コカミドDEAとは…成分効果と毒性を解説

洗浄 起泡 増粘
コカミドDEA
[化粧品成分表示名称]
・コカミドDEA

[医薬部外品表示名称]
・ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド

ヤシ科植物ココヤシ(学名:Cocos nucifera)の果実(ココナッツ)から得られるヤシ脂肪酸を疎水基(親油基)とし、2個の水酸基(ヒドロキシ基)をもつジエタノールアミン(∗1)を親水基としたアミド(∗2)であり、多価アルコール縮合型(∗3)の脂肪酸アルカノールアミドに分類される分子量280-290の非イオン界面活性剤(ノニオン界面活性剤)です(文献2:2013)

∗1 アミンとは、アンモニアの水素原子を炭化水素基または芳香族原子団で置換した化合物の総称であり、置換した数が1つであれば第一級アミン、2つであれば第二級アミン、3つであれば第三級アミンといいます。ジエタノールアミンは、第二級アミンとジオールの有機化合物であり、ジオールは分子内に二つのヒドロキシ基を持つため、2基の水酸基をもつ化合物です。コカミドDEAの「DEA」とはジエタノールアミン(Diethanolamine)の頭字語です。

∗2 アミド(酸アミド)とは、脱水縮合した構造のことを指し、脱水縮合とは化学構造的に分子と分子から水(H₂O)が離脱することにより分子と分子が結合する反応(縮合反応)のことです。

∗3 エタノールアミンは、一般的にアミノアルコールに分類されますが、構造的に多価アルコールに類似しているため(文献7:2007)、非イオン界面活性剤においてはアミノアルコールも多価アルコールに分類し、ここでは多価アルコール縮合型としています。

ヤシ油の脂肪酸組成は、抽出方法や天然成分のため国や地域および時期によって変化がありますが、主に、

脂肪酸名 脂肪酸の種類 炭素数:二重結合数 比率(%)
オレイン酸 不飽和脂肪酸 C18:1 6.9
リノール酸 不飽和脂肪酸 C18:2 0.2
カプロン酸 飽和脂肪酸 C6:0 0.4
カプリル酸 飽和脂肪酸 C8:0 7.7
カプリン酸 飽和脂肪酸 C10:0 6.2
ラウリン酸 飽和脂肪酸 C12:0 47.0
ミリスチン酸 飽和脂肪酸 C14:0 18.0
パルミチン酸 飽和脂肪酸 C16:0 9.5
ステアリン酸 飽和脂肪酸 C18:0 2.9

このような種類と比率で構成されており(文献8:1990)、ラウリン酸を主体とした脂肪酸であると考えられます。

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、シャンプー製品、ボディソープ製品、ハンドソープ製品、洗顔料などに汎用されています。

陰イオン界面活性剤の洗浄力および起泡力増強

陰イオン界面活性剤の洗浄力および起泡力増強に関しては、脂肪酸アルカノールアミドは主剤である陰イオン界面活性剤と組み合わせることで、陰イオン界面活性剤の洗浄性、泡立ち、泡質を強化・安定化する働きが特徴として知られており(文献9:1996)、また起泡増強効果はコカミドDEAとラウラミドDEAでほとんど差はないことが報告されています(文献11:1962)

陰イオン界面活性剤と脂肪酸アルカノールアミドによる洗浄性および起泡性増強のメカニズムは、これらの分子間化合物の形成による複合効果を利用したものであると報告されています(文献9:1996)

増粘

増粘に関しては、脂肪酸アルカノールアミドは低濃度でも高い粘度の水溶液を得られる増粘効果が特徴として知られており、シャンプー製品、ボディソープ製品、洗顔料などに使用されています(文献10:1970)

実際の使用製品の種類や数および配合量は、海外の2011年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を表しており、またリンスオフ製品というのは、洗い流し製品(シャンプー、ヘアコンディショナー、ボディソープ、洗顔料、クレンジングなど)を指します。

コカミドDEAの配合製品数と配合量の調査結果(2011年)

