メチルイソチアゾリノンとは…成分効果と毒性を解説

防腐
メチルイソチアゾリノン
[化粧品成分表示名称]
・メチルイソチアゾリノン

イソチアゾリン系と総称される、化学構造的に複素環式化合物(ヘテロ環式化合物)(∗1)の一種であるイソチアゾリノンの誘導体です。

∗1 複素環式化合物とは、2種類以上の元素により構成される環式化合物のことです。

メチルイソチアゾリノンは、塗料、燃料、洗浄および他の工業プロセスにおいても防腐剤として使用されており、また化粧品には1970年代から使用されています。

近年まではメチルイソチアゾリノン製造プロセスにおける副産物であるメチルクロロイソチアゾリノンとの組み合わせで、ヨーロッパを中心に国内においてもリンスオフ製品(∗2)を中心に配合されていましたが、2014年9月に欧州委員会は2016年7月15日からメチルクロロイソチアゾリノン・メチルイソチアゾリノン混合液およびメチルクロロイソチアゾリノンをリーブオン製品(∗3)では使用禁止、リンスオフ製品では15ppm(0.0015%)以下へ変更という委員会規則を発行しました(文献3:2014)

∗2 リンスオフ製品とは、シャンプーやボディソープなどの洗い流し系製品のことです。
∗3 リーブオン製品とは、スキンケア製品やメイク製品など付けっ放しの製品のことです。

この通知以降は、防腐剤としてイソチアゾリノン系自体の配合が減少傾向ですが、配合される場合はより安全性に配慮する形で、メチルイソチアゾリノンのみの配合も増えてきています。

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、洗浄製品、洗顔料&洗顔石鹸、スキンケア化粧品、ボディ&ハンドケア製品に使用されています。

製品自体の抗菌・防腐作用

製品自体のグラム陰性菌に対する抗菌・防腐作用に関しては、2004年にロームアンドハースジャパンによって報告された技術資料によると、メチルイソチアゾリノンの抗菌活性検証によると、

通常の培地を用いたin vitro試験において、化粧品の腐敗でよく見受けられる様々なカビ、酵母および細菌に対するメチルイソチアゾリノン・メチルクロロイソチアゾリノン混合液のMIC(minimum inhibitory concentration:最小発育阻止濃度)を検討したところ、以下のグラフのように(∗4)

∗4 MICの単位であるppm(parts per million)は100万分の1の意味であり、1ppm = 0.0001%です。

微生物 MIC(ppm)
(ppm) (%)
黄色ブドウ球菌(グラム陽性球菌)
Staphylococcus aureus ATCC 6538
40 0.0040
エンテロバクター・アエロゲネス(グラム陰性桿菌)
Bacilus subtilis ATCC 15038
30 0.0030
緑膿菌(グラム陰性桿菌)
Pseudomonas aeruginosa ATCC 15442
40 0.0040
バークホルデリア・セパシア(グラム陰性桿菌)
Salmonella typhosa ATCC 17765
20 0.0020
大腸菌(グラム陰性桿菌)
Escherichia coli ATCC 8739
35 0.0035
コウジカビ(カビ)
Aspergillus niger ATCC 6275
3 0.0003
カンジダ(酵母)
Candida albicans ATCC 11651
40 0.0040

メチルイソチアゾリノンは、広い範囲に顕著な抗菌活性を示した。

このような検証結果が明らかにされており(文献5:2004)、メチルイソチアゾリノンに製品自体の抗菌・防腐作用が認められています。

またメチルイソチアゾリノンは、現在は単体で使用されることが増えましたが、以前はメチルクロロイソチアゾリノンとの混合液として使用されており、現在でも減少傾向ではありますが、混合液として配合されていることがあります。

1990年にアメリカのRohm & Haas(現在 Dow Chemical Companyに吸収合併)によって報告されたメチルイソチアゾリノン・メチルクロロイソチアゾリノン混合液(∗5)の抗菌活性検証によると、

∗5 メチルイソチアゾリノンとメチルクロロイソチアゾリノンは混合液であるため、混合液としての抗菌活性検証となります。

通常の培地を用いたin vitro試験において、化粧品の腐敗でよく見受けられる様々なカビ、酵母および細菌に対するメチルイソチアゾリノン・メチルクロロイソチアゾリノン混合液のMIC(minimum inhibitory concentration:最小発育阻止濃度)を検討したところ、以下のグラフのように、

