ジラウロイルグルタミン酸リシンNaとは…成分効果と毒性を解説

乳化 バリア改善 毛髪修復 効果促進成分
ジラウロイルグルタミン酸リシンNa
[化粧品成分表示名称]
・ジラウロイルグルタミン酸リシンNa

[医薬部外品表示名称]
・ジラウロイルグルタミン酸リシンナトリウム液

化学構造的に陰イオン界面活性剤であるラウロイルグルタミン酸Na2つを塩基性アミノ酸の一種であるリシンで連結させた縮合物であり、2鎖3親水基の陰イオン性ジェミニ型界面活性剤です(文献2:2017)

一般的に界面活性剤は、1つの疎水鎖と1つの親水基(一鎖一親水基)で構成されており、専門的にはモノメリック型界面活性剤とよび、一方で複数の疎水鎖と複数の親水基(多鎖多親水基)で構成された界面活性剤をジェミニ型界面活性剤とよび、従来のモノメリック型界面活性剤よりも高い機能を有しています。

たとえば陰イオン界面活性剤であるラウロイルグルタミン酸Naは、1つのラウリン酸(疎水鎖)と1つのグルタミン酸(親水基)で構成されているモノメリック型界面活性剤ですが、ジラウロイルグルタミン酸リシンNaは、一鎖一親水基であるラウロイルグルタミン酸Na2つをリシン(親水基)で連結した化学構造であり、二鎖三親水基(疎水鎖としてラウリン酸2つと親水基としてグルタミン酸2つとリシン1つ)のジェミニ型界面活性剤です。

ジェミニ型界面活性剤であるジラウロイルグルタミン酸リシンNaの特徴のひとつとして、陰イオン界面活性剤であるラウロイルグルタミン酸Naと比較して約1/100の濃度で、他の陰イオン界面活性剤と比較しても1/10-1/100の濃度で界面活性能を発揮することが認められています(文献3:2008)

化粧品に配合される場合は、

これらの目的でシャンプー製品、ヘアコンディショニング製品、スキンケア化粧品、ボディ&ハンドケア製品、日焼け止め製品、ファンデーション製品、クレンジング製品、洗顔料など様々な製品に汎用されています。

乳化

乳化に関しては、まず前提知識として乳化とエマルションについて解説します。

乳化とは、1つの液体にそれと溶け合わない別の液体を微細な粒子の状態に均一に分散させることをいいます(文献4:1990)

そして、乳化の結果として生成された分散系溶液をエマルションといい、基本的な化粧品用エマルションとして、以下の図のように、

エマルションの基本構造

水を外部相とし、その中に油が微細粒子状に分散している水中油滴型(O/W型:Oil in Water type)と、それとは逆に油を外部相とし、その中に水が微細粒子状に分散している油中水滴型(W/O型:Water in Oil type)があります(文献4:1990)

身近にあるO/W型エマルションとしては、牛乳、生クリーム、マヨネーズなどがあり、一方でW/O型エマルションとしてはバター、マーガリンなどがあります。

ジラウロイルグルタミン酸リシンNaは、低濃度(固形分0.03%-0.1%)で油の種類や配合量に関係なく乳化が可能であり、陰イオン系であることからO/W型エマルションにした場合の油滴周りは負(-)の電荷を帯びており、合一(∗1)が起きにくい安定な乳化物を得られます(文献2:2017)

∗1 合一とは、エマルションが崩壊し乳化粒子が互いに連結してより大きな粒子になる現象のことをいい、乳化粒子が合一し大粒子化がすすむと液滴が油と水の2相に分離します。

また、ジラウロイルグルタミン酸リシンNaの乳化プロセスとして、油と水の界面張力を下げて乳化するのではなく、機械的な分散を必要とするため、皮膚に塗布した乳化物の皮膜は、汗や水分が付着しても再乳化されにくく、O/W型エマルションのしっとりみずみずしい使用感に加えて優れた耐水性を有した乳化物が得られます(文献2:2017)

このような背景から、紫外線散乱剤など顔料の安定分散および汗や水分に対する耐水性目的で日焼け止め製品、ファンデーション、アウトバストリートメントなどに用いられています。

D相乳化によるゲル化

D相乳化によるゲル化に関しては、まず前提知識としてD相乳化について解説します。

D相とは、界面活性剤の親水性/親油性がバランスした条件で形成される無限会合体であり、油相および水相の両方が連続した状態で(文献7:2010)端的に言い換えると界面活性剤相です。

D相乳化とは、水と多価アルコールを含んだ界面活性剤溶液(D相)中に油を分散させる乳化手法であり、D相乳化によって流動性のないゲルが得られ、D相乳化で形成されたゲルはO/Dゲルと呼ばれます(文献8:1991)

一般的にD相ゲル形成には10%前後の非イオン界面活性剤が用いられますが、ジラウロイルグルタミン酸リシンNaは1%の低濃度でゲル化するため、ゲル化剤としてクレンジング製品をはじめ、ジェル系製品に使用されています(文献6:2009)

