水酸化Na(水酸化ナトリウム)とは…成分効果と毒性を解説

pH調整剤
水酸化Na(水酸化ナトリウム)
[化粧品成分表示名称]
・水酸化Na

[医薬部外品表示名称]
・水酸化ナトリウム

[慣用名]
・水酸化Na

食塩水を電気分解して得られるかたくてもろく白色で結晶性のアルカリ剤(pH調整剤)です。

苛性ソーダと呼ばれることもあります。

水にきわめて溶けやすい性質です。

水酸化Kと似た働きで、希薄溶液は表皮を軟化させる作用がありますが、水酸化Kよりは緩和です。

ステアリン酸やラウリン酸などの脂肪酸と反応させて塩をつくり、石けんを合成する原料として使用されたり、カルボマー(アクリレーツ/アクリル酸(C10-30))クロスポリマーなどのアルカリ中和タイプの高分子と反応させて増粘させ、乳化の安定性を高めるために配合されています。

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水酸化Naの安全性(毒性・刺激性・アレルギー)について

水酸化Naは単体では水に溶けると非常に強いアルカリ性を示し、皮膚につくと大変危険で、毒物及び劇物取締法により劇物に指定されていますが、高級脂肪酸と水酸化Naなどの強アルカリ性の物質を反応させると石ケンと水の混合物に変化したり、油脂と水酸化Naなどの強アルカリ性の物質を反応させると石ケンとグリセリンの混合物に変化したり、アクリル酸系増粘剤と水酸化Naなどの強アルカリ性の物質を反応させると増粘した状態に変化します。

これらは鹸化や中和という化学反応で、わかりやすい例でいうと、中学や高校の理科の実験で強アルカリ性の水酸化Naと強酸性の塩酸を中和反応させて食塩水をつくるというものです。

このように、鹸化や中和させることで毒性や刺激性もなくなり、化粧品で使用される場合は必ずこのように反応させて使用し、さらに、余分な水酸化Kがある場合に備えてクエン酸などを一緒に配合することで中和させて危険性をなくす処方を古くから行ってきており、実績があります。

また、古くから幅広く使用実績がありながら、アレルギー(皮膚感作)の報告もないため、化粧品や石けんなどに使用する場合において安全性の高い成分であると考えられます。

以下は水酸化Naの試験データになりますが、すでに解説したように水酸化Naは毒物及び劇物取締法により劇物に指定されており、以下の試験結果は水酸化Naのみでの試験のため、濃度が高いものは当然ながら刺激性や腐食性があり、化粧品の安全性としては参考にならないとした上で、一応試験データとして掲載しておきます。

安全性を調査するために、国内外を問わず信頼性が高いと思われる安全性データシート(∗1)やレポートを参照しています。

∗1 安全性データシートとは、化粧品製造会社や化粧品販売会社のために提供されている成分の安全性データが記載されているシートで、一般消費者向けの資料ではありませんが、安全性を考える上で重要なエビデンスのひとつとなるため、一部引用させていただいています。

皮膚刺激性について

“Cosmetic Ingredient Review”の「Safety Assessment of Inorganic Hydroxides as Used in Cosmetics」(文献1:2015)によると、

  • [ヒト試験] 30人の被検者に0.5%水酸化Na0.2mLを15および30分および1,2,3および4時間Webrilパッドを含むプレーンヒルトップチャンバーに含ませて適用したところ、強い曝露レベルのため、最大曝露時間は1時間に制限された
  • [ヒト試験] 16人の被検者に2%水酸化Na蒸留水を12mmのFinnチャンバーで適用し、1時間後にパッチ除去したところ、24および96時間後のビジュアルメディシンスコア(最大3)は1(弱陽性反応)であった
  • [ヒト試験] 19人の被検者に0.5mol/l水酸化Na50μlを30分1日2回4日間にわたってFinnチャンバーおよび解放パッチ適用し、30分の適用後10mlの水ですすぎ乾燥させたところ、3日目にTEWL値(経表皮水分蒸散量)が増加し反応が高刺激に及んだので中止された

