ココイルイセチオン酸Naとは…成分効果と毒性を解説

洗浄 起泡
ココイルイセチオン酸Na
[化粧品成分表示名称]
・ココイルイセチオン酸Na

[医薬部外品表示名称]
・ヤシ油脂肪酸エチルエステルスルホン酸ナトリウム

化学構造的にヤシ油から得られる脂肪酸とイセチオン酸(∗1)のナトリウム塩をエステル化して得られる、AI(Acyl Isethionate:アシルイセチオン酸塩)に分類される陰イオン界面活性剤(アニオン界面活性剤)です。

∗1 イセチオン酸とは、化学名を「2-ヒドロキシエタンスルホン酸」といい、2-アミノエタンスルホン酸(慣用名:タウリン)のアミノ基を水酸基(ヒドロキシ基)に置換しただけの、タウリンと類似した構造をもつ物質です。

1929年に石鹸の改質洗浄剤として開発されています(文献6:2002)

ココイルイセチオン酸Naを構成するヤシ油の脂肪酸組成は、一例として、

脂肪酸名 脂肪酸の種類 炭素数:二重結合数 比率(%)
カプリル酸 飽和脂肪酸 C8:0 3.3
カプリン酸 飽和脂肪酸 C10:0 7.7
ラウリン酸 飽和脂肪酸 C12:0 57.8
ミリスチン酸 飽和脂肪酸 C14:0 18.1
パルミチン酸 飽和脂肪酸 C16:0 8.7
ステアリン酸 飽和脂肪酸 C18:0 3.6

このような種類と比率で構成されていることが報告されており(文献2:1975)、ラウリン酸とミリスチン酸を主とした脂肪酸構成となっています。

アニオン界面活性剤であるココイルイセチオン酸Naの主な性質は、

分子量 cmc(mmol/L) クラフト点(℃) 生分解率(%)
218.21 2.0(ミリスチン酸) 30(ラウリン酸)
39(ミリスチン酸)
51(パルミチン酸)
59(ステアリン酸)

このように報告されています(文献4:2019;文献5:2006)

cmc、クラフト点および生分解率についてそれぞれ順に解説しますが、まず界面活性剤の基礎知識であるミセル形成およびcmcについて解説します。

界面活性剤は親水基(水溶性)と疎水基(油溶性)をもっており、水中における界面活性剤の現象として親水基部分は水に溶け込みますが、疎水基部分は安定しようとするために水のないところ(溶液の表面や容器の壁面)に逃げようとします。

ただし、表面には限りがあり、さらに界面活性剤の濃度を増やすと疎水基の逃げ場がなくなり、疎水基は水との反発をなるべく減らすために、以下の図のように、

ミセルの基本構造

疎水基同士で集合し、親水基を水側に向けてミセル(micelle:会合体)を形成し始めます。

この疎水基の逃げ場がなくなってミセルが形成され始める濃度のことを臨界ミセル濃度(cmc:critical micelle concentration)と定義しており、また界面活性剤はミセルを形成することで界面活性剤が有する様々な機能を発揮します。

次に、クラフト点とは、個々の界面活性剤に固有の急激に溶解し始める温度(クラフト温度)であり、界面活性剤の溶解度がcmcと等しくなる温度のことです。

界面活性剤は、クラフト温度以下の低温度では水に溶解しにくく、その濃度が臨界ミセル濃度以上であってもミセルを形成せず、界面活性剤の乳化・分散・起泡などの機能を発揮することができませんが、クラフト点を超えると水への溶解性が急激に増し、かつその濃度がcmcに達するとミセルを形成し、機能を発揮します(文献8:2015)

最後に生分解率に関してですが、まず前提知識としてアニオン界面活性剤は洗浄剤として使用されることから、排水を通じて環境中に排泄されるため、開発・販売メーカーは環境に与える悪影響(毒性)についても考慮しておく必要があり、そういった点で生分解性が重要とされています。

