オレイン酸ポリグリセリル-10とは…成分効果と毒性を解説

乳化 効果持続
オレイン酸ポリグリセリル-10
[化粧品成分表示名称]
・オレイン酸ポリグリセリル-10

[医薬部外品表示名称]
・モノオレイン酸ポリグリセリル

化学構造的に炭素数18の高級脂肪酸であるオレイン酸を疎水基(親油基)とし、多価アルコール(∗1)の一種であり、12個の水酸基をもつポリグリセリン-10(∗2)を親水基としたモノエステル(∗3)であり、多価アルコールエステル型のポリグリセリン脂肪酸エステルに分類される分子量1203.41の非イオン界面活性剤(ノニオン界面活性剤)です(文献2:-)

∗1 多価アルコールとは、非常に高い吸湿性と保水性をもっているため化粧品に最も汎用されている保湿剤です。名称に「アルコール」がついているので勘違いしやすいですが、一般的なアルコール(エタノール:エチルアルコール)は一価アルコールであり、多価アルコールと一価アルコールは別の物質です。二価以上を多価アルコールといい、グリセリンは三価アルコールです。

∗2 複数の分子結合がまとまって機能する複合体を多量体(重合体)といいますが、ポリグリセリン-10とは10個のグリセリンがまとまって10量体(平均重合度10)として機能する重合体です。またギリシャ語で「10」を「デカ(deca)」といい、デカグリセリンとも呼ばれます。

∗3 モノエステルとは分子内に1基のエステル結合をもつエステルであり、通常はギリシャ語で「1」を意味する「モノ(mono)」が省略され「エステル結合」や「エステル」とだけ記載されます。2基のエステル結合の場合はギリシャ語で「2」を意味する「ジ(di)」をつけてジエステルと記載されます。

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、スキンケア化粧品、ボディ&ハンドケア製品、洗顔料、メイクアップ化粧品、シート&マスク製品、日焼け止め製品、ヘアスタイリング製品、ネイル製品などに使用されています。

乳化

乳化に関しては、まず前提知識として乳化とエマルションについて解説します。

乳化とは、1つの液体にそれと溶け合わない別の液体を微細な粒子の状態に均一に分散させることをいいます(文献3:1990)

そして、乳化の結果として生成された分散系溶液をエマルションといい、基本的な化粧品用エマルションとして、以下の図のように、

エマルションの基本構造

水を外部相とし、その中に油が微細粒子状に分散している水中油滴型(O/W型:Oil in Water type)と、それとは逆に油を外部相とし、その中に水が微細粒子状に分散している油中水滴型(W/O型:Water in Oil type)があります(文献3:1990)

身近にあるO/W型エマルションとしては、牛乳、生クリーム、マヨネーズなどがあり、一方でW/O型エマルションとしてはバター、マーガリンなどがあります。

また、界面活性剤の水と油への親和性の程度を表す指標としてはHLB(Hydrophilic-Lipophilic Balance:親水親油バランス)が用いられることが多く、以下の図のように、

界面活性剤のHLB値とその作用、分散・溶解の挙動

HLB値は、0から20までの値を取り、0に近いほど親油性が高く20に近いほど親水性が高くなり、また界面活性剤が水中に分散するためには3以上、溶解するためには10以上が要求されることが知られており、HLB値によってその界面活性剤の性質や用途もある程度決定されます(文献4:2015)

オレイン酸ポリグリセリル-10の特性は、

HLB 作用 分散・溶解性
12.0 , 12.9 , 15.0 , 15.9 O/W型乳化 , 可溶化 透明分散物 – 透明溶液

このように報告されており(文献6:-;文献7:-;文献8:-;文献9:-)、O/W型乳化剤(親水性界面活性剤)として、主に乳化系スキンケア化粧品、ボディケア製品、ハンドケア製品、洗顔料、シート&マスク製品などに使用されています。

一般的にポリグリセリン脂肪酸エステルは、食品用乳化剤として汎用されていることから、安全性の高さが認められており、疎水基である脂肪酸の種類や親水基であるグリセリンの重合度を変えることで様々なHLBのものが利用できることから、化粧品用乳化剤としても汎用されています。