液晶構造形成によるバリア機能改善作用

液晶構造形成によるバリア機能改善作用に関しては、まず前提知識として皮膚バリア機能の構造と役割について解説します。

以下の皮膚最外層である角質層の構造および細胞間脂質におけるラメラ液晶構造図をみてもらうとわかりやすいと思うのですが、

角質層の構造

細胞間脂質におけるラメラ構造

角質層は天然保湿因子を含む角質と細胞間脂質によって構成されており、細胞間脂質は主にセラミドコレステロール、遊離脂肪酸などで構成されています。

角質層のバリア機能は、これら細胞間脂質が角質細胞間に層状のラメラ液晶構造を形成することで発揮されると考えられており、このバリア機能は、皮膚内の過剰な水分蒸散の抑制および一定の水分保持、外的刺激から皮膚を防御するといった重要な役割を担っています。

一般的にバリア機能は肌荒れや皮膚炎をはじめ、年齢を重ねることでも低下傾向にあり、その結果として角層水分蒸散量が増え、角層水分蒸散量が増えることで最終的に角質細胞が規則的に並ばなくなり、そこに生じた隙間からさらに水分が蒸散し、バリア機能・保湿機能が低下することが知られています(文献5:2002)

このような背景から、健常なバリア機能を保持することは非常に重要であると考えられます。

2008年に旭化成ファインケムによって報告されたジラウロイルグルタミン酸リシンNaの荒れ肌回復検証によると、

5%SDS塗布により前腕内側部に荒れ肌をつくり、1%ジラウロイルグルタミン酸リシンNa水溶液および1%セラミド2水溶液を1日2回塗布し、TEWL(∗2)および角層水分量を22日目まで計測し、また対照として健常肌および未塗布部位も合わせて計測したところ、以下のグラフのように、

∗2 TEWL(Transepidermal Water Loss)とは経皮水分蒸散を意味します。経皮水分蒸散量が増えることはバリア機能が低下していることを意味しており、経皮水分蒸散量は角質層のバリア機能低下のバロメーターでもあります。

ジラウロイルグルタミン酸リシンNaの水分蒸散量改善効果

ジラウロイルグルタミン酸リシンNaの角層水分量改善効果

ジラウロイルグルタミン酸リシンNaは、セラミド2より荒れ肌に対して回復が早い傾向を示した。

これは、セラミド2水分散液と比較した角層浸透性試験の結果において、ジラウロイルグルタミン酸リシンNaのほうが角層の深くまで浸透していることが一因であると推測された。

また、この浸透性試験において、ジラウロイルグルタミン酸リシンNaの回収率はほぼ100%であり、角層より深くにはほとんど浸透していないことが示唆された。

このような検証結果が明らかにされており(文献3:2008)、ジラウロイルグルタミン酸リシンNaにバリア機能改善作用が認められています。

ジラウロイルグルタミン酸リシンNaは、コレステロール(∗3)を併用することで液晶構造を形成することが明らかにされており(文献3:2008)、また角層深部に浸透し乱れたラメラ液晶構造を再生することから(文献6:2009)、ジラウロイルグルタミン酸リシンNaのバリア機能改善のメカニズムは、角質層でのラメラ液晶構造の再生に起因していると考えられます。

∗3 コレステロールの代替としてフィトステロールバチルアルコールでも同様に液晶形成が認められています。

毛髪修復作用

毛髪修復作用に関しては、2008年に旭化成ファインケムによって報告されたダメージ毛に対するジラウロイルグルタミン酸リシンNaの影響検証によると、

市販の健康毛にパーマ処理およびブリーチ処理を4回ずつ繰り返したダメージ毛を0.1%ジラウロイルグルタミン酸リシンNa水溶液に1分間浸漬し、浸漬後に毛の太さおよび強度を評価したところ、以下のグラフのように、

ジラウロイルグルタミン酸リシンNaのダメージ毛の太さ改善効果

ジラウロイルグルタミン酸リシンNaのダメージ毛の強度改善効果

ジラウロイルグルタミン酸リシンNaは、ダメ ージ毛の太さや強度を改善する効果が確認された。

また、通常は浸透しがたいといわれている健康毛髪においても1分間で同様に浸透したことから、健康な毛髪を維持する効果も考えられた。

このような検証結果が明らかにされており(文献3:2008)、ジラウロイルグルタミン酸リシンNaに毛髪修復作用が認められています。

ジラウロイルグルタミン酸リシンNaの毛髪浸透および修復メカニズムは、1鎖型のラウロイルグルタミン酸Naがより浸透しがたいことから、化学構造的に2鎖のアシル基とペプチド骨格をもち、その構造が毛髪中のタンパク質やセラミド2に類似し親和性が高いこと、かつ表面張力低下能に優れていることに由来すると考えられています(文献3:2008)

