TEA(トリエタノールアミン)とは…成分効果と毒性を解説

pH調整
TEA
[化粧品成分表示名称]
・TEA

[医薬部外品表示名称]
・トリエタノールアミン

化学構造的にアミンの3つの置換基をヒドロキシ基(水酸基)に置き換えた、弱塩基性(弱アルカリ性)を示す水溶性の脂肪族三級アミン(∗1)です。

∗1 アミンとは、化学構造的にアンモニアの水素原子を炭化水素基または芳香族原子団で置換した化合物の総称であり、置換した数が1つであれば第一級アミン、2つであれば第二級アミン、3つであれば第三級アミンといいます。

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、スキンケア化粧品、ボディ&ハンドケア製品、メイクアップ化粧品、洗浄製品、洗顔料&洗顔石鹸、日焼け止め製品、シート&マスク製品、ネイル製品などに使用されています(文献1:1983;文献2:2013)

ケン化または中和反応によるセッケン合成作用

ケン化または中和反応によるセッケン合成作用に関しては、まず前提知識としてセッケン合成メカニズムおよびセッケンの種類について解説します。

セッケンは、以下のように、

高級脂肪酸または油脂 + アルカリ塩

高級脂肪酸または油脂(高級脂肪酸を含む)とアルカリ塩を反応させることで合成しますが(∗2)、アルカリ塩の種類によってセッケンのタイプが以下のように分類されます。

∗2 高級脂肪酸とアルカリ塩の反応によってセッケンを合成する方法を中和法、油脂とアルカリ塩の反応によってセッケンを合成する方法をケン化法といいます。

石鹸の種類 アルカリ塩 状態 pH
ナトリウム石鹸 水酸化ナトリウム(強塩基) 個体 弱アルカリ性
カリウム石鹸 水酸化カリウム(強塩基) 液体 弱アルカリ性
トリエタノールアミン石鹸 トリエタノールアミン(弱塩基) 液体 中性
アルギニン石鹸(アミノ酸石鹸) L-アルギニン(弱塩基) 液体 中性

一般的に固形石けんを合成する目的で水酸化Naが、液体石けんを合成する目的で水酸化Kが用いられ、これらで合成された石けんは「純石けん」と呼ばれ、pH9.5-10.5の弱アルカリ性を示し、水に溶けやすく高い洗浄力を有します。

一方でアルカリ塩としてTEA(トリエタノールアミン)を反応させて合成したセッケンは、pHが8.0前後の中性域となり、石けん特有の加水分解をしないのが特徴で、脂肪酸以外は化学合成物であることからも純石けんとはいえず、「疑似石けん」に分類されます。

中性域であることから一般的な石鹸と比較すると皮膚刺激性が低いとプロモーションされており、医薬部外品の石鹸として皮膚科医が薦めることもありますが、1961年にアメリカのマサチューセッツ総合病院によって報告されたラウリン酸ナトリウムの皮膚浸透とpHの関係検証によると、

pH8.5以下の低pHでは界面活性剤の皮膚浸透による角質層内脂質溶解が起こりやすく、pH11以上の高pHではアルカリによるタンパク質変性(皮膚角質層の障害)を起こす可能性がある。

ただし、現在、家庭で使用されている洗浄液でpHが10.5を超えることはほとんどない。

また、事実上pH9.5-10.5の間のみこれらの作用は起こらなかった。

皮膚のこの一連の反応は、皮膚が有するアルカリ中和能とアルカリ値が高いほど皮膚浸透性が低下する性質によって説明できる。

このような検証結果が明らかにされており(文献8:1961)、つまり、皮膚にほとんど浸透せず、なおかつタンパク質変性が起こらないpH値が9.5-10.5であると結論付けられていることから、トリエタノールアミン石けんが純せっけんよりも低刺激であるかどうかは疑問が残ります。

さらに、皮膚炎を有する場合において若干の感作性(アレルギー性)を有しているため、皮膚炎または過敏な皮膚を有する場合、一般の石鹸よりも注意が必要であるとも考えられます。