また、O/W型乳化能およびその安定性において、中性域では同HLBのショ糖脂肪酸エステルと比較すると同等もしくは若干劣るものの、酸性が強くなるにつれてポリグリセリン脂肪酸エステルのほうが優れ、弱酸性域(pH3.5-5付近)ではポリグリセリン脂肪酸エステルに特異的であることが知られています(文献5:1986)

表皮基底層への吸着および有効成分の徐放による効果持続作用

表皮基底層への吸着および有効成分の徐放による効果持続作用に関しては、まず前提知識として表皮基底層の役割および徐放について解説します。

まず以下の肌図をみてほしいのですが、

皮膚の構造と皮膚の主要成分

皮膚は大きく表皮と真皮に分かれており、表皮は主に紫外線や細菌・アレルゲン・ウィルスなどの外的刺激から皮膚を守る働きと水分を保持する働きを担い、真皮はプロテオグリカンヒアルロン酸およびコンドロイチン硫酸含む)・コラーゲン・エラスチンで構成された細胞外マトリックスを形成し、水分保持と同時に皮膚のハリ・弾力性に深く関与しています。

そして、表皮最下部の基底膜(基底層)は、表皮の土台および構造の異なる表皮-真皮間のコミュニケーション・コントロールを担う役割として、

  • 表皮-真皮間においてエネルギーや栄養を輸送
  • 細胞の分化形質の発現・維持
  • 表皮細胞による酵素産生のコントロール
  • 表皮-真皮間における各種サイトカイン類の動きをコントロール

これらの働きが知られており(文献11:1996;文献12:1996;文献13:1993;文献14:1998;文献15:1997;文献16:1997;文献17:1994)、肌を正常に保つために重要な働きを担っています。

また、表皮基底層にはケラチノサイト(表皮細胞)のほかにメラニンを生成するメラノサイトが存在していますが、表皮基底層のケラチノサイトがメラニン生成に関与していることも報告されています(文献10:2016)

このような背景から、表皮基底層付近で有効成分を持続的に作用させることが重要であると考えられています。

2016年にポーラ化成工業によって報告された技術情報によると、オレイン酸ポリグリセリル-10およびショ糖脂肪酸エステルからなる徐放担体に有効成分を内包させることで、ミセルなどの徐放担体が表皮基底層のケラチノサイトに吸着し、有効成分を徐々に放出することで表皮中に持続的に有効成分の効果を発揮させることが明らかにされています(文献10:2016)

担体とは何かを担う物質という意味ですが、ここでは有効成分を表皮基底層に輸送および吸着するための担い手を意味し、オレイン酸ポリグリセリル-10およびショ糖脂肪酸エステルはミセル、ベクシルまたは液晶として有効成分を内包することで表皮基底層まで浸透し、表皮基底層に吸着します。

次にミセルについて解説しておきます。

界面活性剤は親水基(水溶性)と疎水基(油溶性)をもっており、水中における界面活性剤の現象として親水基部分は水に溶け込みますが、疎水基部分は安定しようとするために水のないところ(溶液の表面や容器の壁面)に逃げようとします。

ただし、表面には限りがあり、さらに界面活性剤の濃度を増やすと疎水基の逃げ場がなくなり、疎水基は水との反発をなるべく減らすために、以下の図のように、

ミセルの基本構造

親水基を水側に向け、疎水基同士で集合し、形成されたものをミセル(micelle:会合体)といい、このミセルに有効成分が内包または付着することで表皮基底層まで浸透するということです。

ただし、この技術はポーラ化成工業の独自技術であるため、ポーラおよびその関連製品のみに用いられていると考えられ、ポーラ化成工業の製品においてオレイン酸ポリグリセリル-10、ショ糖脂肪酸エステルおよび有効成分(美白成分、抗老化成分など)が組み合わせて配合されている場合はこの技術が用いられていると考えられます。

