オレフィン(C14-16)スルホン酸Naとは…成分効果と毒性を解説

洗浄 起泡
オレフィン(C14-16)スルホン酸Na
[化粧品成分表示名称]
・オレフィン(C14-16)スルホン酸Na

[医薬部外品表示名称]
・テトラデセンスルホン酸ナトリウム液

化学構造的に炭素鎖長14-16範囲のα-オレフィン(∗1)をスルホン酸化したナトリウム塩の混合物であり、AOS(Alpha Olefin Sulfonate:α-オレフィンスルホン酸塩)に分類されるアニオン界面活性剤(陰イオン界面活性剤)です。

∗1 オレフィン(Olefin)は、アルケン(alkene)とも呼ばれ、炭素間(C-C間)に二重結合を1つもつ不飽和炭化水素化合物の一種であり、二重結合をもつ場合は化学反応性(不安定性)が高くなりますが、α-オレフィンは二重結合が鎖の最初の炭素上にあるため、特に化学反応性が高いと報告されています(文献1:1998)。

アニオン界面活性剤であるオレフィン(C14-16)スルホン酸Naの主な性質は、

分子量 cmc(mmol/L)[測定法:表面張力法](∗2) クラフト点(℃) 生分解率(%)
500(C₁₄)(25℃)
220(C₁₆)(25℃)
(C₁₄)
10(C₁₆)
98

このように報告されています(文献3:1990;文献6:1970)

∗2 cmcは、C₁₄で0.9g/100mL、C₁₆で0.4g/100mLと記載されていたものを、mmol/Lで算出して掲載しています。

cmc、クラフト点および生分解率についてそれぞれ順に解説しますが、まず界面活性剤の基礎知識であるミセル形成およびcmcについて解説します。

界面活性剤は親水基(水溶性)と疎水基(油溶性)をもっており、水中における界面活性剤の現象として親水基部分は水に溶け込みますが、疎水基部分は安定しようとするために水のないところ(溶液の表面や容器の壁面)に逃げようとします。

ただし、表面には限りがあり、さらに界面活性剤の濃度を増やすと疎水基の逃げ場がなくなり、疎水基は水との反発をなるべく減らすために、以下の図のように、

ミセルの基本構造

疎水基同士で集合し、親水基を水側に向けてミセル(micelle:会合体)を形成し始めます。

この疎水基の逃げ場がなくなってミセルが形成され始める濃度のことを臨界ミセル濃度(cmc:critical micelle concentration)と定義しており、また界面活性剤はミセルを形成することで界面活性剤が有する様々な機能を発揮します。

次に、クラフト点とは、個々の界面活性剤に固有の急激に溶解し始める温度(クラフト温度)であり、界面活性剤の溶解度がcmcと等しくなる温度のことです。

界面活性剤は、クラフト温度以下の低温度では水に溶解しにくく、その濃度が臨界ミセル濃度以上であってもミセルを形成せず、界面活性剤の乳化・分散・起泡などの機能を発揮することができませんが、クラフト点を超えると水への溶解性が急激に増し、かつその濃度がcmcに達するとミセルを形成し、機能を発揮します(文献4:2015)

最後に生分解率に関してですが、まず前提知識としてアニオン界面活性剤は洗浄剤として使用されることから、排水を通じて環境中に排泄されるため、開発・販売メーカーは環境に与える悪影響(毒性)についても考慮しておく必要があり、そういった点で生分解性が重要とされています。

生分解性とは、環境中の微生物・酵素の働きによって最終的に無害な物質まで分解される性質のことであり、一般的に60%以上のものは易分解性、40%以上は本質的に生分解可能な物質とみなされることから、60%以上であれば環境的に安全に使用できると考えられています。

オレフィン(C14-16)スルホン酸Naは生分解性の点で易分解性であり、環境への影響は少ないことが明らかにされています。

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、シャンプー製品、ボディソープ製品、洗顔パウダーなどに使用されています。

起泡・洗浄

起泡・洗浄に関しては、アニオン界面活性剤は洗浄力および起泡力を有しており、洗浄力におけるAOSの最適鎖長はC₁₆付近であり(文献7:1980)、また温度25℃におけるAOSの炭化水素鎖長による泡立ちは、濃度が低い場合はC₁₆ですが、濃度が高くなるとC₁₄となることが知られています(文献6:1970)

1969年にライオンによって報告されたC₁₅-C₁₈AOSの洗浄力および起泡力検証によると、

C₁₅-C₁₈AOSの洗浄力および起泡力を、純水中では最高の起泡性を示すことが知られているラウリル硫酸Naと比較検討した。

標準条件として濃度0.04%、温度25℃、水硬度54ppm(54mg/L)の軟水としたとき、洗浄力はラウリル硫酸NaよりC₁₅-C₁₈AOSのほうが良好であり、また起泡力においてもC₁₅-C₁₈AOSは優れており、とくに温度変化に安定で良好な泡立ちを示した。

