安息香酸Naとは…成分効果と毒性を解説

防腐
安息香酸Na
[化粧品成分表示名称]
・安息香酸Na

[医薬部外品表示名称]
・安息香酸ナトリウム

水に溶けにくい安息香酸に水溶性のナトリウム塩を反応させて水に溶けやすくした水溶性の安息香酸ナトリウム塩です。

一般には食品・飲料の保存剤・防腐剤として汎用されており、また医薬品および化粧品の防腐剤としても使用されており、最も汎用されている防腐剤のひとつですが、酸性域にしか抗菌作用を示さない特徴があり、化粧品においては他の防腐成分と併用されることが多いです。

吸収性・代謝に関しては、食品などによる経口摂取の場合は、1972年にFDA(Food and Drug Administration:アメリカ食品医薬品局)によって、1973年にFASEB(Federation of American Societies for Experimental Biology:米国実験生物学会連合)によって、肝臓でグリシンと結合して馬尿酸となり、用量の75%-100%が6時間以内に尿中に排泄され、残りの用量は2-3日以内に排泄されると報告されています(文献1:2001)

皮膚においては、以下のように、

  • ワセリン中に安息香酸を塗布したところ、用量の60.5%が吸収された(Bronaugh and Franz,1986)
  • 24時間内の尿中の安息香酸排泄量を定量化し、身体領域の2ヶ所に安息香酸を塗布した後、ある部位をテープで剥離し角質層中の安息香酸の量を測定したところ、尿からの定量値はテープ剥離から推定された予測値と同等であった(Rougier et al,1986)
  • 経皮吸収に対する加齢の影響を検討するために、22-40歳グループと41-64歳グループに分け、2つのグループの前腕に安息香酸を含むアセトンを24時間閉塞パッチ適用し、パッチ除去後に塗布部位を洗浄する手順を7日目まで続けた。7日間の尿排泄を分析したところ、22-40歳グループでは、適用量の36.2±4.6%が経皮吸収されたことを示し、一方で41-64歳グループでは、適用量の19.5±1.6%が経皮吸収されたことを示した。その差は統計的に有意であった(Roskos et al,1989)

このように報告されており(文献1:2001)、また安息香酸と安息香酸Naの生体内変換は同等であることが実証されているため(文献1:2001;文献4:1991)、安息香酸Naは経皮吸収された後に尿排泄されることが認められています。

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、洗浄製品、ボディ&ハンドケア製品、スキンケア化粧品、頭皮ケア製品などに使用されています。

製品自体の抗菌・防腐作用

製品自体の抗菌・防腐作用に関しては、大阪市立衛生研究所によって報告された安息香酸Naの抗菌活性検証によると、

通常の培地を用いたin vitro試験において、化粧品の腐敗でよく見受けられる微生物に対する安息香酸NaのMIC(minimum inhibitory concentration:最小発育阻止濃度)を検討したところ、以下のグラフのように、

微生物 MIC(%)
枯草菌(グラム陽性桿菌)
Bacilus subtilis
>0.12
黄色ブドウ球菌(グラム陽性球菌)
Staphylococcus aureus
>0.12
コウジカビ(カビ)
Aspergillus niger
>0.12

安息香酸Naは抗菌活性を示した。

このような検証結果が明らかにされており(文献3:-)、安息香酸Naに製品自体の抗菌・防腐作用が認められています。

水への溶解性が高いこと、アルカリ性には不活性であり、酸性に高い抗菌性を発揮する特徴を有しており、2010年に報告された国立医薬品食品衛生研究所の化粧品中の防腐剤の分析では、安息香酸Naは21製品中11製品(すべてシャンプー系)に使用されています(文献5:2010)

安息香酸Naが配合された多くの製品でフェノキシエタノールまたはメチルパラベンが併用されており、安息香酸Naと併用することで防腐効果を維持しつつ、それぞれの配合量を減少させる処方であると推測されます。

安息香酸Naはポジティブリストであり、化粧品に配合する場合は以下の配合範囲内においてのみ使用されます。

種類 最大配合量(g/100g)
粘膜に使用されることがない化粧品のうち洗い流すもの 安息香酸塩類の合計量として1.0
粘膜に使用されることがない化粧品のうち洗い流さないもの
粘膜に使用されることがある化粧品

また、安息香酸ナトリウムは医薬部外品(薬用化粧品)への配合において配合上限があり、配合範囲は以下になります。

種類 配合量
薬用石けん・シャンプー・リンス等、除毛剤 1.0
育毛剤 1.0
その他の薬用化粧品、腋臭防止剤、忌避剤 1.0
薬用口唇類 1.0
薬用歯みがき類 1.0
浴用剤 1.0

