メチルイソチアゾリノンとは…成分効果と毒性を解説

防腐剤
メチルイソチアゾリノン
[化粧品成分表示名称]
・メチルイソチアゾリノン

チアゾリノン系防腐剤と呼ばれている日本でも使用が許可されている防腐剤のひとつです。

もともとメチルイソチアゾリノンとメチルクロロイソチアゾリノンがセットでチアゾリノン系防腐剤と呼ばれており、外資系メーカーのP&Gやユニリーバなどのリンスオフ製品(∗1)でよく使用されていましたが、2014年9月に欧州委員会は2016年7月15日からメチルクロロイソチアゾリノン/メチルイソチアゾリノン混合物およびメチルクロロイソチアゾリノンをリーブオン製品(∗2)では使用禁止、リンスオフ製品では15ppm(0.0015%)以下へ変更という委員会規則を発行しました(文献1:2014)

∗1 シャンプーやボディソープなどの洗い流し系製品のこと。
∗2 スキンケア製品やメイク製品など付けっ放しの製品のこと。

つまり、ヨーロッパでは付けっ放し製品には禁止で、洗浄系製品だけは0.0015%以下の配合のみ許可されたということです。

また、2016年7月には、リーブオン製品に対するメチルイソチアゾリノンの0.01%上限も接触アレルギーおよび誘発刺激にとって安全な濃度とは実証されておらず、消費者にとって安全でないことを示していると結論づけ、2017年2月12日以降のリーブオン製品に対する製造販売が禁止になりました(文献2:2016)

ここで整理しておきたいのが、それぞれの毒性です。

メチルイソチアゾリノンの毒性比較

比較として最も有名な防腐剤であるメチルパラベンを掲載しましたが、気にしてほしいのはメチルパラベンを1とすると、

  • メチルパラベン                    :1
  • メチルイソチアゾリノン         :100分の1の使用上限
  • メチルクロロイソチアゾリノン:約1000分の1の使用上限

このように、メチルイソチアゾリノンはメチルパラベンの100倍の刺激性(毒性)が、メチルクロロイソチアゾリノンにいたっては1000倍の刺激性(毒性)があるとみなされており、規制されるのも納得感があるものの、ヨーロッパでの規制理由は刺激性および毒性よりもメチルクロロイソチアゾリノンのアレルギー性(皮膚感作性)によるものです。

こういった背景があり、現在は比較的刺激性やアレルギー性の低いメチルイソチアゾリノンを単体で配合するようになっています。

メチルパラベンと比べてメチルイソチアゾリノンの防腐性(抗菌性)がかなり高いことは想像できると思いますが、公開されているデータによると、

メチルイソチアゾリノンの抗菌性比較

0.2%配合したメチルパラベンが2日後でもブドウ球菌以外のカビ、酵母、グラム陰性を殺菌しきれていないのに対して、メチルイソチアゾリノンは0.05%で2時間以内にすべて殺菌しています(文献4:2016)

即効性があり、カビ、菌、酵母の幅広い抗菌特性をもつため外資系メーカーには重宝されていますが、抗菌効果の高さはそのまま皮膚への刺激性や毒性および感作性にもつながり、ポジティブリストに分類されているため配合上限があり、現在は以下のような配合基準となっています。

粘膜に使用されることがない化粧品のうち洗い流すもの 0.01g/100g
粘膜に使用されることがない化粧品のうち洗い流さないもの 使用禁止
粘膜に使用されることがある化粧品 使用禁止

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メチルイソチアゾリノンの安全性(毒性・刺激性・アレルギー)について

メチルイソチアゾリノンの現時点での安全性は、配合上限の0.01%以下のリンスオフ製品において、皮膚刺激性はほとんどありませんが、軽度の眼刺激性を感じる可能性があり、アレルギーのない健常な皮膚の方はアレルギーが起こる可能性が低いですが、アレルギーや皮膚炎をもつ方は、紅斑のような接触性皮膚炎が起こる可能性があり、安全性に懸念のある成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

安全性を調査するために、国内外を問わず信頼性が高いと思われる安全性データやレポートを参照し引用しています。

皮膚刺激性について

“Cosmetic Ingredient Review”の「Final Report on the Safety Assessment of Methylisothiazolinone and Methylchloroisothiazolinone」(文献3:1992)によると、