微生物 MIC(ppm)
(ppm) (%)
枯草菌(グラム陽性桿菌)
Bacilus subtilis ATCC 6633
150 0.015
黄色ブドウ球菌(グラム陽性球菌)
Staphylococcus aureus ATCC 6538
150 0.015
表皮ブドウ球菌(グラム陽性球菌)
Staphylococcus epidermidis ATCC 12228
150 0.015
チフス菌(グラム陰性桿菌)
Salmonella typhosa ATCC 6539
300 0.030
腸内細菌(グラム陰性桿菌)
Proteus vulgaris ATCC 8427
300 0.030
緑膿菌(グラム陰性桿菌)
Pseudomonas aeruginosa ATCC 15442
300 0.030
カンジダ(酵母)
Candida albicans ATCC 11651
300 0.030
出芽酵母(酵母)
Saccharomyces cerevisiae ATCC 2601
150 0.015
コウジカビ(カビ)
Aspergillus niger ATCC 9642
600 0.060
白癬菌(カビ)
Trichophyton mentagrophytes ATCC 9533
300 0.030

メチルイソチアゾリノン・メチルクロロイソチアゾリノン混合液は、広い範囲に高い抗菌活性を示した。

このような検証結果が明らかにされており(文献4:1990)、メチルイソチアゾリノンに製品自体の抗菌・防腐作用が認められています。

メチルイソチアゾリノンの抗菌メカニズムに関しては、メチルイソチアゾリノンはイソチアゾリン環のS-N結合が開環して生じたS(硫黄)とタンパクのチオール基(SH基)が求核反応を起こすことが知られていますが(文献6:1990)(文献7:1990)

微生物と哺乳類動物細胞へのメチルイソチアゾリノンの作用は同等に起こりますが、哺乳動物の真核細胞と比較して微生物の原核細胞は、チオール基が細胞表面に多く存在するため、メチルイソチアゾリノンの作用は哺乳動物に比べて反応性に富み、静菌作用ならびに殺菌効果が生じると考えられています(文献8:1995:文献9:1999)

メチルイソチアゾリノンはポジティブリストであり、化粧品に配合する場合は以下の配合範囲内においてのみ使用されます。

種類 最大配合量(g/100g)
粘膜に使用されることがない化粧品のうち洗い流すもの 0.01
粘膜に使用されることがない化粧品のうち洗い流さないもの 配合不可
粘膜に使用されることがある化粧品 配合不可

実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の2007年および2014年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を表しており、またリンスオフ製品というのは、洗い流し製品(シャンプー、洗顔料、クレンジングなど)を指します。

メチルイソチアゾリノンの配合比較調査(2007年および2014年)

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メチルイソチアゾリノンの安全性(刺激性・アレルギー)について

メチルイソチアゾリノンの現時点での安全性は、

  • 10年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:化粧品配合上限濃度以下においてほとんどなし
  • 眼刺激性:化粧品配合上限濃度以下においてほとんどなし
  • 皮膚感作性:化粧品配合上限濃度以下おいてほとんどなし
  • 光毒性・光感作性:ほとんどなし

このような結果となっており、配合上限濃度以下および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性について