生分解性とは、環境中の微生物・酵素の働きによって最終的に無害な物質まで分解される性質のことであり、一般的に60%以上のものは易分解性、40%以上は本質的に生分解可能な物質とみなされることから(文献7:1990)、60%以上であれば環境的に安全に使用できると考えられています。

ココイルイセチオン酸Naは、具体的な生分解率はみあたりませんが、生分解性の点で易分解性であることが知られており(文献3:2001)、環境への影響は少ないと考えられます。

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、シャンプー製品、ボディ&ハンドソープ製品、洗顔料 洗顔パウダーなどに使用されています。

起泡・洗浄

起泡・洗浄に関しては、陰イオン界面活性剤は洗浄力および起泡力を有しており、陰イオン界面活性の中でもアシルイセチオン酸塩(AI)は、pHが弱酸性-中性領域であり、硬水でも石鹸に近い豊かでクリーミィな泡立ちが得られ、しっとりとなめらかな感触の洗い上がりとなるのが特徴です(文献3:2001;文献6:2002)

0.2%ココイルイセチオン酸Naの50℃における起泡力は、以下の表のように、

  使用水の硬度
0ppm 150ppm 300ppm
直後 220mm 240mm 238mm
5分後 220mm 240mm 238mm

このように報告されており(文献3:2001)、軟水および硬水ともに高く安定した起泡力および泡の持続力が認められています。

実際の使用製品の種類や数および配合量は、海外の1993年および2013年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を表しており、またリンスオフ製品というのは、洗い流し製品(シャンプー、洗顔料、クレンジングなど)を指します。

ココイルイセチオン酸Naの配合製品数と配合量の調査結果(1993年および2013年)

スポンサーリンク

ココイルイセチオン酸Naの安全性(刺激性・アレルギー)について

ココイルイセチオン酸Naの現時点での安全性は、

  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
  • 1929年からの使用実績
  • 皮膚刺激性:8%濃度以下においてほとんどなし-軽度
  • 眼刺激性(眼をすすがない場合):24.5%濃度以下において軽度
  • 眼刺激性(眼をすすぐ場合):24.5%濃度以下において非刺激-最小限
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし
  • 光毒性:ほとんどなし

このような結果となっており、洗浄製品のような短時間の非連続使用として皮膚から完全に洗い流すように設計された製品において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:1993)によると、

  • [ヒト試験] 15人の被検者にココイルイセチオン酸Na0.2mLを対象に改良ソープチャンバー試験(初日に試験物質を24時間適用し、残りの4日間は各6時間適用)を実施し、皮膚紅斑(0-5のスケール)で評価したところ、平均紅斑スコアは1.9733(2で中程度)であり、個別の最小と最大紅斑スコアは0.0および4.4であった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1985)
  • [ヒト試験] 14人の被検者にココイルイセチオン酸Na0.2mLを対象に改良ソープチャンバー試験(初日に試験物質を24時間適用し、残りの4日間は各6時間適用)を実施し、皮膚紅斑(0-5のスケール)で評価したところ、平均紅斑スコアは0.567(1でわずかな紅斑)であり、個別の最小と最大紅斑スコアは0.0および4.0であった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1986)
  • [ヒト試験] 15人の被検者にココイルイセチオン酸Na0.2mLを対象に改良ソープチャンバー試験(初日に試験物質を24時間適用し、残りの4日間は各6時間適用)を実施し、皮膚刺激性を皮膚紅斑(0-4のスケール)、浮腫(0-3のスケール)および小胞(0-3のスケール)の合計スコアで評価したところ、紅斑、浮腫および小胞の平均スコアは1.36/4,0.147/3および0.12/3であり、合計刺激スコアは1.627であった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1986)
  • [ヒト試験] 17人の被検者に8%ココイルイセチオン酸Na水溶液を対象に改良ソープチャンバー試験(初日に試験物質を24時間適用し、残りの4日間は各6時間適用)を実施し、皮膚刺激性を皮膚紅斑(0-4のスケール)、浮腫(0-3のスケール)および小胞(0-3のスケール)の合計スコアで評価したところ、紅斑、浮腫および小胞の平均スコアは1.235/4,0.294/3および0.0/3であり、合計刺激スコアは1.529であった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1990)
  • [ヒト試験] 12人の被検者に0.6%ココイルイセチオン酸Naを含むクレンジングゲル水溶液を48時間閉塞パッチ適用し、パッチ除去6,24および48時間後に皮膚刺激性を評価したところ、非刺激性と結論付けられた(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1989)
  • [ヒト試験] 35人の被検者に0.1%ココイルイセチオン酸Na水溶液0.3mLを対象に21日間累積刺激性試験を実施し、試験終了後に累積刺激スコア(0-4のスケール)を評価したところ、0.093/4であり、個別で最も高い累積刺激スコアは1.143であった。この試験物質は非常にわずかな累積刺激製剤であると結論付けられた(Hill Top Research, Inc,1985)
  • [ヒト試験] 10人の被検者に0.2%,0.4%および1.0%%ココイルイセチオン酸Na水溶液0.3mLを対象に5日間の間に3回24時間パッチを適用し、最終パッチ除去24時間後に刺激スコア(0-4のスケール)を評価したところ、0.2%,0.4%および1.0%でそれぞれ0.30,0.20および0.26であり、この試験物質の皮膚刺激性は非常にわずかであった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1984)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、8%濃度において非刺激-軽度の皮膚刺激性が報告されているため、皮膚刺激性は8%濃度以下において非刺激-軽度の皮膚刺激が起こる可能性があると考えられます。

