ココアンホ酢酸Naとは…成分効果と毒性を解説

洗浄 起泡 可溶化 刺激緩和 乳化 ヘアコンディショニング
ココアンホ酢酸Na
[化粧品成分表示名称]
・ココアンホ酢酸Na

[医薬部外品表示名称]
・2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン

化学構造的にヤシ油から得られる脂肪酸とアミノエチルエタノールアミンからアルキルイミダゾリンを合成しカルボキシメチル化して得られる、アミノ酸型のグリシン型(∗1)に分類される両性界面活性剤です。

∗1 ココアンホ酢酸Naは、化学反応過程において主生成物の構造が特定されず、イミダゾリン型(イミダゾリニウムベタイン)として扱われていましたが、1990年代に主生成物がグリシン型両性界面活性剤であることが確認され、それ以降はグリシン型に分類されています。ただし、現在でもイミダゾリン型に分類している資料も多いです。

ココアンホ酢酸Naを構成するヤシ油の脂肪酸組成は、一例として、

脂肪酸名 脂肪酸の種類 炭素数:二重結合数 比率(%)
カプリン酸 飽和脂肪酸 C10:0 6-10
ラウリン酸 飽和脂肪酸 C12:0 44-52
ミリスチン酸 飽和脂肪酸 C14:0 13-19
パルミチン酸 飽和脂肪酸 C16:0 8-11

このような種類と比率で構成されていることが報告されており(文献2:2018)、ラウリン酸とミリスチン酸を主とした脂肪酸構成となっています。

両性界面活性剤はpHによって異なるイオン性を示しますが、アミノ酸型のグリシン型両性界面活性剤の酸性および塩基性領域における性質は、以下の表のように、

  アミノ酸型 ベタイン型
アミノ酢酸ベタイン型 スルホベタイン型
酸性領域(等電点以下) 陽イオン界面活性剤 陽イオン界面活性剤 両性界面活性剤
塩基性領域(等電点以上) 陰イオン界面活性剤 両性界面活性剤 両性界面活性剤
中性領域(等電点付近) 両性界面活性剤 両性界面活性剤 両性界面活性剤

等電点(∗2)以上(塩基性領域)で陰イオン界面活性剤の性質を示し、等電点付近では両性界面活性剤の性質を示し、等電点以下の酸性領域では陽イオン界面活性剤の性質を示すのが特徴です(文献3:2006)

∗2 等電点とは、両性界面活性剤のようなアニオンになる官能基とカチオンになる官能基の両方を持つ化合物において、ちょうどアニオン性とカチオン性とがバランスする点であり、電離後の化合物全体の電荷平均が0となるpHのことです。

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、シャンプー製品、ボディソープ製品、洗顔料、スキンケア化粧品、ボディ&ハンドケア製品などに使用されています。

陰イオン界面活性剤との併用による起泡・洗浄

陰イオン界面活性剤との併用による起泡・洗浄に関しては、ココアンホ酢酸Naは洗浄性および起泡性を有しており、耐硬水性も有していますが、一般に単独で配合されることはなく、陰イオン界面活性剤との相互作用によって表面張力低下能、湿潤、浸透力および起泡力が増大することが知られており(文献3:2006;文献4:1993;文献5:2016)、陰イオン界面活性剤と併用して洗浄製品に使用されています。

非イオン界面活性剤の可溶化

非イオン界面活性剤の可溶化に関しては、ココアンホ酢酸Naは非イオン界面活性剤との相互作用により強アルカリ中に非イオン界面活性剤を透明に可溶化させる効果に優れていることが知られており(文献3:2006)、非イオン界面活性剤と併用して処方されます。

刺激緩和作用

刺激緩和作用に関しては、皮膚のpHに近い領域(弱酸性領域)でpH緩衝効果をもつため、アルカリまたは酸性物質の刺激から皮膚を保護する機能が知られています(文献3:2006)

また、陰イオン界面活性剤の刺激を緩和する効果に優れていることから、陰イオン界面活性剤と一緒に配合されます(文献3:2006)

乳化

乳化に関しては、まず前提知識として乳化とエマルションについて解説します。

乳化とは、1つの液体にそれと溶け合わない別の液体を微細な粒子の状態に均一に分散させることをいいます(文献6:1990)

そして、乳化の結果として生成された分散系溶液をエマルションといい、基本的な化粧品用エマルションとして、以下の図のように、

エマルションの基本構造

水を外部相とし、その中に油が微細粒子状に分散している水中油滴型(O/W型:Oil in Water type)と、それとは逆に油を外部相とし、その中に水が微細粒子状に分散している油中水滴型(W/O型:Water in Oil type)があります(文献6:1990)

身近にあるO/W型エマルションとしては、牛乳、生クリーム、マヨネーズなどがあり、一方でW/O型エマルションとしてはバター、マーガリンなどがあります。

ココアンホ酢酸Naは、油性物質の乳化分散(O/W型)に優れており、低刺激性であることから、スキンケア化粧品、ボディケア製品、ハンドケア製品などの乳化剤として使用されます(文献7:-)

コアセルベート生成によるヘアコンディショニング作用

コアセルベート生成によるヘアコンディショニング作用に関しては、まず前提知識としてコアセルベートについて解説します。

シャンプーの主剤である陰イオン界面活性剤は、コカミドプロピルベタインなどの両性界面活性剤およびグアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリドなどのカチオン化高分子との相互作用により、シャンプー希釈時にある濃度領域においてコアセルベーションと呼ばれる、溶質が均一に分散した状態から部分的に溶質が集合し溶質の多い領域と極めて少ない領域に分離する現象を起こすことが知られています(文献8:2015)