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コカミドDEAの安全性(刺激性・アレルギー)について

コカミドDEAの現時点での安全性は、

  • 薬添規2018規格の基準を満たした成分が収載される医薬品添加物規格2018に収載
  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
  • 50年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:ほとんどなし
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし
  • 皮膚感作性(皮膚炎を有する場合):ほとんどなし(ただし、職業的に毎日暴露される場合は皮膚感作を引き起こす可能性あり)
  • 発がん性:動物における証拠はあるが、ヒトにおいて利用できるデータなし

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:1996;文献2:2013)によると、

  • [ヒト試験] 12人の被検者に6つの化粧品グレードの界面活性剤溶液の皮膚刺激性を評価した。6つの界面活性剤はすべてに20%ラウリル硫酸Naが含まれ、そのうちの1つは20%ラウリル硫酸Naと10%コカミドDEAで構成されていた。6つの界面活性剤溶液それぞれ200μLを24時間閉塞パッチ適用し、パッチ除去後に試験部位を水ですすぎ、除去から1および24時間後にPII(Primary Irritation Index:皮膚一次刺激性指数)を0-4のスケールで評価したところ、20%ラウリル硫酸Na溶液は8人の被検者に紅斑を誘発したが、20%ラウリル硫酸Naと10%コカミドDEAを含む溶液を塗布した1時間後に紅斑の減少が認められ、48時間で完全な消失が観察された。残りの4人の被検者は皮膚刺激性を示さなかった。これらの結果から、皮膚刺激は単に皮膚と接触する界面活性剤の総濃度に関連するのではなく、界面活性剤の組み合わせに関連すると結論付けられた(Dillarstone and Paye,1993)
  • [ヒト試験] 105人の被検者に0.5%コカミドDEA水溶液40μLを48時間単回閉塞パッチ適用し、パッチ除去後にDraize法に基づいてPII(Primary Irritation Index:皮膚一次刺激性指数)を評価したところ、平均PIIは0.065であり、非刺激性に分類された(M Corazza,2010)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、皮膚刺激性なしと報告されているため、皮膚刺激性はほとんどないと考えられます。

また、他の界面活性剤とコカミドDEAを組み合わせることで、他の界面活性剤の皮膚刺激性の低下が報告されています。

眼刺激性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献2:2013)によると、

  • [in vitro試験] 正常ヒト表皮角化細胞によって再構築された3次元培養角膜モデル(EpiOcular)を用いて、モデル角膜表面に10%コカミドDEA溶液を処理し、眼粘膜刺激性を評価したところ、眼刺激性は非刺激-最小限に分類された。この結果はDraize法に基づいて実施された動物試験と同様のスコアであった(M Stern et al,1998)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、眼刺激性なしと報告されているため、眼刺激性はほとんどないと考えられます。

皮膚感作性(アレルギー性)について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:1996)によると、

  • [ヒト試験] 10人のボランティアに10%コカミドDEAを含むワセリンをパッチ適用したところ、わずかな刺激反応が観察されたが、皮膚感作反応は示さなかった(Pinola et al,1993)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、皮膚感作性なしと報告されているため、皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

– 皮膚炎を有する場合 –

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:1996)によると、

  • [ヒト試験] アレルギー性接触皮膚炎を有する6人の患者(3人はアトピー性接触皮膚炎でもある)に1985-1992年までコカミドDEAのパッチ試験を実施した。患者は仕事中の手洗いまたは手の保護のために洗浄製品を使用しており、日常的にコカミドDEAに暴露されていた。すべての患者の手に皮膚炎があり、6人の皮膚炎の平均発症期間は21ヶ月であった。被検者に0.1%-10%コカミドDEAを対象に24-48時間閉塞パッチ適用し、ICDRG(International Contact Dermatitis Research Group:国際接触皮膚炎研究グループ)の推奨事項に基づいてパッチ除去24-120時間まで皮膚反応を評価し、++以上の反応を陽性とみなしたところ、以下の表のように、
    コカミドDEA濃度(%) 試験人数 感作人数 感作結果
    0.1 2 2 +
    0.2 1 1 ++
    0.3 4 4 +から++
    0.5 3 3 ++から+++
    1 4 4 +から++
    3 2 2 ++から+++
    10 2 2 ++から+++