アルカリ塩の違いによる洗浄力への影響は、1977年に金沢大学および大阪市立大学によって報告された脂肪酸塩の種類が洗浄におよぼす影響検証によると、

脂肪酸としてパルミチン酸またはオレイン酸に水酸化Na、水酸化KおよびTEAを反応させた石けん0.01M/ℓを用いて、卵白で汚染された布を40℃および80℃で30分間洗浄した場合の洗浄効果を評価したところ、以下のグラフのように、

脂肪酸塩の塩の種類が未変性卵白汚染布の洗浄効果におよぼす影響

脂肪酸塩の塩の種類が未変性卵白汚染布の洗浄効果におよぼす影響

卵白汚染布の洗浄においては、脂肪酸の種類による著しい差異は認められず、水酸化Naおよび水酸化Kを反応させた石けんではいずれも高い洗浄効率を示すが、TEAを反応させた石けんでは洗浄効率は低く、とくに高温洗浄ではタンパク質が熱変性作用をうけてさらに洗浄効率が低下することが認められた。

次に牛乳で汚染された布の洗浄の場合は、以下のグラフのように、

脂肪酸塩の塩の種類が熱変性牛乳汚染布の洗浄効果におよぼす影響

脂肪酸塩の塩の種類が熱変性牛乳汚染布の洗浄効果におよぼす影響

卵白汚染布の場合と同様に、脂肪酸の種類による著しい差異は認められず、中温洗浄(40℃)では塩の間に明確な差異は認められないが、高温洗浄(80℃)では水酸化Naおよび水酸化Kが効果的であることが認められた。

このような検証結果が明らかにされており(文献6:1977)、汚染物によって差はあるものの、総合的に水酸化Naおよび水酸化Kで反応させた石けんほどではありませんが、TEAで反応させた石けんに洗浄効果が認められています。

基本的にアルカリ度の高いほうが洗浄効果も高い傾向にあるため、水酸化Naおよび水酸化Kよりアルカリ度の低いTEAは、相対的に洗浄効果が劣る結果となったと推測されます。

中和反応による増粘作用

中和反応による増粘作用に関しては、乳液やクリームなど乳化物の水相を増粘あるいはゲル化し、感触の調整および乳化を安定化する目的でTEAが配合されます。

とくに粉体を配合した親水性のファンデーションや日焼け止め製品などの乳化物では、粉体の沈降を防ぐために水相を増粘あるいはゲル化させて粉体-油相-水相の処方を安定に保つ目的でTEAなどが使用されます(文献7:2003)

実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の2011年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を表しており、またリンスオフ製品というのは、洗い流し製品(シャンプー、洗顔料、クレンジングなど)を指します。

TEA(トリエタノールアミン)の配合状況調査結果(2011年)

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TEAの安全性(刺激性・アレルギー)について

TEAの現時点での安全性は、

  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
  • 50年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし-わずかな刺激が起こる可能性あり
  • 皮膚刺激性(皮膚炎を有する場合):濃度依存的に皮膚刺激が増加(5%濃度:わずか)
  • 眼刺激性:一般的な化粧品配合量においてほとんどなし
  • 皮膚感作性:ほとんどなし
  • 皮膚感作性(皮膚炎を有する場合):弱感作性あり
  • 光毒性・光感作性:ほとんどなし
  • 発がん性:動物における十分な証拠はなく、ヒトにおける十分な証拠もなし

これらの結果から、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

ただし、皮膚炎を有する場合、皮膚感作に注意する必要があると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献2:2013)によると、

  • [ヒト試験] 以前に報告されている試験データによると、0.45%-2.4%TEAを含む製剤を用いたいくつかの試験で皮膚刺激は観察されないと結論付けられましたが、専門家の中には0.83%-20.04%TEAを含む製剤は皮膚刺激剤であると解釈されています(R E Elder,1983)
  • [ヒト試験] 20人の被検者に50-100%TEA水溶液を24時間閉塞パッチ適用したところ、4人の被検者に100%TEAに微弱で不均一な紅斑が観察されたが、皮膚反応の発生率は溶媒対照と同等またはそれ以下であったため、TEAは非刺激剤に分類された(K Muller-Decker,1998)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、濃度と皮膚刺激の相関関係が読み取れず、また皮膚刺激の報告および解釈も一貫性に欠けているため、化粧品配合量において皮膚刺激性はほとんどなし-一過性のわずかな刺激が起こる可能性があると考えられます。

