リン酸Naとは…成分効果と毒性を解説

緩衝
リン酸Na
[化粧品成分表示名称]
・リン酸Na

[医薬部外品表示名称]
・リン酸二水素ナトリウム

化学構造的にリン酸水素イオン(H2PO4⁻)とナトリウムイオン(Na⁺)から成る化学式NaH2PO4で表されるリン酸のナトリウム塩です。

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、スキンケア化粧品、ボディ&ハンドケア製品、メイクアップ化粧品、シート&マスク製品、クレンジング製品、シャンプー製品、洗顔料など様々な製品に配合されています。

pH調整による緩衝

pH調整による緩衝に関しては、まず前提知識として緩衝溶液(Buffer Solution)について解説します。

緩衝溶液とは、外からの作用に対して、その影響を和らげようとする性質をもつ溶液であり、つまりある程度の酸または塩基(アルカリ)の添加あるいは除去または希釈(∗1)にかかわらず、ほぼ一定のpHを維持する作用を有する溶液のことです(文献2:1998-1999)

∗1 溶液を薄めることです。

たとえば人間の皮膚は弱酸性であり、入浴などで中性に傾いたとしてもすぐに弱酸性に保たれますが、これは緩衝作用が働いているためです。

化粧品においては、pHが変動してしまうと効果を発揮しなくなる成分や品質の安定性が保てなくなる成分などが含まれており、化粧品の内容物がpH変動要因である大気中の物質に触れたり、人体の細菌類に触れても品質を保つ(pHを保つ)ために、代表的な緩衝剤のひとつとしてリン酸Na(酸性)とリン酸2Na(塩基性)との組み合わせが使用されています(文献3:2017)

生体にはもともとかなりのリン酸が含まれており、生体に影響を与えにくいことから、古くから使用されている代表的な緩衝剤です。

実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の2015-2016年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を表しており、またリンスオフ製品というのは、洗い流し製品(シャンプー、ヘアコンディショナー、ボディソープ、洗顔料、クレンジングなど)を指します。

リン酸Naの配合製品数と配合量の調査結果(2015-2016年)

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リン酸Naの安全性(刺激性・アレルギー)について

リン酸Naの現時点での安全性は、

  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
  • 30年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:ほとんどなし-最小限
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2016)によると、

  • [動物試験] ウサギの無傷の皮膚にリン酸Naを4時間開放パッチ適用したところ、この試験物質は皮膚刺激を誘発しなかった(M.L. Weiner et al,2001)
  • [動物試験] ウサギの無傷および擦過した皮膚にリン酸Naを24時間閉塞パッチ適用したところ、この試験物質は皮膚刺激を誘発しなかった(M.L. Weiner et al,2001)
  • [動物試験] CBA/Caマウスを用いて10%リン酸Naを含むプロピレングリコールをの局所リンパ節アッセイを実施したところ、非感作性であった(Organization for Economic Co-operation and Development,2011)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、共通して皮膚刺激および皮膚感作なしと報告されているため、一般に皮膚刺激性および皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2016)によると、

  • [動物試験] ウサギの眼にリン酸Naを点眼し、Draize法に従って眼刺激性を評価したところ、洗眼した場合では24時間で実質非刺激であり、非洗眼の場合では最小限の眼刺激性を誘発した(M.L. Weiner et al,2001)
  • [動物試験] ウサギの眼にリン酸Naを点眼し、眼刺激性を評価したところ、この試験物質は最小限の眼刺激を誘発した(C.C. Willhite,2013)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、非刺激-最小限の眼刺激が報告されているため、一般に眼刺激性は非刺激-最小限の眼刺激を引き起こす可能性があると考えられます。

∗∗∗

リン酸Naは安定化成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:安定化成分

∗∗∗

文献一覧:

  1. Cosmetic Ingredient Review(2016)「Safety Assessment of Phosphoric Acid and Its Salts as Used in Cosmetics」Final Report.
  2. 西山 成二, 他(1998-1999)「緩衝溶液についての一考察 -緩衝溶液および混合緩衝溶液の緩衝作用-」順天堂医学(44),S1-S6.
  3. 加藤 太一郎(2017)「緩衝液のイロハ」生物工学会誌(95)(8),476-479.

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