– メチルイソチアゾリノンのみ –

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献2:2010)によると、

  • [ヒト試験] 40人の被検者に100,300および600ppm濃度のメチルイソチアゾリノン15μLを24時間適用し、また陰性対照として水を適用し、適用から1および24時間後に皮膚刺激スコアを評価したところ、水が5.0だったのに対してメチルイソチアゾリノンは100,300および600ppmでそれぞれ6.3,1.3および6.3であった。この試験条件下でメチルイソチアゾリノンは非刺激性であった(Rohm & Haas LLC,2001)
  • [ヒト試験] 40人の被検者に100ppm濃度のメチルイソチアゾリノンを含むシャンプー15μLを24時間単回適用し、また陰性対照としてメチルイソチアゾリノン未配合シャンプーおよび水のみを適用し、適用から1および24時間後に皮膚刺激スコアを評価したところ、水、メチルイソチアゾリノン未配合シャンプーおよび100ppm濃度のメチルイソチアゾリノンを含むシャンプーの皮膚刺激スコアはそれぞれ5.0,15.0および21.3であった。この試験において100ppm濃度のメチルイソチアゾリノンを含むシャンプーは刺激剤ではなかった(Rohm & Haas LLC,2001)
  • [ヒト試験] 40人の被検者に100ppm濃度のメチルイソチアゾリノンを含むボディローション15μLを24時間単回適用し、また陰性対照としてメチルイソチアゾリノン未配合ボディローションを適用し、皮膚刺激スコアを評価したところ、皮膚刺激スコアは両方1.3であり、ともに非刺激性であると結論付けられた(Rohm & Haas LLC,2001)
  • [ヒト試験] 40人の被検者に100ppm濃度のメチルイソチアゾリノンを含むサンスクリーン15μLを24時間単回適用し、また陰性対照としてメチルイソチアゾリノン未配合サンスクリーンを適用し、皮膚刺激スコアを評価したところ、皮膚刺激スコアはメチルイソチアゾリノンありおよびなしでそれぞれ、1.3および6.3であり非刺激性であると結論付けられた(Rohm & Haas LLC,2001)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、共通して100ppm(0.01%)濃度以下で皮膚刺激性なしと報告されているため、化粧品配合上限以下において皮膚刺激性はほとんどないと考えられます。

– メチルイソチアゾリノン・メチルクロロイソチアゾリノン混合液 –

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:1992)によると、

  • [ヒト試験] 13人の被検者に1,10,15,25および50ppm濃度のメチルクロロイソチアゾリノン・メチルイソチアゾリノン混合液水溶液0.2mLを対象に21日間累積刺激性試験を実施したところ、いずれの被検者においても累積皮膚刺激の兆候は観察されなかった(H I Maibach,1985)
  • [ヒト試験] 12人の被検者に100,200および300ppm濃度のメチルクロロイソチアゾリノン・メチルイソチアゾリノン混合液水溶液0.2mLを対象に21日間累積刺激性試験を実施したところ、100ppm濃度では累積皮膚刺激の兆候は観察されなかったが、200および300ppm濃度においてそれぞれ4人の被検者に軽度の累積刺激が観察された(H I Maibach,1985)
  • [ヒト試験] 14人の被検者に25,50および100ppm濃度のメチルクロロイソチアゾリノン・メチルイソチアゾリノン混合液水溶液0.2mLを対象に21日間累積刺激性試験を実施したところ、いずれの被検者も累積皮膚刺激の兆候は観察されなかった(H I Maibach,1985)
  • [ヒト試験] 80人の被検者に100ppm濃度のメチルクロロイソチアゾリノン・メチルイソチアゾリノン混合液を含むヘア&スキン製剤を対象にパッチテストを実施したところ、いずれの被検者も皮膚刺激の兆候は観察されなかった(H I Maibach,1980)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、共通して皮膚刺激および皮膚感作なしと報告されているため、一般的に皮膚刺激性はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

– メチルイソチアゾリノンのみ –

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献2:2010)によると、

  • [動物試験] 6匹のウサギの片目の結膜嚢に100ppm濃度のメチルイソチアゾリノン水溶液を点眼し、ウサギの眼を24時間後に1分間すすぎ、点眼1,24,48および72時間後に眼刺激性を観察したところ、有害な反応は観察されず、100ppm濃度のメチルイソチアゾリノンは非刺激性であると結論づけた(Rohm & Haas LLC,2000)
  • [動物試験] 6匹のウサギの片目の結膜嚢に100ppm濃度のメチルイソチアゾリノンを含むシャンプー0.1mLを点眼し、一方で7匹のウサギにメチルイソチアゾリノンを含まないシャンプーを点眼した。20-30秒間ウサギの眼をすすぎ、点眼1,24,48および72時間後に眼刺激性を観察したところ、両方のシャンプーで軽度から中程度の眼刺激が観察され、100ppm濃度のメチルイソチアゾリノンは刺激剤ではないと結論づけた(Rohm & Haas LLC,2001)
  • [動物試験] 6匹のウサギの片目の結膜嚢に100ppm濃度のメチルイソチアゾリノンを含むボディローション0.1mLを点眼し、一方で別の6匹のウサギにメチルイソチアゾリノンを含まないボディローションを点眼した。20-30秒間ウサギの眼をすすぎ、点眼1,24,48および72時間後に眼刺激性を観察したところ、両方のボディローションで有害な反応は観察されず、100ppm濃度のメチルイソチアゾリノンは非刺激性であると結論づけた(Rohm & Haas LLC,2001)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、0.01%濃度以下において眼刺激性なしと報告されているため、化粧品配合上限濃度以下において、眼刺激性はほとんど起こらないと考えられます。