  • [動物試験] 97.8%メチルイソチアゾリノンを含む1cm角のガーゼを7匹のウサギに一方は1時間および4時間半閉塞で、もう一方は別の部位に閉塞せず3分間曝露し、パッチを除去してから1,24,48および72時間後,7日目,14日目に評価したところ、1時間および4時間曝露された部位では7日目および14日目に凹状痂皮(乾燥して硬くなった壊死組織)が観察され、3分間の曝露では7日目まではっきりとした紅斑を生じ、軽度~中程度の浮腫が観察されたため、希釈されていないメチルイソチアゾリノンは1時間の暴露後に皮膚に対して腐食性がある
  • [動物試験] 9.69%メチルイソチアゾリノン溶液の0.01%水溶液を6匹のウサギに0.5mLを半閉塞で4時間適用し、パッチ除去後1,24,48,72時間後の炎症の兆候について観察したところ、紅斑または浮腫は観察されず、一次刺激指数も0だったため、0.01%メチルイソチアゾリノンはウサギの皮膚に対して非刺激性であると結論づけた
  • [動物試験] 10%メチルイソチアゾリノン溶液を0.01%,0.03%および0.1%に希釈した水溶液を6匹のウサギの剃毛した背中3箇所に14日間適用し、Draize基準で観察したところ、紅斑、痂皮および浮腫など皮膚異常およびその兆候は観察されず、0.01%,0.03%および0.1%に希釈した水溶液は皮膚刺激作用を有していなかった

と記載されています。

試験結果などをみる限りでは、0.01%を超えると軽度以上の皮膚刺激性を示す例もみられますが、現在の使用上限である0.01%以下では皮膚刺激が引き起こされる結果がみられないため、皮膚刺激性を起こす可能性は低いと考えられます。

眼刺激性について

“Cosmetic Ingredient Review”の「Final Report on the Safety Assessment of Methylisothiazolinone and Methylchloroisothiazolinone」(文献3:1992)によると、

  • 100%メチルイソチアゾリノン溶液は刺激スコアの閾値である3より大きいスコアで、軽度の眼刺激性があった
  • [動物試験] 6匹の雄ウサギに9.69%メチルイソチアゾリノンを含む0.01%希釈水を点眼し、24時間後に洗い流しました。点眼後の1,24,48,72時間後に角膜、虹彩り、結膜を観察したところ、異常は見つからず、蒸留水中の0.01%メチルイソチアゾリノンがウサギの眼に刺激を与えないと結論づけた
  • [動物試験] 0.01%メチルイソチアゾリノンを含むシャンプーを6匹のウサギの片眼に0.1mL点眼し、もう片眼にはメチルイソチアゾリノンを含まないシャンプーを点眼し、半分の3匹は20~30秒後にぬるま湯ですすぎ、残りの3匹の眼は洗わず、21日間にわたって1,24,48,72時間および1日1回観察したところ、両方のシャンプーでウサギの眼から軽度~中程度の一次刺激が観察され、洗浄した眼のほうが一次粘膜刺激が低かったため、0.01%メチルイソチアゾリノンを含むシャンプーは眼刺激性ではない
  • [動物試験] 0.01%メチルイソチアゾリノンを含むボディローションを6匹のウサギの片眼に0.1mL点眼し、もう片眼にはメチルイソチアゾリノンを含まないボディローションを点眼したところ、どちらのローションにおいても洗眼および非洗眼で角膜、虹彩、結膜に悪影響は観察されなかったため、0.01%メチルイソチアゾリノンを含むボディローションは非刺激性である

と記載されています。

100%濃度で軽度の眼刺激性があり、9.96%配合された原料の0.01%水溶液では眼刺激性なしという記載が多く、メチルイソチアゾリノンは配合上限が0.01%のため、配合上限内において眼刺激を引き起こす可能性は低いと考えられます。

アレルギー(皮膚感作性)について

“Cosmetic Ingredient Review”の「Final Report on the Safety Assessment of Methylisothiazolinone and Methylchloroisothiazolinone」(文献3:1992)によると、

