フェノキシエタノールとは…成分効果と毒性を解説

防腐
フェノキシエタノール
[化粧品成分表示名称]
・フェノキシエタノール

[医薬部外品表示名称]
・フェノキシエタノール

化学構造的にエチレングリコールの水酸基(ヒドロキシ基)にフェノールの水酸基がエーテル結合した芳香族アルコールです。

フェノキシエタノールは、名称に「エタノール」が含まれますが、一般にアルコールと呼ばれる酩酊成分であるエタノールとは異なります(∗1)

∗1 エタノールとは異なあり一般的にアルコールと呼ばれる成分ではないため、アルコールにアレルギーを有する場合でも使用でき、アルコールフリーと記載された製品にも配合されます。

天然には日本茶の一種である玉露の揮発成分であると報告されており(文献5:1981)、また綿花地帯の近辺に見出される空中浮遊物質としても報告されています(文献6:1975;文献7:1976)

これらの報告は、いずれもヒトへの暴露に対する安全性を絶対的に示すものとして捉えるべきではないものの、とくに問題なく低レベルでヒトが吸入摂取してきた長い歴史を物語るものであると考えられます。

フェノキシエタノールの抗菌剤としての歴史は古く、おもにヨーロッパで1950年代に医薬品の防腐剤として使用され、今日でも小児用ワクチンやインフルエンザワクチンなどをはじめとするワクチン類などの防腐剤として汎用されています。

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、スキンケア化粧品、ボディ&ハンドケア製品、メイクアップ化粧品、洗顔料&洗顔石鹸、日焼け止め製品、洗浄製品、シート&マスク製品などに使用されています。

製品自体のグラム陰性菌に対する抗菌・防腐作用

製品自体のグラム陰性菌に対する抗菌・防腐作用に関しては、1990年にアメリカのEmery Industriesによって報告されたフェノキシエタノールの抗菌活性検証によると、

通常の培地を用いたin vitro試験において、化粧品の腐敗でよく見受けられる様々なカビ、酵母および細菌に対するフェノキシエタノールのMIC(minimum inhibitory concentration:最小発育阻止濃度)を検討したところ、以下のグラフのように(∗2)

∗2 MICの単位であるppm(parts per million)は100万分の1の意味であり、1ppm = 0.0001%です。

微生物 MIC(ppm)
(ppm) (%)
緑膿菌(グラム陰性桿菌)
Pseudomonas aeruginosa ATCC 9027
3,200 0.32
大腸菌(グラム陰性桿菌)
Escherichia coli ATCC 8739
3,600 0.36
黄色ブドウ球菌(グラム陽性球菌)
Staphylococcus aureus ATCC 6538
8,500 0.85
カンジダ(酵母)
Candida albicans ATCC 10231
5,400 0.54
コウジカビ(カビ)
Aspergillus niger ATCC 9642
3,300 0.33

フェノキシエタノールは、広い範囲の抗菌活性を有し、とくにグラム陰性菌である緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)に対して最も高い活性をもち、一方でグラム陽性菌に対してはかなり低い活性を示した。

このような検証結果が明らかにされており(文献2:1990)、フェノキシエタノールに製品自体の抗菌・防腐作用が認められています。

フェノキシエタノールは、グラム陰性菌である緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)に対してより強い活性を示すため、グラム陽性菌に対して強い活性を有するがグラム陰性菌に対しては効かない多くの汎用防腐剤と組み合わせて使用することで、欠点を補い合った理想的な防腐設計が実現すると考えられており、実際に長年汎用されています。

フェノキシエタノールの作用メカニズムは、菌膜破壊、細胞質成分の漏出、組織破壊などが報告されています(文献2:1990)

フェノキシエタノールはポジティブリストであり、化粧品に配合する場合は以下の配合範囲内においてのみ使用されます。

種類 最大配合量(g/100g)
粘膜に使用されることがない化粧品のうち洗い流すもの 1.0
粘膜に使用されることがない化粧品のうち洗い流さないもの 1.0
粘膜に使用されることがある化粧品 1.0

フェノキシエタノールは医薬部外品(薬用化粧品)への配合において配合上限があり、配合範囲は以下になります。

種類 配合量
薬用石けん・シャンプー・リンス等、除毛剤 1.0
育毛剤 1.0
その他の薬用化粧品、腋臭防止剤、忌避剤 1.0
薬用口唇類 1.0
薬用歯みがき類 1.0
浴用剤 1.0

実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の1987年および2006年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

フェノキシエタノールの配合製品数と配合量の調査結果(1987年および2006年)

国内における配合量に関しては、2003年に国立医薬品食品衛生研究所によって報告された化粧水中のパラベン量の調査によると、

化粧水中のパラベンとフェノキシエタノールの配合量

このような調査結果が明らかにされており(文献3:2003)、フェノキシエタノールの量は、他のパラベン類と相乗効果を得ることによって、平均として0.266%ほどに抑えられていますが、最大では1.043%と配合上限を超えているものもあります。

また2009年に東京農業大学大学院農学研究科および東京食品技術研究所によって報告された口紅中のパラベン量の調査によると、

口紅中のフェノキシエタノールの配合量

このような調査結果が明らかにされており(文献4:2009)、フェノキシエタノールの量は、他のパラベン類と相乗効果を得ることによって、平均として0.260%、最大でも0.550%に抑えられていることがわかります。

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フェノキシエタノールの安全性(刺激性・アレルギー)について

フェノキシエタノールの現時点での安全性は、

  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
  • 10年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:2%以下濃度においてほとんどなし
  • 皮膚感作性:ほとんどなし
  • 皮膚感作性(皮膚炎を有する場合):ほとんどなし
  • 光毒性:ほとんどなし

