BHT(ジブチルヒドロキシトルエン)とは…成分効果と毒性を解説

酸化防止
BHT
[化粧品成分表示名称]
・BHT

[医薬部外品表示名称]
・ジブチルヒドロキシトルエン

化学構造的にフェノール類であるパラクレゾールを炭化水素であるイソブチレンでアルキル化することによって生成される油溶性(脂溶性)の芳香族化合物です。

BHTは、熱・光に安定しており、フリーラジカルと反応し、食品が酸化されるのを遅らせることによって、色・におい・味が変化するのを防ぐ食品の酸化防止剤として(文献2:2004)、1954年にアメリカのFDA(Food and Drug Administration:アメリカ食品医薬品局)によって食品添加物・保存料としての使用が認可されました。

ただし、発がん性は認められていないものの、一部で変異原性が認められていることから、1970年代には食品にはほぼ使用されなくなっています。

BHTの皮膚からの吸収・代謝に関しては、

  • [動物試験] ラットを用いたBHT0.1mgの4日間経口投与試験によると、4日間で放射活性の34.5%が尿中に排泄され(文献5:1963)
  • [動物試験] ラットを用いたBHT0.1mgの腹腔内投与では1日で尿中に5.7%、糞中に16.7%、4日間でそれぞれ32および37%が排泄され、腸とその内容物に約30%が残留していた(文献6:1967)
  • [動物試験] ラットを用いたBHT0.1mgの腹腔内および静脈内投与では6時間でそれぞれ94%および52%の放射活性が胆汁中に排泄されたが、96時間後も胆汁中への排泄は24時間値の約⅓程度続き、投与したラットの胆管を未投与ラットの十二指腸に継いだところ、未投与ラットの胆汁中に6時間で30%の放射活性が排泄された。このことから、BHTは腸肝循環を受けることがわかった(文献6:1967)
  • BHTの代謝物である安息香酸体(BHT-COOH)は胆汁中に多く、尿中に少なかったことから、BHT-COOHが選択的に再吸収されるものと考えられた(文献7:1967)
  • [動物試験] ラットを用いたBHT0.1mgの経口投与では4日間で66-72%の放射活性が糞尿中に排泄され、またラットに0.5%BHTを35日間にわたって混餌投与した結果、BHTは腹部脂肪中で30-45μg/g、肝臓中で0.5-2.0μg/gを中心に大きく変動して推移したが、蓄積傾向はみられず、投与終了後は7-10日で減少した(文献8:1965)
  • [動物試験] マウスに500mg/kgのBHTを強制経口投与した結果、7日間で尿中に26%-50%、糞中に41%-65%、呼気中に6%-9%、合計で96%-98%が排泄されたが、10時間後で47%-55%、1日後までで87%-95%が排泄された。ラットとマウスでの排泄の種差は、腸肝循環の程度差によるものと考えられている(文献9:1984)
  • [ヒト試験] 2人のボランティアに0.5mg/kgのBHTを経口投与した結果、24時間で約50%、11日間で約65%が尿中に排泄されたが、31,56および79日後にも0.2%,0.15%および0.1%の放射活性の排泄がみられた(文献10:1967)

このような検証結果が明らかにされており、ヒトに対する皮膚塗布の検証はありませんが、ラットで観察されたBHT代謝物の長引く腸肝循環はヒトでは作用しないことが代謝試験で明らかになっており、一部は代謝プロセスでグルクロニド抱合体を生じるかグルクロン酸またはグリシンに抱合されますが、これらを含めて尿中に排泄されることが報告されています(文献4:2011)

また、排泄の一部は数カ月後にもみられるという報告もありますが、蓄積されているという報告はないため、基本的には排泄される物質であると考えられます。

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、スキンケア化粧品、ボディ&ハンドケア製品、日焼け止め製品、メイクアップ化粧品、洗浄製品、洗顔料&洗顔石鹸、ネイル製品などに使用されています(文献1:2002)