厚生労働省が運営する”職場のあんぜんサイト”の安全データシート(文献2:2006)によると、

  • [動物試験] ブタの腹部に2N (8%)、4N (16%)、6N (24%)溶液を適用した試験で、大きな水疱が15分以内に現れ、8%およ び16%溶液は全表皮層に重度の壊死を生じ、24%溶液においては皮下組織の深部に至る壊死を伴う無数かつ重度の水疱が生じたとの報告(SIDS (2009))、およびウサギ皮膚に5%水溶液を4時間適用した場合に重度の壊死を起こしたとの報告(ACGIH (7th, 2001))に基づき区分1とした 。なお、pHは12(0. 05% w/w)(Merck (14th, 2006))である
  • [ヒト試験] ヒトへの影響では、皮膚に対して0.5%-4%溶液で皮膚刺激があり、0.5%溶液を用いた試験でボランティアの55および61%に皮膚刺激あったとの報告(SIDS (2009))がある。EU分類ではC、R35に分類されている

JETOC 日本化学物質安全・情報センターの初期評価プロファイル(文献3:2002)によると、

  • 濃度に依存して水酸化Na溶液は非刺激性、刺激性または腐食性があり、それらは皮膚、眼に直接的な局所影響を引き起こす。ヒトのデータに基づくと、0.5-4.0%の濃度は皮膚に刺激があり、一方、8.0%の濃度は動物の皮膚に腐食性があった。

と記載されています。

試験データは水酸化Na単体のもので試験結果は濃度の高いもの(5%以上が目安)は、当然ながら刺激性や腐食性があるという結果で共通しており、水酸化Na単体では濃度が高くなればなるほど刺激性や腐食性が強くなりますが、化粧品は石鹸などの製品においては鹸化や中和して用いるため、皮膚刺激性はないと考えられます。

眼刺激性について

“Cosmetic Ingredient Review”の「Safety Assessment of Inorganic Hydroxides as Used in Cosmetics」(文献1:2015)によると、

  • [動物試験] 6匹のウサギの結膜嚢に1および2%水酸化Na水溶液0.1mLを注入し、4,24,48,72および96時間後に観察したところ、2%では中等の角膜刺激を引き起こし(スコア最大4のうち2)、4時間と96時間の間で重度の結膜刺激がみられた。1%溶液では2%より影響は少なかった(詳細なデータは提供されなかった)
  • [動物試験] 3匹のウサギ3グループに0.5%水酸化Na水溶液をo.o1,0.03および0.1mL注入し、他の3匹のウサギ4グループには10%水酸化Na水溶液を0.003,0.01,0.05,1.0および0.1mL注入し、眼をすすがずに1時間および1,2,3,4,7,14および21日後に観察したところ、0.5%では軽度の眼刺激性、10%では腐食性。0.5%で0.01~0.1mLでは角膜に影響がなく、グレード1の虹彩炎が2/3のウサギに観察されたが1日目までには消失していた。10%で0.05および0.1mLにおいては眼に改善できないほどの影響があった
  • [動物試験] 7匹のウサギの結膜嚢に0.004,0.04,0.2,0.4および1.2%水酸化Na蒸留水を滴下し、1,2,3,4,7および3~4日ごとに21日目まで観察したところ、0.004~0.2%までは非刺激性で、0.4%では軽度の刺激性、1.2%では腐食性であった

厚生労働省が運営する”職場のあんぜんサイト”の安全データシート(文献2:2006)によると、

  • [動物試験] ウサギ眼に対し1.2%溶液ないし2%以上の濃度が腐食性濃度との記述〔SIDS (2009)〕、pH は12 (0.05% w/w)〔Merck (14th,2006)〕であることから区分1とした
  • [ヒト試験] ヒトの事故例で高濃度の粉じんまたは溶液により重度の眼の障害の報告〔ACGIH (7th, 2001)〕や誤って眼に入り失明に至るような報告〔DFGOT vol.12 1999)〕が多数ある

