o-シメン-5-オールとは…成分効果と毒性を解説

防腐 抗菌成分 消臭
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[化粧品成分表示名称]
・o-シメン-5-オール

[医薬部外品表示名称]
・イソプロピルメチルフェノール

タチジャコウソウなどの植物に含まれ、タチジャコウソウ特有の香気を有するチモールの異性体であり、疎水性(水に溶けにくい)のフェノール誘導体です。

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、ボディ&ハンドケア製品、スキンケア化粧品、ヘアケア製品、頭皮ケア製品、デオドラント製品などに使用されています(文献1:1984;文献2:-)

製品自体の抗菌・防腐作用

製品自体の殺菌・防腐作用に関しては、大阪化成の技術資料によると、

公的機関、自社および他社試験の結果、o-シメン-5-オールの各種細菌、真菌および酵母類に対するMIC(minimum inhibitory concentration:最小発育阻止濃度)は以下の値が得られています(∗1)

∗1 MICの単位であるppm(parts per million)は100万分の1の意味であり、1ppm = 0.0001%です。

微生物 MIC(ppm)
(ppm) (%)
枯草菌(グラム陽性桿菌)
Bacilus subtilis
150 0.015
セレウス菌(グラム陽性桿菌)
Bacilus cereus
150 0.015
大腸菌(グラム陰性桿菌)
Escherichia coli
200 0.020
緑膿菌(グラム陰性桿菌)
Pseudomonas aeruginosa
500 0.050
アオカビ(カビ)
Penicillium citrinum
100 0.010
クロコウジカビ(カビ)
Aspergillus niger
75 0.0075
白癬菌(カビ)
Trichophyton mentagrophytes
100 0.010
カンジダ(酵母)
Candida albicans
100 0.010

o-シメン-5-オールは、グラム陽性菌、グラム陰性菌、カビおよび酵母など幅広い抗菌活性を示した。

このような検証結果が明らかにされており(文献2:-)、o-シメン-5-オールに製品自体の抗菌・防腐作用が認められています。

後述するように、アクネ菌にも抗菌効果があり、安全性が高いことからニキビ抑制目的でも配合されますが、ニキビ抑制目的の場合は医薬部外品名称であるイソプロピルメチルフェノールで前のほうに表記されることが多く、防腐目的の場合は、ニキビに対する媒体のプロモーションがなく、一般的に最後尾に表示されることが多いと考えられます。

アクネ菌増殖抑制による抗菌作用

アクネ菌増殖抑制による抗菌作用に関しては、まず前提知識として皮膚常在菌、アクネ菌(Propionibacterium acnes)について解説します。

一般に、健常なヒト皮膚上には皮膚常在菌と呼ばれる多種の微生物が常在して微生物叢を形成し、健康な状態においてはそれが病原性微生物の侵入を排除する生体バリアとしても機能しており、皮膚の恒常性を保つ一因となっています。

皮膚常在菌には、主に、

  • アクネ菌(Propionibacterium acnes)
  • 表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)
  • 黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)

などが大半を占め、それぞれがバランスしながら皮膚上でバリア機能として働いています。

皮膚常在菌のひとつであるアクネ菌は、ニキビの発症にも関与しており、皮脂を栄養分として増殖するため、皮脂の溜まった毛穴では過剰に増殖し、その結果、皮脂を遊離脂肪酸に変化させるリパーゼが大量に分泌され、最終的に炎症が生じます。

このような背景から、アクネ菌の増殖を抑制することは、ニキビの予防または改善のために重要であると考えられます。

大阪化成の技術資料によると、

公的機関、自社および他社試験の結果、イソプロピルメチルフェノールの各種細菌、真菌および酵母類に対するMIC(minimum inhibitory concentration:最小発育阻止濃度)は以下の値が得られています。

微生物 MIC(ppm)
(ppm) (%)
黄色ブドウ球菌(グラム陽性球菌)
Staphylococcus aureus
150 0.015
アクネ菌(グラム陽性桿菌)
Propionibacterium acnes
100 0.010

イソプロピルメチルフェノールは、皮膚常在菌である黄色ブドウ球菌およびアクネ菌に強い抗菌活性を示した。

このような検証結果が明らかにされており(文献2:-)、イソプロピルメチルフェノールにアクネ菌増殖抑制による抗菌作用が認められています。

MICをみてもらうとわかるように、アクネ菌に対しては0.01%濃度で十分な抗菌活性を示すことから、ニキビ抑制を目的にした場合でもごく微量の配合であると考えられますが、ニキビ抑制目的の場合は医薬部外品(薬用化粧品)として医薬部外品名称であるイソプロピルメチルフェノールで表記され、有効成分として前の方に記載されることが多いようです。