製品自体の酸化防止

製品自体の酸化防止に関しては、製品中の酸化しやすい成分の代わりにBHTが酸化されることにより、製品そのものの酸化を防止するというメカニズムによる酸化防止目的で、配合されます(文献11:1990)

とくにメトキシケイヒ酸エチルヘキシルの酸化防止剤として有名であり、メトキシケイヒ酸エチルヘキシルと併用されます。

ジブチルヒドロキシトルエン は医薬部外品(薬用化粧品)への配合において配合上限があり、配合範囲は以下になります。

種類 配合量
薬用石けん・シャンプー・リンス等、除毛剤 1.0
育毛剤 1.0
その他の薬用化粧品、腋臭防止剤、忌避剤 1.0
薬用口唇類 1.0
薬用歯みがき類 1.0
浴用剤 1.0

実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の1998-1999年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

BHTの配合状況調査結果(1998-1999年)

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BHTの安全性(刺激性・アレルギー)について

BHTの現時点での安全性は、

  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
  • 50年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし-ごくまれにわずか
  • 眼刺激性:詳細不明
  • 皮膚感作性:ほとんどなし(さらなる試験データが必要)
  • 皮膚感作性(皮膚炎を有する場合):ほとんどなし
  • 光感作性:ほとんどなし

これらの結果から、化粧品配合量および化粧品・製品における通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

ただし、発がん性ならびに健康被害の報告はありませんが、一部で変異原性が認められているため、食品では使用されなくなっています。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2002)によると、

  • [ヒト試験] 15人以上の被検者に100%BHTを48時間パッチテストを実施したところ、10人以上の被検者(71%)は刺激反応を示さず、4人以上の被検者(29%)はわずかな皮膚刺激を示した(Mallette and Von Haam,1952)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、わずかな皮膚刺激性が報告されているため、100%濃度においてわずかな皮膚刺激が起こる可能性があると考えられます。

眼刺激性について

試験結果や安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細は不明です。

皮膚感作性(アレルギー性)について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2002)によると、

  • [ヒト試験] 15人以上の被検者に100%BHTを48時間パッチテストを実施したところ、2人以上の被検者(19%)に感作反応が観察された(Mallette and Von Haam,1952)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、15人のうち2人に皮膚感作性が報告されているため、一般的に皮膚感作性が起こる可能性があると考えられます。

ただし、医薬部外品原料規格2006に収載されており、食品の酸化防止剤として使用されていた実績もあること、また古くからの使用実績の中で重大な接触性皮膚感作の報告がみられないことから、一般的に皮膚感作はほとんど起こらないと考えられるため、さらなる試験データが必要です。

– 皮膚炎を有する場合 –

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2002)によると、

  • [ヒト試験] 湿疹性皮膚炎を有する360人の患者に5%BHTを48時間パッチテストしたところ、皮膚反応を示した被検者はいなかった(Meneghini et al,1971)
  • [ヒト試験] 湿疹性皮膚炎を有する112人の患者に2%BHTを含む軟膏をパッチテストしたところ、3人の患者が皮膚感作反応を示した(Roed-Petersen and Hjorth,1976)
  • [ヒト試験] 湿疹性皮膚炎を有する83人の患者に治療において5%BHTを含むエタノールを使用したが、いずれの患者も皮膚反応はみられなかった(Roed-Petersen and Hjorth,1976)
  • [ヒト試験] 顔面に湿疹を有する1,096人の患者に1%BHTを含む軟膏のパッチテストを実施したところ、1人の患者が皮膚反応を示した(WWhite et al,1984)

東邦大学医学部薬理学の臨床データ(文献13:1984)によると、

  • [ヒト試験] 1978年-1982年の5年間の間に東邦大学大森病院を受診した化粧品皮膚炎、顔面黒皮症、化粧品以外の原因による接触性皮膚炎などを有する患者に2%,5%および10%BHTを含むワセリンを48時間閉塞パッチし、パッチ除去30分および24時間後に皮膚反応を評価したところ、いずれの患者も陰性であった