  • [動物試験] シェービングされた雄雌それぞれのモルモットの皮膚に99.8%メチルイソチアゾリノンを0%,0.1%,1.5%,3%に希釈した水溶液を閉塞パッチし週に3回合計3.5週間適用し、最後のパッチの後2週間休止させて、次にチャレンジ試験として0.1%,0.5%,1.5%メチルイソチアゾリノン水溶液を適用したところ、24時間後および48時間後に紅斑は観察されなかったが、最初に1.5%水溶液をパッチしていた1匹のモルモットは0.1%のチャレンジ試験で紅斑が観察され、0.5%水溶液群では最初の試験の1.5%水溶液で1/10例、3.0%水溶液で2/10例に紅斑が観察された。また0.01%水溶液群では紅斑は観察されなかったことからメチルイソチアゾリノンは0.01%以上の濃度で皮膚感作を引き起こす
  • [動物試験] 99.7%メチルイソチアゾリノンの0.055%および0.08水溶液をそれぞれ20匹の雌モルモットに6回皮内注射し、1週間後に単一製品(0.1mL)を24時間閉塞パッチした。2週間の休後モルモットは0.055%、0.08および0.1%水溶液で再チャレンジ試験を行った24時間および48時間後に評価したところ、0.055%水溶液で皮膚反応は観察されず、48時間後に0.08%水溶液をパッチした中に1例紅斑反応を観察したことから、メチルイソチアゾリノンは0.08%までの濃度では皮膚感作性はないと結論づけた
  • メチルイソチアゾリノンは皮膚感作性物質であるが、メチルクロロイソチアゾリノンほど強力ではなく、皮膚感作がメチルクロロイソチアゾリノンとの相互作用に起因しているかもしれない
  • [ヒト試験] メチルイソチアゾリノン、メチルクロロイソチアゾリノン混合物に陽性であった12名の患者にメチルイソチアゾリノン、メチルクロロイソチアゾリノンを等モル濃度でパッチ試験したところ、3名が0.0115%メチルイソチアゾリノンで疑わしい反応を示し、それらのうち1名は0.0057%メチルイソチアゾリノンでも疑いのある反応を示したため、メチルイソチアゾリノンに弱い皮膚感作性があると判断した
  • [ヒト試験] メチルイソチアゾリノン、メチルクロロイソチアゾリノン混合物に陽性であった85名に0.1%メチルイソチアゾリノン水溶液を4日間適用したところ、27名が反応を示し、強い反応を示した18名のうち11名が陽性反応を示したが、メチルイソチアゾリノン、メチルクロロイソチアゾリノン混合物に対して弱い反応を示した55名のうち12名がメチルイソチアゾリノンに陽性反応を示したため、高濃度(0.05%~0.1%)メチルイソチアゾリノンはメチルイソチアゾリノン、メチルクロロイソチアゾリノン混合物に感作性を有する被検者の一部も反応する可能性がある結論づけた
  • [ヒト試験] メチルイソチアゾリノン、メチルクロロイソチアゾリノン混合物に陰性であった98名の被検者に0.01%メチルイソチアゾリノン水溶液を週4回各23時間を3週間適用し、最終パッチの前に1週間休息を与えて、最後に24時間チャレンジパッチを行い、除去後24,48,72時間後に皮膚を観察したところ、1人の被検者が5日目にグレード4の反応を示しましたが、残りの被検者はいずれも反応を示さず、0.01%のメチルイソチアゾリノンがヒト皮膚に皮膚感作性を示さないと結論づけた

と記載されています。

アレルギーに関しては過去に様々な試験が行われており、結果的に0.01%では感作性を示さない結果が多いために近年欧州委員会で配合上限を0.01%に決定した経緯があり、そういった結果を踏まえれば配合上限内において皮膚感作性が起こる可能性は低いと考えられるかもしれませんが、試験を詳しくみると、他に感作物があったり、累積感作してるような状態だと0.01%以下でも弱い感作性を示す事例もあるため、健常な(アレルギーのない)皮膚の方は配合上限内においてアレルギー(皮膚感作)の起こる可能性は低いと考えられますが、アレルギーや皮膚炎などのある方はアレルギー性皮膚炎のような症状が起こる可能性があると考えられます。

化粧品毒性判定事典による毒性判定について

化粧品成分名 判定
メチルイソチアゾリノン

参考までに化粧品毒性判定事典によると、メチルイソチアゾリノンは■(∗3)となっており、やや毒性があるという判定となっています。

∗3 毒性判定事典の毒性レベルは「毒性なし」「△」「■」「■■」となっており、△は2~3個で■1個に換算し、■が多いほど毒性が強いという目安になり、製品の毒性成分の合計が■4つ以上なら使用不可と判断されます。

∗∗∗

メチルイソチアゾリノンは安定化成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:安定化成分

∗∗∗

文献一覧:

  1. “EUR-Lex”(2014)「COMMISSION REGULATION (EU) No 1003/2014」,<http://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/?uri=CELEX:32014R1003> 2017年10月1日アクセス.
  2. “EUR-Lex”(2016)「COMMISSION REGULATION (EU) 2016/1198」,<http://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/HTML/?uri=CELEX:32016R1198&qid=1506764762369&from=en> 2017年10月1日アクセス.
  3. “Cosmetic Ingredient Review”(1992)「Final Report on the Safety Assessment of Methylisothiazolinone and Methylchloroisothiazolinone」,<http://journals.sagepub.com/doi/abs/10.3109/10915819209141993> 2017年10月1日アクセス.
  4. “マツモト交商”(2016)「今後の防腐剤(パラベン代替原料)」,<http://matsumoto-trd.com/materialdetail.php?materialid=1238> 2017年10月1日アクセス.

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