コカミドMEAとは…成分効果と毒性を解説




・コカミドMEA
[医薬部外品表示名称]
・ヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド
ヤシ科植物ココヤシ(学名:Cocos nucifera)の果実(ココナッツ)から得られるヤシ脂肪酸を疎水基(親油基)とし、1個のヒドロキシ基(水酸基:-OH)をもつエタノールアミン(モノエタノールアミン)(∗1)を親水基としたアミド(∗2)であり、多価アルコール縮合型(∗3)の脂肪酸アルカノールアミドに分類される非イオン界面活性剤(ノニオン界面活性剤)です。
∗1 アミンとは、アンモニアの水素原子を炭化水素基または芳香族原子団で置換した化合物の総称であり、置換した数が1つであれば第一級アミン、2つであれば第二級アミン、3つであれば第三級アミンといいます。エタノールアミン(モノエタノールアミン)は、第一級アミンと第一級アルコールであるエタノールの有機化合物であり、エタノールは分子内に1つのヒドロキシ基(水酸基:-OH)を持つため、1基の水酸基をもつ化合物です。ギリシャ語で「モノ(mono)」は「1」を、「ジ(di)」は「2」を意味しますが、コカミドMEAの「MEA」とはモノエタノールアミン(Monoethanolamine)の頭字語であり、エタノールアミンはジエタノールアミン(Diethanolamine:DEA)などと区別するときにはモノエタノールアミンと呼ばれます。
∗2 アミド(酸アミド)とは、脱水縮合した構造のことを指し、脱水縮合とは化学構造的に分子と分子から水(H₂O)が離脱することにより分子と分子が結合する反応(縮合反応)のことです。
∗3 エタノールアミンは、一般的にアミノアルコールに分類されますが、構造的に多価アルコールに類似しているため(文献3:2007)、非イオン界面活性剤においてはアミノアルコールも多価アルコールに分類し、ここでは多価アルコール縮合型としています。
ヤシ油の脂肪酸組成は、抽出方法や天然成分のため国や地域および時期によって変化がありますが、主に、
脂肪酸名 | 脂肪酸の種類 | 炭素数:二重結合数 | 比率(%) |
---|---|---|---|
オレイン酸 | 不飽和脂肪酸 | C18:1 | 6.9 |
リノール酸 | 不飽和脂肪酸 | C18:2 | 0.2 |
カプロン酸 | 飽和脂肪酸 | C6:0 | 0.4 |
カプリル酸 | 飽和脂肪酸 | C8:0 | 7.7 |
カプリン酸 | 飽和脂肪酸 | C10:0 | 6.2 |
ラウリン酸 | 飽和脂肪酸 | C12:0 | 47.0 |
ミリスチン酸 | 飽和脂肪酸 | C14:0 | 18.0 |
パルミチン酸 | 飽和脂肪酸 | C16:0 | 9.5 |
ステアリン酸 | 飽和脂肪酸 | C18:0 | 2.9 |
このような種類と比率で構成されており(文献4:1990)、ラウリン酸を主体とした脂肪酸であると考えられます。
化粧品に配合される場合は、
これらの目的で、シャンプー製品、ボディソープ製品、ハンドソープ製品、洗顔料などに汎用されています。
陰イオン界面活性剤の洗浄力および起泡力増強
陰イオン界面活性剤の洗浄力および起泡力増強に関しては、脂肪酸アルカノールアミドは主剤である陰イオン界面活性剤と組み合わせることで、陰イオン界面活性剤の洗浄性、泡立ち、泡質を強化・安定化する働きが特徴として知られており(文献5:1996)、シャンプー製品、ボディソープ製品、洗顔料などに汎用されています。
陰イオン界面活性剤と脂肪酸アルカノールアミドによる洗浄性および起泡性増強のメカニズムは、これらの分子間化合物の形成による複合効果を利用したものであると報告されています(文献5:1996)。
増粘
増粘に関しては、脂肪酸アルカノールアミドは低濃度でも高い粘度の水溶液を得られる増粘効果が特徴として知られており、シャンプー製品、ボディソープ製品、洗顔料などに使用されています(文献6:1970)。
実際の使用製品の種類や数および配合量は、海外の2011年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。
以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を表しており、またリンスオフ製品というのは、洗い流し製品(シャンプー、ヘアコンディショナー、ボディソープ、洗顔料、クレンジングなど)を指します。
コカミドMEAの安全性(刺激性・アレルギー)について
- 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
- 50年以上の使用実績
- 皮膚刺激性:25%濃度以下においてほとんどなし
- 眼刺激性:詳細不明
- 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし
このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。
以下は、この結論にいたった根拠です。
皮膚刺激性について
- [動物試験] モルモット、ウサギおよびヘアレスマウスに50%コカミドMEAを含むワセリンを対象に24時間パッチ試験を実施し、パッチ除去後に皮膚刺激性を評価したところ、ウサギではわずかな刺激がみられたが、モルモットおよびヘアレスマウスでは皮膚刺激を示さなかった(Kastner,1977)
- [動物試験] ウサギ(数不明)に25%コカミドMEAを対象に24時間閉塞パッチ適用し、パッチ除去後に皮膚刺激性を評価したところ、いずれのウサギにおいても皮膚刺激はみられなかった(European Commission,2000)
と記載されています。
試験データをみるかぎり、25%濃度以下において皮膚刺激性なしと報告されているため、25%濃度以下において皮膚刺激性はほとんどないと考えられます。
眼刺激性について
試験結果や安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細は不明です。
皮膚感作性(アレルギー性)について
- [動物試験] モルモット(数不明)にコカミドMEA(濃度不明)を対象に皮膚感作性試験を実施したところ、この試験物質は皮膚感作剤ではなかった(European Commission,2000)
と記載されています。
試験データをみるかぎり、皮膚感作性なしと報告されているため、皮膚感作性はほとんどないと考えられます。
∗∗∗
コカミドMEAは界面活性剤、安定化成分にカテゴライズされています。
成分一覧は以下からお読みください。
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文献一覧:
- Cosmetic Ingredient Review(1999)「Final Report on the Safety Assessment of Cocamide MEA」International Journal of Toxicology(18)(2),9-16.
- Cosmetic Ingredient Review(2015)「Safety Assessment of Ethanolamides as Used in Cosmetics」International Journal of Toxicology(34)(1),18S-34S.
- 藤本 武彦(2007)「脂肪酸アルカノールアミド」界面活性剤入門,70-75.
- 日本油化学協会(1990)「植物油脂の脂肪酸組成」油脂化学便覧 改訂3版,104-110.
- 矢作 和行, 他(1996)「香粧品における界面活性剤の応用」日本油化学会誌(45)(10),1133-1143.
- 広田 博(1970)「酸化エステル縮合型」化粧品のための油脂・界面活性剤,125-130.
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