デヒドロ酢酸Naとは…成分効果と毒性を解説

防腐
デヒドロ酢酸Na
[化粧品成分表示名称]
・デヒドロ酢酸Na

[医薬部外品表示名称]
・デヒドロ酢酸ナトリウム

水に溶けにくいデヒドロ酢酸に水溶性のナトリウム塩を反応させて水に溶けやすくした水溶性のデヒドロ酢酸ナトリウム塩です。

基本的にはデヒドロ酢酸と同様の特性を有しており、アルカリ性に不活性で、pHが低くなるほど(酸性度が高くなるほど)抗菌力が高くなり、細菌、酵母、カビのいずれにも効果を示しますが、水溶性の点ではデヒドロ酢酸と異なり、非常に高いのが特徴です。

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、メイクアップ化粧品などに使用されています(文献1:1985)

製品自体の抗菌・防腐作用

製品自体の抗菌・防腐作用に関しては、pH7.0以上のアルカリ域では抗菌活性がありませんが、以下の表のように、

pH 抗菌活性(%)
2.0 100
4.0 95
5.0 65
5.5 33
6.0 16
6.5 6-7
7.0 0-1

pH6.0以下の酸性域で酸性度が高くなるほど抗菌性を発揮することが報告されています(文献2:1957)

抗菌範囲に関しては、グラム陽性菌、カビおよび酵母に対しては一様に抗菌活性を有していますが、一方でグラム陰性菌、乳酸菌および偏性嫌気性菌に対する抗菌活性は弱く、多くの場合他の防腐成分と組み合わせて使用されます(文献1:1985;文献3:1960;文献4:1965;文献5:2012)

水への溶解性が高いこと、アルカリ性には不活性であり、酸性に高い抗菌性を発揮する特徴を有しており、2010年に報告された国立医薬品食品衛生研究所の化粧品中の防腐剤の分析では、デヒドロ酢酸Naは21製品中3製品(マスカラ、コンディショナー、石鹸)に使用されています(文献6:2010)

デヒドロ酢酸Naはポジティブリストであり、化粧品に配合する場合は以下の配合範囲内においてのみ使用されます。

種類 最大配合量(g/100g)
粘膜に使用されることがない化粧品のうち洗い流すもの デヒドロ酢酸およびその塩類の合計量として0.50
粘膜に使用されることがない化粧品のうち洗い流さないもの
粘膜に使用されることがある化粧品

また、デヒドロ酢酸ナトリウムは医薬部外品(薬用化粧品)への配合において配合上限があり、配合範囲は以下になります。

種類 配合量 その他
薬用石けん・シャンプー・リンス等、除毛剤 0.50 すべてのデヒドロ酢酸塩をデヒドロ酢酸に換算して、デヒドロ酢酸として合計
育毛剤 0.50
その他の薬用化粧品、腋臭防止剤、忌避剤 0.50
薬用口唇類 0.50
薬用歯みがき類 0.50
浴用剤 0.50

実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の1985年および2002-2003年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

デヒドロ酢酸Naの配合製品数と配合量の調査結果(1985年および2002-2003年)

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デヒドロ酢酸Naの安全性(刺激性・アレルギー)について

デヒドロ酢酸Naの現時点での安全性は、

  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
  • 10年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:ほとんどなし
  • 皮膚感作性:ほとんどなし
  • 光毒性・光感作性:ほとんどなし

このような結果となっており、配合上限濃度以下および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:1985)によると、

  • [ヒト試験] 200人の被検者に60%デヒドロ酢酸Na水溶液ペーストを5日間にわたって閉塞パッチ適用し、3週間の休息期間を設けた後に48時間チャレンジパッチを適用し、パッチ除去後に皮膚反応を評価したところ、いずれの被検者も試験期間中に皮膚反応は観察されなかった(H C Spencer,1950)
  • [ヒト試験] 19人の被検者の前腕または上腕の手のひら側に0.4%デヒドロ酢酸Na水溶液0.1mLを24時間閉塞適用したところ、19人の被検者に0.4%デヒドロ酢酸Na水溶液を24時間閉塞パッチ適用し、パッチ除去後に皮膚反応を評価したところ、2人の被検者にほとんど知覚できない紅斑がみられ、1人の被検者に不明瞭な紅斑がみられた。残りの被検者は皮膚反応を示さなかった(CTFA,1973)
  • [ヒト試験] 20人の被検者に0.2%デヒドロ酢酸Naを含む口紅を24時間閉塞パッチ適用し、パッチ除去後に皮膚反応を評価したところ、2人の被検者に軽度の紅斑が観察され、残りの18人には皮膚反応はみられなかった。同時に試験していた対照製品と試験製品との間に刺激性の有意差はなかったため、デヒドロ酢酸Naは非刺激剤だと結論づけられた(CTFA,1973)
  • [ヒト試験] 20人の被検者に0.2%デヒドロ酢酸Naを含むペーストマスクを24時間閉塞パッチ適用し、パッチ除去後に皮膚反応を評価したところ、1人の被検者に軽度の紅斑が観察され、残りの19人には皮膚反応はみられなかった。同時に試験していた対照製品と試験製品との間に刺激性の有意差はなかったため、デヒドロ酢酸Naは非刺激剤だと結論づけられた(CTFA,1978)
  • [ヒト試験] 128人の被検者に0.2%デヒドロ酢酸Naを含む口紅を対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施したところ、誘導期間において1人の被検者に20分と48時間でそれぞれ最小限および明瞭な紅斑が観察された。他の被検者には皮膚反応は観察されず、皮膚刺激および皮膚感作の兆候はなかった(Hill Top Research,1975)
  • [ヒト試験] 112人の被検者に0.2%デヒドロ酢酸Naを含むペーストマスクを対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施したところ、誘導期間において15人の被検者に合計22ヶ所の最小限の紅斑と5ヶ所の明瞭な紅斑が認められた。チャレンジ期間においては3人の被検者のうち2人は最小限の紅斑を示し、1人は最小限で明瞭な紅斑を示した。これらの反応は一次刺激であり、本質的に皮膚感作剤ではないと結論付けられた(Hill Top Research,1977)
  • [ヒト試験] 60人の被検者に0.1%デヒドロ酢酸Naを含む口紅を対象に4週間の使用試験を実施したところ、試験期間内に2人の被検者は微弱な反応を示し、1人の原因は製品中のパラベンであった。残りの被検者は皮膚反応を示さず、また皮膚刺激もみられなかった(CTFA,1979)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、数人の最小限の一過性の皮膚刺激を除いて共通して皮膚刺激および皮膚感作なしと報告されているため、皮膚刺激性および皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:1985)によると、