このような検証結果が明らかにされており(文献5:1969)、オレフィン(C14-16)スルホン酸Naに優れた洗浄力および起泡力が認められています。

試験データは軟水のものですが、AOSは硬水中でも洗浄力があまり低下しないことが報告されています(文献7:1980)

同様にライオンによって公開されたAOSの泡高さおよび泡安定性の検証によると、

AOSの泡高さおよび泡安定性をラウレス硫酸Na(付加モル数2および3)と比較検討した。

各試験物質の0.5%水溶液を温度40℃にて10分まで評価したところ、以下のグラフのように、

AOSの泡高さおよび泡安定性

AOSはラウレス硫酸Naと比較して初期の泡立ちは同等だが、泡切れが早く、すすぎ性が良いことが示された。

このような検証結果が明らかにされており(文献8:-)、オレフィン(C14-16)スルホン酸Naに優れた泡高さおよび泡切れの早さが認められています。

実際の使用製品の種類や数および配合量は、海外の1996年および2013年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を表しており、またリンスオフ製品というのは、洗い流し製品(シャンプー、洗顔料、クレンジングなど)を指します。

オレフィン(C14-16)スルホン酸Naの配合製品数と配合量の調査結果(1996年および2013年)

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オレフィン(C14-16)スルホン酸Naの安全性(刺激性・アレルギー)について

オレフィン(C14-16)スルホン酸Naの現時点での安全性は、

  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
  • 40年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:2%濃度以下においてほとんどなし-軽度、8%濃度以上で刺激が増す可能性あり
  • 眼刺激性:1%濃度以下において非刺激-最小限、5%濃度以上において濃度依存的に刺激が増す
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし
  • 皮膚浸透性(健常な皮膚の場合):ほとんどなし
  • 皮膚浸透性(皮膚炎を有する場合):ほとんどなし-皮膚吸収された場合は適切に排泄される

このような結果となっており、洗浄製品のような短時間の非連続使用として皮膚から完全に洗い流すように設計された製品において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:1998)によると、

  • [動物試験] 動物を用いて20種類のAOSの一次刺激性をDraize法に基づいて評価したところ、結果は原料メーカーまたは研究ごとに異なることがわかった。たとえば10%オレフィン(C14-16)スルホン酸Naはある試験ではPII(Primary Irritation Index:皮膚一次刺激性指数)の0.0-8.0のスケール評価において6.2だったが、別のメーカーの原料では同じ濃度でわずか1.0であったことから、AOSの純度、生産方法、試験過程によって刺激性が異なる可能性があると報告された(Arthur D. Little Inc,1993)
  • [動物試験] ウサギの皮膚に0.5%または1.0%AOSを14日間の間に10回適用したところ、ウサギの皮膚に刺激性または皮膚疲労は生じなかった(Arthur D. Little Inc,1993)
  • [動物試験] ウサギの皮膚に1%オレフィン(C14-16)スルホン酸Na水溶液を28日間適用したところ、皮膚刺激性をはじめとする皮膚への影響はみられなかった(Arthur D. Little Inc,1993)
  • [ヒト試験] 被検者(人数不明)に1%および2%AOSを対象に24時間パッチテストを実施したところ、いずれの被検者も皮膚刺激を示さなかった(Arthur D. Little Inc,1993)
  • [ヒト試験] 900人の被検者に0.06%オレフィン(C14-16)スルホン酸Naを対象に感作性試験を実施したところ、感作性を誘発しなかった(Bay and Danneman,1985)
  • [ヒト試験] 88人の被検者に8%AOS水溶液を対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施したところ、いずれの被検者も接触性感作反応は示さなかった。激しい刺激のためにチャレンジパッチは4%濃度で行われた(Ter Haar,1983)

花王石鹸(現 花王)の安全性データ(文献2:1976)によると、

  • [ヒト試験] 28人の被検者の前腕内側に1.0g/100mL濃度の各種アニオン界面活性剤水溶液0.03mL(pH6.0)を24時間閉塞パッチ適用し、パッチ除去2および24時間後に皮膚刺激性を0.0-3.0のスケールで評価したところ、以下のグラフのように、
    アニオン界面活性剤の皮膚刺激性比較
    アニオン界面活性剤の刺激性は、全般として AS > SAS ≧ AOS ≧ LAS の順に弱くなる傾向を示し、ASおよびAOSはアルキル鎖長の変化より皮膚刺激強度も変化が大きく、ASではC₁₂(ラウリル硫酸Na)、AOSではC₁₄に極大がみられた