– メチルイソチアゾリノン・メチルクロロイソチアゾリノン混合液 –

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:1992)によると、

  • [動物試験] 6匹のウサギの片眼の結膜嚢に56ppm(0.0056%)メチルクロロイソチアゾリノン・メチルイソチアゾリノン混合液水溶液0.1mLを15分ごとに2時間にわたって点滴し、この手順を週5日4週間にわたって繰り返したところ、軽度の結膜炎が観察されたが、眼刺激性剤ではないと結論づけられた(Rohm and Haas Company,1984)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、0.0056%濃度以下において眼刺激性なしと報告されているため、化粧品配合上限濃度以下において、眼刺激性はほとんど起こらないと考えられます。

皮膚感作性(アレルギー性)について

– メチルイソチアゾリノンのみ –

– 健常皮膚を有する場合 –

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献2:2010)によると、

  • [ヒト試験] メチルクロロイソチアゾリノン・メチルイソチアゾリノン混合液で陽性反応を示した22人の患者にメチルクロロイソチアゾリノン・メチルイソチアゾリノン混合液から単離した10,30,100および300ppm濃度のメチルイソチアゾリノンをパッチテストしたところ、2人の患者は300ppm濃度のメチルイソチアゾリノンに陽性反応を示した。これら2人の患者のうち1人は100ppm濃度のメチルイソチアゾリノンにも陽性反応を示した。メチルイソチアゾリノンは感作剤ではあるが、メチルクロロイソチアゾリノンほど強力な増感剤ではなく、またメチルクロロイソチアゾリノンとの交差反応の可能性もあると結論づけた(M Bruze,1987)
  • [ヒト試験] メチルクロロイソチアゾリノン・メチルイソチアゾリノン混合液で陽性反応を示した12人の患者に115および57.5ppm濃度のメチルイソチアゾリノンをパッチテストしたところ、3人の患者は115ppm濃度のメチルイソチアゾリノンで偽陽性反応を示し、そのうち1人は57.5ppm濃度においても別の偽陽性反応を示した。これらの結果からメチルイソチアゾリノンは弱感作剤であると結論付けられた(M Bruze,1989)
  • [ヒト試験] メチルクロロイソチアゾリノンとメチルイソチアゾリノンの交差反応を検討するために、以前にメチルクロロイソチアゾリノン・メチルイソチアゾリノン混合液で陽性反応を示した4人の患者にメチルクロロイソチアゾリノン・メチルイソチアゾリノン混合液、メチルクロロイソチアゾリノン、950ppm濃度nメチルイソチアゾリノンを対象にパッチテストを実施したところ、すべての患者はメチルクロロイソチアゾリノン・メチルイソチアゾリノン混合液で陽性反応を示し、3人の患者はメチルクロロイソチアゾリノン単体で陽性反応を示し、1人の患者は1000ppm濃度のメチルイソチアゾリノン単体で陽性反応を示した。この結果は、メチルクロロイソチアゾリノン・メチルイソチアゾリノン混合液の感作はメチルクロロイソチアゾリノンの感作によって誘発されたものであり、メチルクロロイソチアゾリノンに高い感作反応を示す場合は、高濃度のメチルイソチアゾリノンに反応する可能性があると結論づけられた(88)
  • [ヒト試験] 80人の被検者に50,100,250,500および1000ppm濃度のメチルイソチアゾリノン0.1mLを対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施したところ、誘導期間において1人の被検者は1000ppm濃度で一過性の紅斑がみられ、またチャレンジ期間で1人の被検者は500ppmで紅斑がみられ、2人の被検者は1000ppmで軽度の皮膚反応がみられ、これらは感作反応であると判断された。メチルイソチアゾリノンは1000ppm付近では感作性を有すると結論付けられた(Rohm & Haas LLC,1994)
  • [ヒト試験] 100ppm濃度のメチルクロロイソチアゾリノン・メチルイソチアゾリノン混合液で陰性であった98人の被検者に100ppm濃度のメチルイソチアゾリノン0.15mLを対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施したところ、誘導期間において1人の被検者は以前の感作性物質による反応を示したが、残りの被検者は誘導期間およびチャレンジ期間において皮膚反応を示さず、100ppm濃度のメチルイソチアゾリノンは皮膚感作を誘発しないと結論付けられた(Rohm & Haas LLC,2000)
  • [ヒト試験] 100,98,116,210および214人の被検者にそれぞれ200,300,400,500および600ppm濃度のメチルイソチアゾリノン0.2mLを対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施したところ、誘導期間に400および500ppm群のそれぞれ1人は紅斑を示したが、いずれの期間においても他に皮膚反応は観察されず、600ppm濃度までは皮膚感作剤ではないと結論付けられた(Rohm & Haas LLC,2000;2001;2002)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、基本的には濃度が高ければ高いほど皮膚感作反応を起こす確率が高くなっていますが、100ppm(0.01%)以下では皮膚感作が起こる可能性が低いことが明らかにされているため、化粧品配合上限濃度以下において、皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

