サボンソウ葉エキスとは…成分効果と毒性を解説


・サボンソウ葉エキス
[医薬部外品表示名]
・サボンソウエキス
ナデシコ科植物サボンソウ(∗1)(学名:Saponaria Officinalis 英名:common soapwort)の葉から水、エタノール、BG、またはこれらの混液で抽出して得られる抽出物(植物エキス)です。
∗1 粘液質の汁が水と接触すると泡立つことから、「石鹸」を意味するラテン語の「サポ(sapo)」に由来する「サポナリア(saponaria)」を学名とし、和名としてはポルトガル語やスペイン語で石鹸を意味する「サボン」「シャボン」を由来として「サボンソウ」「シャボンソウ」と称されています(文献1:1959;文献2:2018)。
サボンソウ(石鹸草)は、ヨーロッパからアジア西部を原産とし、全草にサポニン系物質を含んでおり、この成分が水と接触することで泡立つことからヨーロッパでは古くから天然の石鹸のように用いてきた歴史があり、現在でも糸をいためないとして貴族の館などに保存される古く貴重なタペストリーなど繊細な繊維の洗濯に用いられたり、アラブでは一般的な洗濯に用いられています(文献2:2018;文献3:2005)。
日本には明治初期に観賞用として導入されたことをきっかけに広く栽培されており、現在では栽培品が各地で野生化しています(文献2:2018)。
サボンソウ葉エキスは天然成分であることから、地域、時期、抽出方法によって成分組成に差異があると推察されますが、その成分組成は主に、
分類 | 成分名称 | |
---|---|---|
テルペノイド | トリテルペンサポニン | 詳細不明 |
フラボノイド | フラボン | サポナリン |
これらの成分で構成されていることが報告されています(文献4:2006;文献5:1994)。
化粧品に配合される場合は、
これらの目的で、シャンプー製品、洗顔料、洗顔石鹸、ボディソープ製品、クレンジング製品、スキンケア製品などに使用されています。
起泡
起泡に関しては、サボンソウ葉エキスはトリテルペンサポニンを含有しており(文献4:2006;文献5:1994)、サポニン(saponin)は両親媒性(∗2)であり、振り混ぜるとセッケンと同様に泡立つ性質を示すことから(文献6:1969;文献7:2016)、主に天然成分・植物成分や肌への優しさをコンセプトとしたシャンプー製品、洗顔料、ボディソープ製品など洗浄製品に使用されます。
∗2 両親媒性とは、親水性と親油性の両方を有している性質のことです。
2004年に一丸ファルコスによって報告されたサボンソウ葉エキスの泡に対する影響検証によると、
5分間の振とう後に起泡性を「A:泡立ちが多く起こり、泡の状態で30秒以上持続」「B:泡立ちが多く起こり、泡の状態で10秒以上30秒未満持続」「C:泡立ちが起こるが、泡の状態がすぐに消失」「D:泡立ちが起きない」の4段階の判定基準に従って評価したところ、以下の表のように、
試料 | 起泡性および泡持続性 |
---|---|
サボンソウ葉エキス30%エタノール溶液 | A |
サボンソウ葉エキス(30%エタノール抽出)は、良好な起泡性および泡持続性を有することが確認された。
このような試験結果が明らかにされており(文献8:2004)、サボンソウ葉エキスに起泡作用が認められています。
複合植物エキスとしてのサボンソウ葉エキス
サボンソウ葉エキスは、他の植物エキスとあらかじめ混合された複合原料があり、サボンソウ葉エキスと以下の成分が併用されている場合は、複合植物エキス原料として配合されている可能性が考えられます。
原料名 | ファルコレックスBX47 |
---|---|
構成成分 | BG、水、ゴボウ根エキス、レモン果実エキス、セイヨウキズタ葉/茎エキス、オランダガラシ葉/茎エキス、セージ葉エキス、サボンソウ葉エキス |
特徴 | リパーゼ活性阻害によるオムツかぶれ改善目的で設計された6種類の混合植物抽出液 |
原料名 | ファルコレックスBX52 |
---|---|
構成成分 | BG、水、ゴボウ根エキス、トウキンセンカ花エキス、レモン果実エキス、ホップエキス、セイヨウオトギリソウ花/葉/茎エキス、セージ葉エキス、サボンソウ葉エキス |
特徴 | 抗菌およびリパーゼ活性阻害によるオムツかぶれ改善目的で設計された6種類の混合植物抽出液 |
サボンソウ葉エキスの安全性(刺激性・アレルギー)について
- 外原規2021規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2021に収載
- 10年以上の使用実績
- 皮膚刺激性:ほとんどなし
- 眼刺激性:詳細不明
- 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし(データなし)
このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般に安全性に問題のない成分であると考えられます。
以下は、この結論にいたった根拠です。
皮膚刺激性について
- [動物試験] 3匹のモルモットの剪毛した背部に乾燥固形分濃度1%サボンソウ葉エキス溶液を塗布し、塗布24,48および72時間後に紅斑および浮腫を指標として一次刺激性を評価したところ、いずれのモルモットも紅斑および浮腫を認めず、この試験物質は皮膚一次刺激性に関して問題がないものと判断された
- [動物試験] 3匹のモルモットの剪毛した側腹部に乾燥固形分濃度1%サボンソウ葉エキス溶液0.5mLを1日1回週5回、2週にわたって塗布し、各塗布日および最終塗布日の翌日に紅斑および浮腫を指標として皮膚刺激性を評価したところ、いずれのモルモットも2週間にわたって紅斑および浮腫を認めず、この試験物質は皮膚累積刺激性に関して問題がないものと判断された
と記載されています。
試験データをみるかぎり、共通して皮膚刺激なしと報告されているため、一般に皮膚刺激性はほとんどないと考えられます。
眼刺激性について
試験結果や安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細は不明です。
皮膚感作性(アレルギー性)について
医薬部外品原料規格2021に収載されており、10年以上の使用実績がある中で重大な皮膚感作の報告がみあたらないため、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられますが、詳細な安全性試験データがみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。
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サボンソウ葉エキスは界面活性剤にカテゴライズされています。
成分一覧は以下からお読みください。
参考:界面活性剤
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参考文献:
- 石綿 敏雄(1959)「シャボンの語源」ことばの研究(1),275-286.
- ジャパンハーブソサエティー(2018)「ソープワート」ハーブのすべてがわかる事典,121.
- 北野 佐久子(2005)「ソープワート」基本 ハーブの事典,82-83.
- 日光ケミカルズ(2006)「植物・海藻エキス」新化粧品原料ハンドブックⅠ,358-391.
- 石上 裕(1994)「生体由来サーファクタントと機能化設計」油化学(43)(4),322-331.
- 前島 雅子, 他(1969)「サポニンの起泡力と洗浄力」家政学雑誌(20)(7),499-502.
- 鷲津 かの子, 他(2016)「天然サポニンの起泡性と人工汚染布の洗浄効果」一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集(68),82.
- 一丸ファルコス株式会社(2004)「起泡剤又は化粧料組成物」特開2004-115410.