水酸化K(水酸化カリウム)とは…成分効果と毒性を解説

pH調整
水酸化K
[化粧品成分表示名称]
・水酸化K

[医薬部外品表示名称]
・水酸化カリウム

塩化カリウム水溶液を電解して得られる、苛性カリと呼ばれる強塩基性(強アルカリ性)を示す水溶性のカリウム水酸化物です。

水酸化Kは、物性・化学特性は水酸化Naとほとんど同様であり、常温ではカリウムイオンと水酸化物イオンからなるイオン結晶であり、水中では完全に電離し、水酸化物イオンを放出するため、強いアルカリ性を示します。

アルカリ性については水酸化Naよりも強大(高い)ですが、生成物としてカリウムが必要でない場合は安価な水酸化Naで代用されることが多いです。

1955年に厚生労働省によって毒物及び劇物取締法として、水酸化カリウム及びこれを含有する製剤(水酸化カリウム5%以下を含有するものを除く)で液体状のものを毒物・劇物と定めています(文献2:1955)

化粧品においては、一般的に含有濃度は1%以下であり、またpH調整剤として中和反応により弱アルカリ性に調整されているため、市販製品に配合されている水酸化Kは毒物・劇物ではなく、安全性に問題はありません。

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、スキンケア化粧品、ボディ&ハンドケア製品、メイクアップ化粧品、洗浄製品、洗顔料&洗顔石鹸、日焼け止め製品、シート&マスク製品、ネイル製品などに使用されています(文献1:2015)

ケン化または中和反応によるセッケン合成作用

ケン化または中和反応によるセッケン合成作用に関しては、まず前提知識としてセッケン合成メカニズムおよびセッケンの種類について解説します。

セッケンは、以下のように、

高級脂肪酸または油脂 + アルカリ塩

弱酸性を示す高級脂肪酸または油脂とアルカリ塩を反応させることで合成しますが(∗1)、アルカリ塩の種類によってセッケンのタイプが以下のように分類されます。

∗1 高級脂肪酸とアルカリ塩の反応によってセッケンを合成する方法を中和法、油脂とアルカリ塩の反応によってセッケンを合成する方法をケン化法といいます。

石鹸の種類 アルカリ塩 状態 pH
ナトリウム石鹸 水酸化ナトリウム(強塩基) 個体 弱アルカリ性
カリウム石鹸 水酸化カリウム(強塩基) 液体 弱アルカリ性
トリエタノールアミン石鹸 トリエタノールアミン(弱塩基) 液体 中性
アルギニン石鹸(アミノ酸石鹸) L-アルギニン(弱塩基) 液体 中性

一般的に固形石けんを合成する目的で水酸化Naが、液体石けんを合成する目的で水酸化Kが用いられ、これらで合成された石けんは「純石けん」と呼ばれ、pH9.5-10.5の弱アルカリ性を示し、水に溶けやすく高い洗浄力を有します。

1961年にアメリカのマサチューセッツ総合病院によって報告されたラウリン酸ナトリウムの皮膚浸透とpHの関係検証によると、

pH8.5以下の低pHでは界面活性剤の皮膚浸透による角質層内脂質溶解が起こりやすく、pH11以上の高pHではアルカリによるタンパク質変性(皮膚角質層の障害)を起こす可能性がある。

ただし、現在、家庭で使用されている洗浄液でpHが10.5を超えることはほとんどない。

また、事実上pH9.5-10.5の間のみこれらの作用は起こらなかった。

皮膚のこの一連の反応は、皮膚が有するアルカリ中和能とアルカリ値が高いほど皮膚浸透性が低下する性質によって説明できる。

このような検証結果が明らかにされており(文献6:1961)、つまり、皮膚にほとんど浸透せず、なおかつタンパク質変性が起こらないpH値が9.5-10.5であると結論付けられていることから、水酸化Kを反応させた純石けんは、安全性に問題ない物質であると考えられます。

