フェノキシエタノールとは…成分効果と毒性を解説

防腐剤
フェノキシエタノール
[化粧品成分表示名称]
・フェノキシエタノール

[医薬部外品表示名称]
・フェノキシエタノール

グリコールエーテルの一種で、天然では玉露茶の揮発成分としてや綿花地帯の近辺に見出される空中浮遊物などに存在している、水やオイルに溶けにくく、エタノールやグリコール類に溶ける性質を有した防腐剤(抗菌剤)です。

広い範囲の抗菌性を有しており、グラム陽性菌に対しては活性がかなり低いものの、グラム陰性菌に対してはとくに強い抗菌作用があり、防腐剤としてパラベン類の代わりに使用されたり、またパラベン類およびデヒドロ酢酸と組み合わせて使用することでそれぞれの配合量を減らしつつ相乗的に防腐効果を高める処方も取り入れられてきています(文献3:1990)

化粧品への使用上限は1.0%まで認められていますが、化粧品業界全体として、防腐効果は保ちつつ防腐剤の配合量をできるだけ減らすノウハウが確立されてきており、近年は防腐成分をかなり減らした製品が一般化しています。

2003年の国立医薬品食品衛生研究所報告によると、国内42製品の化粧水のフェノキシエタノールとパラベン類の配合量を調査したところ、

化粧水中のパラベンとフェノキシエタノールの配合量

フェノキシエタノールの平均値は0.266%となっており、実態としてパラベン類と組み合わせて処方し、お互いの配合量を減らすことで、かなり配合量を減らせていることが明らかとなっています(文献2:2003)

化粧品に配合される場合は、スキンケア化粧品、ヘアケア化粧品、メイクアップ化粧品をはじめ、様々な製品に使用されています。

実際の使用製品の種類や数および配合量は、海外の1987-2006年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

フェノキシエタノールの配合製品数と配合量の調査結果(1987-2006年)

フェノキシエタノールはポジティブリストに分類されているため配合上限があり、以下のような配合基準となっています。

粘膜に使用されることがない化粧品のうち洗い流すもの 1.0g/100g
粘膜に使用されることがない化粧品のうち洗い流さないもの 1.0g/100g
粘膜に使用されることがある化粧品 1.0g/100g

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フェノキシエタノールの安全性(刺激性・アレルギー)について

フェノキシエタノールの現時点での安全性は、配合上限は1%であり、配合範囲内において、皮膚刺激性および眼刺激性はほとんどなく、皮膚感作性(アレルギー性)の報告もないため、安全性に問題のない成分であると考えられます。

ただし、湿疹または皮膚炎を有する場合は、ごくまれに症状が悪化するケースが報告されている(悪化の割合は0.2%)ので、注意が必要です。

以下は、この結論にいたった根拠です。

安全性を調査するために、国内外を問わず信頼性が高いと思われる安全性データシート(∗1)やレポートを参照しています。

∗1 安全性データシートとは、化粧品製造会社や化粧品販売会社のために提供されている成分の安全性データが記載されているシートで、一般消費者向けの資料ではありませんが、安全性を考える上で重要なエビデンスのひとつとなるため、一部引用させていただいています。

皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について

“Cosmetic Ingredient Review”の「Final Report on the Safety Assessmentof Phenoxyethanol」(文献1:1990)によると、