JETOC 日本化学物質安全・情報センターの初期評価プロファイル(文献3:2002)によると、

  • 濃度に依存して水酸化Na溶液は非刺激性、刺激性または腐食性があり、それらは皮膚、眼に直接的な局所影響を引き起こす。動物のデータによると、眼の非刺激レベルは0.2-1.0%であり、一方、腐食性濃度は1.2%またはそれより高かった

と記載されています。

試験データは水酸化Na単体のもので試験結果は濃度の高いものは、当然ながら刺激性や腐食性があるという結果で共通しており、水酸化Na単体では濃度が高くなればなるほど刺激性や腐食性が強くなりますが、化粧品は石鹸などの製品においては鹸化や中和して用いるため、眼刺激性はないと考えられます。

アレルギー(皮膚感作性)について

“Cosmetic Ingredient Review”の「Safety Assessment of Inorganic Hydroxides as Used in Cosmetics」(文献1:2015)によると、

  • [ヒト試験] 15人の男性被検者に誘導期間において0.63~1%水酸化Naを反復パッチテストしたところ、皮膚感作性は示さなかった。また皮膚刺激反応は濃度と相関関係にあった

厚生労働省が運営する”職場のあんぜんサイト”の安全データシート(文献2:2006)によると、

  • [ヒト試験] 男性ボランティアによる皮膚感作性試験で、背中に0.063%-1.0%溶液を塗布して誘導をかけ、7日後に0.125%溶液を再塗布したが、用量依存性の刺激増強はあったが、再塗布したパッチ面の反応の増強は認められなかった。したがって、水酸化Naには皮膚感作性がなかった。さらに、水酸化ナトリウムは長年広く使用され来ており、ヒトの皮膚感作症例の報告も無いことから水酸化ナトリウムは皮膚感作性物質とは考えられないという結論〔SIDS (2009)〕に基づき、区分外とした

JETOC 日本化学物質安全・情報センターの初期評価プロファイル(文献3:2002)によると、

  • 皮膚感作性を示さなかった。これは広範囲のヒトの経験により支持される

と記載されています。

試験結果では皮膚感作性を示さず、使用実績が古くまた広く使用されているにもかかわらず国内でも重大なアレルギーの報告はないため、アレルギー(皮膚感作)は起こらないと考えられます。

化粧品毒性判定事典による毒性判定について

化粧品成分名 判定
水酸化Na 毒性なし

参考までに化粧品毒性判定事典によると、水酸化Naは毒性なし(∗2)となっており、毒性に関しては心配する必要はありません。

∗2 毒性判定事典の毒性レベルは「毒性なし」「△」「■」「■■」となっており、△は2~3個で■1個に換算し、■が多いほど毒性が強いという目安になり、製品の毒性成分の合計が■4つ以上なら使用不可と判断されます。

∗∗∗

水酸化Naは 安定化成分 にカテゴライズされています。

他の安定化成分など安定化成分一覧は以下からお読みください。

参考:安定化成分一覧

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文献一覧:

  1. “Cosmetic Ingredient Review”(2015)「Safety Assessment of Inorganic Hydroxides as Used in Cosmetics」, <http://online.personalcarecouncil.org/ctfa-static/online/lists/cir-pdfs/FR703.pdf> 2017年10月24日アクセス.
  2. “職場のあんぜんサイト”(2006)「安全データシート」, <http://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/1310-73-2.html> 2017年10月24日アクセス.
  3. JETOC 日本化学物質安全・情報センター(2002)「初期評価プロファイル 水酸化ナトリウム」, <http://www.jetoc.or.jp/safe/siap_top.html> 2017年10月24日アクセス.

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