ジステアルジモニウムヘクトライトとは…成分効果と毒性を解説

増粘
ジステアルジモニウムヘクトライト
[化粧品成分表示名称]
・ジステアルジモニウムヘクトライト

[医薬部外品表示名称]
・ジメチルジステアリルアンモニウムヘクトライト

化学構造的に粘土鉱物のヘクトライト陽イオン界面活性剤の第四級アンモニウム塩の一種であるジステアリルジモニウムクロリドを反応させて得られる分子量911.7の疎水性の有機変性粘土鉱物です(文献2:2020)

化粧品に配合される場合は、

これらの目的でメイクアップ化粧品などに汎用されています。

疎水性増粘・顔料分散安定化

ヘクトライトはスメクタイト型粘土の一種であり、スメクタイト型粘土はその層状構造を有する結晶片が水中で膨潤(∗1)し、剥離分散することにより増粘(親水性増粘)しますが、有機溶媒中では分散できないことが知られています(文献3:1974)

∗1 膨潤とは、水分を含んで膨れる(膨張する)ことです。

このような背景から、ヘクトライトの結晶層の層間に陽イオン界面活性剤をインターカレート(∗2)し親水性から疎水性に変更することによって、有機溶媒中で膨潤して剥離分散することを可能にしており(文献4:2014;文献5:2013)、疎水性増粘および顔料分散安定化目的でリキッドファンデーション、チーク、アイシャドー、アイライナー、マスカラ、コンシーラー、化粧下地、リップカラーなどに汎用されています。

∗2 インターカレート(Intercalate)とは、分子または分子集団の空隙に他の元素が侵入する可逆反応のことです。

混合原料としてのジステアルジモニウムヘクトライト

ジステアルジモニウムヘクトライトは、他の油性成分や溶剤とあらかじめ混合・分散した状態の原料が多数あり、ジステアルジモニウムヘクトライトと以下の成分が併用されている場合は、混合系増粘・ゲル化原料として配合されている可能性が考えられます。

原料名 NIKKOL ニコムルス WO
構成成分 シクロペンタシロキサンPEG-10ジメチコンジステアルジモニウムヘクトライト
特徴・主な用途 シリコーン油、極性油を高比率で含むエマルションも調整できる、有機変性ヘクトライトを含む複合W/O乳化剤
原料名 NIKKOL ニコムルス WO-CF
構成成分 ジメチコンPEG-10ジメチコンジステアルジモニウムヘクトライト
特徴・主な用途 有機変性粘土鉱物とシリコーン系乳化剤からなるW/O複合乳化剤
原料名 NIKKOL ニコムルス WO-CF PLUS
構成成分 PEG-10ジメチコンジメチコンジステアルジモニウムヘクトライトラウリルPEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン
特徴・主な用途 有機変性粘土鉱物とシリコーン系乳化剤からなる乳化力に優れたW/O複合乳化剤
原料名 NIKKOL ニコムルス WO-NS
構成成分 ポリリシノレイン酸ポリグリセリル-6イソステアリン酸ポリグリセリル-2ジステアルジモニウムヘクトライト
特徴・主な用途 エステル油・植物油・炭化水素油を主な油性成分とするW/O製剤の調製が可能な有機変性ヘクトライトを含む複合W/O型乳化剤
原料名 BENTONE GEL Series
構成成分 共通成分 ジステアルジモニウムヘクトライト炭酸プロピレン
個別成分(∗3) (C9-13)イソパラフィン、シクロペンタシロキサンオクチルドデカノールヒマワリ種子油イソヘキサデカンイソドデカンミネラルオイルメドウフォーム油、ジヘプタン酸ネオペンチルグリコール、(C11,12)イソパラフィン、水添ポリイソブテンテトライソステアリン酸ペンタエリスリチル
特徴・主な用途 有機変性ヘクトライトと油性成分を有機溶媒である炭酸プロピレンに溶解した、粘性調整、使用感向上、顔料分散性向上などの機能を有した増粘剤

∗3 共通成分に個別成分のうちの1つが選択され、「ジステアルジモニウムヘクトライト、炭酸プロピレン、個別成分」の原料として用いられます。

原料名 BENTONE GEL VS-5
構成成分 シクロペンタシロキサンジステアルジモニウムヘクトライト変性アルコール
特徴・主な用途 有機変性ヘクトライトと油性成分を有機溶媒である変性アルコールに溶解した、粘性調整、使用感向上、顔料分散性向上などの機能を有した増粘剤

実際の使用製品の種類や数および配合量は、海外の2011-2012年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を表しており、またリンスオフ製品というのは、洗い流し製品(シャンプー、ヘアコンディショナー、ボディソープ、洗顔料、クレンジングなど)を指します。

ジステアルジモニウムヘクトライトの配合製品数と配合量の調査結果(2011-2012年)

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ジステアルジモニウムヘクトライトの安全性(刺激性・アレルギー)について

ジステアルジモニウムヘクトライトの現時点での安全性は、

  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
  • 20年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:詳細不明
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2013)によると、

  • [ヒト試験] 11人の被検者に15%ジステアルジモニウムヘクトライト、PEG-10ジメチコンおよびシクロメチコン混合物の1.5%を含むミネラルオイルを48時間閉塞パッチ適用し、パッチ除去後すぐおよび15分後に皮膚刺激性を評価したところ、いずれの被検者においても皮膚刺激の兆候を示さなかった(EVIC France,2003)
  • [ヒト試験] 10人の被検者に15%ジステアルジモニウムヘクトライトを含む混合物を24時間パッチ適用し、パッチ除去後すぐおよび24時間後に皮膚刺激性を評価したところ、いずれの被検者においても皮膚刺激の兆候を示さなかった(Nikko Chemicals Co Ltd,2008)
  • [ヒト試験] 112人の被検者に100%ジステアルジモニウムヘクトライト20μgを対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を閉塞パッチにて実施したところ、いずれの被検者においても皮膚感作を示さなかった(TKL Research Inc,2005)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、皮膚刺激および皮膚感作なしと報告されているため、皮膚刺激性および皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

試験結果や安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細は不明です。

∗∗∗

ジステアルジモニウムヘクトライトは安定化成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:安定化成分

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文献一覧:

  1. Cosmetic Ingredient Review(2013)「Safety Assessment of Ammonium Hectorites as Used in Cosmetics」International Journal of Toxicology(32)(6_Suppl),33S-40S.
  2. “Pubchem”(2020)「Disteardimonium hectorite」, <https://pubchem.ncbi.nlm.nih.gov/compound/Disteardimonium-hectorite> 2020年1月18日アクセス.
  3. S Olejnik, et al(1974)「Swelling of Montmorillonite in Polar Organic Liquids」Clays and Clay Minerals(22),361-365.
  4. 皆瀬 慎(2014)「有機変性粘土鉱物の工業的利用」オレオサイエンス(14)(5),205-211.
  5. 関根 知子, 他(2013)「有機変性粘土鉱物を用いた乳化物の調製および化粧品への応用」第57回粘土科学討論会講演要旨集,22-23.

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