硫酸Naとは…成分効果と毒性を解説

増粘 温感
硫酸Na
[化粧品成分表示名称]
・硫酸Na

[医薬部外品表示名称]
・硫酸ナトリウム、硫酸ナトリウム(乾燥)

化学構造的に無機酸の一種である硫酸(H2SO4のナトリウム塩であり、水溶液では中性を示す式量142.04の無機塩です(文献3:1994)

硫酸Naは、水和物が「芒硝(ぼうしょう)」と呼ばれており、温泉の一種であるナトリウム-硫酸塩泉(芒硝泉)の主成分でもあることから、保温効果をもつ温泉の効能成分として広く知られています。

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、入浴剤、シャンプー製品、ボディソープ製品、ボディケア製品などに配合されています。

陰イオン界面活性剤水溶液の増粘

陰イオン界面活性剤水溶液の増粘に関しては、まず前提知識として界面活性剤の構造とミセルについて解説します。

界面活性剤は、以下の図のように、

陰イオン界面活性剤の構造図

化学構造的に親水基(水溶性)と疎水基(油溶性)をもっており、水中における界面活性剤の現象として親水基部分は水に溶け込みますが、疎水基部分は安定しようとするために水のないところ(溶液の表面や容器の壁面)に逃げようとします。

ただし、表面には限りがあり、さらに界面活性剤の濃度を増やすと疎水基の逃げ場がなくなり、疎水基は水との反発をなるべく減らすために、以下の図のように、

ミセルの基本構造

疎水基同士で集合し、親水基を水側に向けてミセル(micelle:会合体)を形成し始めます。

この疎水基の逃げ場がなくなってミセルが形成され始める濃度のことを臨界ミセル濃度(cmc:critical micelle concentration)と定義しており、また界面活性剤はミセルを形成することで界面活性剤が有する様々な機能を発揮します。

陰イオン界面活性剤水溶液の増粘メカニズムのひとつに、無機塩を添加することによる増粘が知られており、この増粘メカニズムは無機塩の添加によってミセルが凝集し水溶液濃度が上昇することによるものであると報告されています(文献4:2009)

このような背景から、無機塩の一種である硫酸Naは陰イオン界面活性剤水溶液の増粘目的で、シャンプー、ボディソープなどに使用されています。

血流量増加による保温作用

血流量増加による保温作用に関しては、硫酸ナトリウム温水浴が保温効果を発揮することは以前より知られており、この保温効果の発現メカニズムは硫酸Naの皮膚表面の被覆あるいは皮下組織のわずかな循環刺激による血流量の増加であることが示唆されています(文献5:1990;文献6:1995)

このようなナトリウム-硫酸塩泉および硫酸Naの効能から、保温目的で入浴剤に汎用されています。

効果・作用についての補足

硫酸Naは、ナトリウム-硫酸塩泉においては皮膚をわずかに循環することにともなう刺激によって血液量を増加させ、その結果として保温効果が発揮されますが、これは温泉の主成分(高濃度)としての効果であり、一方で陰イオン界面活性剤水溶液の増粘剤として使用される場合は一般に微量であることから、増粘剤として配合されている場合は皮膚血流量に影響はほとんどないと考えられます。

ただし、スキンケア化粧品やボディ&ハンドケア製品などで硫酸Naの配合量が多いと考えられる場合(成分表示一覧のはじめの方に表示されている場合)や温泉水の効能をコンセプトとした製品の場合は、血流量増加による保温効果を目的に配合している可能性が考えられます。

実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の2000年および2015-2016年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を表しており、またリンスオフ製品というのは、洗い流し製品(シャンプー、ヘアコンディショナー、ボディソープ、洗顔料、クレンジングなど)を指します。

硫酸Naの配合比較調査(2000年および2015-2016年)

スポンサーリンク

硫酸Naの安全性(刺激性・アレルギー)について

硫酸Naの現時点での安全性は、

  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
  • 30年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし-軽度
  • 眼刺激性:ほとんどなし
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2000)によると、