– メチルイソチアゾリノン・メチルクロロイソチアゾリノン混合液 –

– 健常皮膚を有する場合 –

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:1992)によると、

  • [ヒト試験] 96人の被検者に50および100ppm濃度のメチルクロロイソチアゾリノン・メチルイソチアゾリノン混合液水溶液を対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施したところ、50ppm濃度では皮膚感作の兆候は観察されなかったが、100ppm濃度で再チャレンジパッチを実施した52人のうち1人の被検者に曖昧な反応が観察された(H I Maibach,1980)
  • [ヒト試験] 1,450人の被検者に5-20ppm濃度のメチルクロロイソチアゾリノン・メチルイソチアゾリノン混合液水溶液0.3または0.5mLを対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施したところ、12.5ppm未満濃度では刺激および感作の兆候はみられなかった。3人の被検者は遅延感作性を示唆する反応がみられたため(12.5ppmで1人、20ppmで2人)、再度チャレンジパッチを適用したところ、決定的な結果は得られなかった。しかしながら、それらの感作の兆候は100ppm濃度にて再びチャレンジパッチを適用すると確認された(J E Weaver et al,1985)
  • [ヒト試験] 12人の被検者(未処置の10人および以前にメチルクロロイソチアゾリノン・メチルイソチアゾリノン混合液に感作した2人)に56ppm濃度のメチルクロロイソチアゾリノン・メチルイソチアゾリノン混合液水溶液を対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施したところ、いずれの被検者においても皮膚刺激および皮膚感作は認められなかった(Rohm and Haas Company,1984)
  • [ヒト試験] 18人の被検者に25ppm濃度のメチルクロロイソチアゾリノン・メチルイソチアゾリノン混合液水溶液を対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施したところ、いずれの被検者も皮膚刺激は観察されなかったが、1人の被検者に感作反応が認められたため、この被検者に6週間後再度チャレンジパッチを適用したところ、陽性反応を示した。この試験物質は25ppm濃度において18人のうち1人に接触感作を誘発したと結論づけた(Rohm and Haas Company,1984)
  • [ヒト試験] 9人の被検者群にそれぞれ1,2,5,10,15,25,50および100ppm濃度のメチルクロロイソチアゾリノン・メチルイソチアゾリノン混合液水溶液を48時間閉塞パッチ適用し、処理された部位を49,96および168時間後に評価したところ、いずれの被検者も1,2,5,10または15ppm濃度の試験物質で皮膚反応はみられなかった。しかし、25,50および100ppm濃度はそれぞれ1,6および9人が皮膚感作を生じた。配合範囲をはるかに超える濃度ではヒトにおいて皮膚感作を引き起こすことができると結論づけた(J E Weaver et al,1985)
  • [ヒト試験] 252人の被検者に15ppm濃度のメチルクロロイソチアゾリノン・メチルイソチアゾリノン混合液を含むスキンケアローション0.2mLを対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施したところ、誘導期間において18人の被検者に紅斑が観察され、チャレンジ期間においては誘導期間を完了した244人のうち13人に反応が観察された。チャレンジ期間において反応が観察された13人のうち7人は0-7のスケールのうち4であり(残りの6人は1)、これらの7人のうち5人は2-3ヶ月後にあらためて再チャレンジパッチを100ppm濃度で48時間閉塞パッチ適用したところ、5人のうち4人に同じく4の反応が観察された(残りの1人は反応なし)。最初のチャレンジ期間で反応が観察された7人のうち6人に25,50および100ppm濃度メチルクロロイソチアゾリノン・メチルイソチアゾリノン混合液の再チャレンジパッチをあらためて実施したところ、50および100ppm濃度で6人すべてに陽性反応が観察され、25ppm濃度で2人に陽性反応が観察された(Rohm and Haas Company,1989)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、基本的には濃度が高ければ高いほど皮膚感作反応を起こす確率が高くなっていますが、15ppm(0.0015%)以下では皮膚感作が起こる可能性が低いことが明らかにされているため、化粧品配合上限濃度以下において、皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

