ソルビン酸Kとは…成分効果と毒性を解説

防腐
ソルビン酸K
[化粧品成分表示名称]
・ソルビン酸K

[医薬部外品表示名称]
・ソルビン酸カリウム

水に溶けにくい不飽和脂肪酸であるソルビン酸に水溶性のカリウム塩を反応させて水に溶けやすくしたソルビン酸カリウム塩です。

基本的にはソルビン酸と同様の特性を有しており、pHが低くなるほど、抗菌力が高くなり(アルカリ性に不活性で酸性に高い効果)、細菌、酵母、カビのいずれにも効果を示しますが、水溶性の点ではソルビン酸と異なり、非常に高いのが特徴です(文献2:2016)

一般的には食品・飲料の保存剤・防腐剤として汎用されており、また化粧品の防腐剤としても使用されていますが、化粧品での使用は減少傾向にあります。

ソルビン酸Kの代謝・排泄に関しては、ソルビン酸Kは生体内にソルビン酸として取り込まれ、ソルビン酸は不飽和脂肪酸であることから通常の脂肪酸と同様に最終的に二酸化炭素と水に分解され尿排泄されると考えられています(文献2:2016;文献3:2008)(∗1)

∗1 代謝の過程でソルビン酸の0.05%-0.5%はムコン酸として尿排泄されます。

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、スキンケア化粧品、ボディ&ハンドケア製品、メイクアップ化粧品、洗浄製品、洗顔料&洗顔石鹸などに使用されています(文献1:1988)

製品自体の抗菌・防腐作用

製品自体の抗菌・防腐作用に関しては、1991年に上野製薬株式会社食品技術研究所(現 ウエノフードテクノ)によって報告されたソルビン酸の抗菌活性検証によると、

通常の培地を用いたin vitro試験において、化粧品の腐敗でよく見受けられる微生物に対するソルビン酸のMIC(minimum inhibitory concentration:最小発育阻止濃度)を検討したところ、以下のグラフのように、

微生物 MIC(μg/mL)
pH3.0 pH4.5 pH5.5 pH6.0 pH6.5
コウジカビ(カビ)
Aspergillus niger
250 500 2,000 >2,000
ニホンコウジカビ(カビ)
Aspergillus oryzae
125 250   >2,000  
出芽酵母(酵母)
Saccharomyces cerevisiae
125 250 500 2,000 >2,000
枯草菌(グラム陽性桿菌)
Bacilus subtilis
    1,000 1,000 2,000
セレウス菌(グラム陽性桿菌)
Bacillus cereus
    500 1,000 2,000
黄色ブドウ球菌(グラム陽性球菌)
Staphylococcus aureus
    1,000    
腸内細菌(グラム陰性桿菌)
Proteus vulgaris
    1,000 2,000 >2,000
大腸菌(グラム陰性桿菌)
Escherichia coli
    2,000    

ソルビン酸はカビおよび酵母類に高い抗菌活性を示し、またpHの酸性値が高くなるほど抗菌活性が高くなることが確認された。

このような検証結果が明らかにされており(文献4:1991)、ソルビン酸Kに製品自体のカビ・酵母に対する抗菌・防腐作用が認められています。

ソルビン酸カリウムそのものの抗菌活性データではありませんが、ソルビン酸は抗菌活性においてソルビン酸カリウムと同等の特性を有しているため、ソルビン酸カリウムの抗菌特性においても活用できるデータです。

水への溶解性が高いこと、アルカリ性には不活性であり、酸性に高い抗菌性を発揮する特徴を有していますが、2010年に報告された国立医薬品食品衛生研究所の化粧品中の防腐剤の分析では、ソルビン酸Kは21製品中ボディシャンプー1件のみに配合されています(文献5:2010)

ソルビン酸Kと同様に食品・飲料に広く使用されており、同様の特性を有している安息香酸Naは21製品中11製品(主にシャンプー系)に配合されているのと比較するとソルビン酸Kの化粧品における使用率は減少傾向にあると考えられます。

ソルビン酸Kはポジティブリストであり、化粧品に配合する場合は以下の配合範囲内においてのみ使用されます。

種類 最大配合量(g/100g)
粘膜に使用されることがない化粧品のうち洗い流すもの ソルビン酸およびその塩類の合計量として0.50
粘膜に使用されることがない化粧品のうち洗い流さないもの
粘膜に使用されることがある化粧品

また、ソルビン酸カリウムは医薬部外品(薬用化粧品)への配合において配合上限があり、配合範囲は以下になります。

種類 配合量 その他
薬用石けん・シャンプー・リンス等、除毛剤 0.50 すべてのソルビン酸塩をソルビン酸に換算して、ソルビン酸として合計
育毛剤 0.50
その他の薬用化粧品、腋臭防止剤、忌避剤 0.50
薬用口唇類 0.50
薬用歯みがき類 0.50
浴用剤 0.50

実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の1988年および2005-2006年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

ソルビン酸Kの配合製品数と配合量の調査結果(1988年および2005-2006年)

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ソルビン酸Kの安全性(刺激性・アレルギー)について

ソルビン酸Kの現時点での安全性は、

  • 薬添規2018規格の基準を満たした成分が収載される医薬品添加物規格2018に収載
  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
  • 50年以上の使用実績
  • 皮膚一次刺激性:ほとんどなし
  • 皮膚累積刺激性:ほとんどなし-わずか
  • 眼刺激性:ほとんどなし-わずか
  • 皮膚感作性:ほとんどなし

このような結果となっており、配合上限濃度以下および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性および皮膚感作性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:1988)によると、

