トコフェロールとは…成分効果と毒性を解説

酸化防止 抗酸化成分
トコフェロール
[化粧品成分表示名称]
・トコフェロール

[医薬部外品表示名称]
・dl-α-トコフェロール、d-δ-トコフェロール、天然ビタミンE

[慣用名]
・ビタミンE

栄養素ビタミンEとしてよく知られている油溶性(脂溶性)の有機化合物であり、トコールのメチル化誘導体です。

ビタミンEが発見された経緯は、1922年にそれまでわかっていたビタミンを混合した合成飼料でラットを飼育していたところ、そのラットが不妊症になることが明らかとなり、それにレタスを加えることで生殖能力が回復した事実から(文献2:1922)、その有効成分が抽出され、新しいビタミンであるビタミンEとして取り扱われるようになりました(文献3:1924)

ビタミンEは、別名としてトコフェロール(tocopherol)と呼ばれますが、トコフェロール(tocopherol)は、1936年にコムギ胚芽油などから最も活性のあるビタミンEを単離し、α-トコフェロールと名付けられ(文献4:1936)、ビタミンEが発見された経緯から、tocos(出産)、phero(力を与える)、ol(アルコールを意味する接尾語)という意味が由来となっています。

トコフェロールは、化学構造的にトコールのメチル化誘導体であり、メチル基の位置によって以下の表のように、

種類 活性比率(%)
天然(d体) 合成(dl体)
α-トコフェロール 100(基準値) 60-65
β-トコフェロール 25-50
γ-トコフェロール 5-10
δ-トコフェロール 1>

種類としてはα,β,γおよびδの4つの異性体が存在しており(文献5:1999)、それぞれ天然(d体)と合成(dl体)がありますが、化粧品においては主に合成のα-トコフェロールであるdl-α-トコフェロールが汎用されています。

自然界においては動物油脂および植物油脂に存在しますが、植物油を例に挙げると、以下の表のように、

植物油 含有量(mg/100g)
α β γ δ
ハイオレイックヒマワリ油 38.7 0.8 2.0 0.4
綿実油 28.3 0.3 27.1 0.4
ハイオレイックサフラワー油 27.1 0.6 2.3 0.3
米ぬか油 25.5 1.5 3.4 0.4
とうもろこし油 17.1 0.3 70.3 3.4
なたね油 15.2 0.3 31.8 1.0
大豆油 10.4 2.0 80.9 20.8
パーム油 8.6 0.4 1.3 0.2
オリーブ油 7.4 0.2 1.2 0.1
えごま油 2.4 0.6 58.6 4.6
アマニ油 0.5 0 39.2 0.6
ゴマ油 0.4 Tr(微量) 43.7 0.7

α-トコフェロールが圧倒的に多いことが明らかになっています(文献6:2017)

生体内において、トコフェロールは活性酸素やフリーラジカルによる生体膜の脂質過酸化反応を阻害する中心的な役割を示し、抗酸化ネットワークの中核を担っていると考えられています(文献7:1998)

このトコフェロールの抗酸化作用のメカニズムは、脂質過酸化を防ぐために自分自身が代わりに酸化し、酸化したトコフェロールは生体内でアスコルビン酸(ビタミンC)、グルタチオンおよびシステインのような水溶性抗酸化物質により還元され、再び抗酸化作用を示すというものであり、トコフェロールと水溶性の抗酸化剤は相乗的に抗酸化作用を発揮します(文献8:1998)

また、トコフェロールの投与により、皮膚血流量の増加による血行促進作用も認められています(文献9:1966;文献10:1994)

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、スキンケア化粧品、ハンド&ボディ&フットケア製品、メイクアップ化粧品、日焼け止め製品、洗顔料&洗顔石鹸、洗浄製品、シート&マスク製品、ネイル製品など様々な製品に使用されています(文献1:2002)

製品自体の酸化防止

製品自体の酸化防止に関しては、トコフェロールは天然に存在する抗酸化物質であり、製品中の酸化しやすい成分の代わりにトコフェロールが酸化されることにより、製品そのものの酸化を防止するというメカニズムによる酸化防止目的で、一般的には0.03%-0.05%濃度範囲で配合されます(文献11:1990)