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:1990)によると、

  • [ヒト試験] 51人の被検者に10%フェノキシエタノールを含むミネラルオイル0.3mLを対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施したところ、誘導期間において2人の被検者はほとんど知覚できない反応を示したが、いずれの場合も次のパッチ適用までに反応は消失しており、また試験期間において他に皮膚反応はなく、皮膚刺激および皮膚感作の兆候はみられなかった(Hill Top Research Inc,1984)
  • [ヒト試験] 2,736人の患者に1%フェノキシエタノールを含む軟膏を用いたパッチ試験を実施したところ、適用から2日および4日目で刺激性またはアレルギー性反応の兆候はみられなかった(C R LOVELL et al,1984)
  • [ヒト試験] 130人の患者に1%,5%および10%フェノキシエタノールを含むワセリンを用いたパッチ試験を実施したところ、刺激性またはアレルギー性反応の兆候はみられなかった(C R LOVELL et al,1984)
  • [ヒト試験] 138人の被検者の背中に10%フェノキシエタノールを含む軟膏を対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施したところ、アレルギー感作と思われる皮膚反応は観察されなかった(W A Henke et al,1975)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、共通して皮膚刺激および皮膚感作なしと報告されているため、一般的に皮膚刺激性および皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

– 皮膚炎を有する場合 –

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:1990)によると、

  • [ヒト試験] オランダのスタンダードシリーズにおいて一般的な防腐剤の必要性を判断する研究で、接触皮膚炎の疑いのある501人の患者に14種類の防腐剤を適用し、ICDRGガイドラインに従って評価したところ、1人の患者が5%フェノキシエタノールを含むワセリンで陽性反応を示した。陽性反応率は0.2%であった(A C Degroot et al,1986)

– 個別事例 –

  • [個別事例] 小児湿疹の病歴や6ヶ月以上の手湿疹の病歴を有する患者に石けんの代わりに1%フェノキシエタノールを含む水性クリームを使用してもらったところ、病気が悪化し、水性クリームの個々の成分をパッチテストしたところ、フェノキシエタノールに対して陽性反応を示した。アレルギー性接触皮膚炎を有する患者に対して1%フェノキシエタノールを有する水性クリームはまれに有害反応を引き起こす可能性があると結論付けられた(C R LOVELL et al,1984)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、1人を除き皮膚感作なしと報告されているため、皮膚炎を有する場合において、一般的に皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:1990)によると、

  • [動物試験] 3匹のウサギの片眼の結膜嚢に2.2%フェノキシエタノール水溶液0.1mLを滴下し、滴下19,43および66時間後にDraize法に従って評価したところ、いずれのウサギにおいても刺激の影響は認められなかった(Hill Top Research Inc,1981)
  • [動物試験] 6匹のウサギの片眼の結膜嚢に2.2%フェノキシエタノール水溶液0.1mLを点眼し、点眼23,51および72時間後にDraize法に従って刺激の兆候を検査したところ、72時間で1匹のウサギにわずかな結膜後半が観察されたが、ほかに影響はまったく観察されず、2.2%フェノキシエタノール水溶液は眼刺激剤ではないと結論付けられた(Hill Top Research Inc,1981)
  • [動物試験] 未希釈のフェノキシエタノールをウサギに適用したところ、重篤な損傷を引き起こしたが、5%に希釈した場合、軽度の刺激であった(G D Clayton et al,1981-1982)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、2.2%以下濃度において眼刺激性なしと報告されているため、化粧品配合上限濃度以下において、眼刺激性はほとんど起こらないと考えられます。

光毒性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:1990)によると、

  • [ヒト試験] 28人の被検者にフェノキシエタノール0.3mLを前腕に適用し、24時間後にパッチを除去しUVA(16-20mJ/c㎡)を照射完了後、2つ目のパッチを除去し、照射1,24,48および72時間後に照射部位を評価したところ、5人の被検者は照射1時間後に軽度の反応を示し、3人の被検者は照射24時間後で軽度の反応を、1人の被検者は1および24時間で軽度の反応を示したが、それぞれその後反応は消失した。照射部位において軽度の紅斑が偶発的に観察されたが、非照射部位においても軽度の紅斑は観察されたため、これらの反応は有意とみなされず、この試験条件下において光毒性なしと結論づけられた(Hill Top Research Inc,1984)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、光毒性なしと報告されているため、光毒性はほとんど起こらないと考えられます。

∗∗∗

フェノキシエタノールは安定化成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:安定化成分

∗∗∗

文献一覧:

  1. Cosmetic Ingredient Review(1990)「Final Report on the Safety Assessment of Phenoxyethanol」International Journal of Toxicology(9)(2),259-277.
  2. L Allen, et al(1990)「香粧品に許容できるフェノキシエタノール」香粧品 医薬品 防腐・殺菌剤の科学,63-88.
  3. 徳永 裕司, 他(2003)「市販化粧水中のフェノキシエタノールおよびパラベン類の分析法に関する研究」Bulletin of National Institute of Health Sciences(121),25-29.
  4. 高畑 薫, 他(2009)「市販口紅中のパラベン類およびフェノキシエタノール含有量とその摂取量の推定」日本食生活学会誌(20)(2),143-150.
  5. K Yamaguchi, et al(1981)「Volatile constituents of green tea, Gyokuro (Camellia sinensis L. var Yabukita)」Journal of Agricultural and Food Chemistry(29)(2),366–370.
  6. P A Hedin, et al(1975)「Constituents of cotton bud essential oil」Phytochemistry(14)(9),2087-2088.
  7. P A Hedin(1976)「Seasonal variation in the emission of volatiles by cotton plants growing in the field」Environmental Entomology(5)(6),1234-1238.

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