イソステアリン酸PEG-60グリセリルとは…成分効果と毒性を解説

乳化
イソステアリン酸PEG-60グリセリル
[化粧品成分表示名称]
・イソステアリン酸PEG-60グリセリル

[医薬部外品表示名称]
・イソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル

化学構造的に非イオン界面活性剤であるイソステアリン酸グリセリルに、酸化エチレン(約60モル)をエステル結合して得られるモノエステル(∗1)であり、酸化エチレン縮合型のポリオキシエチレン多価アルコール脂肪酸エステルに分類される非イオン界面活性剤(ノニオン界面活性剤)です。

∗1 モノエステルとは分子内に1基のエステル結合をもつエステルであり、通常はギリシャ語で「1」を意味する「モノ(mono)」が省略され「エステル結合」や「エステル」とだけ記載されます。2基のエステル結合の場合はギリシャ語で「2」を意味する「ジ(di)」をつけてジエステルと記載されます。

一般的に化粧品によく使用されているイソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリルは、

種類 平均酸化エチレン付加モル数 HLB(∗2)
イソステアリン酸PEG-8グリセリル 8 親油性


親水性
イソステアリン酸PEG-20グリセリル 20
イソステアリン酸PEG-60グリセリル 60

∗2 詳しくは後述しますが、HLB(Hydrophilic-Lipophilic Balance:親水親油バランス)は、界面活性剤の水と油への親和性の程度を表す指標であり、HLB値は0から20までの値を取り、0に近いほど親油性が高く20に近いほど親水性が高くなります。同じ付加モル数であっても実際のHLB値は原料会社によって異なるため、ここでは付加モル数による親油・親水性の傾向のみを記載しています。

これらの種類があり、酸化エチレンの付加モル数が多いほど親水性が高くなるため(文献1:1990)、原料や製品の特性に合わせて最適なモル数のイソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリルが配合されています。

化粧品に配合される場合は、

これらの目的でスキンケア化粧品、ボディ&ハンドケア製品、洗顔料、メイクアップ化粧品、シート&マスク製品などに使用されています。

乳化

乳化に関しては、まず前提知識として乳化とエマルションについて解説します。

乳化とは、1つの液体にそれと溶け合わない別の液体を微細な粒子の状態に均一に分散させることをいいます(文献2:1990)

そして、乳化の結果として生成された分散系溶液をエマルションといい、基本的な化粧品用エマルションとして、以下の図のように、

エマルションの基本構造

水を外部相とし、その中に油が微細粒子状に分散している水中油滴型(O/W型:Oil in Water type)と、それとは逆に油を外部相とし、その中に水が微細粒子状に分散している油中水滴型(W/O型:Water in Oil type)があります(文献2:1990)

身近にあるO/W型エマルションとしては、牛乳、生クリーム、マヨネーズなどがあり、一方でW/O型エマルションとしてはバター、マーガリンなどがあります。

また、界面活性剤の水と油への親和性の程度を表す指標としてはHLB(Hydrophilic-Lipophilic Balance:親水親油バランス)が用いられることが多く、以下の図のように、

界面活性剤のHLB値とその作用、分散・溶解の挙動

HLB値は、0から20までの値を取り、0に近いほど親油性が高く20に近いほど親水性が高くなり、また界面活性剤が水中に分散するためには3以上、溶解するためには10以上が要求されることが知られており、HLB値だけで一義的に界面活性剤の性質が定まるわけではありませんが、HLB値によってその界面活性剤の性質や用途もある程度決定されます(文献3:2015)

イソステアリン酸PEG-60グリセリルの特性は、

HLB 作用 分散・溶解性
16.0 O/W型乳化 , 可溶化 透明溶液

このように報告されており(文献5:-)、O/W型乳化剤(親水性界面活性剤)として主に乳液、フェイスクリーム、アイクリーム、洗顔フォーム、ハンドクリーム、クリームファンデーション、リキッドアイライナー、マスクなどに使用されています。

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イソステアリン酸PEG-60グリセリルの安全性(刺激性・アレルギー)について

イソステアリン酸PEG-60グリセリルの現時点での安全性は、

  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
  • 30年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし(データなし)
  • 眼刺激性:詳細不明
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし(データなし)

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について

イソステアリン酸PEG-8グリセリルは皮膚刺激性がほとんどなく(文献4:2011)、イソステアリン酸PEG-60グリセリルは化学構造的にこれと類似しており、かつ一般的に酸化エチレンの付加モル数が増えるほど皮膚刺激性は低くなることが知られており、重大な皮膚刺激性および皮膚感作の報告がみあたらないため、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられますが、詳細な安全性試験データがみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。

眼刺激性について

試験結果や安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細は不明です。

∗∗∗

イソステアリン酸PEG-60グリセリルは界面活性剤にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:界面活性剤

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文献一覧:

  1. 田村 健夫, 他(1990)「高級アルコール酸化エチレン縮合物」香粧品科学 理論と実際 第4版,143-144.
  2. 田村 健夫, 他(1990)「乳化作用」香粧品科学 理論と実際 第4版,270-273.
  3. 野々村 美宗(2015)「親水性・親油性バランス」化粧品 医薬部外品 医薬品のための界面化学,35-39.
  4. ミヨシ油脂株式会社(2011)「Mファインオイルシリーズ」技術資料.
  5. 日本エマルジョン株式会社(-)「EMALEX GWIS-160」技術資料.

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