プロピルパラベンとは…成分効果と毒性を解説


・プロピルパラベン
[医薬部外品名]
・パラオキシ安息香酸プロピル
[慣用名]
・パラベン
プロピルパラベンは、パラベン(パラオキシ安息香酸エステル)の一種で、非常に広範囲の微生物に殺菌力をもっている無色の結晶または白色の結晶性粉末で、油溶性の防腐剤です。
パラベン類の中ではメチルパラベンが最も安全性が高く刺激も少ないため、防腐剤の中で最も使用されるのがメチルパラベンですが、メチルパラベンは水溶性で油性の化粧品や洗浄製品などの防腐にお互いの使用量を減らして防腐効果を向上できるため、プロピルパラベンなどが併用されます。
メチルパラベン単体だけでなく、プロピルパラベンを併用することでカビや酵母に対する防腐力(抗菌力)がどのように変わるのかをパラベンを開発している上野製薬株式会社がグラフで公開しています(∗1)(文献5:2016)。
∗1 対象:パラベンなし、MP:メチルパラベン、EP:エチルパラベン、PP:プロピルパラベンで、左側のcfu:コロニーとして検出された菌数です。
グラフをみると、酵母に対してはMPを0.3%配合するよりもMP0.2%+PP0.1%と併合したほうが素早く確実に防腐できているのがわかる一方、カビに対してはMP0.3%のほうが抗菌力が強く、プロピルパラベンはカビの抗菌力が弱いのもわかります。
また、EPはカビに対して素早く確実な抗菌力があることから、様々な菌をできるだけ微量で防ぐには、メチルパラベンに微量のプロピルパラベンやエチルパラベンをセットで併用するのが効果的なことがわかります。
プロピルパラベンは配合上限が1.0%までに定められていますが、化粧品業界としてもパラベンを含めた防腐剤の配合量をできるだけ減らそうと努力していることもあり、メチルパラベンを軸にすることでプロピルパラベンの配合量は年々減ってきています。
では、実際にどれくらいの量が配合されているのかというと、2003年に国立医薬品食品衛生研究所報告に掲載された「市販化粧水中のフェノキシエタノールおよびパラベン類の分析法に関する研究」によると、国内42製品の化粧水のフェノキシエタノールとパラベンの配合量を調査したところ、以下のような数字になっています(文献1:2003)。
プロピルパラベンの量は、パラベン類で最も安全性が高く広く使用されているメチルパラベンをメインに配合することで、平均として0.015%、最大でも0.04%ほどの微量に抑えられていることがわかると思います。
また、”Cosmetic Ingredient Review”の「Asswssment of Parabens as Used in Cosmetic」というパラベンの安全性評価レポートの調査では、2006年と2017年でのプロピルパラベンの配合製品量の推移やプロピルパラベンの配合量の推移も明らかになっています(文献2:2017)。
以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を表しており、またリンスオフ製品というのは、洗い流し製品(シャンプー、洗顔料、クレンジングなど)を指します。
配合製品は増えているものの、配合量は2003年に比べて格段に減少しており、化粧品業界や洗浄業界の共通認識として、最低限の防腐機能を備えながらも配合量を減らすよう工夫してきているのが理解できると思います。
また、日本ではプロピルパラベンの配合上限は1.0%までですが、ヨーロッパではより厳格な規定になっており、メチルおよびエチルパラベンが個々で0.4%以下、またはその合計量で0.8%以下となっており、さらにプロピルおよびブチルパラベンについては単体または合計で0.19%以下となっています(文献3:2011)。
プロピルパラベンの安全性(刺激性・アレルギー)について
以下は、この結論にいたった根拠です。
安全性を調査するために、国内外を問わず信頼性が高いと思われる安全性データシート(∗2)やレポートを参照しています。
∗2 安全性データシートとは、化粧品製造会社や化粧品販売会社のために提供されている成分の安全性データが記載されているシートで、一般消費者向けの資料ではありませんが、安全性を考える上で重要なエビデンスのひとつとなるため、一部引用させていただいています。
皮膚刺激性について
“Cosmetic Ingredient Review”の「Final Report on the Safety Assessment of Methylparaben, Ethylparaben, Propylparaben, and Butylparaben」(文献2:1984)によると、
- [動物試験] 10%プロピルパラベンをウサギの皮膚に適用したところ、軽度の皮膚刺激あり
- [ヒト試験] パラベンは実際のところ健常なヒト皮膚にとっては非刺激性であり、実際に0.1%~0.8%のパラベンを1つまたは2つ含む製剤における皮膚刺激性テストにおいて、皮膚刺激性のある証拠は示されなかった
昭和化学の安全性データシート(文献4:2014)によると、