  • [動物試験] 6匹のウサギの片眼の結膜嚢に100%デヒドロ酢酸Na0.1mLを15cmの距離から48秒間噴射し、Draize法に従って1,2,3,4および7日目に眼刺激性を評価したところ、1,2,3および4日目の平均眼刺激スコア(0-110)が5,1,2および0であった。眼刺激性は最小限に抑えられており、また対照と同等であるため、眼刺激剤ではないと結論付けられた(CTFA,1973)
  • [動物試験] 6匹のウサギの片眼の結膜嚢に0.2%デヒドロ酢酸Naを含む口紅およびペーストマスク0.1mL量を点滴注入し、Draize法に従って1,2,3,4および7日目で採点したところ、平均刺激スコア110のうち口紅は1,2および3日目で平均刺激スコアが1,1,0であり、ペーストマスクは1および2日目で平均刺激スコアが1および0であった。この結果からこれらの両方の製品は実質的に非刺激性であると結論付けられた(CTFA,1979)
  • [動物試験] 6匹のウサギの片眼の結膜嚢に0.1%デヒドロ酢酸Naを含む口紅を注入し、24,48および72時間で検査したところ、結膜の発赤、角膜炎および虹彩炎は確認されず、非刺激性であった(CTFA,1978)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、共通して眼刺激性なしと報告されているため、眼刺激性はほとんどないと考えられます。

光感作性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:1985)によると、

  • [ヒト試験] 9人の被検者に0.1%デヒドロ酢酸Na水溶液を対象にUVAおよびUVB照射をともなうHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施したところ、すべての被検者に紅斑がみられたが、これは2MEDのUVBに起因しており、照射量を減らすことで刺激の減少がみられた。他に皮膚反応はみられず、光毒性および光感作性はみられなかった(Food and Drug Human Clinical Labs Inc,1983)
  • [ヒト試験] 102人の被検者に0.1%デヒドロ酢酸Naを含む口紅を対象にUV照射をともなう閉塞パッチテストを実施したところ、1人の被検者は誘導期間において微弱な反応を示したが、チャレンジパッチでは反応はなかった。残りの被検者はいずれの期間も皮膚反応を示さず、皮膚刺激、皮膚感作および光感作性の兆候はなかった(CTFA,1978)
  • [ヒト試験] 53人の被検者に0.1%デヒドロ酢酸Naを含む口紅を対象にUV照射をともなうHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施したところ、試験期間中にいずれの被検者も皮膚反応を示さず、皮膚刺激、皮膚感作および光感作性の兆候はなかった(CTFA,1978)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、共通して光毒性および光感作性なしと報告されているため、光毒性および光感作性はほとんどないと考えられます。

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デヒドロ酢酸Naは安定化成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:安定化成分

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文献一覧:

  1. Cosmetic Ingredient Review(1985)「Final Report on the Safety Assessment of Sodium Dehydroacetate and Dehydroacetic Acid」International Journal of Toxicology(4)(3),123-159.
  2. M G DeNavarre(1957)「The interference of nonionic emulsifiers with preservatives.」Journal of the Society of Cosmetic Chemists(8),68-75.
  3. 小川 敏男, 他(1960)「デヒドロ酢酸ナトリウムによる胡瓜醗酵ピックルの防腐について」農産加工技術研究會誌(7)(3),121-124.
  4. 小嶋 秩夫, 他(1965)「食品防腐剤の細菌胞子の発育におよぼす影響」日本水産学会誌(31)(11),934-939.
  5. 鈴木 一成(2012)「デヒドロ酢酸、デヒドロ酢酸Na」化粧品成分用語事典2012,452.
  6. 五十嵐 良明, 他(2010)「化粧品中の防腐剤の分析:サリチル酸,安息香酸ナトリウム,デヒドロ酢酸ナトリウム,ソルビン酸カリウム,フェノキシエタノール及びパラベン類」Bulletin of National Institute of Health Sciences(128),85-90.

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