オレス-10とは…成分効果と毒性を解説

乳化
オレス-10
[化粧品成分表示名称]
・オレス-10

[医薬部外品表示名称]
・ポリオキシエチレンオレイルエーテル

化学構造的に炭素数18の高級アルコールであるオレイルアルコールに酸化エチレン(約10モル)をエーテル結合して得られるエーテルであり、酸化エチレン縮合型のポリオキシエチレンアルキルエーテルに分類される分子量709.0の非イオン界面活性剤(ノニオン界面活性剤)です(文献1:2012)

一般的に化粧品によく使用されているポリオキシエチレンオレイルエーテルは、

種類 平均酸化エチレン付加モル数 HLB(∗1)
オレス-2 2 親油性


親水性
オレス-5 5
オレス-10 10
オレス-50 50

∗1 詳しくは後述しますが、HLB(Hydrophilic-Lipophilic Balance:親水親油バランス)は、界面活性剤の水と油への親和性の程度を表す指標であり、HLB値は0から20までの値を取り、0に近いほど親油性が高く20に近いほど親水性が高くなります。同じ付加モル数であっても実際のHLB値は原料会社によって異なるため、ここでは付加モル数による親油・親水性の傾向のみを記載しています。

これらの種類があり、酸化エチレンの付加モル数が多いほど親水性が高くなるため(文献3:1990)、原料や製品の特性に合わせて最適なモル数のポリオキシエチレンオレイルエーテルが配合されています。

化粧品に配合される場合は、

これらの目的でリップ系メイクアップ化粧品、クリームファンデーション、洗顔料、スキンケア化粧品などに使用されています。

乳化

乳化に関しては、まず前提知識として乳化とエマルションについて解説します。

乳化とは、1つの液体にそれと溶け合わない別の液体を微細な粒子の状態に均一に分散させることをいいます(文献4:1990)

そして、乳化の結果として生成された分散系溶液をエマルションといい、基本的な化粧品用エマルションとして、以下の図のように、

エマルションの基本構造

水を外部相とし、その中に油が微細粒子状に分散している水中油滴型(O/W型:Oil in Water type)と、それとは逆に油を外部相とし、その中に水が微細粒子状に分散している油中水滴型(W/O型:Water in Oil type)があります(文献4:1990)

身近にあるO/W型エマルションとしては、牛乳、生クリーム、マヨネーズなどがあり、一方でW/O型エマルションとしてはバター、マーガリンなどがあります。

また、界面活性剤の水と油への親和性の程度を表す指標としてはHLB(Hydrophilic-Lipophilic Balance:親水親油バランス)が用いられることが多く、以下の図のように、

界面活性剤のHLB値とその作用、分散・溶解の挙動

HLB値は、0から20までの値を取り、0に近いほど親油性が高く20に近いほど親水性が高くなり、また界面活性剤が水中に分散するためには3以上、溶解するためには10以上が要求されることが知られており、HLB値だけで一義的に界面活性剤の性質が定まるわけではありませんが、HLB値によってその界面活性剤の性質や用途もある程度決定されます(文献5:2015)

オレス-10の特性は、

HLB 作用 分散・溶解性
12.4 , 14.5 O/W型乳化 , 洗浄 透明分散物 – 透明溶液

このように報告されており(文献6:-;文献7:-)、O/W型乳化剤(親水性界面活性剤)として使用されています。

実際の使用製品の種類や数および配合量は、海外の1996年および2010年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を表しており、またリンスオフ製品というのは、洗い流し製品(シャンプー、洗顔料、クレンジングなど)を指します。

オレス-10の配合製品数と配合量の調査結果(1996年および2010年)

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オレス-10の安全性(刺激性・アレルギー)について

オレス-10の現時点での安全性は、

  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
  • 1960年代からの使用実績
  • 皮膚一次刺激性:ほとんどなし
  • 皮膚累積刺激性:動物試験において10%濃度以上の3日間塗布で過度の角化、10日後の観察で病変まで悪化
  • 眼刺激性:ほとんどなし-軽度あるいはごくまれに角膜損傷の可能性あり
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、眼に接触する製品を除いて一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

眼への接触を除いては安全性上の問題の報告はありませんが、動物試験において1%濃度以上の3日間の連続使用で紅斑および肥厚、10日後には過度の角化あるいは病変が観察されており、ヒトでの累積刺激性試験データが必要であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性について

日光ケミカルズの安全性データ(文献2:2016)によると、

  • [ヒト試験] 200人の被検者に100%オレス-10を72時間閉塞パッチ適用し、パッチ除去後に皮膚刺激性を評価したところ、いずれの被検者も皮膚刺激を示さなかった
  • [動物試験] ウサギに10%,5%および1%オレス-10を含むワセリンおよび5%オレス-10を含む親水軟膏を1日1回3日間塗布し、3日後に皮膚反応を評価したところ、紅斑および肥厚が観察され、10日後ではいずれも過度の角化あるいは病変にまで悪化した