– アレルギーおよび/または皮膚炎を有する場合 –

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:1992)によると、

  • [ヒト試験] 国際接触皮膚炎研究グループおよび北米接触皮膚炎グループは、化粧品およびトイレタリーにおけるメチルクロロイソチアゾリノン・メチルイソチアゾリノン混合液の使用に関する感作性リスクを評価するために、7,000人以上の患者に100ppm濃度のメチルクロロイソチアゾリノン・メチルイソチアゾリノン混合液水溶液をパッチ試験したところ、陽性反応の発生率は41人(0.58%)であった(A C Degroot et al,1985)
  • [ヒト試験] Bjorknerは患者にメチルクロロイソチアゾリノン・メチルイソチアゾリノン混合液で2つの異なる診療所で実施されたパッチテストの研究結果を報告した。アレルギーセ皮膚反応は、1000ppm濃度で36人のうち8人(22.2%)、300ppm濃度で460人のうち16人(3.5%)、516人のうち27人(5.2%)、250ppm濃度で170人のうち10人(5.9%)、100ppm濃度で210人のうち4人(1.9%)であり、7ppm濃度では観察されなかった。1000ppmと300ppmで同時にテストされた40人の患者のうち10人(25%)が1000ppm濃度に皮膚刺激を示し、300ppmでは皮膚刺激は認められなかった。メチルクロロイソチアゾリノン・メチルイソチアゾリノン混合液は化粧品やトイレタリー製品の防腐剤として安全であるという結論を得られなかった(B Bjorkner et al,1986)
  • [ヒト試験] Bjorknerは34人の患者にメチルクロロイソチアゾリノン・メチルイソチアゾリノン混合液でパッチテストした研究結果を報告した。10,30,100,250および300ppm濃度の試験物質はそれぞれ2,8,10,17および24人の被検者において陽性反応を引き起こした。メチルクロロイソチアゾリノン・メチルイソチアゾリノン混合液は診療所で2番目に多い接触感作物質であることを報告した(B Bjorkner,1986)
  • [ヒト試験] 13人の患者に15ppm濃度のメチルクロロイソチアゾリノン・メチルイソチアゾリノン混合液を含む製剤を1日2回7日目まで適用したところ、13人のうち7人(54%)は軽度の皮膚炎を発症した。メチルクロロイソチアゾリノン・メチルイソチアゾリノン混合液を含まない製剤は皮膚反応を誘発しなかった(B Bjorkner et al,1986)
  • [ヒト試験] 化粧品アレルギーと思われる皮膚炎を有する100人および79人の患者に様々な香料および防腐剤に対するパッチテストを実施する中で、150ppm濃度のメチルクロロイソチアゾリノン・メチルイソチアゾリノン混合液を含む軟膏のパッチテストの結果、6人(3.4%)に皮膚反応が観察された(A C Degroot et al,1985)
  • [ヒト試験] 顔に接触皮膚炎を有する98人の患者に100ppm濃度のメチルクロロイソチアゾリノン・メチルイソチアゾリノン混合液を閉塞パッチ適用し、試験部位を48および72時間後に検査したところ、98人のうち6人に陽性反応がみられた。これら6人の患者のいずれも自身の化粧品またはトイレタリー製品での試験に反応しなかったが、それは化粧品のメチルクロロイソチアゾリノン・メチルイソチアゾリノン混合液の濃度が低すぎたために感作反応を誘発しないためであることを示唆した(A Tosti et al,1986)
  • [ヒト試験] 接触性皮膚炎を有する1,511人の患者に100ppm濃度のメチルクロロイソチアゾリノン・メチルイソチアゾリノン混合液をパッチテストしたところ、13人(0.8%)が陽性反応を示した。13人のうち8人は2週間後に同様のテストを実施したところ、8人すべての被検者が陽性反応を示した。皮膚感作の程度を調査するために、最初に陽性反応を示した13人のうち11人(再テストした8人含む)にあらためて7.7-15.5ppm濃度のメチルクロロイソチアゾリノン・メチルイソチアゾリノン混合液を含む様々な化粧品を用いてパッチテストしたところ、いずれの患者も皮膚反応を示さなかった(N Hjorth et al,1986)