また、アルカリ塩の違いによる洗浄力への影響は、1977年に金沢大学および大阪市立大学によって報告された脂肪酸塩の種類が洗浄におよぼす影響検証によると、

脂肪酸としてパルミチン酸またはオレイン酸に水酸化Na、水酸化KおよびTEAを反応させた石けん0.01M/ℓを用いて、卵白で汚染された布を40℃および80℃で30分間洗浄した場合の洗浄効果を評価したところ、以下のグラフのように、

脂肪酸塩の塩の種類が未変性卵白汚染布の洗浄効果におよぼす影響

脂肪酸塩の塩の種類が未変性卵白汚染布の洗浄効果におよぼす影響

卵白汚染布の洗浄においては、脂肪酸の種類による著しい差異は認められず、またTEAを反応させた石けんと比較すると、水酸化Kを反応させた石けんではいずれも高い洗浄効率を示した。

次に牛乳で汚染された布の洗浄の場合は、以下のグラフのように、

脂肪酸塩の塩の種類が熱変性牛乳汚染布の洗浄効果におよぼす影響

脂肪酸塩の塩の種類が熱変性牛乳汚染布の洗浄効果におよぼす影響

卵白汚染布の場合と同様に、脂肪酸の種類による著しい差異は認められず、中温洗浄(40℃)では塩の間に明確な差異は認められないが、高温洗浄(80℃)ではTEAと比較して水酸化Kの洗浄効果が高いことが認められた。

このような検証結果が明らかにされており(文献3:1977)、汚染物によって差はあるものの、総合的に水酸化Kで反応させた石けんの洗浄効果が高いことが認められています。

中和反応による増粘作用

中和反応による増粘作用に関しては、アルカリ剤で中和させて増粘するタイプの水溶性高分子であるカルボマー(アクリレーツ/アクリル酸(C10-30))クロスポリマーなどにアルカリ中和剤として処方することで増粘させ、乳化安定性を高めます(文献5:1990;文献6:2015)

pH調整による緩衝

pH調整による緩衝に関しては、まず前提知識として緩衝溶液(Buffer Solution)について解説します。

緩衝溶液とは、外からの作用に対して、その影響を和らげようとする性質をもつ溶液であり、つまりある程度の酸または塩基(アルカリ)の添加あるいは除去または希釈(∗2)にかかわらず、ほぼ一定のpHを維持する作用を有する溶液のことです(文献7:1998-1999)

∗2 溶液を薄めることです。

たとえば人間の皮膚は弱酸性であり、入浴などで中性または弱アルカリに傾いたとしてもすぐに弱酸性に保たれますが、これは緩衝作用が働いているためです。

化粧品においては、pHが変動してしまうと効果を発揮しなくなる成分や品質の安定性が保てなくなる成分などが含まれており、化粧品の内容物がpH変動要因である大気中の物質に触れたり、人体の細菌類に触れても品質を保つ(pHを保つ)ために、酸性成分との組み合わせによる塩基性成分として水酸化Kが使用されることがあります。

実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の2014-2015年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を表しており、またリンスオフ製品というのは、洗い流し製品(シャンプー、洗顔料、クレンジングなど)を指します。

水酸化Kの配合状況調査結果(2014-2015年)

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水酸化Kの安全性(刺激性・アレルギー)について

水酸化Kの現時点での安全性は、

  • 医療上汎用性があり有効性および安全性の基準を満たした成分が収載される日本薬局方に収載
  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
  • 50年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:濃度依存的に皮膚刺激あり
  • 皮膚刺激性(製品に配合された場合またはけん化・中和した場合):ほとんどなし(データなし)
  • 眼刺激性:濃度依存的に眼刺激性あり(0.5%:わずか、1%:軽度-中程度、5%:腐食性)
  • 眼刺激性(製品に配合された場合またはけん化・中和した場合):詳細不明
  • 皮膚感作性:ほとんどなし

これらの結果から、化粧品配合量および化粧品・製品における通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

水酸化Kは強塩基性を示すことから、単一では5%濃度以上で毒物・劇物に定められていますが、化粧品などの製品に配合される場合は、けん化・中和反応を通じて弱アルカリ性に処方されているため、刺激性および毒性はなくなり、安全に使用できるようになります。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2015)によると、