眼刺激性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:1993)によると、

  • [動物試験] 3匹のウサギの片眼の結膜嚢に24.5%ココイルイセチオン酸Naを含む化粧用製剤水溶液0.1mLを5分間適用し、Draize法に基づいて眼刺激スコア(0-110)を評価したところ、平均眼刺激スコアは24,48および72時間および7および14日でそれぞれ14.3,8.0,4.7,2.3および0.0であった。24時間ですべてのウサギに角膜混濁が観察され、3匹のうち2匹で結膜への影響が認められたが、これらの影響は48時間後には解消された(Lever Research,1988)
  • [動物試験] 9匹のウサギの片眼の結膜嚢に5%ココイルイセチオン酸Na溶液0.1mLを点眼し、3匹は30秒後に眼をすすぎ、6匹は眼をすすがず、眼刺激スコア(0-110)を評価したところ、眼をすすいだ群では最大眼刺激スコアが8.33であり、眼刺激性は最小限であった。眼をすすがなかった群では最大眼刺激スコアが15.33であり、眼刺激性は軽度であった(Product Safety Labs,1984)
  • [動物試験] 6匹のウサギの片眼の結膜嚢に2.5%ココイルイセチオン酸Na水溶液0.1mLを点眼し、24時間後に眼をすすぎ、Draize法に基づいて眼刺激スコア(0-110)を評価したところ、24,72時間および4日後でそれぞれ3.0,1.0および0.0であり、この試験物質は軽度の眼刺激性であった(Consumer Product Testing Company Inc,1982)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、24.5%濃度以下で非刺激-軽度の眼刺激性と報告されているため、24.5%濃度以下において軽度の眼刺激が起こる可能性があると考えられます。

皮膚感作性(アレルギー性)について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:1993)によると、

