

乳化
ステアリン酸グリセリル(SE)
[化粧品成分表示名称]
・ステアリン酸グリセリル(SE)

[医薬部外品表示名称]
・自己乳化型モノステアリン酸グリセリル

化学構造的に非イオン界面活性剤であるステアリン酸グリセリルにアニオン界面活性剤であるステアリン酸Naおよび/またはステアリン酸Kもしくは親水性の非イオン界面活性剤を少量添加した、多価アルコールエステル型のグリセリン脂肪酸エステルに分類される非イオン界面活性剤(ノニオン界面活性剤)です(文献2:2015;文献3:1970)

ステアリン酸グリセリル(SE)の「SE」はSelf-Emulsifyingの頭文字であり、自己乳化型を意味し、また自己乳化型とは、かき混ぜる必要がなく、液体中に投入するだけで自然に乳化する性質のことをいいます(文献7:2007)

ステアリン酸グリセリルは、非常に古くから使用されている乳化剤ですが、単体では結晶化しやすく、経時的に粘性が変化しやすいため、他の界面活性剤(乳化剤・乳化安定剤)などを併用することで安定性を保持しますが、ステアリン酸グリセリル(SE)は、セッケン乳化剤であるステアリン酸塩(∗1)または親水性非イオン界面活性剤をあらかじめ添加しており、単体で乳化安定性を有します。

∗1 ステアリン酸Naおよびステアリン酸Kは、セッケンに分類される陰イオン界面活性剤ですが、通常使用する温度下ではステアリン酸塩のみで洗浄性および起泡性を発揮することはなく、非イオン界面活性剤が開発される1950年以前は主な乳化剤として使用されており、また現在でもセッケン乳化特有の硬度とさっぱり感を目的に使用されており、安全性に問題がないとされている乳化剤です。

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、スキンケア化粧品、ボディ&ハンドケア製品、メイクアップ化粧品、日焼け止め製品、洗顔料、洗浄製品、ヘアスタイリングなど様々な製品に汎用されています。

乳化

乳化に関しては、まず前提知識として乳化とエマルションについて解説します。

乳化とは、1つの液体にそれと溶け合わない別の液体を微細な粒子の状態に均一に分散させることをいいます(文献4:1990)

そして、乳化の結果として生成された分散系溶液をエマルションといい、基本的な化粧品用エマルションとして、以下の図のように、

エマルションの基本構造

水を外部相とし、その中に油が微細粒子状に分散している水中油滴型(O/W型:Oil in Water type)と、それとは逆に油を外部相とし、その中に水が微細粒子状に分散している油中水滴型(W/O型:Water in Oil type)があります(文献4:1990)

身近にあるO/W型エマルションとしては、牛乳、生クリーム、マヨネーズなどがあり、一方でW/O型エマルションとしてはバター、マーガリンなどがあります。

また、界面活性剤の水と油への親和性の程度を表す指標としてはHLB(Hydrophilic-Lipophilic Balance:親水親油バランス)が用いられることが多く、以下の図のように、

界面活性剤のHLB値とその作用、分散・溶解の挙動

HLB値は、0から20までの値を取り、0に近いほど親油性が高く20に近いほど親水性が高くなり、また界面活性剤が水中に分散するためには3以上、溶解するためには10以上が要求されることが知られており、HLB値だけで一義的に界面活性剤の性質が定まるわけではありませんが、HLB値によってその界面活性剤の性質や用途もある程度決定されます(文献5:2015)

ステアリン酸グリセリル(SE)の特性は、

HLB 作用 分散・溶解性
5.0 – 14.0 W/O型乳化 , 親油性乳化 わずかに分散 – 撹拌のより分散

このように報告されています(文献9:-;文献10:-;文献11:-)

ステアリン酸グリセリル(SE)は、それ自体にステアリン酸セッケンまたは親水性非イオン界面活性剤のいずれかが添加されており、なおかつ添加剤によってW/O型乳化剤(親油性界面活性剤)からO/W型乳化剤(親水性界面活性剤)まで幅広い調整が可能となっています。

「(SE)」は自己乳化型を意味しており、水中に投入するだけで自然に調整されたW/O型またはO/W型エマルションとなります(文献6:2007)

一般的には、他のO/W型乳化剤(親水性乳化剤)と組み合わせてHLBや乳化安定性を調整し、混合系O/W型乳化剤として汎用されています(文献7:1990;文献8:1970)

混合乳化剤としてのステアリン酸グリセリル(SE)

ステアリン酸グリセリル(SE)は、他の乳化剤と混合することで混合系の特徴を有した原料として配合されることがあり、ステアリン酸グリセリル(SE)と以下の成分が併用されている場合は、混合系乳化剤として配合されている可能性が考えられます。

原料名 NIKKOL MGS-DEXV HLB 5.5
構成成分 ステアリン酸グリセリルステアリン酸グリセリル(SE)、ステアリン酸PEG-10
特徴・主な用途 自己乳化型親油性乳化剤

実際の使用製品の種類や数および配合量は、海外の1976年および2014-2015年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を表しており、またリンスオフ製品というのは、洗い流し製品(シャンプー、ヘアコンディショナー、ボディソープ、洗顔料、クレンジングなど)を指します。

ステアリン酸グリセリル(SE)の配合製品数と配合量の調査結果(1976年および2014-2015年)