腋臭菌増殖抑制による消臭作用

腋臭菌増殖抑制による消臭作用に関しては、まず前提知識として腋臭菌について解説します。

腋臭(ワキの臭い)や汗臭は、汗の成分が皮膚常在菌によって分解されることで発生し、腋臭に関与している菌としてコリネバクテリウムキセロシス(Corynebacterium xerosis)が知られています。

このような背景から腋臭菌であるコリネバクテリウムキセロシス(Corynebacterium xerosis)の増殖を抑制することは腋臭の予防・防止において重要であると考えられます。

大阪化成の技術資料によると、

公的機関、自社および他社試験の結果、イソプロピルメチルフェノールの各種細菌、真菌および酵母類に対するMIC(minimum inhibitory concentration:最小発育阻止濃度)は以下の値が得られています。

微生物 MIC(ppm)
(ppm) (%)
腋臭菌(グラム陽性桿菌)
Corynebacterium xerosis
200 0.020

イソプロピルメチルフェノールは、腋臭菌に強い抗菌活性を示した。

このような検証結果が明らかにされており(文献2:-)、イソプロピルメチルフェノールに腋臭菌増殖抑制による消臭作用が認められています。

イソプロピルメチルフェノールは、腋臭菌だけでなく黄色ブドウ球菌にも抗菌活性を示し、黄色ブドウ球菌は汗臭にも関与することから、腋臭および汗臭を総合的に抑制することが期待できるため、デオドラント製品の主剤としても使用されます。

o-シメン-5-オールはポジティブリストであり、化粧品に配合する場合は以下の配合範囲内においてのみ使用されます。

種類 最大配合量(g/100g)
粘膜に使用されることがない化粧品のうち洗い流すもの 配合上限なし
粘膜に使用されることがない化粧品のうち洗い流さないもの 0.10
粘膜に使用されることがある化粧品 0.10

また、イソプロピルメチルフェノールは医薬部外品(薬用化粧品)への配合において配合上限があり、配合範囲は以下になります。

種類 配合量
薬用石けん・シャンプー・リンス等、除毛剤 1.0
育毛剤 0.10
その他の薬用化粧品、腋臭防止剤、忌避剤 0.10
薬用口唇類 0.10
薬用歯みがき類 0.10
浴用剤 0.10

実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の1989年および2001年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

o-シメン-5-オールの配合製品数と配合量の比較調査(2001年)

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o-シメン-5-オールの安全性(刺激性・アレルギー)について

o-シメン-5-オールの現時点での安全性は、

  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:最小限
  • 皮膚感作性:ほとんどなし

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:1984)によると、

  • [ヒト試験] 53人のボランティアの前腕3ヶ所に0.0%(対照),0.1%および1.0%o-シメン-5-オールを含むワセリンを対象に24時間パッチテストを実施し、パッチ除去3時間以内に皮膚刺激性を評価したところ、いずれの被検者も皮膚刺激を示さなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1980)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、共通して皮膚刺激なしと報告されているため、化粧品配合量以下において一般的に皮膚刺激性はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:1984)によると、

  • [動物試験] 9匹のウサギ2群の片眼に0.1%および1.0%o-シメン-5-オールを含むワセリン0.1gをそれぞれ点眼し、3匹は眼をすすがず、別の3匹は眼をすすぎ、Draize法に基づいて1および4時間後および1-7日後に眼刺激性を評価したところ、0.1%濃度のグループでは洗眼にかかわらずほとんど知覚できないわずかな結膜発赤が1および24時間でみられたが、この症状は48時間後には完全に消失した。1.0%濃度のグループでは非洗眼でとてもわずかな結膜発赤が1および4時間でみられたが、24時間で消失した。洗眼グループでは眼刺激性はみられなかった。また両方のグループで残りの3匹に対照としてワセリンのみを点眼したところ、1および4時間でわずかな結膜刺激がみられ、この刺激は24時間で消失した。o-シメン-5-オールは対照とほとんど同様の眼刺激性であったことから、最小限の眼刺激性を誘発すると結論付けられた(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1980)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、最小限の眼刺激性が報告されているため、最小限の眼刺激性が起こる可能性があると考えられます。

皮膚感作性(アレルギー性)について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:1984)によると、

  • [ヒト試験] 27人の被検者にo-シメン-5-オールを含むワセリンを対象にMaximization皮膚感作性試験を閉塞パッチにて実施(誘導期間1.0%濃度およびチャレンジ期間0.1%濃度)したところ、皮膚刺激および皮膚感作を示さなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1978)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、共通して皮膚感作なしと報告されているため、皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

∗∗∗

o-シメン-5-オールは安定化成分、抗菌成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:安定化成分 抗菌成分

∗∗∗

文献一覧:

  1. Cosmetic Ingredient Review(1984)「Final Report on the Safety Assessment of o-Cymen-5-ol」International Journal of Toxicology(3)(3),131-138.
  2. 大阪化成株式会社(-)「イソプロピルメチルフェノール」技術資料.

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