EDTA-2Naとは…成分効果と毒性を解説


・EDTA-2Na
[医薬部外品表示名称]
・エデト酸二ナトリウム
[慣用名]
・エデト酸塩
EDTA(Ethylenediamine Tetraacetic Acid:エチレンジアミン四酢酸)の二ナトリウム塩であり、ジアミン誘導体です。
EDTAのナトリウム塩にはいくつか種類がありますが、それらの主な違いは以下の表のように、
EDTA-2Na | EDTA-3Na | EDTA-4Na | |
---|---|---|---|
水への溶解度(25℃,100mL) | 11.1g | 46.5g | 60g |
溶解時のpH | 4.2-4.8 | 6.6-8.5 | 10.0-12.0 |
水への溶解度および溶解時のpHが異なります(文献4:-)(∗1)。
∗1 pHを調整せずに使用すると、それぞれのEDTAナトリウム塩でキレート能に違いがありますが、使用時のpHを同じにした場合はEDTAとしての性能は同等になります。
化粧品に配合される場合は、
これらの目的で、スキンケア化粧品、ボディ&ハンドケア製品、洗浄製品、洗顔料&洗顔石鹸、メイクアップ化粧品、シート&マスク製品に使用されています(文献1:2002)。
製品自体のキレート作用
製品自体のキレート作用に関しては、まず前提知識として化粧品における金属イオンの働きおよびキレート作用について解説します。
金属イオンは、化粧品成分の酸化を促進し、変臭や変色の原因となったり、透明系の化粧品に濁りや沈殿を生じさせたりするなど、化粧品の品質劣化の原因となったり、また効能成分の作用を阻害することがあるため(文献2:2006)、製品中の金属イオンの働きを抑制(封鎖)する目的でキレート剤が配合されます。
EDTAのナトリウム塩は、アニオン界面活性剤の洗浄能力を低下させ、また化粧石けんや化粧水の透明化を損なう(濁らせる)Ca²⁺やMg²⁺などの金属イオンを補足し、透明系製品の不透明化(濁り)や洗浄能の低下を防止する目的で配合され(文献2:2006;文献3:1995)、一般的EDTA-2Naが汎用されています。
エデト酸二ナトリウムは医薬部外品(薬用化粧品)への配合において配合上限があり、配合範囲は以下になります。
種類 | 配合量 | その他 |
---|---|---|
薬用石けん・シャンプー・リンス等、除毛剤 | 3.0 | エデト酸及びその塩類として合計。歯磨きの目的で使用されるもので薄める用法のものは0.60とし、かつ使用時0.10以下となること。 |
育毛剤 | 1.0 | |
その他の薬用化粧品、腋臭防止剤、忌避剤 | 1.0 | |
薬用口唇類 | 0.20 | |
薬用歯みがき類 | 0.20 | |
浴用剤 | 0.20 |
実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の1998年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。
EDTA-2Naの安全性(刺激性・アレルギー)について
- 医療上汎用性があり有効性および安全性の基準を満たした成分が収載される日本薬局方に収載
- 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
- 10年以上の使用実績
- 皮膚刺激性:ほとんどなし
- 眼刺激性:ほとんどなし
- 皮膚感作性:ほとんどなし
このような結果となっており、配合上限濃度以下および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。
以下は、この結論にいたった根拠です。
皮膚刺激性について
Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2002)によると、
- [ヒト試験] 26人のボランティアにEDTA-2Na粉末0.2gを4時間単回閉塞パッチにて湿潤適用し、いきなり高い皮膚反応がでないように4時間までの間15-30分ずつ適用してた。パッチ除去24,48および72時間後に処置部位を評価したところ、いずれのボランティアも皮膚刺激を示さなかった(Basketter et al,1997)
と記載されています。
試験データをみるかぎり、皮膚刺激性なしと報告されているため、皮膚刺激性はほとんどないと考えられます。
眼刺激性について
Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2002)によると、
- [動物試験] ウサギを用いた粘膜刺激試験において非刺激性に分類された(BASF,1996)
と記載されています。
試験データをみるかぎり、眼刺激性なしと報告されており、また医薬品として目薬などにも使用されている実績から、眼刺激性はほとんどないと考えられます。
皮膚感作性(アレルギー性)について
Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2002)によると、
- [ヒト試験] 100人の被検者に0.02%-0.2%EDTA-2Naを含む25種類の様々な化粧品を対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施したところ、いずれの被検者も皮膚感作性を示さなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1998)
と記載されています。
試験データをみるかぎり、共通して皮膚感作性なしと報告されているため、皮膚感作性はほとんどないと考えられます。。
安全性についての補足
1984年に、EDTAのカルシウム二ナトリウム塩が腹腔内または静脈内投与後にコラーゲンを構成するアミノ酸であるヒドロキシプロリンの尿中排泄を増加させることから、成熟コラーゲンを分解する作用を有する可能性が指摘され(文献5:1984)、EDTA類のコラーゲン生合成への影響が検討されました。
EDTA-2Naに関しては、指摘以前に試験データが以下のように報告されており、
Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2002)によると、
- [in vitro試験] ゼラチン培地と特殊タンパク質(0.2%カゼイン、0.3%牛肉抽出物、0.5%トリプトン、0.1%グルコースおよび1.5%寒天)培地におけるEDTA-2Naの緑膿菌への影響を検討した。特殊タンパク質培地またはゼラチン培地に2.5×10⁻³M濃度のEDTA-2Naを添加したところ、特殊タンパク質の分解作用は認められず、5×10⁻³濃度の添加においてはゼラチン液化を阻害したもののタンパク質の分解は認められなかった。また10⁻²M濃度のEDTA-2Na添加においてもタンパク質分解は認められなかった(Wilson,1970)
- [動物試験] ウサギのアキレス腱のコラーゲン組織に10⁻²M濃度のEDTA-2Naを添加し48時間培養したところ、コラーゲンの酵素分解は起こらなかった。一方でEDTA-2Naを添加することなくコラーゲン剥離物を培養したところ、36-48時間で分解は完了した(Wilson,1970)
と記載されています。
試験データをみるかぎり、タンパク質およびコラーゲンの分解作用は認められていないため、EDTA-2Naはコラーゲン分解作用を有していないと考えられます。
∗∗∗
EDTA-2Naは安定化成分にカテゴライズされています。
成分一覧は以下からお読みください。
参考:安定化成分
∗∗∗
文献一覧:
- Cosmetic Ingredient Review(2002)「Final Report on the Safety Assessment of EDTA, Calcium Disodium EDTA, Diammonium EDTA, Dipotassium EDTA, Disodium EDTA, TEA-EDTA, Tetrasodium EDTA, Tripotassium EDTA, Trisodium EDTA, HEDTA, and Trisodium HEDTA」International Journal of Toxicology(21)(2),95-142.
- 日光ケミカルズ(2006)「金属イオン封鎖剤」新化粧品原料ハンドブックⅠ,476-480.
- 池上 雄作(1995)「シャンプーとリンスの化学」化学と教育(43)(1),45-46.
- “DOJINDO:同人化学研究所”(-)「EDTA類の違い」, <http://dominoweb.dojindo.co.jp/FAQkoukai.nsf/bdf7a0f1d792192649257749002d5840/219f50c4b1eed19149256e66002d8c74?OpenDocument> 2019年5月13日アクセス.
- V B Braide(1984)「Calcium EDTA toxicity: Renal excretion of endogenous trace metals and the effect of repletion on collagen degradation in the rat」General Pharmacology:The Vascular System(15)(1),37-41.
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