ジステアリン酸Alとは…成分効果と毒性を解説

増粘 分散 乳化
ジステアリン酸Al
[化粧品成分表示名称]
・ジステアリン酸Al

[医薬部外品表示名称]
・ステアリン酸アルミニウム

炭素数18の高級脂肪酸であるステアリン酸アルミニウム塩であり、金属セッケン(Metallic Soap)(∗1)に分類される分子量611.9の陰イオン界面活性剤(アニオン界面活性剤)です(文献2:2019)

∗1 金属セッケンは、一般的には「せっけんカス」と呼ばれており、化学構造的にセッケンと本質的な違いがなく、陰イオン界面活性剤に分類されますが、水に不溶であるため洗浄力や起泡力はありません。

一般的には、塗料分野において顔料の分散改良、沈降防止、たれ防止、過剰浸透防止剤として、インキ分野において顔料の分散剤などに応用されています(文献3:1988)

これらの用途は、ジステアリン酸Alの有機溶媒中におけるゲル化性を利用・応用した粘度調整によるものです。

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、メイクアップ化粧品、乳化系スキンケア化粧品などに使用されています。

非水系における顔料の懸濁・分散

非水系における顔料の懸濁・分散に関しては、ジステアリン酸Alは配位結合による高分子性構造をもっていることから、金属セッケンの中でも特にゲル化性能に優れており、ミネラルオイルをはじめ炭化水素に溶解し、ケーキング防止(∗2)目的で非水系メイクアップ化粧品に配合されます(文献3:1988;文献4:1967)

∗2 ケーキングとは、主として固められた粉末化粧品の使用において、スポンジなどで粉末表面をこすった際に粉末と粉末がくっつくことで表面が固まり、使用しにくくなる現象のことです。

増粘・ゲル化

増粘・ゲル化に関しては、ジステアリン酸Alは配位結合による高分子性構造をもっていることから、金属セッケンの中でも特にゲル化性能に優れており、ミネラルオイルをはじめ炭化水素の増粘目的で乳化系メイクアップ化粧品、乳化系スキンケア化粧品に使用されています(文献3:1988;文献4:1967)

W/O型エマルションの乳化安定化

W/O型エマルションの乳化安定化に関しては、まず前提知識として乳化とエマルションについて解説します。

乳化とは、1つの液体にそれと溶け合わない別の液体を微細な粒子の状態に均一に分散させることをいいます(文献5:1990)

そして、乳化の結果として生成された分散系溶液をエマルションといい、基本的な化粧品用エマルションとして、以下の図のように、

エマルションの基本構造

水を外部相とし、その中に油が微細粒子状に分散している水中油滴型(O/W型:Oil in Water type)と、それとは逆に油を外部相とし、その中に水が微細粒子状に分散している油中水滴型(W/O型:Water in Oil type)があります(文献5:1990)

身近にあるO/W型エマルションとしては、牛乳、生クリーム、マヨネーズなどがあり、一方でW/O型エマルションとしてはバター、マーガリンなどがあります。

ジステアリン酸Alは、流動性の大きなW/O(油中水滴)型エマルションに対する乳化安定効果が優れていることが知られており、W/O型クリームなどに使用されています(文献3:1988)

実際の使用製品の種類や数および配合量は、海外の2003年および2016-2019年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を表しており、またリンスオフ製品というのは、洗い流し製品(シャンプー、洗顔料、クレンジングなど)を指します。

ジステアリン酸Alの配合製品数と配合量の調査結果(2003年および2016-2019年)

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ジステアリン酸Alの安全性(刺激性・アレルギー)について

ジステアリン酸Alの現時点での安全性は、

  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
  • 40年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし-最小限
  • 眼刺激性:ほとんどなし-最小限
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし(データなし)

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:1990)によると、

  • [動物試験] ウサギ(数不明)に10%ジステアリン酸Alを含むコーンオイルを単回閉塞パッチ適用し、Draize法に基づいてPII(Primary Irritation Index:皮膚一次刺激性指数)を0.0-8.0のスケールで評価したところ、PIIは0.06であり、最小限の刺激性に分類された(Avon Products,1977)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、10%濃度で最小限の刺激性が報告されているため、10%濃度において最小限の皮膚刺激性を引き起こす可能性があると考えられます。

眼刺激性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:1990)によると、

  • [動物試験] 6匹のウサギの片眼に10%ジステアリン酸Alを含むコーンオイルを適用し、眼はすすがず、Draize法に基づいて1,2および3日目の眼刺激性を評価したところ、1,2および3日目でそれぞれ眼刺激スコアは1,1および0であり、最小限の刺激性に分類された(Avon Products,1977)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、10%濃度で最小限の眼刺激性が報告されているため、10%濃度において最小限の眼刺激性を引き起こす可能性があると考えられます。

皮膚感作性(アレルギー性)について

医薬部外品原料規格2006に収載されており、古くからの使用実績がある中で重大な皮膚感作の報告がみあたらないため、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられますが、詳細な安全性試験データがみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。

∗∗∗

ジステアリン酸Alは界面活性剤、安定化成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:界面活性剤 安定化成分

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文献一覧:

  1. Cosmetic Ingredient Review(1990)「Final Report of the Safety Assessment of Lithium Stearate, Aluminum Distearate, Aluminum Stearate, Aluminum Tristearate, Ammonium Stearate, Calcium Stearate, Magnesium Stearate, Potassium Stearate, Sodium Stearate, and Zinc Stearate」Journal of the American College of Toxicology(1)(2),143-177.
  2. “Pubchem”(2019)「Aluminum distearate」, <https://pubchem.ncbi.nlm.nih.gov/compound/Aluminum-distearate> 2019年9月20日アクセス.
  3. 吉田 時行, 他(1988)「金属せっけん各論」金属せっけんの性質と応用,112-128.
  4. 松浦 良平(1967)「金属セッケンの界面化学」油化学(16)(11),585-595.
  5. 田村 健夫, 他(1990)「乳化作用」香粧品科学 理論と実際 第4版,270-273.

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