リンゴ酸とは…成分効果と毒性を解説

緩衝 ピーリング成分
リンゴ酸
[化粧品成分表示名称]
・リンゴ酸

[医薬部外品表示名称]
・DL-リンゴ酸

天然にはリンゴなどの果実に含まれますが、工業的にはフマル酸を合成またはブドウ糖を還元して得られる有機酸であり、水溶性および結晶性のα-ヒドロキシ酸(AHA:alpha hydroxy acid)です。

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、スキンケア化粧品、メイクアップ化粧品、洗浄製品、ネイル製品、洗顔料・洗顔石鹸、ピーリング化粧品、シート&マスク製品、ボディ&フットケア製品などに使用されています(文献1:2018;文献2:2015)

pH調整による緩衝

pH調整による緩衝に関しては、まず前提知識として緩衝溶液(Buffer Solution)について解説します。

緩衝溶液とは、外からの作用に対して、その影響を和らげようとする性質をもつ溶液であり、つまりある程度の酸または塩基(アルカリ)の添加あるいは除去または希釈(∗1)にかかわらず、ほぼ一定のpHを維持する作用を有する溶液のことです(文献3:1998-1999)

∗1 溶液を薄めることです。

たとえば人間の皮膚は弱酸性であり、入浴などで中性に傾いたとしてもすぐに弱酸性に保たれますが、これは緩衝作用が働いているためです。

化粧品においては、pHが変動してしまうと効果を発揮しなくなる成分や品質の安定性が保てなくなる成分などが含まれており、化粧品の内容物がpH変動要因である大気中の物質に触れたり、人体の細菌類に触れても品質を保つ(pHを保つ)ために、緩衝剤のひとつとしてリンゴ酸(酸性)と有機酸塩類(塩基性)と組み合わせて使用されています(文献2:2015)

ピーリング作用

ピーリング作用に関しては、穏やかな角質剥離作用(ピーリング作用)によって乾燥やターンオーバーの乱れなどで硬くなったりゴワついた皮膚表面を滑らかにする目的でピーリング化粧品、スキンケア化粧品、洗顔料・洗顔石鹸、ボディ&フットケア製品、洗浄製品、シート&マスク製品などに使用されています。

ただし、国内においては安全性が優先される市場文化であるため、安全性との兼ね合いから濃度は以下の調査結果のように、

製品 種類 AHA濃度 pH
製品A 美容液 < 1% 5.0
製品B 美容液 < 1% 6.1
製品C 化粧水 < 1% 4.6

1%以下かつpHは弱酸性に近い状態で処方されているものが多いことから(文献4:2000)、実感できるほどのピーリング作用は有していないことが多いと考えられます。

実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の1984-2017年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を表しており、またリンスオフ製品というのは、洗い流し製品(シャンプー、洗顔料、クレンジングなど)を指します。

リンゴ酸の配合製品数と配合量の調査結果(1984-2017年)

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リンゴ酸の安全性(刺激性・アレルギー)について

リンゴ酸の現時点での安全性は、

  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
  • 10年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:2%濃度およびpH2以上で実質的にほとんどなし
  • 眼刺激性:2.2725%%濃度およびpH3.6以下で重度
  • 皮膚感作性(アレルギー性):2%濃度およびpH2以上でほとんどなし

このような結果となっていますが、一般的にはpH調整による緩衝剤として使用されるため、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

また鐘紡記念病院皮膚科および神戸大学医学部皮膚科学教室の調査によると、市販の大手メーカーにおけるAHA化粧品の濃度は1%未満かつpH4.6-6.1であり、ピーリング目的においても非常に安全性が重視された処方となっているため、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2018)によると、

  • [ヒト試験] 健康な20人の被検者にリンゴ酸の累積刺激性試験を実施した。各被検者に2%リンゴ酸(pH2およびpH4)50μLを毎日2回4日間連続で閉塞パッチ適用し、各パッチは除去30分後に、約10mLの水道水ですすぎ、部位を乾燥させた。累積刺激性を評価したところ、重大な皮膚刺激性を誘発せず、陰性対照と同等であり、また接触性皮膚炎も誘発しなかった(Schliemann,2005)
  • [ヒト試験] 101人の被検者に0.0227%リンゴ酸(pH3.6)を含むヘアスタイル製剤を誘導期間およびチャレンジ期間において半閉塞パッチ適用し、試験部位を評価したところ、重大な皮膚刺激性は観察されず、アレルギー性接触感作も誘発しなかった(Personal Care Products Council,2011)
  • [ヒト試験] 98人の被検者に0.00375%リンゴ酸(pH3.0)を含むシャンプーを誘導期間およびチャレンジ期間において閉塞パッチ適用し、試験部位を評価したところ、重大な皮膚刺激性は観察されず、アレルギー性接触感作も誘発しなかった(Personal Care Products Council,2011)
  • [ヒト試験] 106人の被検者の背中または上腕に1%リンゴ酸を含む日焼け止め製剤0.2gを誘導期間およびチャレンジ期間において半閉塞パッチ適用し、試験部位を評価したところ、皮膚感作剤ではなかった(TKL Research Inc,2004)
  • [ヒト試験] 105人の被検者に2%リンゴ酸を含むヘア製品の3%希釈液を対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を半閉塞パッチ下で実施したところ、重大な皮膚刺激はなく、アレルギー性接触感作も誘発しなかった(Anonymous,2015)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、2%濃度以下およびpH2以上において共通して皮膚刺激性および皮膚感作性なしと報告されているため、2%濃度以下およびpH2以上において皮膚刺激性および皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2018)によると、

  • [in vitro試験] 畜牛の眼球から摘出した角膜を用いて、角膜表面に2.2725%リンゴ酸を含むヘアスタイル製剤(pH3.6)およびシャンプー(pH3.0)を処理した後、角膜の濁度ならびに透過性の変化量を定量的に測定したところ(BCOP法)、pH3.6のリンゴ酸を含む製剤は重度の眼刺激性であり、pH3.0のリンゴ酸を含む製剤は眼刺激剤であると予測された(Personal Care Products Council,2011)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、2.2725%濃度およびpH3.0-3.6で重度の眼刺激性が報告されているため、2.2725%濃度およびpH3.0-3.6で重度の眼刺激性が起こると考えられます。

∗∗∗

リンゴ酸は安定化成分、ピーリング成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:安定化成分 ピーリング成分

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文献一覧:

  1. Cosmetic Ingredient Review(2018)「Amended Safety Assessment of Malic Acid and Sodium Malate as Used in Cosmetics」Tentative Amended Report for Public Comment.
  2. 宇山 光男, 他(2015)「リンゴ酸」化粧品成分ガイド 第6版,156.
  3. 西山 成二, 他(1998-1999)「緩衝溶液についての一考察 -緩衝溶液および混合緩衝溶液の緩衝作用-」順天堂医学(44),S1-S6.
  4. 長濱 通子, 他(2000)「日本人に適すると考えられたグリコール酸を用いたケミカルピーリング」皮膚(42)(5),503-508.

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