ベンザルコニウムクロリドとは…成分効果と毒性を解説

防腐
ベンザルコニウムクロリド
[化粧品成分表示名称]
・ベンザルコニウムクロリド

[医薬部外品表示名称]
・塩化ベンザルコニウム

化学構造的にアルキルアミンをアセトアルデヒド/ギ酸と反応させた後、塩化ベンジルと反応させて合成される陽イオン界面活性剤の一種であり、水溶性の四級アンモニウム塩の混合物です。

医薬品として手指の消毒液や点眼薬(目薬)の保存剤として汎用されており、化粧品にも使用が認められている殺菌剤です。

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、洗浄製品、スキンケア化粧品などに使用されています(文献1:1989)

製品自体の殺菌・防腐作用

製品自体の殺菌・防腐作用に関しては、グラム陽性菌およびグラム陰性菌に強い殺菌効果を有しており(文献3:1985;文献4:2003;文献5:2006)、細菌細胞膜のタンパク質を変性させることによって殺菌性を発揮し、有機物存在下で最も作用が強いことが報告されています。

ベンザルコニウムクロリドはポジティブリストであり、化粧品に配合する場合は以下の配合範囲内においてのみ使用されます。

種類 最大配合量(g/100g)
粘膜に使用されることがない化粧品のうち洗い流すもの 配合上限なし
粘膜に使用されることがない化粧品のうち洗い流さないもの 0.050
粘膜に使用されることがある化粧品 0.050

また、塩化ベンザルコニウムは医薬部外品(薬用化粧品)への配合において配合上限があり、配合範囲は以下になります。

種類 配合量 その他
薬用石けん・シャンプー・リンス等、除毛剤 3.0 塩化ベンザルコニウム及び塩化ベンザルコニウム液を塩化ベンザルコニウムに換算して、塩化ベンザルコニウムとして合計。
育毛剤 0.050
その他の薬用化粧品、腋臭防止剤、忌避剤 0.050
薬用口唇類 0.050
薬用歯みがき類 0.010
浴用剤 0.050

実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の1989年および2006年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

ベンザルコニウムクロリドの配合製品数と配合量の比較調査

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ベンザルコニウムクロリドの安全性(刺激性・アレルギー)について

ベンザルコニウムクロリドの現時点での安全性は、

  • 医療上汎用性があり有効性および安全性の基準を満たした成分が収載される日本薬局方に収載
  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
  • 10年以上の使用実績
  • 皮膚一次刺激性:化粧品配合量においてほとんどなし
  • 皮膚累積刺激性:化粧品配合量においてほとんどなし
  • 眼刺激性:ほとんどなし
  • 皮膚感作性:ほとんどなし
  • 皮膚感作性(皮膚炎を有している場合):ほとんどなし-まれに皮膚感作が起こる可能性あり

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:1989)によると、

  • [ヒト試験] 皮膚疾患を有していない12人の患者(53-75歳)に10%ベンザルコニウムクロリド水溶液の24時間パッチテストを実施したところ、すべての患者に皮膚刺激が観察され、9人は中程度-重度の紅斑を示し、4人の患者に小胞形成が認められた。いずれの患者も以前にベンザルコニウムクロリドの暴露経験はなかった(V Kassis et al,1981)
  • [ヒト試験] 200人の被検者(16-29歳)に0.5%ベンザルコニウムクロリド水溶液を48時間閉塞パッチ適用し、パッチ除去24時間後に皮膚刺激性を0-6のスケールで評価したところ、平均刺激スコアは3(紅斑)であった(R Holst et al,1975)
  • [ヒト試験] 10人の被検者(18-59歳)に0.1%ベンザルコニウムクロリドを含むクリーム0.2mLを対象に21日間累積刺激性試験を実施したところ、累積刺激スコア(0-630)は20であり、本質的に累積刺激性はないと解釈された(Hill Top Research Inc,1981)

神奈川県衛生看護専門学校附属病院検査科・薬剤科・看護部・内科・婦人科・小児科・外科・皮膚科の安全性データ(文献2:1990)によると、

  • [ヒト試験] 皮膚炎を有さない(1例のみ尋常性乾癬の既往歴あり)30人の被検者に0.1%ベンザルコニウムクロリド水溶液を4週間にわたって1日あたり4-9回使用してもらい、皮膚刺激性を評価したところ、29人は安全性上問題ないと判断され、1人は開始1週間目にかすかな紅斑を生じたが、試験期間中に強い皮膚刺激および荒れを発症した例はなかった

と記載されています。

試験データをみるかぎり、化粧品配合量付近(0.1%)において共通して皮膚刺激なしと報告されているため、化粧品配合量以下において一般的に皮膚刺激性はほとんどないと考えられます。

– 皮膚炎を有する場合 –

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:1989)によると、

  • [ヒト試験] 皮膚炎を有する399人の患者に64ヶ月にわたって様々な化粧品成分でパッチテストを行ったところ、2人の患者はベンザルコニウムクロリドに皮膚反応を示した(North American Contact Dermatitis Group,1985)
  • [ヒト試験] 様々な皮膚病を有する55人の患者に0.1%,0.5%,1.0%および2.0%ベンザルコニウムクロリド水溶液を48時間閉塞パッチ適用し、パッチ除去後に皮膚刺激性を評価したところ、0.5%濃度以上において重度の膿疱性および/または水疱性反応が26例報告された(J E Wahlberg,1985)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、0.1%濃度以下において皮膚刺激は報告されていないため、皮膚炎を有する場合において一般的に皮膚刺激性はほとんどないと考えられます。