  • [ヒト試験] 199人の被検者に0.05%ココイルイセチオン酸Naを含む洗濯石鹸溶液を対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を閉塞パッチにて実施したところ、この試験物質は皮膚感作性を示さなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1990)
  • [ヒト試験] 197人の被検者に4%ココイルイセチオン酸Naを含む洗濯石鹸溶液を対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を開放パッチにて実施したところ、この試験物質は皮膚感作性を示さなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1990)
  • [ヒト試験] 191人の被検者に0.1%および2%ココイルイセチオン酸Naを含む洗濯石鹸溶液を対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を閉塞および開放パッチにて実施したところ、この試験物質は皮膚感作性を示さなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1990)
  • [ヒト試験] 96人の被検者に17%ココイルイセチオン酸Naを含む皮膚洗浄剤0.2gを対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を半閉塞パッチにて実施したところ、誘導期間および/またはチャレンジ期間において12人に一時的で散発的な皮膚反応がみられたが、これらの反応はいずれの皮膚刺激および皮膚感作反応ではないと判断され、このこの試験物質は臨床的に意味のある皮膚刺激性を誘発しなかった。チャレンジ期間に皮膚反応を示した2人の被検者にフォローアップ試験を実施したところ、1人は皮膚反応を示さず、もう1人は半閉塞パッチでほとんど知覚できない紅斑反応が一時的にみられたが、元のチャレンジ期間の反応よりも低く、重要ではないと判断された。この試験物質は臨床的に接触性皮膚感作を誘発しないと結論づけられた(Essex Testing Clinic,1989)
  • [ヒト試験] 203人の被検者に0.95%ココイルイセチオン酸Naを含む合成石鹸溶液を対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を閉塞パッチにて実施したところ、この試験物質の刺激性および感作性はほとんどないまたはあってもとても低いと結論付けられた(Concordia Research Laboratories Inc,1987)
  • [ヒト試験] 203人の被検者に0.95%ココイルイセチオン酸Naを含む合成石鹸溶液を対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を閉塞パッチにて実施したところ、この試験物質の刺激性および感作性はほとんどないまたはあってもとても低いと結論付けられた(Concordia Research Laboratories Inc,1987)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、皮膚感作性なしと報告されているため、皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

光毒性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:1993)によると、

  • [動物試験] 6匹のウサギに0.95%ココイルイセチオン酸Naを含む合成石鹸水溶液0.4mLを閉塞パッチ適用し、2時間後に最小紅斑線量のUVを30分間照射した後24時間まで閉塞パッチを適用した。Draize法に基づいてパッチ除去1,48および72時間後に皮膚刺激スコア(0-8)を評価したところ、未照射部位および照射部位でそれぞれ0.4および0.5であった。陽性対照の未照射部位および照射部位ではそれぞれ0.3および5.3であったため、試験物質での皮膚刺激スコアはUV照射によるものではないと判断され、この試験物質はウサギの皮膚に軽度の皮膚刺激を示すものの、それは光毒性によるものではないと結論づけられた(Bio Dynamics Inc,1987)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、光毒性なしと報告されているため、光毒性はほとんどないと考えられます。

∗∗∗

ココイルイセチオン酸Naは界面活性剤にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:界面活性剤

∗∗∗

文献一覧:

  1. Cosmetic Ingredient Review(1993)「Final Report on the Safety Assessment of Sodium Cocoyl Isethionate」Journal of the American College of Toxicology(12)(5),459-479.
  2. 吉田 良之助, 他(1975)「アミノ酸系洗浄剤の研究(第1報)」油化学(24)(9),595-599.
  3. 野崎 清忠(2001)「洗浄剤用植物原料の開発と応用」Fragrance Journal(29)(9),71-76.
  4. “Pubchem”(2019)「Sodium cocoyl isethionate」, <https://pubchem.ncbi.nlm.nih.gov/compound/Sodium-cocoyl-isethionate> 2019年9月4日アクセス.
  5. 日光ケミカルズ(2006)「アシルイセチオン酸塩」新化粧品原料ハンドブックⅠ,189.
  6. 刈米 孝夫(2002)「界面活性剤の開発」界面活性剤の応用技術,1-41.
  7. 日本油化学協会(1990)「界面活性剤のエコロジー」油脂化学便覧 改訂3版,470-476.
  8. 野々村 美宗(2015)「界面活性剤の相挙動」化粧品 医薬部外品 医薬品のための界面化学,30-33.

スポンサーリンク

TOPへ