    0.2%濃度以上で多くの陽性反応が観察された。一方で健常な皮膚を有する20人のボランティアに3%コカミドDEAを含むワセリンを対象にパッチ試験を実施したところ、皮膚反応はなく、10人のボランティアに10%コカミドDEAを含むワセリンをパッチ適用したところ、わずかな刺激反応を示すのみであった。コカミドDEAは6人の患者に職業性アレルギー性接触皮膚炎を誘発したと結論づけられた(Pinola et al,1993)

  • [ヒト試験] 前腕に皮膚炎を有する40人の金属加工工場従業員に作業中に曝露された金属加工液および防腐剤の共通成分であるコカミドDEA(0.5%濃度)を含むワセリンを対象に48時間閉塞パッチ適用し、ICDRGの推奨事項に基づいてパッチ除去後に皮膚感作性を評価したところ、1人の被検者は0.5%コカミドDEAに対して接触感作反応を示した(DeBoer et al,1989)
  • [ヒト試験] 職業性アレルギー性接触皮膚炎を有する954人(男性670人、女性284人)の患者にコカミドDEA(濃度不明)を対象にパッチ試験を実施したところ、コカミドDEAは48人(男性15人、女性33人)の職業性アレルギー性接触皮膚炎の原因であった(Wall and Gebauer,1991)

– 個別事例 –

  • [ヒト試験] スカルプシャンプー使用後に皮膚炎を発症した患者に0.5%コカミドDEAを含むワセリンを対象にパッチ試験を実施したところ、陽性であった(de Groot et al,1987)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、一般通常使用においてはほとんど皮膚感作性なしと報告されているため、皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

ただし、職業的に毎日暴露される環境においてはアレルギー性接触皮膚炎が報告されているため、職業的に毎日暴露される場合、アレルギー性接触皮膚感作を引き起こす可能性があると考えられます。

発がん性について

世界保健機関(WHO)の一機関であるIARC(International Agency for Research on Cancer:国際がん研究機関)は、ヒトに対する発がん性に関する様々な物質・要因を評価し、以下の表のように5段階に分類しており(文献3:2017;文献4:2019)

グループ グループ内容 分類理由
グループ1 ヒトに対する発がん性がある ・ヒトへの発がん性について十分な証拠がある
グループ2A ヒトに対しておそらく発がん性がある ・ヒトへの発がん性については限られた証拠しかないが、実験動物の発がんについては十分な証拠がある場合
グループ2B ヒトに対して発がん性がある可能性がある ・ヒトへの発がん性については限られた証拠があるが実験動物では十分な証拠のない場合
・ヒトへの発がん性については不十分な証拠しかないあるいは証拠はないが、実験動物は十分な発がん性の証拠がある場合
グループ3 ヒトに対する発がん性について分類できない ・ヒトへの発がん性については不十分な証拠しかなく、実験動物についても不十分又は限られた証拠しかない場合
・他のグループに分類できない場合
グループ4 ヒトに対する発がん性がない ・ヒトへの発がん性はないことを示す証拠があり、かつ実験動物についても同様な証拠がある場合

2012年に公開されたIARCの評価によると、コカミドDEAの発がん性は、

  • 実験動物においてコカミドDEAの発がん性について十分な証拠がある
  • ヒトにおいてコカミドDEAの発がん性について利用できるデータがない

このように結論づけられており、「グループ2B」に分類されています(文献5:2012)

IARCが「グループ2B」に分類する根拠は、2001年にNTP(National Toxicology Program:米国国家毒性プログラム)によって公開されたコカミドDEAの毒性および発がん性報告書であり、その試験内容および結果は、