と記載されています。

試験データをみるかぎり、いくつか皮膚反応を示す例が報告されていますが、化粧品配合上限は1.0%以下であり、数例を除いて皮膚感作なしと報告されているため、一般的に皮膚炎を有する場合において皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

光感作性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2002)によると、

  • BHTに対する紫外線の影響を検討するために、BHTの局所適用を用いて光増刊作用を評価したところ、光増感性がないことが立証された

と記載されています。

安全性データをみるかぎり、光感作性なしと報告されているため、一般的に光感作性はほとんどないと考えられます。

安全性についての捕捉

BHTは、発がん性が疑われていたこともあり、多くの変異原性試験(∗1)が実施されており、変異原性試験の多くが陰性であった中で、一部では陽性反応も報告されており、変異原性自体が完全に否定されているわけではありません(文献3:2008;文献4:2011;文献12:1981)

∗1 変異原性とは、生物の遺伝情報(DNAの塩基配列または染色体の構造や数)に不可逆的な変化を引き起こす性質のことであり、細胞がん化の誘発因子として知られているため、変異原性試験の結果は発がん性リスクの有無でもあります。

ただし、BHTの発がん性に関しては、

  • IARC(国際がん研究機関)
  • ACGIH(アメリカ産業衛生専門家会議)
  • NTP(米国国家毒性プログラム)
  • 日本産業衛生学会
  • DFG(ドイツ研究振興協会)

これら世界の主要機関における発がん性の分類に記載されておらず、また2008年に環境庁が報告した過去の実験動物を用いたBHTの発がん性試験データにおいても有意な腫瘍の発生率を示したものはみあたらないため(文献3:2008)、現時点でヒトに対する発がん性を示唆する根拠はないと考えられます。

∗∗∗

BHTは安定化成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:安定化成分

∗∗∗

文献一覧:

  1. Cosmetic Ingredient Review(2002)「Final Report on the Safety Assessment of BHT」International Journal of Toxicology(21)(2),19-94.
  2. S Fujisawa, et al(2004)「Radical-scavenging activity of butylated hydroxytoluene (BHT) and its metabolites.」Chemistry and Physics of Lipids(130)(2),189-195.
  3. 環境省(2008)「2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール」化学物質の環境リスク評価 第6巻,1-27.
  4. 食品安全委員会(2011)「ジブチルヒドロキシトルエン」食品健康影響評価に関する調査報告書.
  5. L G Ladomery, et al(1963)「The urinary excretion of ¹⁴C-labelled butylated hydroxytoluene by the rat」The Journal of Pharmacy and Pharmacology(15)(11),771.
  6. L G Ladomery, et al(1967)「The excretion of [¹⁴C] butylated hydroxytoluene in the rat」The Journal of Pharmacy and Pharmacology(19)(6),383-387.
  7. L G Ladomery, et al(1967)「The biliary metabolites of butylated hydroxytoluene in the rat.」The Journal of Pharmacy and Pharmacology(19)(6),388-394.
  8. J W Daniel, et al(1965)「The absorption and excretion of butylated hydroxytoluene (BHT) in the rat.」Food and Cosmetics Toxicology(3)(3),405-415.
  9. M Matsuo, et al(1984)「Comparative metabolism of 3,5-di-tert-butyl-4-hydroxytoluene (BHT) in mice and rats.」Food and Cosmetics Toxicology(22)(5),345-354.
  10. J W Daniel, et al(1967)「Excretion of butylated hydroxytoluene (BHT) and butylated hydroxyanisole (BHA) by man.」Food and Cosmetics Toxicology(5)(4),475-479.
  11. 田村 健夫, 他(1990)「酸化防止剤」香粧品科学 理論と実際 第4版,222-225.
  12. 森田 和良, 他(1981)「化粧品関連物質の突然変異原性」日本化粧品技術者会誌(15)(3),243-253.
  13. 西村 誠, 他(1984)「香粧品成分のパッチテスト最近5年間の成績」皮膚(26)(4),945-954.

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