SODおよび還元型グルタチオン増強による抗酸化作用

SODおよび還元型グルタチオン増強による抗酸化作用に関しては、まず前提知識として生体内における活性酸素の構造とSODおよび還元型グルタチオンについて解説します。

生体内における活性酸素は以下のように、

酸素(O₂) → スーパーオキシド(O₂⁻) → 過酸化水素(H₂O₂) → ヒドロキシラジカル(・OH)

最初に酸素と反応(電子を取り込む)して、まず活性酸素のスーパーオキシドを発生させ、発生したスーパーオキシドは活性酸素分解酵素であるSOD(スーパーオキシドディスムターゼ)によって水に分解されますが、その過程で活性酸素である過酸化水素が発生します。

発生した過酸化水素は、過酸化水素分解酵素であるカタラーゼによって、また抗酸化物質であるグルタチオンを用いてグルタチオンペルオキシターゼによって水に分解されますが、それでも処理できない場合はヒドロキシラジカルを発生させます。

グルタチオンは、細胞内で酸化型と還元型の2種類の構造で存在し、酸化還元酵素であるグルタチオンレダクターゼにより酸化型のグルタチオンは還元型に変換され、細胞内の還元能力が保持されています。

このような背景から、SODおよび還元型グルタチオンの活性を増強することは、皮膚の酸化防止にとって重要であると考えられます。

1998年にカリフォルニア大学分子細胞生物学科によって報告されたトコフェロールの皮膚における抗酸化作用検証によると、

マウスにd-α-トコフェロール5mg/c㎡を塗布すると、真皮中のSODの活性が30%増加し、また表皮中の総グルタチオンおよび還元型グルタチオンが50%増加した。

このような検証結果が明らかにされており(文献12:1998)、トコフェロールにSODおよび還元型グルタチオン増強による抗酸化作用が認められています。

ただし、マウス皮膚での検証結果のみであるため、ヒト皮膚で効果は不明です。

紫外線照射におけるSODおよびグルタチオンペルオキシダーゼ減少抑制および過酸化脂質増加抑制による抗酸化作用

紫外線照射におけるSODおよびグルタチオンペルオキシダーゼ減少抑制および過酸化脂質増加抑制による抗酸化作用に関しては、まず前提知識として生体内における活性酸素の構造、SOD、グルタチオンペルオキシダーゼおよび過酸化脂質について解説します。

活性酸素の構造はSODおよび還元型グルタチオン活性増強による抗酸化作用のパートで解説しましたが、生体内における活性酸素は以下のように、

酸素(O₂) → スーパーオキシド(O₂⁻) → 過酸化水素(H₂O₂) → ヒドロキシラジカル(・OH)

最初に酸素と反応(電子を取り込む)して、まず活性酸素のスーパーオキシドを発生させ、発生したスーパーオキシドは活性酸素分解酵素であるSOD(スーパーオキシドディスムターゼ)によって水に分解されますが、その過程で活性酸素である過酸化水素が発生します。

発生した過酸化水素は、過酸化水素分解酵素であるカタラーゼによって、また抗酸化物質であるグルタチオンを用いてグルタチオンペルオキシターゼによって水に分解されますが、それでも処理できない場合はヒドロキシラジカルを発生させます。

健常な皮膚状態においては、発生した活性酸素は活性分解酵素によって適切に処理されますが、皮膚が紫外線照射をうけると、活性酸素が活性化するとともに皮膚中の主たる抗酸化酵素であるSOD、カタラーゼ、グルタチオンレダクターゼおよびグルタチオンペルオキシダーゼの酵素活性が減少することが明らかになっています(文献12:1998)

このような背景から、紫外線照射をうけた場合に皮膚の酵素活性減少を抑制することが重要であると考えられます。

次に過酸化脂質については、以下の細胞膜の構造図をみてもらうとわかりやすいと思うのですが、

細胞膜の構造図

皮脂や細胞間脂質、細胞膜を構成しているリン脂質などの酸化が進んだ脂質のことで、皮膚に過酸化脂質が増えると様々な物質の変性・損傷が起こり、肌はくすみ、ハリはなくなり、色素沈着は濃くなり、老化が促進されます(文献13:2002)

皮膚において過酸化脂質が生成される主な原因のひとつが紫外線であり、紫外線により発生した活性酸素のひとつである一重項酸素が脂質と結合することで過酸化脂質の生成が促進されます(文献13:2002)