  • [動物試験] 50匹のオスと50匹のメスのマウス群に0,100または200mg/kgコカミドDEA(重量で18.2%および遊離DEAを含む)を含むエタノールを週5日、104-105週にわたって経皮投与したところ、肝腫瘍の発生率は、対照と比較して投与されたオスおよびメスのマウスで統計的に有意に大きかった。オスの投与群における腎症の発生率は対照と比較して統計的に有意であった。200mg/kgのオスにおける腎尿細管腺腫または腎尿細管腺腫および癌(組み合わせ)の発生率は対照よりも統計的に有意に大きかった。この結果から、オスおよびメスのマウスの発がん性活性の明確な証拠はDEA試験化合物中の汚染物質として存在する遊離DEAの濃度に関連すると結論づけた
  • [動物試験] 50匹のオスと50匹のメスのラット群に0,50または100mg/kgコカミドDEAを含むエタノール(それぞれ0,85または170mg/mL)を週5日、104週にわたって経皮投与したところ、50mg/kg群のメスの腎尿細管腺腫または癌の発生率は対照群よりも統計的に有意に大きかった。これらの結果から50または100mg/kgコカミドDEAを経皮投与したオスのラットには発がん性の証拠がないと結論づけた。腎尿細管腫瘍の発生率のわずかな増加がみられたことからメスのラットに発がん性の明確な証拠があった

このような試験データが報告されており(文献6:2001)、ヒトに対する発がん性の試験データはなく、動物による長期経皮曝露によるデータのみを根拠にした区分となっています。

また、動物試験における発がん性の要因は、コカミドDEA中に存在する遊離DEAの濃度に関連していると考えられています。

ヒトにおける発がん性の情報が得られていないことから、コカミドDEAの発がん性の分類に関しては、まだ分類過程段階であると考えられますが、現時点までの発がん性の情報を要約すると、

  • 動物試験による5日/週、104週間の長期経皮曝露による腎尿細管腺腫または/および癌の発生率の増加などを根拠にIARCでは「2B」(ヒトへの発がん性の証拠はないが、実験動物は十分な発がん性の証拠がある)に区分される
  • ヒトにおける発がん性の試験データなし
  • 30年以上のコカミドDEAの使用実績の中でコカミドDEAを配合した市販製品での発がん性の報告なし
  • 日常的にコカミドDEAを長期曝露している職業において職業性アレルギーの発症報告はあるが、発がん性の報告なし

これらの情報から、現時点ではコカミドDEAのヒトに対する発がん性の根拠はみあたりませんが、同時に否定できる明確な根拠もみあたらないことから、さらなる検証結果および因果関係の解明が必要であると考えられます。

∗∗∗

コカミドDEAは界面活性剤、安定化成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:界面活性剤 安定化成分

∗∗∗

文献一覧:

  1. Cosmetic Ingredient Review(1996)「Amended Final Report on the Safety Assessment of Cocamide DEA」Journal of the American College of Toxicology(15)(6),527-542.
  2. Cosmetic Ingredient Review(2013)「Safety Assessment of Diethanolamides as Used in Cosmetics」
    International Journal of Toxicology(32)(3),36S-58S.
  3. 農林水産省(2017)「国際がん研究機関(IARC)の概要とIARC発がん性分類について」, <http://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/risk_analysis/priority/hazard_chem/iarc.html> 2019年10月28日アクセス.
  4. International Agency for Research on Cancer(2019)「Agents Classified by the IARC Monographs, Volumes 1–123」, <https://monographs.iarc.fr/agents-classified-by-the-iarc/> 2019年10月28日アクセス.
  5. International Agency for Research on Cancer(2012)「Coconut Oil Diethanolamine Condensate」IARC Monographs on the Evaluation of Carcinogenic Risks to Humans(101),141-148.
  6. National Toxicology Program(2001)「NTP Technical report on the toxoicology and carcinogenesis studies of coconut oil acid diethanolamine condensate (CAS No. 68603-42-9) in F344/N rats and B6C3Fj mice」NTP TR 479.
  7. 藤本 武彦(2007)「脂肪酸アルカノールアミド」界面活性剤入門,70-75.
  8. 日本油化学協会(1990)「植物油脂の脂肪酸組成」油脂化学便覧 改訂3版,104-110.
  9. 矢作 和行, 他(1996)「香粧品における界面活性剤の応用」日本油化学会誌(45)(10),1133-1143.
  10. 広田 博(1970)「酸化エステル縮合型」化粧品のための油脂・界面活性剤,125-130.
  11. 矢野 弥, 他(1962)「界面活性剤-アルキロールアミド2成分系界面活性剤の起ホウ性」油化学(11)(5),243-246.

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