デキストリンとは…成分効果と毒性を解説




・デキストリン
[医薬部外品表示名称]
・デキストリン
デンプンの加水分解中間生成物として得られる、化学構造的にα-グルコースがグリコシド結合によって重合した分子構成になっている水溶性の多糖類の総称(種子粘質物:植物系水溶性高分子)です。
デキストリンは、デンプンの加水分解中間生成物の総称であり、DE(Dextrose Equivalent)と呼ばれるデンプンの加水分解率を示す指標により、
デキストリンの種類 | DE値:デンプンの加水分解率 | 平均分子量 | 溶解性 | 粘度 |
---|---|---|---|---|
粉あめ | 20-40 | 小 ↓ 大 |
高 ↑ 低 |
低 ↓ 高 |
マルトデキストリン | 10-20 | |||
デキストリン | 10以下 |
このように分類されており、DE値が100に近いほど加水分解の最終物であるグルコースの状態に近くなります(文献6:2018)。
DEが低いということは、デンプンの加水分解が進んでいない(デンプンに近い)ということであり、平均分子量が大きく、溶解性が低く、また粘度が高いということであり、デキストリンは加水分解の程度によって特性が大きく異なるため、用途に合わせて最適なものが使用されます(文献6:2018)。
一般的に水溶性の接着性目的で切手、封筒、ガムテープ、事務ノリなどの日常生活品をはじめ、食品、製紙、鋳造工業にいたるまで広く利用されています(文献5:1965)。
化粧品に配合される場合は、
これらの目的で、スキンケア化粧品、ボディ&ハンドケア製品、メイクアップ化粧品、日焼け止め製品、シート&マスク製品などに使用されています(文献1:2015)。
増粘
増粘に関しては、冷水で水に溶けて糊のような低粘度で接着性の強い粘性を示すため(文献3:1966)、粘度調整や皮膚への吸着性の調整目的でスキンケア化粧品に配合されます(文献2:2016;文献4:2012)。
結合
結合に関しては、パウダーファンデーションなどの粉状化粧品を固形化するための結合剤として配合されます(文献4:2012)。
賦形
賦形(ふけい)とは、”形状を賦(あた)える”という意味であり、大きさや濃度を一定(均一)にするために用いられる成分です。
たとえば錠剤や丸剤は、製造過程で有効成分量にバラツキがあることも多いですが、そういった場合に濃度や大きさを一定にするために乳糖やデンプンなどの賦形剤を添加し、全体量を増して混和して均一の濃度・量・大きさにすることで有効成分量を均一にすることができます。
このような背景からパウダー系化粧品・製品の賦形剤として使用されます。
実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の2015年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。
以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を表しており、またリンスオフ製品というのは、洗い流し製品(シャンプー、ヘアコンディショナー、ボディソープ、洗顔料、クレンジングなど)を指します。
デキストリンの安全性(刺激性・アレルギー)について
- 医療上汎用性があり有効性および安全性の基準を満たした成分が収載される日本薬局方に収載
- 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
- 10年以上の使用実績
- 皮膚刺激性:ほとんどなし
- 眼刺激性:詳細不明
- 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし
このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。
以下は、この結論にいたった根拠です。
皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について
Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2015)によると、
- [ヒト試験] 54人の被検者(男性8人、女性46人)に0.4%デキストリンを含む洗顔料0.1gを対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を閉塞パッチにて実施したところ、誘導期間において1人の被検者に一過性のほとんど知覚できない紅斑がみられたが、チャレンジ期間において皮膚反応は観察されず、臨床的に重要な皮膚刺激およびアレルギー性接触皮膚炎の兆候はなかった(Essex Testing Clinic Inc,2005)
と記載されています。
試験データをみるかぎり、皮膚刺激および皮膚感作なしと報告されているため、皮膚刺激性や皮膚感作性はほとんどないと考えられます。
眼刺激性について
試験結果や安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細は不明です。
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デキストリンは安定化成分にカテゴライズされています。
成分一覧は以下からお読みください。
参考:安定化成分
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文献一覧:
- Cosmetic Ingredient Review(2015)「Safety Assessment of Polysaccharide Gums as Used in Cosmetics」Final Report.
- 日光ケミカルズ(2016)「高分子」パーソナルケアハンドブック,106-134.
- 町田 誠之, 他(1966)「デンプンの化学 : その工業化学的利用を中心として」化学教育(14)(2),130-137.
- 鈴木 一成(2012)「デキストリン」化粧品成分用語事典2012,599.
- 渡辺 淳, 他(1965)「化工デン粉とその用途(その1)」有機合成化学協会誌(23)(5),452-462.
- 佐々木 朋子(2018)「多糖類としての難消化デキストリンの特徴」, <https://www.alic.go.jp/joho-s/joho07_001658.html> 2019年5月29日アクセス.
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