このような背景から、紫外線照射をうけた場合に過酸化脂質を抑制することが重要であると考えられます。

1998年にカリフォルニア大学分子細胞生物学科によって報告されたトコフェロールの皮膚における抗酸化作用検証によると、

紫外線照射により、皮膚中の主たる抗酸化酵素であるSOD、カタラーゼ、グルタチオンレダクターゼおよびグルタチオンペルオキシダーゼの酵素活性が減少するが、紫外線照射24時間前にd-α-トコフェロールを塗布すると、皮膚中のSODおよびグルタチオンペルオキシダーゼの酵素活性の減少が抑制された。

また紫外線照射による表皮の過酸化脂質の増加を抑制した。

このような検証結果が明らかにされており(文献12:1998)、トコフェロールに紫外線照射におけるSODおよびグルタチオンペルオキシダーゼ減少抑制および過酸化脂質増加抑制による抗酸化作用が認められています。

ただし、マウス皮膚での検証結果のみであるため、ヒト皮膚で効果は不明です。

dl-α-トコフェロールは医薬部外品(薬用化粧品)への配合において配合上限があり、配合範囲は以下になります(∗1)

∗1 d-δ-トコフェロールには配合上限がありません。

種類 配合量 その他
薬用石けん・シャンプー・リンス等、除毛剤 すべてのdl-α-トコフェロール誘導体をdl-α-トコフェロールに換算してdl-α-トコフェロールとして合計
育毛剤 1.0
その他の薬用化粧品、腋臭防止剤、忌避剤 1.0
薬用口唇類 1.0
薬用歯みがき類 1.0
浴用剤 1.0

実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の1998-2014年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を表しており、またリンスオフ製品というのは、洗い流し製品(シャンプー、洗顔料、クレンジングなど)を指します。

トコフェロールの配合製品数と配合量の調査(1998-1999年)

トコフェロールの配合製品数と配合量の比較調査

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トコフェロールの安全性(刺激性・アレルギー)について

トコフェロールの現時点での安全性は、

  • 医療上汎用性があり有効性および安全性の基準を満たした成分が収載される日本薬局方に収載
  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
  • 10年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:最小限
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし
  • 皮膚感作性(皮膚炎を有する場合):ほとんどなし-ごくまれに感作性が起こる可能性あり

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2002)によると、

  • [ヒト試験] 55人の被検者の前腕の無傷の皮膚に1%トコフェロールを含むパラフィン0.05mLを24時間パッチ適用し、0-5のスケールでスコア2(明確な紅斑)を上回る陽性反応を有する被検者の数の割合を測定したところ、陽性率は55人中0人であり、トコフェロールは主な皮膚刺激性ではなかった(CTFA,1972)
  • [ヒト試験] 2%dl-トコフェロールを含む小麦胚芽、12%ビタミンEを含む小麦胚芽、32%混合トコフェロールを含む小麦胚芽および植物油の3つの化粧品配合物0.05mLをそれぞれ6人の被検者の背中に閉塞パッチ下で21日間適用し、各パッチは24時間ごとに貼り替え、貼り替えの間に毎日採点を行ったところ、2%、12%、32%のトコフェロールを含む製剤の平均累積刺激スコア(最大84)はそれぞれ3.9、7.0、0.0であった
  • [ヒト試験] 113人の被検者(男性35人、女性78人)に5%トコフェロールを含むクリーム0.2mLを対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を半閉塞パッチにて実施したところ、5%トコフェロールを含むクリームは刺激剤または感作剤ではなかった(Consumer Product Testing Co,1997)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、皮膚刺激性および皮膚感作性なしと報告されているため、皮膚刺激および皮膚感作が起こる可能性はほとんどないと考えられます。

– 皮膚炎を有する場合 –

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2002)によると、

  • [ヒト試験] 湿疹性皮膚炎を有する116人の患者にdl-α-トコフェロールをパッチテストしたところ、1人の患者に陽性反応が観察された(Roed-Petersen and Hjorth,1976)
  • [ヒト試験] 1985年7月1日から1989年6月30日の間に北米接触皮膚炎グループ(NACDG)は5%dl-α-トコフェロールを含むワセリンを4,887人の患者にパッチテストしたところ、12人の患者(0.2%)はアレルギー反応を起こし、2人の患者(0.04%)は皮膚刺激を示し、別の2人の患者(0.04%)はトコフェロールに偽陽性反応を示したと回答した(CNACDG,1999)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、ごくわずかな患者において皮膚感作が報告されていますが、一方で多くの患者において皮膚感作性なしと報告されているため、皮膚炎を有する場合において皮膚感作が起こる可能性は低いと考えられます。