実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の2010-2011年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を表しており、またリンスオフ製品というのは、洗い流し製品(シャンプー、洗顔料、クレンジングなど)を指します。

安息香酸Naの配合製品数と配合量の調査(2010-2011年)

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安息香酸Naの安全性(刺激性・アレルギー)について

安息香酸Naの現時点での安全性は、

  • 医療上汎用性があり有効性および安全性の基準を満たした成分が収載される日本薬局方に収載
  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
  • 10年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:わずか
  • 皮膚感作性:ほとんどなし
  • 皮膚感作性(アレルギー性皮膚炎を有する場合):ほとんどなし(感作率0.7%)
  • 光毒性・光感作性:ほとんどなし

このような結果となっており、配合上限濃度以下および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

試験は安息香酸のデータもありますが、安息香酸と安息香酸Naはほぼ同じ物性であるため、安息香酸のデータは安息香酸Naのデータとして適用できます。

皮膚刺激性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2001)によると、

  • [ヒト試験] 12人の被検者に0.2%安息香酸を含むファンデーションを1週間のうち3回、24時間閉塞パッチ適用し、試験部位をパッチ除去後すぐおよび24時間後に皮膚刺激性を評価したところ、皮膚反応は観察されなかった(Biosearch Inc,1992)
  • [ヒト試験] 24人の被検者に0.2%安息香酸を含むファンデーションを45日にわたって1日2回パッチ適用し、皮膚刺激性を15,21および35日目に看護師によって評価したところ、皮膚刺激指数はすべて0であった(Education and Research Foundation Inc,1992)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、皮膚刺激性なしと報告されているため、皮膚刺激性はほとんどないと考えられます。

– ニキビを有する場合 –

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2001)によると、

  • [ヒト試験] 軽度-中程度のニキビを有する24人の患者に0.2%安息香酸を含むファンデーションを45日にわたって1日2回パッチ適用し、ニキビの病変および刺激性を0,3,7,10,28および45日目に皮膚科医によって評価したところ、ニキビの有無による病変の有意な変化は観察されず、皮膚刺激指数はすべて0であった。被験者の主観的なログには、時折乾燥またはかゆみが発生することが記録されていた(Education and Research Foundation Inc,1992)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、皮膚刺激性なしと報告されているため、ニキビを有している場合において、皮膚刺激性はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献2:2017)によると、

  • [動物試験] ウサギの片眼に安息香酸Na(濃度不明)を適用したところ、わずかな眼刺激があった(OECD SIDS,2001)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、わずかな眼刺激性が報告されているため、わずかな眼刺激性が起こる可能性があると考えられます。

皮膚感作性(アレルギー性)について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2001)によると、

  • [ヒト試験] 75人の被検者に0.2%安息香酸を含むファンデーションを対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を閉塞パッチにて実施したところ、いずれの期間においても皮膚反応はなかった(Biosearch Inc,1992)
  • [ヒト試験] 25人のボランティアに2%安息香酸を含む軟膏を対象にMaximization皮膚感作試験を実施したところ、皮膚反応は観察されなかった(Kligman,1977;Opdyke,1979)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、皮膚感作性なしと報告されているため、皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

– 皮膚感作を有する場合 –

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2001)によると、

  • [ヒト試験] 以前に過酸化ベンゾイルで陽性反応を示した10人の被検者に5%安息香酸を含む軟膏を対象にMaximization皮膚感作試験を実施したところ、感作反応は誘発されなかった(Leyden and Kligman,1977)
  • [ヒト試験] アレルギ-性接触性皮膚炎の可能性を有する5,202人の患者(537人は化粧品において刺激またはアレルギーの既往歴あり)に安息香酸を対象にパッチテストしたところ、34人(0.7%)に感作反応が認められた。化粧品アレルギーを有する155人の中では1人のみ感作反応が認められた(Broeckx,1987)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、0.7%皮膚感作性が報告されていますが、この数字は一般的には皮膚感作性物質ではないとされる範囲内であるため、皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

