ステアリン酸グリセリルとは…成分効果と毒性を解説

界面活性剤
ステアリン酸グリセリル
[化粧品成分表示名称]
・ステアリン酸グリセリル

[医薬部外品表示名称]
・親油型モノステアリン酸グリセリル

[慣用名]
・モノステアリン酸グリセリン

高級脂肪酸であるステアリン酸(油性成分)とグリセリン(水性成分)のモノエステルですが、乳化剤の効果があることから界面活性剤のカテゴリに分類しています。

成分表示名はステアリン酸グリセリルで、モノステアリン酸グリセリンとも呼ばれます。

W/O型(∗1)の乳化剤としては界面活性剤の中でも最も古くから使用されており、比較的油性が強いですが、油とも水ともなじむので水と油の間に入って水と油を混じった状態にしておくことができます。

∗1 W/O型はWater In oilの略で水分を油分で包むタイプの乳化剤です。

歯磨きの柔軟剤や石けん、シャンプーの過脂肪剤としても用いられます。

海外のレポートになりますが、”Cosmetic Ingredient Review”の「Amended Safety Assessment of Monoglyceryl Monoesters」の中で、1976年と2015年の製品への配合状況や配合量の変化が明らかになっています。

ちなみに製品タイプのリーブオン製品というのは付けっ放し製品という意味で、主にスキンケア化粧品やメイクアップ化粧品などを指し、リンスオフ製品というのは洗浄系製品を指します。

ステアリン酸グリセリルの配合状況の調査結果

約40年の推移になのでかなり異なるのは当然かもしれませんが、配合製品数が約4倍の5,000以上に増え、最小-最大配合量がかなり少なくなっているのがわかります。

この変化は、ステアリン酸グリセリルが非常に利便性が高く、安全性の高さも明らかになっていき、代表的な
界面活性剤のひとつになったことを示しているとも考えられます。

また、ステアリン酸グリセリルにアニオン界面活性剤(石けん)またはノニオン界面活性剤(非イオン界面活性剤)を加えて親水性を増強したステアリン酸グリセリル(SE)も広く乳化剤として使用されています。

参考:ステアリン酸グリセリル(SE)の成分効果と毒性を解説

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ステアリン酸グリセリルの安全性(毒性・刺激性・アレルギー)について

ステアリン酸グリセリルの現時点での安全性は、皮膚刺激性や毒性はほとんどなく、アレルギー(皮膚感作性)の報告もないので、安全性の高い成分であると考えられます。

眼刺激性に関しては、まれに最小~軽度の刺激性が起こるケースがありますが、総合的に眼刺激性が起こる可能性は低いと考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

安全性を調査するために、国内外を問わず信頼性が高いと思われる安全性データシート(∗2)やレポートを参照しています。

∗2 安全性データシートとは、化粧品製造会社や化粧品販売会社のために提供されている成分の安全性データが記載されているシートで、一般消費者向けの資料ではありませんが、安全性を考える上で重要なエビデンスのひとつとなるため、一部引用させていただいています。

皮膚刺激性について

“Cosmetic Ingredient Review”の「Final Report on the Safety Assessment of Glyceryl Stearate and Glyceryl Stearate/SE」(文献1:1982)によると、

  • [ヒト試験] 20人の被検者に希釈されていない100%ステアリン酸グリセリルの閉塞性パッチをそれぞれ7箇所に適用し、24時間放置したあとパッチを除去し評価したところ、140箇所中6つにわずかな刺激がみられたため、希釈されていないステアリン酸グリセリルは最悪の場合、軽度の皮膚刺激を引き起こす
  • [ヒト試験] 20人の被検者に13.8%および5%ステアリン酸グリセリルを含むブレミッシュスティックおよび応急処置クリームを閉塞下で適用したところ、刺激指数はブレミッシュスティック0.03/4.0、応急処置クリーム0.3/4.0で、軽度の皮膚刺激を示した
  • [ヒト試験] 7人の男女において12.5%ステアリン酸グリセリルを含む毛髪製品を背中に24時間にわたって閉塞適用し、パッチ除去後スコアをつけ新しいパッチを適用するという手順を21日間繰り返したところ、5人の被検者において最小限の紅斑を生じたが、ステアリン酸グリセリルは本質的に非刺激性である

“Cosmetic Ingredient Review”の「Amended Safety Assessment of Monoglyceryl Monoesters」(文献1:2015)によると、

  • [動物試験] 3匹のウサギに75%ステアリン酸グリセリルを含むワセリンを0.5mLを4時間半閉塞パッチして72時間観察したところ、紅斑や浮腫はなく皮膚刺激もみられなかった
  • [ヒト試験] 20人の被検者に5%ステアリン酸グリセリルを含む乳化物を前腕に0.05mL塗布をして48時間適用し、パッチ除去の24時間後に評価したところ、紅斑はみられず、パッチした部位とパッチしていない部位に差はない

と記載されています。

安全性レポートによると、まれに軽度の皮膚刺激があるものの、ほとんどの試験で皮膚刺激性なしと結論付けられているので、皮膚刺激性や毒性はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