油性成分の毛髪残存性向上によるヘアコンディショニング作用促進

油性成分の毛髪残存性向上によるヘアコンディショニング作用促進に関しては、2017年に旭化成ファインケムによって報告された毛髪に対する油相成分の残留性検証によると、ジラウロイルグルタミン酸リシンNaで乳化した乳化物は、陽イオン界面活性剤および非イオン界面活性剤と比較して、水ですすいでも非常に多くの油性成分が毛髪に残存することが明らかにされています(文献2:2017)

ヘア洗浄製品やヘアケア製品に配合されている油性成分は、主に毛髪に残存してヘアコンディショニング効果を付与することから、毛髪に対して残存性が高いとヘアコンディショニング効果が高いと考えられます。

このような背景から、ジラウロイルグルタミン酸リシンNaは毛髪に対してヘアコンディショニング作用を促進すると考えられます。

油性成分の毛髪残存性向上による毛髪残香性増強

油性成分の毛髪残存性向上による毛髪残香性増強に関しては、香料は油性成分として配合されるのが一般的であり、2017年に旭化成ファインケムによって報告された毛髪に対する香料の残留性検証によると、ジラウロイルグルタミン酸リシンNaで乳化した乳化物は、陽イオン界面活性剤および非イオン界面活性剤と比較して、水ですすいでも非常に多くの香料が毛髪に残存することが明らかにされています(文献2:2017)

このような背景から、ジラウロイルグルタミン酸リシンNaは毛髪に対する香料の残香性を増強することが認められており、主に香りを特徴のひとつとしたヘアシャンプーやヘアコンディショナーに配合されています。

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ジラウロイルグルタミン酸リシンNaの安全性(刺激性・アレルギー)について

ジラウロイルグルタミン酸リシンNaの現時点での安全性は、

  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
  • 2006年からの使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:1%濃度以下においてほとんどなし
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について

旭化成ファインケムの安全データシート(文献1:2016;文献3;2008)によると、

  • [動物試験] モルモットに20%ジラウロイルグルタミン酸リシンNaをパッチ適用し、Draize法に基づいてパッチ除去後に皮膚刺激性を評価したところ、この試験物質は無刺激であった
  • [動物試験] モルモットにジラウロイルグルタミン酸リシンNaを対象に皮膚感作性試験(GPMT法)を実施したところ、いずれのモルモットも陰性であった
  • [in vitro試験] 正常ヒト表皮角化細胞によって再構築された3次元培養表皮モデルを用いて、角層表面にジラウロイルグルタミン酸リシンNa(濃度不明)を処理したところ、生細胞率は95%であり、皮膚刺激性は予測されなかった

と記載されています。

試験データをみるかぎり、皮膚刺激および皮膚感作なしと報告されているため、皮膚刺激性および皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

旭化成ファインケムの安全データシート(文献1:2016)によると、

  • [動物試験] ウサギの片眼に5%ジラウロイルグルタミン酸リシンNa水溶液を点眼し、Draize法に基づいて点眼後に眼刺激性を評価したところ、この試験物質は最小の眼刺激に分類された
  • [動物試験] ウサギの片眼に1%ジラウロイルグルタミン酸リシンNa水溶液を点眼し、Draize法に基づいて点眼後に眼刺激性を評価したところ、この試験物質は事実上無刺激であった

と記載されています。

試験データをみるかぎり、実際に配合推奨されている1%濃度以下で眼刺激なしと報告されているため、1%濃度以下において眼刺激性はほとんどないと考えられます。

∗∗∗

ジラウロイルグルタミン酸リシンNaは界面活性剤、バリア改善成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:界面活性剤  バリア改善成分

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文献一覧:

  1. 旭化成ファインケム株式会社(2016)「ペリセアL-30」安全データシート.
  2. 関口 範夫, 他(2017)「ジェミニ型界面活性剤を用いた使用感に優れた耐水性O/Wエマルジョンの調製」日本化粧品技術者会誌(51)(1),18-26.
  3. 関口 範夫, 他(2008)「ペプチド骨格のジェミニ型両親媒性化合物とその化粧品への応用」Fragrance Journal(36)(3),67-74.
  4. 田村 健夫, 他(1990)「乳化作用」香粧品科学 理論と実際 第4版,270-273.
  5. 朝田 康夫(2002)「保湿能力と水分喪失の関係は」美容皮膚科学事典,103-104.
  6. 山本 政嗣, 他(2009)「ペプチド骨格を有するジェミニ型両親媒性化合物のオイルゲル形成機能」Fragrance Journal(37)(5),42-45.
  7. 鈴木 敏幸(2010)「乳化技術の基礎 (相図とエマルション)」日本化粧品技術者会誌(44)(2),103-117.
  8. 鷺谷 広道, 他(1991)「D相乳化法による微細O/Wエマルションの調製法開発と工業化」油化学(40)(11),988-994.

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