  • [ヒト試験] 51人の被検者の上腕に10%フェノキシエタノールを含むミネラルオイル0.3mLを誘導期間において週3回3週間にわたって24時間パッチ適用し、各パッチ除去から次のパッチ適用の間に部位をスコアリングし、最後の誘導パッチは除去72時間後に部位をスコアリングした。10~14日の休息期間を設けた後に誘導部位および隣接した未処置部位に24時間チャレンジパッチを適用し、24および72時間後に部位をスコアリングしたところ、誘導期間において2人の被検者でほとんど知覚できない反応を示したが、いずれの場合も次のパッチ適用までに反応は消失していた。誘導期間およびチャレンジ期間でほかに反応は観察されず、10%フェノキシエタノールは一次刺激性および累積刺激性はなく、また遅延型接触性感作の兆候もなかった(Hill Top Reserch INC,1984)
  • [ヒト試験] 2,736人の患者に1%フェノキシエタノールを含むワセリンを用いたパッチ試験を実施したところ、適用から2日および4日目で刺激性またはアレルギー性反応の兆候はみられなかった(LOVELL,C.R, et al,1984a)
  • [ヒト試験] 130人の患者に1%,5%および10%フェノキシエタノールを含むワセリンを用いたパッチ試験を実施したところ、刺激性またはアレルギー性反応の兆候はみられなかった(LOVELL,C.R, et al,1984b)
  • [ヒト試験] 小児湿疹の病歴や6ヶ月以上の手湿疹の病歴を有する患者に石けんの代わりに1%フェノキシエタノールを含む水性クリームを使用してもらったところ、病気が悪化し、水性クリームの個々の成分をパッチテストしたところ、フェノキシエタノールに対して陽性反応を示した。アレルギー性接触皮膚炎を有する患者に対して1%フェノキシエタノールを有する水性クリームはまれに有害反応を引き起こす可能性があると結論付けられた(LOVELL,C.R, et al,1984c)
  • [ヒト試験] オランダのスタンダードシリーズにおいて一般的な防腐剤の必要性を判断する研究で、接触皮膚炎の疑いのある501人の患者に14種類の防腐剤を適用し、ICDRGガイドラインに従って評価したところ、1人の患者が5%フェノキシエタノールを含むワセリンで陽性反応を示した。陽性反応率は0.2%であった(DeGROOT,A.C, et al.,1986)
  • [ヒト試験] 138人の被検者の背中に10%フェノキシエタノールを含むワセリンを誘導期間において最初のパッチは48時間閉塞パッチ適用し、2回目以降は24時間閉塞パッチ適用した。合計9回適用し、3週間の休息期間を設けた後に未処置部位にチャレンジパッチを適用したところ、アレルギー感作と思われる皮膚反応は観察されなかった(HENKE, W.A,1975)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、皮膚刺激および皮膚感作の報告はないため、皮膚刺激性および皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

ただし、皮膚炎を有する場合はごくまれに悪化することがある(試験データでは悪化の割合は0.2%)ので注意が必要です。

眼刺激性について

“Cosmetic Ingredient Review”の「Final Report on the Safety Assessmentof Phenoxyethanol」(文献1:1990)によると、

  • [動物試験] 3匹のウサギの片眼の結膜嚢に2.2%フェノキシエタノール水溶液0.1mLを滴下し、滴下19,43および66時間後にDraize法に従って評価したところ、いずれのウサギにおいても刺激の影響は認められなかった(Hill Top Reserach INC,1981a)
  • [動物試験] 6匹のウサギの片眼の結膜嚢に2.2%フェノキシエタノール水溶液0.1mLを点眼し、点眼23,51および72時間後にDraize法に従って刺激の兆候を検査したところ、72時間で1匹のウサギにわずかな結膜後半が観察されたが、ほかに影響はまったく観察されず、2.2%フェノキシエタノール水溶液は眼刺激剤ではないと結論付けられた(Hill Top Reserach INC,1981b)
  • [動物試験] 未希釈のフェノキシエタノールをウサギに適用したところ、重篤な損傷を引き起こしたが、5%に希釈した場合、軽度の刺激であった(CLAYTON, G.D. and CLAYTON, F.E,1981-1982)

と記載されています。

未希釈のフェノキシエタノールは眼刺激性がありますが、化粧品におけるフェノキシエタノールの配合上限は1%であり、試験データをみるかぎり、2.2%でほとんど眼刺激性なしと報告されているため、配合範囲内において、眼刺激性はほとんどないと考えられます。

化粧品毒性判定事典による毒性判定について

化粧品成分名 判定
フェノキシエタノール

参考までに化粧品毒性判定事典によると、フェノキシエタノールの毒性は■(∗2)となっていますが、安全データをみるかぎり、配合上限内において、安全性に問題ない成分であると考えられます。

∗2 毒性判定事典の毒性レベルは「毒性なし」「△」「■」「■■」となっており、△は2~3個で■1個に換算し、■が多いほど毒性が強いという目安になり、製品の毒性成分の合計が■4つ以上なら使用不可と判断されます。

∗∗∗

フェノキシエタノールは安定化成分にカテゴライズされています。

他の安定化成分など安定化成分一覧は以下からお読みください。

参考:安定化成分

∗∗∗

文献一覧:

  1. “Cosmetic Ingredient Review”(1990)「Final Report on the Safety Assessmentof Phenoxyethanol」,<http://journals.sagepub.com/doi/abs/10.3109/10915819009078737> 2018年5月19日アクセス.
  2. 徳永裕司,竹内織恵,高玲華,内野正,安藤正典(2003)「市販化粧水中のフェノキシエタノールおよびパラベン類の分析法に関する研究」国立医薬品食品衛生研究所報告(121),25-29.
  3. ジョン・J・カバラ(1990)「香粧品に許容できるフェノキシエタノール」香粧品医薬品防腐・殺菌剤の科学,63-88.

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