– 擦過した皮膚を有する場合 –

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:1983)によると、

  • [ヒト試験] 5%ラウリル硫酸Na水溶液を24時間前腕に曝露し活発な炎症反応を示した5-10人の被検者に、針を用いて前腕部位を軽く掻爬した後、100%,10%および5%TEAを含むエタノールを1日1回、3日間にわたってアルミニウムチャンバー適用し、チャンバー除去72時間後に0.0-4.0のスケールで皮膚刺激性を評価したところ、傷ついていない健常な皮膚に対して皮膚刺激が生じるには100%TEAが必要であった。一方で傷ついた皮膚に対して10%TEAは顕著な刺激性(2.5-4.0)を示し、5%TEAではわずかな刺激性(0.5-1.4)であった(P J Frosch et al,1976)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、物理的に傷をつけた皮膚において10%濃度で顕著な刺激性、5%濃度でわずかな刺激性が報告されているため、皮膚炎などを有する場合、濃度依存的に皮膚刺激が増す可能性が高いと考えられます。

眼刺激性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:1983)によると、

  • [動物試験] ウサギの両目の結膜嚢に99%TEA0.1mLを点眼し、左眼はすすがず、右眼は30秒後に2分間すすぎ、眼刺激性を評価したところ、左眼で中程度の眼刺激性と腫れがみられた。48時間でわずかな結膜刺激が観察された。右眼では眼刺激性は観察されなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1959)
  • [動物試験] ウサギの両目の結膜嚢に10%TEA水溶液0.1mLを点眼し、左眼はすすがず、右眼は30秒後に2分間すすぎ、眼刺激性を評価したところ、洗眼の有無にかかわらず、本質的に非刺激であった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1959)
  • [動物試験] 6匹のサルの片眼の結膜嚢に12.6%TEAを含むシャンプー0.1mLを滴下し、15秒後に50mLの水で眼をすすぎ、24,48および72時間後および4および7日後に眼刺激性を評価したところ、24時間で2匹のサルに角膜上皮のわずかなズレと浮腫性角膜の剥離がみられた。また72時間で1匹でフルオレセイン染色の陽性反応が認められた(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1976)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、高濃度で眼刺激性が報告されていますが、一般的な化粧品配合濃度においては眼刺激性なしと報告されているため、一般的な化粧品配合量において眼刺激性はほとんどないと考えられます。

皮膚感作性(アレルギー性)について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:1983)によると、

  • [ヒト試験] 25人の被検者に2.1%TEAを含むマスカラを対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施したところ、いずれの被検者も皮膚感作性は示さなかった(Ivy Research Laboratories,1976)
  • [ヒト試験] 25人の被検者に2.1%TEAを含むマスカラを対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施したところ、いずれの被検者も皮膚感作性は示さなかった(Ivy Research Laboratories,1976)
  • [ヒト試験] 26人の被検者に20.04%TEAを含むマスカラ0.1mL/c㎡を対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を閉塞パッチにて実施したところ、チャレンジパッチにおいて2人の被検者にわずかな皮膚反応が観察されたが、ひとつは偽陽性であり、ひとつは紅斑反応であったため、皮膚感作性ではないと結論付けられた(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1980)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、共通して皮膚感作性なしと報告されているため、皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

– 皮膚炎を有する場合 –

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:1983)によると、

  • [ヒト試験] 湿疹を有する22人の被検者に5%および1%TEA水溶液を24時間パッチテストし、24および48時間後に皮膚反応を評価したところ、5%濃度および1%濃度でそれぞれ4人(18%)および3人(14%)の被検者が陽性反応を示した(D Suurmond,1966)
  • [ヒト試験] 皮膚炎を有する737人の患者に2.5%TEAを含む6つの異なる乳化物をパッチテストし、ICDRGの基準に従って評価したところ、39人の患者が陽性反応を示し、39人のうち20人(約3%)はTEAに陽性反応を示した。またTEAにアレルギー反応を示した患者の多くは他の成分にもアレルギー反応を有していました(60)
  • [ヒト試験] 4年間で同じTEA配合クリームに対するパッチテストの反応率は、ひとつの診療所で171人のうち69人、もうひとつの診療所で191人のうち49人であった。診療所間での差異はサンプリング方法の違いであると仮定し、2つの診療所から合計54人の患者にフォローアップパッチテストを実施し、15人は対照としたところ、19人の患者がTEA配合クリームで陽性反応を示し、40人が刺激反応を示し、13人は陰性であった(61)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、皮膚感作性が複数報告されているため、皮膚炎を有する場合、皮膚感作を誘発する可能性があると考えられます。