“Cosmetic Ingredient Review”の「Amended Safety Assessment of Monoglyceryl Monoesters」(文献1:2015)によると、

  • [動物試験] 100%ステアリン酸グリセリルをウサギの眼に点眼した場合、軽度の眼刺激性または無刺激性だった

と記載されています。

眼刺激性のデータでは軽度の刺激性を引き起こすこともありますが、濃度を問わず多くの試験結果が眼刺激性なしの結果であることから、眼刺激が引き起こされる可能性は低いと考えられます。

アレルギー(皮膚感作性)について

“Cosmetic Ingredient Review”の「Final Report on the Safety Assessment of Glyceryl Stearate and Glyceryl Stearate/SE」(文献1:1982)によると、

  • [ヒト試験] 61名の被検者において20%ステアリン酸グリセリルを含むミネラルオイルまたはワセリンを10~15箇所に24時間閉塞パッチを2~3週間適用し、10~14日の休息のあと新しい部位に再適用したところ、20%ステアリン酸グリセリルは皮膚感作を誘発しなかった
  • [ヒト試験] 1206名の被検者の腕に20%ステアリン酸グリセリルを含むパッチを3日間毎日適用したところ、いずれの被検者もアレルギー反応を示さなかった
  • [ヒト試験] 19人の被検者において2%ステアリン酸グリセリルを含む日焼け止めローションおよびクリームを24時間片腕に2週間適用し、パッチ除去のあと10~14日後に24時間のチャレンジパッチを新しい部位に適用したところ、誘発に対する反応はなく、2%ステアリン酸グリセリルは刺激または感作を誘導することができない
  • [ヒト試験] 52人の被検者において5%ステアリン酸グリセリルを含むクリームの閉塞パッチを24時間2~3週間適用し、パッチ除去後10~14日の休息のあと24時間チャレンジパッチを適用したところ、52人のうち30人は最小限の刺激を経験したが感作反応はなかった
  • [ヒト試験] 上と同じ5%ステアリン酸グリセリルを含むクリームを9人の被検者の背中に閉塞パッチを24時間適用し、21日間繰り返したうえでマイバッハ累積刺激試験を用いて採点したところ、累積刺激指数は48/756と算出された

また、アレルギーの個別事例として”Cosmetic Ingredient Review”の「Amended Safety Assessment of Monoglyceryl Monoesters」(文献1:2015)に以下の報告があります。

  • 女性が以前に数ヶ月間使用したときは皮膚に影響のなかったボディローションを改めて使用したら腕に皮膚炎が生じたためローションのパッチテストをしたところ、陽性の反応がでたため、さらに詳しく検査した結果、20%ステアリン酸グリセリルに対する陽性反応だった。対照とした20人の被検者においては反応は観察されなかった

と記載されています。

安全データの試験結果では共通して感作性となっているため、アレルギーが起こる可能性は低いと考えられます。

ただし、レアケースかもしれませんが接触性皮膚炎などの陽性反応も出ているので、使用前はパッチテスト推奨です。

光感作性について

“Cosmetic Ingredient Review”の「Final Report on the Safety Assessment of Glyceryl Stearate and Glyceryl Stearate/SE」(文献1:1982)によると、

  • [ヒト試験] 2%ステアリン酸グリセリルを含む日焼け止めローションおよびクリーム0.2mLを10人の被検者の腕に閉塞パッチ下で適用し、パッチを24時間で除去し腕の接触部位を4つのFYBLブラックライト(最大出力360nM)に10cmの距離で15分間照射したところ、24,48および168時間後10人の被検者のいずれも照射部位に反応を示さなかったため、これらの製品は光感作性なし

と記載されています。

安全データによると、光感作性は示されていないので、光感作性が起こる可能性は限りなく低いと考えられます。

化粧品毒性判定事典による毒性判定について

化粧品成分名 判定
ステアリン酸グリセリル ■■

参考までに化粧品毒性判定事典によると、ステアリン酸グリセリルは■■(∗3)となっており、界面活性剤ということで毒性の懸念ありということになっていますが、安全性レポートを参照する限りでは、刺激性や毒性はほとんどないと考えられます。

∗3 毒性判定事典の毒性レベルは「毒性なし」「△」「■」「■■」となっており、△は2~3個で■1個に換算し、■が多いほど毒性が強いという目安になり、製品の毒性成分の合計が■4つ以上なら使用不可と判断されます。

∗∗∗

ステアリン酸グリセリルは界面活性剤にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:界面活性剤

∗∗∗

文献一覧:

  1. “Cosmetic Ingredient Review”(2015)「Amended Safety Assessment of Monoglyceryl Monoesters」, <http://www.cir-safety.org/sites/default/files/glyest092015TAR.pdf> 2017年10月4日アクセス.
  2. “Cosmetic Ingredient Review”(1982)「Final Report on the Safety Assessment of Glyceryl Stearate and Glyceryl Stearate/SE」, <http://journals.sagepub.com/doi/abs/10.3109/10915818209021268> 2017年10月4日アクセス.

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