と記載されています。

試験データをみるかぎり、ヒトにおいては100%濃度で皮膚一次刺激性なしと報告されているため、皮膚一次刺激性はほとんどないと考えられます。

皮膚刺激性に対する安全性上の問題の報告はありませんが、動物試験においては1%濃度以上の3日間の連続使用で紅斑および肥厚、10日後には過度の角化あるいは病変にまで悪化と報告されているため、ヒトにおける連続使用での累積刺激性試験データが必要であると考えられます。

眼刺激性について

日光ケミカルズの安全性データ(文献2:2016)によると、

  • [動物試験] ウサギの片眼に100%オレス-10を適用し、Draize法に基づいて眼刺激性を評価したところ、洗眼の有無にかかわらず軽度の眼刺激に分類された

と記載されています。

試験データをみるかぎり、軽度の眼刺激が報告されているため、眼刺激性は非刺激-軽度の眼刺激を引き起こす可能性があると考えられます。

ただし、2004年の東京都庁の報道発表によると、

眼周辺部に使⽤するメーク落としによる眼に対する危害の相談が、都内の消費⽣活センターに2000年9月-2004年3月までに6件(5事業者、5製品)寄せられた。

事業者からの事情聴取の結果、この5製品中4製品に共通してオレス系界面活性剤が配合されており、詳しくは以下表である。

危害が発生した商品 A B C D E
配合界面活性剤 オレス-2 オレス-10 オレス-5 オレス以外 オレス-10
販売本数 597,659本 119,270本 11,743本 116,245本 501,631本
苦情件数 事業者受付分 27件
(眼や唇)
4件
(眼)
3件
(眼)
8件
(眼や唇)
95件
(眼)
センター受付分 うち2件 別1件 うち1件 別1件 うち1件

危害状況は眼に入ることで時間の経過とともに眼の痛み、かすみなどの症状が現れ、視力に影響を及ぼした事例もあり、眼科医の診断では角膜損傷であった。

都の取り組みとして、オレス系界面活性剤が配合されていた4製品中3製品は、すでに販売中止措置がなされており、残りの1製品は都の指導により自主回収にいたっている。

業界への要望として、都は日本化粧品工業連合会に対して「眼周辺部に使⽤するメーク落としに界⾯活性剤を使⽤する際の⽅針を策定し、各会員に遵守するよう周知すること」を要望し、⽇本化粧品⼯業連合会からは「オレス系界⾯活性剤については、眼に対する安全性が確認できないときには、眼周辺部に使⽤するメーク落としに配合しない旨の会員宛要請⽂書を作成配布する予定」との回答を得ている。

なお、これらの界面活性剤は化粧品への配合が認められており、眼周辺部に使⽤するメーク落とし以外で、これらの界⾯活性剤が配合されている化粧品において、安全性上の問題が発⽣したとの報告は受けていません。

このような調査および対策が発表されており(文献8:2013)、現在ではメーク落としには使用されていません。

眼の接触を除いては安全性上の問題はなく、現在ほとんど使用されていないものの、海外製品をはじめとしてまれに配合されている製品もあるため、目元に接触する可能性が考えられる製品においては注意が必要です。

皮膚感作性(アレルギー性)について

日光ケミカルズの安全性データ(文献2:2016)によると、

  • [ヒト試験] 200人の被検者に100%オレス-10を72時間閉塞パッチ適用し、7日間の休息期間を設けた後に再び72時間パッチ適用し、パッチ除去後に皮膚反応を評価したところ、皮膚異常はみられなかった

と記載されています。

試験データをみるかぎり、皮膚感作なしと報告されているため、皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

∗∗∗

オレス-10は界面活性剤にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:界面活性剤

∗∗∗

文献一覧:

  1. Cosmetic Ingredient Review(2012)「Safety Assessment of Alkyl PEG Ethers as Used in Cosmetics」International Journal of Toxicology(31)(5),169S-244S.
  2. 日光ケミカルズ株式会社(2016)「NIKKOL BO-10V」安全データシート.
  3. 田村 健夫, 他(1990)「高級アルコール酸化エチレン縮合物」香粧品科学 理論と実際 第4版,143-144.
  4. 田村 健夫, 他(1990)「乳化作用」香粧品科学 理論と実際 第4版,270-273.
  5. 野々村 美宗(2015)「親水性・親油性バランス」化粧品 医薬部外品 医薬品のための界面化学,35-39.
  6. 日光ケミカルズ株式会社(-)「NIKKOL BO-10V」技術資料.
  7. CRODA(-)「SP BRIJ O10 MBAL」技術資料.
  8. “東京くらしWEB”(2013)「メーク落としで眼にトラブル!~眼周辺部に使⽤するメーク落としによる眼に対する危害防⽌に向けて~」, <https://www.shouhiseikatu.metro.tokyo.jp/anzen/test/houkoku/makeup_remover.html> 2019年11月23日アクセス.

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