ただし、化粧品配合濃度における試験データが少ないため、さらなる試験データが必要であると考えられます(試験データをみつけしだい追補します)。

眼刺激性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:1989)によると、

  • [ヒト試験] 51人の被検者の片眼に0.02%ベンザルコニウムクロリド食塩水を、他方の眼には生理食塩水を点眼し、眼刺激性について尋ねたところ、14人が0.02%ベンザルコニウムクロリド食塩水で処理した眼に刺激を感じ、14人のうち10人は生理食塩水で処理した眼にも刺激を感じた。臨床的にはベンザルコニウムクロリド溶液で処理した1人の被検者にわずかな結膜充血がみられるのみであった(R Barkman et al,1969)
  • [ヒト試験] 10人の被検者の片眼にベンザルコニウムクロリド(0.1mg/mL)を含む点眼液1滴を1日2回2週間にわたって点眼したところ、治療期間中に角膜内皮の損傷は認められなかった(H I Alanko,1983)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、眼刺激性なしと報告されており、また点眼薬の防腐剤・保存剤としても汎用されていることから、化粧品配合上限濃度以下において、眼刺激性はほとんどないと考えられます。

皮膚感作性(アレルギー性)について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:1989)によると、

  • [ヒト試験] 101人の被検者(18-65歳)に0.1%ベンザルコニウムクロリドを含むクリーム0.1mLを対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施したところ、試験期間中に有意な皮膚反応は観察されず、このクリームは皮膚刺激剤および皮膚感作剤ではないと結論付けられた(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1982)
  • [ヒト試験] 130人の被検者に0.1%ベンザルコニウムクロリドを対象にパッチテストを実施したところ、いずれの被検者も感作反応は示さなかった(C R Lovell et al,1981)
  • [ヒト試験] 150人の被検者(18-65歳)に0.13%ベンザルコニウムクロリドを含む保湿クリームを対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施したところ、試験期間中に陽性反応は観察されなかった。また同様の手順および同様の濃度のベンザルコニウムクロリドを含む保湿クリームで155人の被検者に適用した場合も陽性反応を誘発しなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1986)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、共通して皮膚感作なしと報告されているため、皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:1989)によると、

– 皮膚炎を有する場合 –

  • [ヒト試験] 湿疹を有する2,806人の患者に0.1%ベンザルコニウムクロリドを含む軟膏を対象にパッチテストを実施し、ICDRG(International Contact Dermatitis Research Group)標準に基づいて48および96時間後に皮膚反応を評価したところ、66人(2.13%)がベンザルコニウムクロリドに感作性を示した(J M Camarasa,1979)
  • [ヒト試験] 接触皮膚炎を有する5人の患者は0.1%および0.01%ベンザルコニウムクロリドを対象にパッチテストしたところ、0.1%濃度においてすべての患者は+または++の陽性反応を示し、0.01%濃度において2人の患者は+の陽性反応を示した(C R Lovell,1981)
  • [ヒト試験] 接触性皮膚炎を有する110人の被検者に0.1%ベンザルコニウムクロリドを対象にパッチテストを実施したところ、1人の患者に陽性反応がみられた(C R Lovell,1981)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、一部の試験で皮膚感作が報告されているため、皮膚炎を有する場合において皮膚感作が起こる可能性があると考えられます。

安全性についての捕捉

点眼薬に汎用されていることから、眼へのアレルギー性感作の試験も実施されており、

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:1989)によると、

  • [ヒト試験] 3ヶ月以上結膜炎の治療をうけている100人の患者に0.07%ベンザルコニウムクロリド水溶液をパッチテストしたところ、6人は48時間および72時間後に陽性反応を示した。その後0.05%,0.025%,0.01%および0.005%濃度でテストしたところ、いずれの患者も0.05%,0.025%,0.01%濃度に対して陽性反応を示し、2人の患者は0.005%濃度に対しても陽性反応を示した(H Afzelius et al,1979)
  • [ヒト試験] 8人の患者のうち3人はベンザルコニウムクロリドを含むレンズ液に浸されたコンタクトレンズを着用した後にアレルギー性結膜炎を発症したため、ベンザルコニウムクロリドに対するパッチテストを実施したところ、3人すべてが0.1%ベンザルコニウムクロリドに陽性反応を示した(A Fisher,1985)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、ベンザルコニウムクロリドとの接触によってアレルギー性結膜炎が報告されているため、まれにアレルギー性結膜炎が起こる可能性があると考えられます。

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ベンザルコニウムクロリドは安定化成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:安定化成分

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文献一覧:

  1. Cosmetic Ingredient Review(1989)「Final Report on the Safety Assessment of Benzal konium Chloride」International Journal of Toxicology(8)(4),589-625.
  2. 高橋 孝行, 他(1990)「殺菌消毒剤・ND-2 (塩化ベンザルコニウム製剤) の有効性, 安全性および有用性の検討について」環境感染(5)(2),21-29.
  3. 城野 久美子, 他(1985)「塩化ベンザルコニウム及びグルコン酸クロルヘキシジンの殺菌力と殺菌速度」YAKUGAKU ZASSHI(105)(8),751-759.
  4. 佐治 守, 他(2003)「点眼液の防腐剤としての塩化ベンザルコニウムの抗菌力についての検討」医療薬学(29)(3),341-345.
  5. 高麗 寛紀(2006)「ジェミニ型第四アンモニウム塩の分子設計と抗菌特性」オレオサイエンス(6)(5),247-255.

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