ステアリン酸イヌリンとは…成分効果と毒性を解説




・ステアリン酸イヌリン
[医薬部外品表示名称]
・ステアリン酸イヌリン
化学構造的に多糖類の一種であるイヌリンに高級脂肪酸の一種であるステアリン酸がエステル結合した油溶性(疎水性)の糖脂肪酸エステル(油溶性高分子エステル)です。
化粧品に配合される場合は、
これらの目的で、リップケア製品、メイクアップ化粧品、日焼け止め製品、スキンケア化粧品などに使用されています(文献1:2015)。
増粘・ゲル化
増粘・ゲル化に関しては、炭化水素、エステル油および植物油(トリグリセリド)などに溶け(∗1)、代表的な糖脂肪酸エステルであるパルミチン酸デキストリンと比較して、非常に硬度が高いゲルを形成しながらもゲル表面に滑らかな感触を有することから、主にリップケア製品、メイクアップ化粧品に使用されます(文献2:2013)。
∗1 ステアリン酸の水酸基に対するイヌリンの結合数を2つに増やすことで環状シリコーンにも溶解するため、ステアリン酸イヌリンの中には環状シリコーンに溶解するタイプもあります。
乳化安定化
乳化安定化に関しては、経時的な油の分離を抑制し、乳化系を安定する目的で揮発性シリコーンを多量に配合した油中水型(W/O型)クリームなどに配合されます(文献2:2013)。
感触改良
感触改良に関しては、ワックス類(ロウ類)の油性感を軽減し、ワックスの種類によっては硬めの感触を付与することから、ワックス類(ロウ類)配合製品に併用されます(文献2:2013)。
実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の2013-2015年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。
以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を表しており、またリンスオフ製品というのは、洗い流し製品(シャンプー、ヘアコンディショナー、ボディソープ、洗顔料、クレンジングなど)を指します。
ステアリン酸イヌリンの安全性(刺激性・アレルギー)について
- 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
- 10年以上の使用実績
- 皮膚刺激性:ほとんどなし
- 眼刺激性:ほとんどなし
- 皮膚感作性(アレルギー性):弱感作性の可能性あり
このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。
以下は、この結論にいたった根拠です。
皮膚刺激性について
Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2015)によると、
- [動物試験] 6匹のウサギを用いてステアリン酸イヌリンを対象に皮膚刺激性試験を実施した(試験詳細の記述なし)ところ、非刺激性であった(Chiba Flour Milling Co,2010)
と記載されています。
試験データをみるかぎり、皮膚刺激性なしと報告されていることから、皮膚刺激性はほとんどないと考えられます。
眼刺激性について
Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2015)によると、
- [動物試験] 6匹のウサギを用いてパルミチン酸デキストリンを対象に眼刺激性試験を実施したところ、実質的に非刺激性として分類された(Chiba Flour Milling Co,2010)
と記載されています。
試験データをみるかぎり、実質的に眼刺激性なしと報告されているため、眼刺激性はほとんどないと考えられます。
皮膚感作性(アレルギー性)について
Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2015)によると、
- [動物試験] モルモットを用いてステアリン酸イヌリンを対象にAPT皮膚感作試験を実施したところ、軽度の皮膚刺激および微弱な皮膚感作性に分類された(Chiba Flour Milling Co,2010)
と記載されています。
試験データをみるかぎり、動物試験のみですが微弱な感作性が報告されていることから、まれに皮膚感作が起こる可能性があると考えられます。
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ステアリン酸イヌリンは安定化成分にカテゴライズされています。
成分一覧は以下からお読みください。
参考:安定化成分
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文献一覧:
- Cosmetic Ingredient Review(2015)「Safety Assessment of Polysaccharide Gums as Used in Cosmetics」Final Report.
- 鈴木 挙直(2013)「糖脂肪酸エステル系オイルゲル化剤について」オレオサイエンス(13)(2),73-77.
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