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ステアリン酸グリセリル(SE)の安全性(刺激性・アレルギー)について

ステアリン酸グリセリル(SE)の現時点での安全性は、

  • 薬添規2018規格の基準を満たした成分が収載される医薬品添加物規格2018に収載
  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
  • 50年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし-最小限
  • 眼刺激性:ほとんどなし-最小限
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:1982)によると、

  • [動物試験] 6匹のウサギに100%ステアリン酸グリセリル(SE)を対象に皮膚刺激性試験を実施し、PII(Primary Irritation Index:皮膚一次刺激性指数)を0-4のスケールで評価したところ、PIIは0であり、非刺激性に分類された(Inolex Labs,1976)
  • [動物試験] 6匹のウサギに100%ステアリン酸グリセリル(SE)を対象に皮膚刺激性試験を実施し、PII(Primary Irritation Index:皮膚一次刺激性指数)を0-4のスケールで評価したところ、PIIは0であり、非刺激性に分類された(Inolex Labs,1975)
  • [動物試験] 6匹のウサギに100%ステアリン酸グリセリル(SE)を対象に皮膚刺激性試験を実施し、PII(Primary Irritation Index:皮膚一次刺激性指数)を0-4のスケールで評価したところ、PIIは0.25であり、最小限の刺激性に分類された(Inolex Labs,1975)
  • [動物試験] 3匹のウサギに5%ステアリン酸グリセリル(SE)水溶液を対象に皮膚刺激性試験を実施し、PII(Primary Irritation Index:皮膚一次刺激性指数)を0-4のスケールで評価したところ、PIIは0であり、非刺激性に分類された(Leberco Labs,1976)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、非刺激-最小限の皮膚刺激が報告されているため、皮膚刺激性は非刺激-最小限の皮膚刺激を引き起こす可能性があると考えられます。

眼刺激性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:1982)によると、

  • [動物試験] 6匹のウサギの片眼に100%ステアリン酸グリセリル(SE)を適用し、眼はすすがず、Draize法に基づいて眼刺激スコアを0-110のスケールで評価したところ、1,2および3日目で眼刺激スコアはすべて0であり、非刺激性に分類された(Hill Top Research,1968)
  • [動物試験] 9匹のウサギの片眼に50%ステアリン酸グリセリル(SE)を適用し、眼はすすぎ、Draize法に基づいて眼刺激スコアを0-110のスケールで評価したところ、1時間後および1,2,3,4および5日目で眼刺激スコアはそれぞれ67,0,0,0,0および0であり、最小限の眼刺激性に分類された(Bio-Toxicology Labs,1975)
  • [動物試験] 3匹のウサギの片眼に5%ステアリン酸グリセリル(SE)水溶液を点眼し、眼はすすがず、Draize法に基づいて眼刺激スコアを0-110のスケールで評価したところ、1時間後および1,2,3,4および5日目で眼刺激スコアはすべて0であり、非刺激性に分類された(Leberco Labs,1976)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、非刺激-最小限の眼刺激性が報告されているため、眼刺激性は非刺激-最小限の眼刺激性を引き起こす可能性があると考えられます。

皮膚感作性(アレルギー性)について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:1982)によると、

  • [動物試験] 2匹のモルモットに0.1%ステアリン酸グリセリル(SE)を含む製剤0.1mLを対象に誘導期間において1日おきに10回皮内注射し、2週間の休息期間の後に未処置部位にチャレンジ適用したところ、皮膚感作剤ではなかった(Inolex Labs,1976)
  • [動物試験] 2匹のモルモットに0.1%ステアリン酸グリセリル(SE)を含む製剤0.1mLを対象に誘導期間において1日おきに10回皮内注射し、2週間の休息期間の後に未処置部位にチャレンジ適用したところ、皮膚感作剤ではなかった(Inolex Labs,1975)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、共通して皮膚感作なしと報告されているため、皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

∗∗∗

ステアリン酸グリセリル(SE)は界面活性剤にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:界面活性剤

∗∗∗

文献一覧:

  1. Cosmetic Ingredient Review(1982)「Final Report on the Safety Assessment of Glyceryl Stearate and Glyceryl Stearate/SE」Journal of the American College of Toxicology(1)(4),169-192.
  2. 宇山 光男, 他(2015)「ステアリン酸グリセリル(SE)」化粧品成分ガイド 第6版,136.
  3. 広田 博(1970)「乳化剤」化粧品のための油脂・界面活性剤,142-149.
  4. 田村 健夫, 他(1990)「乳化作用」香粧品科学 理論と実際 第4版,270-273.
  5. 野々村 美宗(2015)「親水性・親油性バランス」化粧品 医薬部外品 医薬品のための界面化学,35-39.
  6. 藤本 武彦(2007)「乳化方法」界面活性剤入門,214-219.
  7. 田村 健夫, 他(1990)「多価アルコールエステル型」香粧品科学 理論と実際 第4版,140-143.
  8. 広田 博(1970)「多価アルコールエステル型」化粧品のための油脂・界面活性剤,120-125.
  9. 日光ケミカルズ株式会社(-)「NIKKOL MGS-Series」技術資料.
  10. 日本エマルジョン株式会社(-)「EMALEX GMS-Series」技術資料.
  11. 日本エマルジョン株式会社(-)「EMALEX SEG-Series」技術資料.

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