光毒性および光感作性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:1983)によると、

  • [ヒト試験] 26人の被検者に1.0%TEAを含む日焼けローションを対象にUVライト照射をともなうHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を閉塞パッチにて実施したところ、いずれの被検者も皮膚反応はなく、光毒性を示さなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1976)
  • [ヒト試験] 23人の被検者に2.8%TEAを含むマスカラ0.1mL/c㎡を対象にソーラーシミュレーター照射をともなうHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施したところ、いずれの被検者も光毒性および光感作反応は示さなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1979)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、光毒性および光感作性なしと報告されているため、光毒性および光感作性はほとんどないと考えられます。

発がん性について

IARC(International Agency for Research on Cancer:国際がん研究機関)は、世界保健機関(WHO)の一機関であり、人に対する発がん性に関する様々な物質・要因を評価し、以下の表のように5段階に分類しています(文献3:2017;文献4:2019)

グループ グループ内容 分類理由
グループ1 ヒトに対する発がん性がある ・ヒトへの発がん性について十分な証拠がある
グループ2A ヒトに対しておそらく発がん性がある ・ヒトへの発がん性については限られた証拠しかないが、実験動物の発がんについては十分な証拠がある場合
グループ2B ヒトに対して発がん性がある可能性がある ・ヒトへの発がん性については限られた証拠があるが実験動物では十分な証拠のない場合
・ヒトへの発がん性については不十分な証拠しかないあるいは証拠はないが、実験動物は十分な発がん性の証拠がある場合
グループ3 ヒトに対する発がん性について分類できない ・ヒトへの発がん性については不十分な証拠しかなく、実験動物についても不十分又は限られた証拠しかない場合
・他のグループに分類できない場合
グループ4 ヒトに対する発がん性がない ・ヒトへの発がん性はないことを示す証拠があり、かつ実験動物についても同様な証拠がある場合

1991年に公開されたIARCの評価によると、TEAの発がん性は、

  • 実験動物においてTEAの発がん性について十分な証拠がない
  • ヒトにおいてTEAの発がん性について十分な証拠がない

このように結論づけられており、「グループ3」に分類されています(文献5:1991)

∗∗∗

TEAは安定化成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:安定化成分

∗∗∗

文献一覧:

  1. Cosmetic Ingredient Review(1983)「Final Report on the Safety Assessment of Triethanolamine, Diethanolamine, and Monoethanolamine」International Journal of Toxicology(2)(7),183-235.
  2. Cosmetic Ingredient Review(2013)「Safety Assessment of Triethanolamine and Triethanolamine-Containing Ingredients as Used in Cosmetics」International Journal of Toxicology(32)(3),59S-83S.
  3. 農林水産省(2017)「国際がん研究機関(IARC)の概要とIARC発がん性分類について」, <http://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/risk_analysis/priority/hazard_chem/iarc.html> 2019年5月17日アクセス.
  4. International Agency for Research on Cancer(2019)「Agents Classified by the IARC Monographs, Volumes 1–123」, <https://monographs.iarc.fr/agents-classified-by-the-iarc/> 2019年5月17日アクセス.
  5. International Agency for Research on Cancer(1991)「TEA」IARC Monographs on the Evaluation of Carcinogenic Risks to Humans(51),207-271.
  6. 所 康子, 他(1977)「石けんによるたん白質汚れの洗浄に関する研究」繊維製品消費科学(18)(6),224-229.
  7. 毛利 邦彦(2003)「ファンデーションの有用性と製品化技術」日本化粧品技術者会誌(37)(3),171-178.
  8. I H Blank, et al(1961)「Penetration of Anionic Surfactants into Skin: Ⅲ. Penetration from Buffered Sodium Laurate Solutions」Journal of Investigative Dermatology(37)(6),485-488.

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