炭酸水素Naとは…成分効果と毒性を解説

pH調整 血行促進成分 保湿
炭酸水素Na
[化粧品成分表示名称]
・炭酸水素Na

[医薬部外品表示名称]
・炭酸水素ナトリウム

[慣用名]
・重曹、重炭酸ナトリウム、重炭酸ソーダ

化学構造的に炭酸水素イオン(HCO3⁻)とナトリウムイオン(Na⁺)から成る化学式NaHCO3で表される式量84.01の炭酸水素塩(重炭酸塩)です(文献2:1994)

炭酸水素Naは、「重曹(じゅうそう)」とも呼ばれており、温泉の一種であるナトリウム-炭酸水素塩泉(重曹泉)の主成分でもあることから、皮膚清浄作用(文献3:1988)、浴後の保湿性向上効果(文献4:1989;文献5:1994)および皮膚柔軟化効果(文献5:1994)をもつ温泉の効能成分として広く知られています。

化粧品以外の主な用途としては、食品分野においては膨張剤としてふくらし粉、ベーキングパウダーなどに(文献6:2001)、清涼飲料水などにpH調整剤として汎用されています(文献7:1990)

また、炭酸水素Naは水溶液中で有機酸と組み合わせる(反応する)と炭酸とナトリウムイオンとなり、炭酸はすぐに二酸化炭素ガスとして発泡することから、食品分野では従来から炭酸水素Naと有機酸の一種であるクエン酸の粉末を組み合わせ、それぞれの粉末が唾液中で混ざったときに発泡感(シュワシュワ感)をもたせる目的でグミ、飴、ラムネ、ガム、チョコレートなどに汎用されています(∗1)

∗1 それぞれの粉末を製品の外側にまぶしたり(飴、グミ)、製品中に分散させたり(ラムネ、ガム)、製品中に発泡性成分を封入するなど、製品によって唾液との接触点を変えて発泡感に変化をつけています。

ほかにも一般消費者の間で重曹の洗浄剤としての使用が広く知られていますが、炭酸水素Na(重曹)は脂肪酸汚れに対する洗浄効果は明確である一方で、タンパク質や炭化水素汚れに対しては水で洗うのと同等の洗浄性であり、石鹸の洗浄力と比較すると脂肪酸汚れ以外は石鹸の洗浄力を大きく下回ることが明らかになっていることから、少なくとも水溶液系での洗浄剤としての利用は科学的根拠がないと報告されています(文献8:2011;文献9:2013)

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、スキンケア化粧品、入浴剤、メイクアップ化粧品、シート&マスク製品、洗顔料&洗顔石鹸、クレンジング製品、シャンプー製品、コンディショナー製品、ボディ&ハンドケア製品、ネイル製品など様々な製品に汎用されています。

弱塩基性によるpH調整

弱塩基性によるpH調整に関しては、まず前提知識として塩基性について解説します。

塩基性とは酸と反応する性質のことであり、水溶液に限ってはアルカリ性と同義です。

炭酸水素Naは、水溶液で弱塩基性を示すことから、酸性を中和するマイルドなpH調整剤として使用されています(文献3:2012)

炭酸ガスによる血行促進作用

炭酸ガスによる血行促進作用に関しては、炭酸水素Naは水溶液中で有機酸と組み合わせる(反応する)ことで炭酸とナトリウムイオンとなり、炭酸はすぐに二酸化炭素ガスとして発泡するメカニズムを有していることから、炭酸水素Naと有機酸(∗2)の組み合わせで炭酸をコンセプトとした洗顔料、シート製品、ゲルパック製品、入浴剤などに使用されています。

∗2 炭酸水素Naと組み合わせる有機酸としては、一般的にクエン酸リンゴ酸などが用いられます。

皮膚柔軟化および保湿作用

皮膚柔軟化および保湿作用に関しては、炭酸水素Naは、温泉の一種であるナトリウム-炭酸水素塩泉(重曹泉)の主成分であり、効能として皮膚清浄作用(文献3:1988)、浴後の保湿性向上効果(文献4:1989;文献5:1994)および皮膚柔軟化効果(文献5:1994)などが明らかにされていることから、入浴剤の主成分として使用されています。

実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の2002-2004年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

炭酸水素Naの配合製品数と配合量の調査結果(2002-2004年)

