パルミチン酸デキストリンとは…成分効果と毒性を解説





・パルミチン酸デキストリン
[医薬部外品表示名称]
・パルミチン酸デキストリン
化学構造的に多糖類の一種であるデキストリンの水酸基に高級脂肪酸の一種であるパルミチン酸がエステル結合した油溶性(疎水性)の糖脂肪酸エステル(油溶性高分子エステル)です。
化粧品に配合される場合は、
これらの目的で、リップケア製品、メイクアップ化粧品、日焼け止め製品、スキンケア化粧品などに使用されています(文献1:2015)。
増粘・ゲル化
増粘・ゲル化に関しては、炭化水素、エステル油および植物油(トリグリセリド)などにおよそ5%-10%溶解することで、適度な硬さの透明なゲルを形成し、10%以上ではより硬いゲル-固形物を形成することから多くの化粧品に汎用されています(文献2:2015;文献3:2013)。
また増粘効果は2%以上で得られます(およそ5%からゲル化しはじめます)。
乳化安定化
乳化安定化に関しては、経時的な油の分離を抑制し、乳化系を安定する目的で揮発性シリコーンを多量に配合した油中水型(W/O型)クリームなどに配合されます(文献3:2013)。
分散
分散に関しては、顔料の表面を覆い、顔料同士の凝集を防ぐ目的で顔料が配合された乳化物に処方されます(文献3:2013)。
感触改良
感触改良に関しては、ワックス類(ロウ類)の油性感を軽減し、結晶を抑制することで感触を向上させることから、ワックス類(ロウ類)配合製品に併用されます(文献3:2013)。
実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の2013-2015年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。
以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を表しており、またリンスオフ製品というのは、洗い流し製品(シャンプー、ヘアコンディショナー、ボディソープ、洗顔料、クレンジングなど)を指します。
パルミチン酸デキストリンの安全性(刺激性・アレルギー)について
- 薬添規2018規格の基準を満たした成分が収載される医薬品添加物規格2018に収載
- 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
- 10年以上の使用実績
- 皮膚刺激性:ほとんどなし
- 眼刺激性:ほとんどなし
- 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし
このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。
以下は、この結論にいたった根拠です。
皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について
Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2015)によると、
- [動物試験] 3匹のウサギを用いてパルミチン酸デキストリンを対象に皮膚刺激性試験を実施した(試験詳細の記述なし)ところ、非刺激性であった(Chiba Flour Milling Co,2014)
- [動物試験] モルモットを用いてパルミチン酸デキストリンを対象にMaximization皮膚感作試験を実施したところ、皮膚感作は誘発されなかった(Chiba Flour Milling Co,2014)
と記載されています。
試験データをみるかぎり、皮膚刺激性および皮膚感作性なしと報告されていることから、皮膚刺激性および皮膚感作性はほとんどないと考えられます。
眼刺激性について
Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2015)によると、
- [動物試験] 3匹のウサギを用いてパルミチン酸デキストリンを対象に眼刺激性試験を実施したところ、注入1時間後にわずかな結膜の発赤が観察されたが24時間後には消失した。角膜または虹彩に刺激反応を引き起こさなかった(Chiba Flour Milling Co,2014)
と記載されています。
試験データをみるかぎり、眼刺激性なしと報告されているため、眼刺激性はほとんどないと考えられます。
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パルミチン酸デキストリンは安定化成分にカテゴライズされています。
成分一覧は以下からお読みください。
参考:安定化成分
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文献一覧:
- Cosmetic Ingredient Review(2015)「Safety Assessment of Polysaccharide Gums as Used in Cosmetics」Final Report.
- 宇山 侊男, 他(2015)「パルミチン酸デキストリン」化粧品成分ガイド 第6版,153.
- 鈴木 挙直(2013)「糖脂肪酸エステル系オイルゲル化剤について」オレオサイエンス(13)(2),73-77.
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