  • [ヒト試験] 100ppm濃度のメチルクロロイソチアゾリノン・メチルイソチアゾリノン混合液を用いたパッチテストで陽性反応が認められた18人の被検者に液体石鹸(5ppm)、シャンプー(4ppm)、ヘアコンディショナー(5ppm)、液体柔軟剤(6ppm)、入浴剤(5ppm)のうち少なくとも1つの製品を1日1回使用してもらったところ、これら5種類の製品(4-6ppm)でのアレルギー性皮膚炎反応の兆候はなかった。これらのリンスオフ製品はすぐに水で希釈されてはるかに低い濃度(通常は配合濃度の5%未満で20%以上を超えることはない)で一時的に使用され、また実際のメチルクロロイソチアゾリノン・メチルイソチアゾリノン混合液の適用は約1ppmであることから、試験物質にアレルギーのある消費者でさえ、この製品の使用で臨床的に皮膚炎を誘発するリスクは極めてわずかであることが示唆された(56)
  • [ヒト試験] オランダでパッチテストされた1620人の患者のうち81人がメチルクロロイソチアゾリノン・メチルイソチアゾリノン混合液に対するアレルギー性接触皮膚炎を有することを報告した。81人のうち37人(46%)が防腐剤を含む化粧品の使用によって感作しており、皮膚炎の原因として特定された化粧品のほとんどすべてはリーブオン製品であった(A C Degroot et al,1988)
  • [ヒト試験] 化粧品の使用に関連する接触性皮膚炎を有する119人の患者にパッチテストしたところ、最も重要であると報告された化粧品アレルゲンはメチルクロロイソチアゾリノン・メチルイソチアゾリノン混合液であり、33人が陽性であった(A C Degroot et al,1988)
  • [ヒト試験] 420人の患者に100ppm濃度のメチルクロロイソチアゾリノン・メチルイソチアゾリノン混合液をパッチテストしたところ、23人(5.5%)が陽性反応であった。この23人のうち12人の患者に7,15,25,50および100ppm濃度のメチルクロロイソチアゾリノン・メチルイソチアゾリノン混合液をパッチテストしたところ、25ppm以下濃度において皮膚反応は減少した。しかしながら、7ppm濃度において2人の患者にわずかな皮膚反応が観察された(F Pasche et al,1989)
  • [ヒト試験] De GrootとHerxheimerは、各国でメチルクロロイソチアゾリノン・メチルイソチアゾリノン混合液の検査が行われた患者における感作率を報告した。メチルクロロイソチアゾリノン・メチルイソチアゾリノン混合液を含む化粧品製剤で陽性反応が認められた症例のほとんどがリーブオン製品の使用に関連していることに留意しており、リーブオン製品におけるメチルクロロイソチアゾリノン・メチルイソチアゾリノン混合液の使用は禁止すべきであると結論づけた。しかしながら、リンスオフ製品での低濃度使用は接触アレルギーの顕著なリスクを伴わないことも付け加えた(A C Degroot et al,1989)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、基本的には濃度が高ければ高いほど皮膚感作反応を起こす確率が高くなっていますが、15ppm(0.0015%)以下濃度およびリンスオフ製品では皮膚感作が起こる可能性が低いことが報告されているため、化粧品配合上限濃度以下において、皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

光毒性および光感作性について

– メチルイソチアゾリノンのみ –

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献2:2010)によると、

  • [ヒト試験] 12人の被検者に200ppm濃度のメチルイソチアゾリノン50μLを24時間閉塞パッチ適用し、また陰性対照として試験物質なしの閉塞パッチを適用し、パッチ除去後にUVA(20J/c㎡)およびUVBの最小紅斑線量を照射した。照射24および48時間後に試験部位を評価したところ、この試験で光毒性は観察されなかった(Rohm & Haas LLC,2000)
  • [ヒト試験] 32人の被検者に200ppm濃度のメチルイソチアゾリノン20μLを対象に光感作試験をともなうHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施したところ、光感作反応はなかった(Rohm & Haas LLC,2000)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、光毒性および光感作性なしと報告されているため、光毒性および光感作性はないと考えられます。