眼刺激性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2002)によると、

  • [動物試験] 3匹のウサギの片眼の結膜嚢にトコフェロール0.1mLを無希釈で点眼し、眼をすすいだあとDraize法に基づいて点眼1および4時間後および1,2,3,6および7日後に評価したところ、最大眼刺激スコア110のうち1時間後に6.0で最大スコアが示された。トコフェロールは最小限の眼刺激剤であった(CTFA,1972)
  • [動物試験] 9匹のウサギの片眼の結膜嚢にdl-α-トコフェロール0.1mLを注入し、注入2分後に3匹の眼をすすぎ、残りの眼はすすがず、注入後1,2および7日目に評価したところ、7日間ですすぎおよびすすいでいない眼の両方で非常に僅かな結膜の発赤およびケモーシスが観察された。すすがなかった6匹のうち2匹のウサギで注入2日後に明確な結膜の赤みを示した。トコフェロールは非常に軽度の眼刺激を起こすと述べられた(Roche,1999)
  • [動物試験] 3匹のウサギの左眼の結膜嚢に0.1%トコフェロール、1-5%アルニカモンタナ抽出物、~50%大豆油の混合物0.5mLを点眼し、1,2,8,24および48時間後および4,5,6および7日後に評価したところ、結膜の発赤は24時間観察され、3匹すべてに2時間後にわずかなケモーシスが観察された。この混合物は眼の周りに塗布しても安全であると結論付けた(IBR,1972)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、最小限の眼刺激性が複数報告されているため、最小限の眼刺激性が起こる可能性が高いと考えられます。

∗∗∗

トコフェロールは安定化成分、抗酸化成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:安定化成分 抗酸化成分

∗∗∗

文献一覧:

  1. Cosmetic Ingredient Review(2002)「Final Report on the Safety Assessment of Tocopherol,Tocopheryl Acetate, Tocopheryl Linoleate, Tocopheryl Linoleate/Oleate, Tocopheryl Nicotinate, Tocopheryl Succinate, Dioleyl Tocopheryl Methylsilanol, Potassium Ascorbyl Tocopheryl Phosphate, and Tocophersolan」International Journal of Toxicology(21)(3),51-116.
  2. H M Evans, et al(1922)「On the Existence of a Hitherto Unrecognized Dietary factor Essential for Reproduction」Science(56)(1458),650-651.
  3. B Sure(1924)「Dietary requirements for reproduction. Ⅱ. The existence of a specific vitamin for reproduction」The Journal of Biological Chemistry(58),693–709.
  4. O H Emerson, et al(1936)「The Isolation from Cottonseed Oil of an Alcohol Resembling Alpha Tocopherol from Wheat Germ Oil」Science(83)(2157),421.
  5. 平原 文子(1999)「ビタミンE」日本臨床(57)(10),2236-2241.
  6. 杉田 浩一, 他(2017)「食用油脂のビタミンE(トコフェロール)」新版 日本食品大事典,904.
  7. N Haramaki, et al(1998)「Networking Antioxidants in the Isolated Rat Heart are Selectively Depleted by Ischemia-Reperfusion」Free Radical Biology and Medicine(25)(3),329-339.
  8. N Noguchi, et al(1998)「Dynamics of Vitamin E Action against LDL Oxidation」Free Radical Research(28)(6),561-572.
  9. 神村 瑞夫(1966)「ビタミンEと皮ふ微細循環機能」ビタミン(33)(2),166-173.
  10. S Tanaka(1994)「Vitamin E and Peripheral Circulation」Jikeikai Medical Journal(41)(4),367-387.
  11. 田村 健夫, 他(1990)「酸化防止剤」香粧品科学 理論と実際 第4版,222-225.
  12. M Lopez-Torres, et al(1998)「Topical application of alpha-tocopherol modulates the antioxidant network and diminishes ultraviolet-induced oxidative damage in murine skin.」The British Journal of Dermatology(138)(2),207-215.
  13. 朝田 康夫(2002)「過酸化脂質の害は」美容皮膚科学事典,163-165.

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