ただし、0.7%の割合で感作反応を誘発していることも事実であるため、アレルギー性接触性皮膚炎を有する場合は注意が必要であると考えられます。

光毒性・光感作性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2001)によると、

  • [ヒト試験] 77人の被検者に0.1%安息香酸を含む製剤を対象に光感作試験をともなうHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を閉塞パッチにて実施したところ、いずれの期間においても光感作反応はなかった(Biosearch Inc,1991)
  • [ヒト試験] 10人の被検者に0.2%安息香酸を含むファンデーションを対象に光感作試験をともなうHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を閉塞パッチにて実施したところ、いずれの期間においてもUVAおよびUVBに対する光毒性はなかった(Biosearch Inc,1992)
  • [ヒト試験] 30人の被検者に0.2%安息香酸を含むファンデーションを対象に光感作試験をともなうHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を閉塞パッチにて実施したところ、いずれの期間においても光感作反応はなかった(Biosearch Inc,1992)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、共通して光毒性および光感作性なしと報告されているため、光毒性および光感作性はほとんどないと考えられます。

安全性についての捕捉

安息香酸Naは、遺伝毒性試験において以下のようにいくつかDNAへの影響が報告されています。

安息香酸はエイムス試験(文献6:1988;文献7:1988)およびSCE試験(文献8:1980)で陰性であり、また安息香酸ナトリウムはエイムス試験(文献9:1991)、ラットによる優性致死試験(文献10:1974)およびin vitroおよびラットによる細胞遺伝学的評価(文献10:1974)で陰性であった。

ただし、CHO細胞株を用いた染色体異常試験で安息香酸ナトリウムは陽性であり(文献11:1977)、SCE試験では高容量(2mM)で陽性であった(文献12:1977)

また、アデノシン、グアノシン、ウリジンまたは子牛の胸腺DNAと安息香酸ナトリウムを最大12時間培養すると、UVスペクトルにわずかなシフトが生じると報告されていますが、DNA断片にはそのようなシフトはなく、培養過程においてDNAは無傷のままでなければならず、安息香酸ナトリウムは遺伝的レベルで作用しないと結論付けられています(文献13:1980)

このような試験結果が明らかにされています。

食品、医薬品および化粧品においては配合上限が定められており、使用実績も古く、かつ重大な遺伝的問題が報告されておらず現在も汎用されている事実から、遺伝毒性およびDNAへの影響はないと推測されますが、明確な結論はみつかっていないため、わかりしだい追補します。

∗∗∗

安息香酸Naは安定化成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:安定化成分

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文献一覧:

  1. Cosmetic Ingredient Review(2001)「Final Report on the Safety Assessment of Benzyl Alcohol, Benzoic Acid, and Sodium Benzoate」International Journal of Toxicology(20)(3),23-50.
  2. Cosmetic Ingredient Review(2017)「Safety Assessment of Benzyl Alcohol,Benzoic Acid and its Salts, and Benzyl Benzoate」International Journal of Toxicology(36)(3),5S-30S.
  3. 大阪化成株式会社(-)「イソプロピルメチルフェノール」技術資料.
  4. K Kubota, et al(1991)「Dose-dependent pharmacokinetics of benzoic acid following oral administration of sodium benzoate to humans.」European Journal of Clinical Pharmacology(41)(4),363–368.
  5. 五十嵐 良明, 他(2010)「化粧品中の防腐剤の分析:サリチル酸,安息香酸ナトリウム,デヒドロ酢酸ナトリウム,ソルビン酸カリウム,フェノキシエタノール及びパラベン類」Bulletin of National Institute of Health Sciences(128),85-90.
  6. H Fujita, et al(1986)「Mutagenicity test of food additives with Salmonella typhimurium TA97A and TA101.」東京都立衛生研究所研究年報(37),447-452.
  7. E Zeiger, et al(1988)「Salmonella mutagenicity tests: IV. Results from the testing of 300 chemicals.」Environmental and Molecular mutagenesis(11)(Suppl 12),1-157.
  8. A Oikawa, et al(1980)「Inhibitors of poly(adenosine diphosphate ribose) polymerase induce sister chromatid exchanges.」Biochemical and Biophysical Research Communications(97)(4),1311-1316.
  9. M J Prival, et al(1991)「Bacterial mutagenicity testing of 49 food ingredients gives very few positive results.」Mutation Research(260)(4),321-329.
  10. Litton Bionetics Inc(1974)「Mutagenic Evaluation of Compound FDA 71-37, Sodium Benzoate.」Technical Report,PB245453.
  11. M Jr Ishidate, et al(1977)「Chromosome tests with 134 compounds on Chinese hamster cells in vitro–a screening for chemical carcinogens.」Mutation Research(48)(3-4),337-353.
  12. S Abe, et al(1977)「Chromosome aberrations and sister chromatid exchanges in Chinese hamster cells exposed to various chemicals.」Journal of the National Cancer Institute(58)(6),1635-1641.
  13. G D Njagi, et al(1980)「DNA and its precursors might interact with the food preservatives, sodium sulphite and sodium benzoate.」Experientia(36)(4),413-414.

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