– メチルイソチアゾリノン・メチルクロロイソチアゾリノン混合液 –

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:1992)によると、

  • [ヒト試験] 27人の被検者に0.0015%メチルクロロイソチアゾリノン・メチルイソチアゾリノン混合液を対象に光感作試験をともなうHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を閉塞パッチ下で実施したところ、誘導期間に一過性のわずかな刺激反応がみられたが、皮膚感作を示す反応は観察されなかったため、この条件下では光感作性の兆候はなかったと結論づけた(Rohm and Haas Company,1984)
  • [ヒト試験] 25人の被検者に0.0015%メチルクロロイソチアゾリノン・メチルイソチアゾリノン混合液を含む製剤を24時間単一閉塞パッチ適用し、パッチ除去後にUVAライトを10cm(4400kW/c㎡)の距離で15分間照射し、パッチ除去24および48時間後および7日後に評価したところ、4人の被検者に一過性の非特異的な紅斑がみられたが、これらは光毒性の反応ではないとみなされ、この条件下でメチルクロロイソチアゾリノン・メチルイソチアゾリノン混合液は光毒性はないと結論付けられた(Rohm and Haas Company,1984)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、光毒性および光感作性なしと報告されているため、光毒性および光感作性はないと考えられます。

安全性についての補足

メチルクロロイソチアゾリノン・メチルイソチアゾリノン混合液に対する変異原性試験(∗6)を実施したところ、8つのうち2つが陽性となり注目を集めましたが、マウスを用いた30ヶ月におよぶ発がん性試験においては腫瘍形成の存在は認められておらず、この30ヶ月におよぶマウスの発がん性試験の有用性が認められた結果、遺伝毒性および発がん性についての可能性に懸念はないと結論付けられています(文献1:1992)

∗6 変異原性とは、生物の遺伝情報(DNAの塩基配列または染色体の構造や数)に不可逆的な変化を引き起こす性質のことであり、細胞がん化の誘発因子として知られているため、変異原性試験の結果は発がん性リスクの有無でもあります。

また、メチルイソチアゾリノン単体では1982年,1999年および2005年のいずれの変異原性試験においても陰性であり、変異原性は認められておらず(文献2:2010)、発がん性の懸念はないと考えられます。

∗∗∗

メチルイソチアゾリノンは安定化成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:安定化成分

∗∗∗

文献一覧:

  1. Cosmetic Ingredient Review(1992)「Final Report on the Safety Assessment of Methylisothiazolinone and Methylchloroisothiazolinone」International Journal of Toxicology(11)(1),75-128.
  2. Cosmetic Ingredient Review(2010)「Final Report of the Safety Assessment of Methylisothiazolinone」International Journal of Toxicology(29)(4),187S-213S.
  3. “EUR-Lex”(2014)「COMMISSION REGULATION (EU) No 1003/2014」,<http://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/?uri=CELEX:32014R1003> 2017年12月6日アクセス.
  4. B Andrew, et al(1990)「メチルクロロイソチアゾリノン・メチルイソチアゾリノン」香粧品 医薬品 防腐・殺菌剤の科学,105-116.
  5. ロームアンドハースジャパン株式会社(2004)「ネオロン950」技術資料.
  6. P J Collier, et al(1990)「Chemical reactivity of some isothiazolone biocides.」Journal of Applied Bacteriology(69)(4),578-584.
  7. P J Collier, et al(1990)「Uptake and distribution of some isothiazolone biocides into Escherichia coli ATCC 8739 and Schizosaccharomyces pombe NCYC 1354.」International Journal of Pharmaceuticals(66)(1-3),201-206.
  8. J S Chapman, et al(1995)「Methylchloroisothiazolone-induced growth inhibition and lethality in Escherichia coli.」Journal of Applied Bacteriology(78)(2),134-141.
  9. A D Megan, et al(1999)「Association of the biocide 5-chloro-2-methyl-isothiazol-3-one with Pseudomonas aeruginosa and Pseudomonas fluorescens.」International Biodeterioration & Biodegradation(44)(4),191-199.

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