- [ヒト試験] 皮膚に対して刺激性が弱いため皮膚刺激性なし(区分外)
と記載されています。
プロピルパラベン単体の有意な安全性データは少なく、安全性データを参照する限りでは、規定の配合量において皮膚刺激性はなさそうですが、すでに解説した情報の中でヨーロッパの厳格な規制では、メチルおよびエチルパラベンが単体0.4%以下だったのに対して、プロピルおよびブチルパラベンが0.19%以下だったことから、メチルおよびエチルよりも刺激が高いことがうかがえるため、皮膚刺激性はほとんどないものの、メチルおよびエチルパラベンよりは皮膚刺激性が高いと考えられます。
眼刺激性について
眼刺激性に関してはプロピルパラベン単体の有意なデータがほとんどないのですが、点眼薬にもよく使用されており、ヨーロッパの厳格な規制ではメチルおよびエチルパラベンが単体0.4%以下だったのに対して、プロピルおよびブチルパラベンが0.19%以下だったことからメチルおよびエチルよりも刺激が高いことがうかがえるため、皮膚刺激同様に皮膚刺激性はが起こる可能性は低いもののメチルおよびエチルパラベンよりは皮膚刺激性が高いと考えられます。
アレルギー(皮膚感作性)について
“Cosmetic Ingredient Review”の「Final Report on the Safety Assessment of Methylparaben, Ethylparaben, Propylparaben, and Butylparaben」(文献2:1984)によると、
- [ヒト試験] パラベンは実際のところ健常なヒト皮膚にとっては非刺激性であり、実際に0.1%~0.8%のパラベンを1つまたは2つ含む製剤における皮膚感作性テストにおいて、皮膚感作性のある証拠は示されなかった
- パラベンによる皮膚感作はとくに皮膚バリアの壊れた肌やダメージのある肌などで起こる
と記載されています。
これらのデータによると、健常な皮膚の場合は皮膚感作性が起きにくく、慢性皮膚炎の場合は皮膚感作性が起こりえると解釈できますが、それでも2.2%~3%未満という極めて少ない数であり、また現在多くの化粧品や洗浄製品にプロピルパラベンが配合されている中で、重大なアレルギーが報告されていないことから、アレルギー反応(皮膚感作)が起こる可能性は限りなく低いと考えられます。
化粧品毒性判定事典による毒性判定について
化粧品成分名 | 判定 |
---|---|
プロピルパラベン | ■ 2~3種類セットで |
参考までに化粧品毒性判定事典によると、プロピルパラベンは2、3種類で■(∗3)となっており、数種類を併用してやや毒性ありという判定になってます。
ただ、すでに解説してきたように、現在はパラベン配合量を可能な限り減らそうとしており、実際にかなり微量で防腐効果が保たれるようになってきているので、毒性は化粧品や洗浄製品それぞれのパラベン配合量によると言えそうです。
∗3 毒性判定事典の毒性レベルは「毒性なし」「△」「■」「■■」となっており、△は2~3個で■1個に換算し、■が多いほど毒性が強いという目安になり、製品の毒性成分の合計が■4つ以上なら使用不可と判断されます。
∗∗∗
プロピルパラベンは安定化成分にカテゴライズされています。
他のパラベンは以下よりお読みください。
成分一覧は以下からお読みください。
参考:安定化成分
∗∗∗
文献一覧:
- 徳永裕司,竹内織恵,高玲華,内野正,安藤正典(2003)「市販化粧水中のフェノキシエタノールおよびパラベン類の分析法に関する研究」国立医薬品食品衛生研究所報告(121),pp25-29.
- “Cosmetic Ingredient Review”(1984)「Final Report on the Safety Assessment of Methylparaben, Ethylparaben, Propylparaben, and Butylparaben」, <http://journals.sagepub.com/doi/abs/10.3109/10915818409021274> 2017年9月23日アクセス.
- 鈴木淳子,中村義昭,伊藤弘一,横山敏郎,栗田雅行,中江大(2011)「化粧品中の防腐剤であるパラオキシ安息香酸エステル(パラベン)の濃度」, <http://www.tokyo-eiken.go.jp/assets/issue/journal/2011/pdf/01-14.pdf> 2017年9月23日アクセス.
- 昭和化学株式会社(2014)「安全データシート」, <http://www.st.rim.or.jp/~shw/MSDS/16541350.pdf> 2017年9月23日アクセス.
- 上野製薬株式会社(2016)「パラベンの抗菌性と安全性」, <https://www.ueno-fc.co.jp/chemistry/pdf/PARABEN_HP%20DATA_2015_jp_3.pdf> 2017年9月24日アクセス.
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