リン酸Kとは…成分効果と毒性を解説

pH調整 緩衝
リン酸K
[化粧品成分表示名称]
・リン酸K

[医薬部外品表示名称]
・リン酸二水素カリウム

化学構造的にリン酸水素イオン(H2PO4⁻)とカリウムイオン(K⁺)から成る化学式KH2PO4で表されるリン酸のカリウム塩です。

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、スキンケア化粧品、ボディ&ハンドケア製品、メイクアップ化粧品、シート&マスク製品、クレンジング製品、洗顔料、アウトバストリートメント製品など様々な製品に配合されています。

酸性によるpH調整

酸性によるpH調整に関しては、リン酸K溶液のpHは4.6前後の酸性を示すことから(文献2:1994)、pH調整剤として使用されています。

pH調整による緩衝

pH調整による緩衝に関しては、まず前提知識として緩衝溶液(Buffer Solution)について解説します。

緩衝溶液とは、外からの作用に対して、その影響を和らげようとする性質をもつ溶液であり、つまりある程度の酸または塩基(アルカリ)の添加あるいは除去または希釈(∗1)にかかわらず、ほぼ一定のpHを維持する作用を有する溶液のことです(文献3:1998-1999)

∗1 溶液を薄めることです。

たとえば人間の皮膚は弱酸性であり、入浴などで中性に傾いたとしてもすぐに弱酸性に保たれますが、これは緩衝作用が働いているためです。

化粧品においては、pHが変動してしまうと効果を発揮しなくなる成分や品質の安定性が保てなくなる成分などが含まれており、化粧品の内容物がpH変動要因である大気中の物質に触れたり、人体の細菌類に触れても品質を保つ(pHを保つ)ために、代表的な緩衝剤のひとつとしてリン酸K(酸性)とリン酸2Na(塩基性)との組み合わせが使用されています。

実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の2015-2016年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を表しており、またリンスオフ製品というのは、洗い流し製品(シャンプー、ヘアコンディショナー、ボディソープ、洗顔料、クレンジングなど)を指します。

リン酸Kの配合製品数と配合量の調査結果(2015-2016年)

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リン酸Kの安全性(刺激性・アレルギー)について

リン酸Kの現時点での安全性は、

  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
  • 30年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし-わずか
  • 眼刺激性:ほとんどなし-わずか
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし(データなし)

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2016)によると、

  • [動物試験] ウサギの無傷の皮膚にリン酸Kを4時間開放パッチ適用したところ、この試験物質は皮膚刺激を示さなかった(M.L. Weiner et al,2001)
  • [動物試験] ウサギの無傷および擦過した皮膚にリン酸Kを4時間閉塞パッチ適用したところ、この試験物質は皮膚刺激を示さなかった(M.L. Weiner et al,2001)
  • [動物試験] ウサギの無傷の皮膚にリン酸Kを24時間閉塞パッチ適用したところ、この試験物質はわずかな皮膚刺激を示した(M.L. Weiner et al,2001)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、非刺激-わずかな皮膚刺激が報告されているため、一般に皮膚刺激性は非刺激-わずかな皮膚刺激を引き起こす可能性があると考えられます。

眼刺激性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2016)によると、

  • [動物試験] ウサギの眼にリン酸Kを点眼し、Draize法に基づいて眼刺激性を評価したところ、洗眼群および非洗眼群の両方でこの試験物質は眼刺激を誘発しなかった(M.L. Weiner et al,2001)
  • [動物試験] ウサギの眼にリン酸Kを点眼し、Draize法に基づいて眼刺激性を評価したところ、この試験物質はわずかな眼刺激を誘発した(M.L. Weiner et al,2001)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、非刺激-わずかな眼刺激が報告されているため、一般に眼刺激性は非刺激-わずかな眼刺激を引き起こす可能性があると考えられます。

皮膚感作性(アレルギー性)について

医薬品および食品添加物としても古くから使用実績があり、化粧品としても30年以上の使用実績がある中で重大な皮膚感作の報告がみあたらないため、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に皮膚刺激および皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられますが、詳細な安全性試験データがみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。

∗∗∗

リン酸Kは安定化成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:安定化成分

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文献一覧:

  1. Cosmetic Ingredient Review(2016)「Safety Assessment of Phosphoric Acid and Its Salts as Used in Cosmetics」Final Report.
  2. 大木 道則, 他(1994)「リン酸二水素カリウム」化学辞典,1537.
  3. 西山 成二, 他(1998-1999)「緩衝溶液についての一考察 -緩衝溶液および混合緩衝溶液の緩衝作用-」順天堂医学(44),S1-S6.

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