  • [動物試験] 6匹のウサギに1%および2%水酸化Kを含む溶液0.5mLを4時間閉塞パッチ適用し、Draize法に基づいて評価したところ、1%では腐食性はなく、2%では腐食性であった(E H Vernot,1977)
  • [動物試験] 6匹のモルモットの無傷および擦過した皮膚に10%水酸化Kを含む試験物質0.5mLを4時間閉塞パッチ適用し、試験部位を4,24および48時間後に評価したところ、腐食性であった(G A Nixon,1975)
  • [動物試験] 6匹のウサギに5%および10%水酸化Kを含む試験物質0.2mLをヒルトップチャンバーで1または4時間適用、またはWebrilガーゼで4時間閉塞パッチ適用し、パッチ除去30分および24,48および72時間後で段階的に評価したところ、両方の濃度で試験部位に重度の皮膚刺激が認められた(G A Nixon,1990)
  • [動物試験] 6匹のウサギの無傷および擦過した皮膚に5%水酸化Kを含む試験物質0.1mLを24時間閉塞パッチ適用し、Draize法に基づいて評価したところ、無傷の皮膚には軽度の刺激物であり、擦過した皮膚には重度の刺激物であった(G T Johnson,1975)

と記載されています。

試験データは水酸化K自体のものであり、水酸化Kは強塩基性であるため、そのまま皮膚に塗布した場合、強い皮膚刺激および腐食性を伴います。

一方で、化粧品・製品に配合されている水酸化Kは中和反応にて弱塩基性(弱アルカリ性)となっており、古くからの使用実績もあるため、化粧品配合下および通常使用下において、皮膚刺激性はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2015)によると、

  • [動物試験] 10匹のウサギの眼に0.1,0.5,1および5%水酸化K0.1mLを5分間または24時間点眼し、曝露後に眼はすすぎ、点眼1,24,48および72時間後および7日目まで観察したところ、5%濃度で点眼した1匹は5分間点眼で高い腐食性を示し、1%濃度で点眼した3匹は5分間で刺激性を示した。0.5%濃度で点眼した3匹は24時間でわずかな刺激性を示し、0.1%濃度で点眼した3匹は24時間で眼刺激性なしであった(G T Johnson,1975)

と記載されています。

試験データは水酸化K自体のものであり、水酸化Kは強塩基性であるため、そのまま眼に点眼した場合、濃度依存的に強い眼刺激を伴います。

一方で、化粧品・製品に配合されている水酸化Kは中和反応にて弱塩基性(弱アルカリ性)となっていますが、けん化物・中和物としての水酸化Kの安全性データはみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細は不明です。

皮膚感作性(アレルギー性)について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2015)によると、

  • [動物試験] 5匹のモルモットに0.1%水酸化K水溶液を対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施したところ、感作性を示さなかった(G T Johnson,1975)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、皮膚感作性なしと報告されているため、皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

∗∗∗

水酸化Kは安定化成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:安定化成分

∗∗∗

文献一覧:

  1. Cosmetic Ingredient Review(2015)「Safety Assessment of Inorganic Hydroxides as Used in Cosmetics」Final Report.
  2. 厚生労働省(1955)毒物及び劇物取締法施行令 政令第二百六十一号 別表第二(第四十二条関係).
  3. 所 康子, 他(1977)「石けんによるたん白質汚れの洗浄に関する研究」繊維製品消費科学(18)(6),224-229.
  4. I H Blank, et al(1961)「Penetration of Anionic Surfactants into Skin: Ⅲ. Penetration from Buffered Sodium Laurate Solutions」Journal of Investigative Dermatology(37)(6),485-488.
  5. 田村 健夫, 他(1990)「高分子化合物」香粧品科学 理論と実際 第4版,147-153.
  6. 宇山 光男, 他(2015)「水酸化K」化粧品成分ガイド 第6版,174.
  7. 西山 成二, 他(1998-1999)「緩衝溶液についての一考察 -緩衝溶液および混合緩衝溶液の緩衝作用-」順天堂医学(44),S1-S6.

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