と記載されています。

試験データをみるかぎり、2%濃度以下において非刺激-軽度の皮膚刺激性と報告されているため、2%濃度以下において、非刺激-軽度の皮膚刺激性が起こる可能性がありますが、洗浄製品のような短時間の非連続使用として皮膚から完全に洗い流すように設計された製品においては一般的に皮膚刺激性はほとんどないと考えられます。

8%濃度以上においては、同じ成分であっても原料の違いによって中程度-重度の刺激性または軽度の刺激性が報告されており、原料メーカーの違いによる純度や生産工程の違いによって刺激性が異なる可能性が考えられると報告されています。

皮膚感作性に関しては、共通して皮膚感作性なしと報告されているため、皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:1998)によると、

  • [動物試験] ウサギの眼に対して1%AOSは眼刺激性ではなく、また5%AOSは軽度-重度の眼刺激性があり、角膜壊死を引き起こした(Arthur D. Little Inc,1993)
  • [動物試験] 5%濃度のC14-19AOSは軽度の眼刺激性である(Imori et al,1972)
  • [動物試験] ウサギの眼に対して10%-40%濃度のAOSは中程度-重度の眼刺激性があり、これは一般的な合意を得ている(Soap and Detergent Association,-)

と記載されています。

試験データはオレフィン(C14-16)スルホン酸Naに限定したものではなく、AOS(α‐オレフィンスルホン酸塩)としてのものが多いですが、試験データをみるかぎり、1%濃度以下において非刺激-最小限の眼刺激性であり、一方で5%濃度以上においては濃度依存的に眼刺激性が増す傾向が報告されているため、一般的に1%濃度以下において非刺激-最小限の眼刺激性であり、5%濃度以上においては濃度依存的に眼刺激性が増す可能性があると考えられます。

皮膚吸収および体内挙動(代謝、排泄)について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:1998)によると、

  • [動物試験] 健常な皮膚を有した3匹のラットの背部皮膚に0.2%AOS溶液0.5mLを24時間適用し、24時間後に皮膚吸収性を評価したところ、尿中に0.33%、胆汁中に0.08%および主要臓器に0.21%が検出され、合計0.6%用量が皮膚吸収されたと考えられた。また皮膚吸収は適用1.5時間でほとんど完了しており、尿と胆汁への排泄は適用後約3時間で最高濃度であった(Minegishi et al,1977)
  • [動物試験] 損傷した皮膚を有した3匹のラットの背部皮膚に0.2%AOS溶液0.5mLを30時間適用し、30時間後に皮膚吸収性を評価したところ、尿中に36.26%、胆汁中に1.83%および主要臓器に12.28%が検出され、合計50%用量が皮膚吸収されたと考えられた(Minegishi et al,1977)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、健常な皮膚において皮膚浸透性は1%未満と報告されているため、一般的に皮膚浸透性はほとんどないと考えられ、また皮膚吸収された用量も適切に排泄されると考えられます。

皮膚炎を有した皮膚においては、健常な皮膚より皮膚吸収性が顕著に高くなることが報告されていますが、洗浄製品は短時間の非連続使用として皮膚から完全に洗い流すように設計された製品であることから、皮膚炎を有した皮膚においても皮膚吸収性の影響はほとんどないと考えられ、また皮膚吸収された用量においては適切に排泄されると考えられます。

∗∗∗

オレフィン(C14-16)スルホン酸Naは界面活性剤にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:界面活性剤

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文献一覧:

  1. Cosmetic Ingredient Review(1998)「Final Report On the Safety Assessment of Sodium Alpha-Olefin Sulfonates」International Journal of Toxicology(17)(5),39-65.
  2. 芋川 玄爾, 他(1976)「代表的アニオン界面活性剤の各種タンパク質に対する変性作用」油化学(25)(1),24-30.
  3. 日本油化学協会(1990)「界面活性剤のエコロジー」油脂化学便覧 改訂3版,470-476.
  4. 野々村 美宗(2015)「界面活性剤の相挙動」化粧品 医薬部外品 医薬品のための界面化学,30-33.
  5. S. Tomiyama, et al(1969)「New household detergent based on AOS」Journal of the American Oil Chemists’ Society(46)(4),208-212.
  6. 大木 建司, 他(1970)「α-オレフィンスルホン酸ナトリウムの二三の物理化挙的性質」日本化學雜誌(91)(6),534-539.
  7. 山根 厳美(1980)「AOSの開発について」有機合成化学協会誌(38)(6),593-601.
  8. ライオンスペシャリティケミカルズ株式会社(-)「α-オレフィンスルホン酸塩」技術資料.

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