塩化Naとは…成分効果と毒性を解説



・塩化Na
[医薬部外品表示名]
・塩化ナトリウム
岩塩(英名:halite)および海水に主成分として含まれる化学式NaClで表されるナトリウムの塩化物であり、式量58.44の無機塩です(文献1:1994)。
ヒトを含めた哺乳類をはじめとする地球上の多くの生物にとって、必須ミネラルであるナトリウム源として生命維持になくてはならない重要な物質です。
一般に「塩」あるいは「食塩」と呼ばれる場合が多いですが、塩・食塩は塩化ナトリウムを主成分としながら様々なミネラルを含んだものであり、純粋な塩化ナトリウムとは異なります。
化粧品に配合される場合は、
これらの目的で、スキンケア製品、ボディ&ハンドケア製品、メイクアップ製品、洗浄製品、洗顔料&洗顔石鹸などに使用されています。
増粘調整
増粘調整に関しては、塩化Naは無機塩であり、陰イオン界面活性剤に塩化Naなどの無機塩を添加することによって陰イオン界面活性剤水溶液の粘度が増大することが知られています(文献2:2006;文献3:2009)。
また、(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマーに塩化Naを添加することで疎水基同士の物理架橋によって増粘することが明らかにされています(文献4:2013)。
このような背景から、シャンプー、ボディソープ、洗顔料、クレンジング、ハンドソープなど洗浄系製品に汎用されています。
乳化・懸濁安定化
乳化・懸濁安定化に関しては、油中水型(W/O型)乳化物の安定性を高める目的でリキッドファンデーション、アイシャドー、マスカラ、チーク、コンシーラー、乳液、フェイスクリームなどに配合されています(文献5:2015)。
塩化Naの安全性(刺激性・アレルギー)について
- 医療上汎用性があり有効性および安全性の基準を満たした成分が収載される日本薬局方に収載
- 外原規2021規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2021に収載
- 50年以上の使用実績
- 皮膚刺激性:化粧品配合範囲内においてほとんどなし(データなし)
- 眼刺激性:詳細不明
- 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし(データなし)
このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般に安全性に問題のない成分であると考えられます。
以下は、この結論にいたった根拠です。
皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について
食品および医療分野でも古くから使用実績があり、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられますが、詳細な安全性試験データがみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。
眼刺激性について
試験結果や安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細は不明です。
∗∗∗
塩化Naは安定化成分にカテゴライズされています。
成分一覧は以下からお読みください。
参考:安定化成分
∗∗∗
参考文献:
- 大木 道則, 他(1994)「塩化ナトリウム」化学辞典,205.
- 日光ケミカルズ(2006)「アニオン界面活性剤水溶液への塩の添加による挙動」新化粧品原料ハンドブックⅠ,171-172.
- 花王株式会社(2009)「界面活性剤組成物 」特開2009-120664.
- 森光 裕一郎, 他(2013)「新規アクリル酸系増粘剤の開発」住友化学技術誌,73-75.
- 宇山 侊男, 他(2015)「塩化Na」化粧品成分ガイド 第6版,144-145.