ステアラルコニウムヘクトライトとは…成分効果と毒性を解説

増粘
ステアラルコニウムヘクトライト
[化粧品成分表示名称]
・ステアラルコニウムヘクトライト

化学構造的に粘土鉱物のヘクトライト陽イオン界面活性剤の第四級アンモニウム塩の一種であるステアラルコニウムクロリドを反応させて得られる分子量749.3の疎水性の有機変性粘土鉱物です(文献2:2020)

化粧品に配合される場合は、

これらの目的でネイル製品、メイクアップ化粧品、日焼け止め製品などに使用されています。

疎水性増粘・顔料分散安定化

ヘクトライトはスメクタイト型粘土の一種であり、スメクタイト型粘土はその層状構造を有する結晶片が水中で膨潤(∗1)し、剥離分散することにより増粘(親水性増粘)しますが、有機溶媒中では分散できないことが知られています(文献3:1974)

∗1 膨潤とは、水分を含んで膨れる(膨張する)ことです。

このような背景から、ヘクトライトの結晶層の層間に陽イオン界面活性剤をインターカレート(∗2)することで親水性から疎水性に変更することによって、有機溶媒中で膨潤して剥離分散することを可能にしており(文献4:2014;文献5:2013)、疎水性増粘および顔料分散安定化目的でネイルカラー、マニキュア、リキッドファンデーション、リップカラー、化粧下地などに汎用されています(文献6:2012)

∗2 インターカレート(Intercalate)とは、分子または分子集団の空隙に他の元素が侵入する可逆反応のことです。

混合原料としてのステアラルコニウムヘクトライト

ステアラルコニウムヘクトライトは、他の油性成分や溶剤とあらかじめ混合・分散した状態の原料が多数あり、ステアラルコニウムヘクトライトと以下の成分が併用されている場合は、混合系増粘・ゲル化原料として配合されている可能性が考えられます。

原料名 SOFTISAN GEL
構成成分 ビスジグリセリルポリアシルアジペート-1、ジ(カプリル/カプリン酸)BG、ステアラルコニウムヘクトライト炭酸プロピレン
特徴・主な用途 有機変性ヘクトライトと油性成分を有機溶媒である炭酸プロピレンに溶解した、粘性調整、使用感向上、顔料分散性向上などの機能を有した増粘剤
原料名 MIGLYOL GEL B
構成成分 トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリルステアラルコニウムヘクトライト炭酸プロピレン
特徴・主な用途 有機変性ヘクトライトと油性成分を有機溶媒である炭酸プロピレンに溶解した、粘性調整、使用感向上、顔料分散性向上などの機能を有した増粘剤
原料名 MIGLYOL 840 GEL B
構成成分 ステアラルコニウムヘクトライト、ジ(カプリル/カプリン酸)PG、炭酸プロピレン
特徴・主な用途 有機変性ヘクトライトと油性成分を有機溶媒である炭酸プロピレンに溶解した、粘性調整、使用感向上、顔料分散性向上などの機能を有した増粘剤
原料名 BENTONE GEL Series
構成成分 共通成分 ステアラルコニウムヘクトライト炭酸プロピレン
個別成分(∗3) クランベアビシニカ種子油、ヒマシ油オリーブ果実油トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリルミリスチン酸イソプロピルパルミチン酸エチルヘキシル安息香酸アルキル(C12-15)
特徴・主な用途 有機変性ヘクトライトと油性成分を有機溶媒である炭酸プロピレンに溶解した、粘性調整、使用感向上、顔料分散性向上などの機能を有した増粘剤

∗3 共通成分に個別成分のうちの1つが選択され、「ステアラルコニウムヘクトライト、炭酸プロピレン、個別成分」の原料として用いられます。

原料名 BENTONE GEL LOI V
構成成分 液状ラノリン、パルミチン酸イソプロピルステアラルコニウムヘクトライト炭酸プロピレン
特徴・主な用途 有機変性ヘクトライトと油性成分を有機溶媒である炭酸プロピレンに溶解した、粘性調整、使用感向上、顔料分散性向上などの機能を有した増粘剤

実際の使用製品の種類や数および配合量は、海外の2011-2012年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を表しており、またリンスオフ製品というのは、洗い流し製品(シャンプー、ヘアコンディショナー、ボディソープ、洗顔料、クレンジングなど)を指します。

ステアラルコニウムヘクトライトの配合製品数と配合量の調査結果(2011-2012年)

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ステアラルコニウムヘクトライトの安全性(刺激性・アレルギー)について

ステアラルコニウムヘクトライトの現時点での安全性は、

  • 20年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:ほとんどなし
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2003)によると、

  • [ヒト試験] 50人の被検者に50%ステアラルコニウムヘクトライト水溶液を対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を閉塞パッチにて実施したところ、この試験物質は非刺激剤および非感作剤に分類された(Food and Drug Research Labs,1971)
  • [ヒト試験] 27人の被検者に1.4%ステアラルコニウムヘクトライトを含むフェイシャルマスクを対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施したところ、この試験物質は非刺激剤および非感作剤に分類された(Ivy Laboratories,1996)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、皮膚刺激および皮膚感作なしと報告されているため、皮膚刺激性および皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2003)によると、

  • [ヒト試験] 10人の被検者の片眼にステアラルコニウムヘクトライト(粉末)を適用し、適用1分および1および24時間後に眼刺激性を評価したところ、すべての被検者は砂または砂利のような感覚を報告したが、刺激に関する報告はなかった(Food and Drug Research Labs,1971)
  • [ヒト試験] 10人の被検者の片眼にステアラルコニウムヘクトライトを含むコーン油残りの片方にステアラルコニウムヘクトライトを含む生理食塩水それぞれ0.1mLを点眼し、点眼1および24時間後に眼刺激性を評価したところ、すべての被検者は眼刺激および有害なダメージを示さなかった(Food and Drug Research Labs,1971)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、共通して眼刺激なしと報告されているため、眼刺激性はほとんどないと考えられます。

∗∗∗

ステアラルコニウムヘクトライトは安定化成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:安定化成分

∗∗∗

文献一覧:

  1. Cosmetic Ingredient Review(2000)「Final Report on the Safety Assessment of Stearalkonium Hectorite」International Journal of Toxicology(19)(2_Suppl),91-98.
  2. “Pubchem”(2020)「Stearalkonium hectorite」, <https://pubchem.ncbi.nlm.nih.gov/compound/Stearalkonium-hectorite> 2020年1月16日アクセス.
  3. S Olejnik, et al(1974)「Swelling of Montmorillonite in Polar Organic Liquids」Clays and Clay Minerals(22),361-365.
  4. 皆瀬 慎(2014)「有機変性粘土鉱物の工業的利用」オレオサイエンス(14)(5),205-211.
  5. 関根 知子, 他(2013)「有機変性粘土鉱物を用いた乳化物の調製および化粧品への応用」第57回粘土科学討論会講演要旨集,22-23.
  6. 鈴木 一成(2012)「ステアラルコニウムヘクトライト」化粧品成分用語事典2012,543.

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