  • [ヒト試験] 19人の被検者に9.7%硫酸Na水溶液を24時間閉塞パッチ適用し、パッチ除去後に皮膚刺激性を評価したところ、1人の被検者はほとんど知覚できない反応を示したが、他の18人は皮膚反応を示さなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1985)
  • [ヒト試験] 13人の被検者に0.1168%硫酸Naを含む固形石鹸フレーク溶液の24時間閉塞パッチを3回適用し、パッチ除去後にPII(Primary Irritation Index:皮膚一次刺激性指数)を0.0-4.0のスケールで評価したところ、11人の被検者に刺激スコア0.5-1.0が認められ、これらのうち7人は3回の適用すべてに反応し、2人は2および3回目の適用に反応し、残りの2人は3回目の適用のみ反応した。全体の平均刺激スコアは0.410であり、この試験物質は軽度の皮膚刺激剤に分類された(Hill Top Research Inc,1989)
  • [ヒト試験] 20人の被検者に1.8%硫酸Naを含むバブルバスパウダーを4日間連続でそれぞれ4時間パッチ適用したところ、この試験材料の適用濃度は予想される一般使用レベルの200倍であった。4回目の適用後に部位をスコアリングしたところ、13人の被検者は紅斑は認められず、乾燥も生じなかったが、軽度の紅斑および乾燥が7人および8人の被検者に認められた(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1990)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、非刺激-軽度の皮膚刺激が報告されているため、一般に皮膚刺激性は非刺激-軽度の皮膚刺激を引き起こす可能性があると考えられます。

眼刺激性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2000)によると、

  • [動物試験] 3匹のウサギの片眼の角膜に炭酸ナトリウムと硫酸Naの混合物(1:1)を0.01,0.03および0.1mL注入し、Draize法に基づいて注入1,2,3,4,7および14日後に眼刺激性を0-110のスケールで評価したところ、眼刺激スコアは0.01,0.03および0.1mLでそれぞれ11,17および36であった。これらの刺激は正常に戻るまで4-21日を要し、この試験物質は中程度の眼刺激剤に分類された(Griffith et al,1980)

と記載されています。

試験データをみるかぎりでは、中程度の眼刺激が報告されていますが、眼領域で使用されている化粧品の最大濃度は、アイメイクアップリムーバーで0.0064%と報告されており、試験データとして報告されている濃度よりもはるかに低いことから、化粧品に配合された硫酸Naによる眼刺激の可能性は非常に低いと予測されます(文献2:2016)

皮膚感作性(アレルギー性)について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2000)によると、

  • [ヒト試験] 61人の被検者に1.01%硫酸Naを含む水溶液を対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を閉塞パッチにて実施したところ、誘導期間において1人の被検者に軽度の紅斑が観察されたが、チャレンジ期間においてはいずれの被検者も皮膚反応を示さず、この試験物質は皮膚感作剤ではないと結論付けられた(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1976)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、皮膚感作なしと報告されているため、一般に皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

∗∗∗

硫酸Naは安定化成分、温冷感成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:安定化成分 温冷感成分

∗∗∗

文献一覧:

  1. Cosmetic Ingredient Review(2000)「Final Report on the Safety Assessment of Sodium Sulfate」International Journal of Toxicology(19)(1_Suppl),77-87.
  2. Cosmetic Ingredient Review(2016)「Final Amended Safety Assessment of Sodium Sulfate as Used in Cosmetics」Final Amended Report.
  3. 大木 道則, 他(1994)「硫酸ナトリウム」化学辞典,1523.
  4. 花王株式会社(2009)「界面活性剤組成物 」特開2009-120664.
  5. 古元 嘉昭, 他(1990)「硫酸ナトリウム・炭酸水素ナトリウム浴の効果(第3報)」日本温泉気候物理医学会雑誌(53)(3),133-136.
  6. 白倉 卓夫, 他(1995)「硫酸ナトリウム・炭酸水素ナトリウム温水浴の体表温, 皮膚血流量および血圧の日内変化におよぼす効果に関する研究」日本温泉気候物理医学会雑誌(59)(4),230-235.

スポンサーリンク

TOPへ