コアセルベーションおよびコアセルベート

このコアセルベーションによって分離した溶質の多い領域は、洗浄機能とコンディショニング機能をもつ複合体でコアセルベートと呼ばれており、コアセルベートはシリコーンや油性成分を取り込み、それらが毛髪表面に吸着することで、すすぎ時に毛髪へ滑らかさを付与し、コンディショニング効果を発現することが報告されています(文献8:2015;文献9:2004)

実際のシャンプー剤においては、シャンプー塗布後の泡立て時には洗浄作用が発現し、その後、汚れをすすぎ流す過程で陰イオン界面活性剤の濃度が低下し希釈されることでコアセルベートが生成され、生成されたコアセルベートが毛髪に吸着し、コンディショニング効果が発現するように設計されています(文献11:2018;文献12:1989)

コアセルベートは、陰イオン界面活性剤、両性界面活性剤およびカチオン化高分子の3成分によって生成されますが(∗3)、両性界面活性剤はコカミドプロピルベタイン単体で配合するより、コカミドプロピルベタインとココアンホ酢酸Naを併用することで、コアセルベート生成量がさらに増加することが報告されています(文献10:2014)

∗3 コアセルベートは、陰イオン界面活性剤およびカチオン化高分子の相互作用のみで生成されますが、両性界面活性剤を加えた3分子の相互作用とすることでコアセルベート生成量が増えることが広く知られており、製品においてはこの3種類を併用することが一般的です。

このような背景から、陰イオン界面活性剤、カチオン化高分子、アミノ酢酸ベタイン型両性界面活性剤およびグリシン型両性界面活性剤が併用されている場合は、コアセルベート生成によるヘアコンディショニング作用を目的とした処方の可能性が考えられます。

実際の使用製品の種類や数および配合量は、海外の1989-1990年および2005年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

ココアンホ酢酸Naの配合製品数と配合量の調査結果(1989-1990年および2005年)

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ココアンホ酢酸Naの安全性(刺激性・アレルギー)について

ココアンホ酢酸Naの現時点での安全性は、

  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
  • 30年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:ほとんどなし-最小限
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし
  • 光感作性:ほとんどなし

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:1990)によると、

  • [ヒト試験] 141人の被検者に10%ココアンホ酢酸Na水溶液を対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を開放パッチにて実施したところ、この試験物質は皮膚刺激および皮膚感作を誘発しなかった(Hill Top Research Inc,1988)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、皮膚刺激性および皮膚感作性なしと報告されているため、皮膚刺激性および皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:1990)によると、

  • [動物試験] 6匹のウサギの片眼に25%ココアンホ酢酸Na水溶液を点眼し、眼はすすがず、Draize法に基づいて眼刺激性を評価したところ、1日目の最高眼刺激スコアは1.7であり、2日目には正常に戻ったことから、非刺激性に分類された(Consumer Product Testing,1977)
  • [動物試験] 6匹のウサギの片眼に10%ココアンホ酢酸Na水溶液を点眼し、Draize法に基づいて眼刺激性を評価したところ、1日目の最高眼刺激スコアは5.67であり、7日目には最小限の結膜刺激がみられたことから、最小限の眼刺激性に分類された(Huntingdon Research Center,1979)
  • [動物試験] 6匹のウサギの片眼に2.5%ココアンホ酢酸Na水溶液を点眼し、Draize法に基づいて眼刺激性を評価したところ、1日目の最高眼刺激スコアは1.0であり、3日目には正常に戻ったことから、非刺激性に分類された(International Bio-Research Inc,1978)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、非刺激-最小限の眼刺激性が報告されているため、眼刺激性は非刺激-最小限の眼刺激を引き起こす可能性があると考えられます。

光感作性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:1990)によると、

  • [ヒト試験] 30人の被検者に10%ココアンホ酢酸Na水溶液を対象にUVAおよびUVBの光感作性試験をともなうHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施したところ、この試験物質は光感作反応を誘発しなかった(Hill Top Research Inc,1988)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、光感作性なしと報告されているため、光感作性はほとんどないと考えられます。

∗∗∗

ココアンホ酢酸Naは界面活性剤にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:界面活性剤

∗∗∗

文献一覧:

  1. Cosmetic Ingredient Review(1990)「Final Report on the Safety Assessment of Cocoamphoacetate, Cocoamphopropionate, Cocoamphodiacetate, and Cocoamphodipropionate」Journal of the American College of Toxicology(9)(2),121-142.
  2. Cosmetic Ingredient Review(2018)「Safety Assessment of Alkyl Betaines as Used in Cosmetics」International Journal of Toxicology(37)(1),28S-46S.
  3. 日光ケミカルズ(2006)「両性界面活性剤」新化粧品原料ハンドブックⅠ,207-215.
  4. 宮澤 清(1993)「化粧せっけん及びヘアシャンプーの泡立ちとソフト感」油化学(42)(10),768-774.
  5. 株式会社ファンケル(2016)「皮膚洗浄用組成物」特開2016-188182.
  6. 田村 健夫, 他(1990)「乳化作用」香粧品科学 理論と実際 第4版,270-273.
  7. ミヨシ油脂株式会社(-)「アンホレックス」製品カタログ,3.
  8. 日油株式会社(2015)「毛髪洗浄剤組成物」特開2015-205834.
  9. 樋渡 佳子, 他(2004)「カチオン性高分子と界面活性剤のコアセルベートに関する研究」日本化粧品技術者会誌(38)(3),211-219.
  10. 川研ファインケミカル株式会社(2014)「ソフタゾリンLHL」技術資料.
  11. 江連 美佳子(2018)「美しい髪をめざして-香粧品ができること-」日本香粧品学会誌(42)(1),15-20.
  12. 奥村 丈夫, 他(1989)「頭髪化粧品と毛髪」色材協会誌(62)(10),615-623.

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