  • [ヒト試験] 12人の被検者に0.15%ソルビン酸Kを含むクリームの累積刺激試験を実施したところ、非常にわずかな累積刺激が観察された(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1983)
  • [ヒト試験] 12人の被検者に0.15%ソルビン酸Kを含む保湿剤の累積刺激試験を実施したところ、非常にわずかな累積刺激が観察された(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1979)
  • [ヒト試験] 12人の被検者に0.15%ソルビン酸Kを含む保湿剤の累積刺激試験を実施したところ、累積刺激は観察されなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1979)
  • [ヒト試験] 209人の被検者に0.15%ソルビン酸Kを含むブロンザーを対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施したところ、0.15%ソルビン酸Kを含むブロンザーは一次皮膚刺激剤またはアレルギー性接触感作剤ではなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1986)
  • [ヒト試験] 199人の被検者に0.15%ソルビン酸Kを含む保湿剤を対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施したところ、0.15%ソルビン酸Kを含む保湿剤は一次皮膚刺激剤またはアレルギー性接触感作剤ではなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1986)
  • [ヒト試験] 53人の被検者に1%フェイシャルスクラブ(0.1%ソルビン酸Kを含む)脱イオン水を対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施したところ、非常にわずかな累積刺激性が観察されたが、一次皮膚刺激および接触感作性は誘発しなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1983)
  • [ヒト試験] 53人の被検者に1%フェイシャルスクラブ(0.1%ソルビン酸Kを含む)脱イオン水を対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施したところ、非常にわずかな累積刺激性が観察されたが、一次皮膚刺激および接触感作性は誘発しなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1983)
  • [ヒト試験] 56人の被検者に1%フェイシャルスクラブ(0.1%ソルビン酸Kを含む)脱イオン水を対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施したところ、一次皮膚刺激および接触感作性は誘発しなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1983)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、共通して一次刺激性およびアレルギー性感作の報告はなく、一部で非常にわずかな累積刺激が報告されているため、非常にわずかな累積刺激性があるものの、一次刺激性および皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:1988)によると、

  • [動物試験] 3匹のウサギの片眼に1%,5%および10%ソルビン酸K水溶液(pH不明)を点眼し、Draize法に従って1,2および24時間後に眼を検査したところ、眼刺激スコアは最大110のうちすべての濃度で0であり、いずれの濃度においても眼刺激性がなかった(Bourrinet,1975)
  • [動物試験] 6匹のウサギの片眼に1%ソルビン酸K水溶液を点眼し、1日後にDraize法で評価したところ、眼刺激スコアは0であり、眼刺激の可能性はなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1980)
  • [動物試験] 6匹のウサギの片眼の結膜嚢にソルビン酸K溶液0.1mLを注入し、24時間後のDraize法での眼刺激スコアは2~11の範囲となっており、24,48および72時間後の平均眼刺激スコアは4.7であり、7日後では刺激は観察されなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1982)
  • [動物試験] 6匹のウサギの片眼に0.15%ソルビン酸Kを含む化粧品0.1mLを注入し、7日間観察したところ、1時間後にわずかな結膜の赤みが観察されたが、これは24時間以内に消失した。角膜および虹彩は影響を受けなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1977)
  • [動物試験] 6匹のウサギの片眼に0.15%ソルビン酸Kを含む保湿剤0.1mLを注入し、1,2,3および7日目に眼刺激性を評価したところ、1時間後にわずかな結膜充血が観察されたが、これは24時間以内に消失し、他に刺激の兆候は観察されなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1980)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、一部で一過性の眼刺激性が報告されていますが、ほとんどのケースで眼刺激性なしと報告されているため、眼刺激性は、非刺激性または一過性のわずかな眼刺激が起こる可能性があると考えられます。

安全性についての補足

ソルビン酸Kの発がん性に関しては、食事中0.1%濃度および飲料中0.3%濃度のソルビン酸Kをそれぞれ6匹のラットに100週にわたって経口投与する試験において、65週目および100週目に開腹によって腫瘍を検査したところ、いずれのラットにも誘発された腫瘍はみあたらなかったと報告されています(文献6:1968)

同様の報告は他にも複数ありますが(文献7:1980)、いずれも腫瘍の発生は認められていません。

∗∗∗

ソルビン酸Kは安定化成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:安定化成分

∗∗∗

文献一覧:

  1. Cosmetic Ingredient Review(1988)「Final Report on the Safety Assessment of Sorbic Acid and Potassium Sorbate」International Journal of Toxicology(7)(6),837-880.
  2. 株式会社ウエノフードテクノ(2016)「ソルビン酸(Sorbic acid )、及びカリウム塩(Potassium Sorbate)について」, <http://www.ueno-food.co.jp/foodsafety/pdf/sorbic_detail.pdf> 2019年5月17日アクセス.
  3. 食品安全委員会(2008)「添加物評価書 ソルビン酸カルシウム」, <https://www.fsc.go.jp/hyouka/hy/hy-tuuchi-calciumsorbate_k.pdf> 2019年5月17日アクセス.
  4. 松田 敏生(1991)「化学物質による静菌と食品の保存」日本食品工業学会誌(38)(5),454-464.
  5. 五十嵐 良明, 他(2010)「化粧品中の防腐剤の分析:サリチル酸,安息香酸ナトリウム,デヒドロ酢酸ナトリウム,ソルビン酸カリウム,フェノキシエタノール及びパラベン類」Bulletin of National Institute of Health Sciences(128),85-90.
  6. F Dickens, et al(1968)「Further tests on the carcinogenicity of sorbic acid in the rat.」British Journal of Cancer(22)(4),762-768.
  7. 今井 清, 他(1980)「Potassium Sorbateのラットにおける癌原性に関する研究」秦野研究所年報(3),33-35.

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