実際の使用製品の種類や数および配合量は、海外の2015年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を表しており、またリンスオフ製品というのは、洗い流し製品(シャンプー、洗顔料、クレンジングなど)を指します。

オレイン酸ポリグリセリル-10の配合製品数と配合量の調査結果(2015年)

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オレイン酸ポリグリセリル-10の安全性(刺激性・アレルギー)について

オレイン酸ポリグリセリル-10の現時点での安全性は、

  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
  • 1980年代からの使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:詳細不明
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし(データなし)

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2016)によると、

  • [ヒト試験] 35人の被検者に5%オレイン酸ポリグリセリル-10水溶液0.03gを対象に24時間閉塞パッチ試験を実施し、パッチ除去1および24時間後に皮膚刺激性を評価したところ、いずれの被検者も皮膚刺激反応は観察されなかった(Japan Hair Science Association,2001)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、皮膚刺激性なしと報告されているため、皮膚刺激性はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

試験結果や安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細は不明です。

皮膚感作性(アレルギー性)について

医薬部外品原料規格2006に収載されており、食品添加物および化粧品など1980年代からの使用実績がある中で重大な皮膚感作の報告がみあたらないため、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられますが、詳細な安全性試験データがみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。

∗∗∗

オレイン酸ポリグリセリル-10は界面活性剤にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:界面活性剤

∗∗∗

文献一覧:

  1. Cosmetic Ingredient Review(2016)「Safety Assessment of Polyglyceryl Fatty Acid Esters as Used in Cosmetics」Final Report.
  2. “The Good Scents Company”(-)「Polyglyceryl-10 Oleate」, <http://www.thegoodscentscompany.com/data/rw1366941.html> 2019年11月1日アクセス.
  3. 田村 健夫, 他(1990)「乳化作用」香粧品科学 理論と実際 第4版,270-273.
  4. 野々村 美宗(2015)「親水性・親油性バランス」化粧品 医薬部外品 医薬品のための界面化学,35-39.
  5. 松下 和男, 他(1986)「ポリグリセリン脂肪酸エステルの現状」油化学(36)(2),71-79.
  6. 日光ケミカルズ株式会社(-)「NIKKOL DECAGLYN 1-OV」技術資料.
  7. 阪本薬品工業株式会社(-)「SYグリスター MO-7S」技術資料.
  8. 太陽化学株式会社(-)「サンソフト Q-17S-C」技術資料.
  9. 太陽化学株式会社(-)「サンソフト Q-17Y-C」技術資料.
  10. ポーラ化成工業株式会社(2016)「徐放担体」特開2016-088902.
  11. N Boudreau, et al(1996)「Suppression of apoptosis by basement membrane requires three-dimensional tissue organization and withdrawal from the cell cycle.」Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America(93)(8),3509–3513.
  12. A. De Arcangelis, et al(1996)「Inhibition of laminin alpha 1-chain expression leads to alteration of basement membrane assembly and cell differentiation.」The Journal of Cell Biology(133)(2),417-430.
  13. F. M. Watt, et al(1993)「Regulation of keratinocyte terminal differentiation by integrin-extracellular matrix interactions.」Journal of Cell Science(106)(Pt1),175-182.
  14. D. Breitkreutz, et al(1998)「Epidermal differentiation and basement membrane formation by HaCaT cells in surface transplants.」European Journal of Cell Biology(75)(3),273-286.
  15. B. D. Sudbeck, et al(1997)「Induction and repression of collagenase-1 by keratinocytes is controlled by distinct components of different extracellular matrix compartments.」The Journal of Biological Chemistry(272)(35),22103-22110.
  16. B. K. Pilcher, et al(1997)「The activity of collagenase-1 is required for keratinocyte migration on a type I collagen matrix.」The Journal of Cell Biology(137)(6),1445-1457.
  17. D. Aviezer, et al(1994)「Perlecan, basal lamina proteoglycan, promotes basic fibroblast growth factor-receptor binding, mitogenesis, and angiogenesis.」Cell(79)(6),1005-1013.

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