スポンサーリンク

炭酸水素Naの安全性(刺激性・アレルギー)について

炭酸水素Naの現時点での安全性は、

  • 医療上汎用性があり有効性および安全性の基準を満たした成分が収載される日本薬局方に収載
  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
  • 40年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:ほとんどなし-わずか
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし(データなし)

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:1987)によると、

  • [動物試験] 6匹のウサギの無傷および擦過した皮膚に炭酸水素Na0.5gを24時間閉塞パッチ適用し、パッチ除去後に皮膚刺激性を評価したところ、いずれのウサギも皮膚刺激の兆候を示さなかった(Hudson Laboratories Inc,1972)
  • [動物試験] 6匹のウサギの無傷および擦過した皮膚に炭酸水素Na0.5gを24時間閉塞パッチ適用し、パッチ除去後に皮膚刺激性を評価したところ、この試験物質は皮膚刺激剤ではなかった(Leberco Laboratories,1972)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、共通して皮膚刺激なしと報告されているため、一般に皮膚刺激性はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:1987)によると、

  • [動物試験] 6匹ウサギ2群の片眼にそれぞれ100%炭酸水素Na(pH8.3)0.1mLを適用、もう片眼は未処置の対照とし、1群の眼は適用30秒後に水道水で2分間すすぎ、もう1群は眼をすすがず、Draize法に基づいて適用1時間後および1,2,3および7日後に眼刺激性を評価したところ、すべてのウサギの眼で結膜炎が観察され7日目まで持続した(J.C. Murphy et al,1982)
  • [動物試験] 6匹のウサギの片眼に炭酸水素Na0.086gを適用し、Draize法に基づいて眼刺激性を評価したところ、5匹にわずかな結膜発赤が観察されたが、この試験物質は眼刺激剤に分類できなかった(Leberco Laboratories,1972)
  • [動物試験] 6匹のウサギの片眼に炭酸水素Na0.1mLを適用し、適用7日眼まで眼刺激性を評価したところ、この試験物質はいずれのウサギの眼にも刺激を誘発しなかった(Hudson Laboratories Inc,1972)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、非刺激-わずかな眼刺激が報告されているため、一般に眼刺激性は非刺激-わずかな眼刺激を引き起こす可能性があると考えられます。

皮膚感作性(アレルギー性)について

日本薬局方および医薬部外品原料規格2006に収載されており、40年以上の使用実績がある中で重大な皮膚感作の報告がみあたらないため、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられますが、詳細な安全性試験データがみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。

∗∗∗

炭酸水素Naは安定化成分、血行促進成分、保湿成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:安定化成分 血行促進成分 保湿成分

∗∗∗

文献一覧:

  1. Cosmetic Ingredient Review(1987)「Final Report on the Safety Assessment of Sodium Sesquicarbonate, Sodium Bicarbonate, and Sodium Carbonate」Journal of the American College of Toxicology(6)(1),121-138.
  2. 大木 道則, 他(1994)「炭酸水素ナトリウム」化学辞典,819.
  3. 長井 克介(1988)「アルカリ塩類の皮膚清浄作用」日本温泉気候物理医学会雑誌(52)(1),16-18.
  4. 宍戸 吉浩, 他(1989)「浴用剤の保湿性に関する研究」日本温泉気候物理医学会雑誌(52)(2),97-103.
  5. 渡邊 智, 他(1994)「アルカリ塩類浴による皮膚柔軟性, 皮膚粘弾性及び皮膚角質水分量に関する研究」日本温泉気候物理医学会雑誌(57)(4),272-277.
  6. 平井 俊男(2001)「ベーキングパウダーについて」化学と教育(49)(10),667.
  7. 大森 薫, 他(1990)「玉露缶ドリンクの品質に及ぼす酸化防止剤並びにpH調整剤の影響」茶業研究報告(72),1-8.
  8. 大矢 勝, 他(2011)「炭酸水素ナトリウム(重曹)の洗浄力と環境影響の評価」繊維製品消費科学(52)(8),510-517.
  9. 北海道立消費生活センター(2013)「重曹で洗濯、洗浄率は?」, <http://www.do-syouhi-c.jp/test/kira79jyuusou.pdf> 2020年5月15日アクセス.
  10. 鈴木 一成(2012)「炭酸水素ナトリウム」化粧品成分用語事典2012,635.

スポンサーリンク

TOPへ