シクロデキストリンとは…成分効果と毒性を解説

安定化成分 効果持続 可溶化 分散 増粘
シクロデキストリン
[化粧品成分表示名称]
・シクロデキストリン

[医薬部外品表示名称]
・α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、γ-シクロデキストリン

デンプンにバシラス属(学名:Bacillus)、ブレビバクテリウム属(学名:Brevibacterium)またはコリネバクテリウム属(学名:Corynebacterium)といった細菌から抽出したシクロデキストリン生成酵素であるシクロデキストリングルカノトランスフェラーゼを作用させ、精製などの工程を経て得られる水溶性の環状オリゴ糖(産生粘質物:微生物系水溶性高分子)です。

化学構造的には、6-10分子のグルコースがα-1,4グリコシド結合によって結合し環状構造を構成したものです。

化粧品において使用されるのはグルコースが6-8個環状に結合したものであり、以下の図および表のようにそれぞれ、

シクロデキストリンの種類

シクロデキストリンの種類 グルコースの数 分子量 空洞の内径(Å)
α-シクロデキストリン 6 973 5-6
β-シクロデキストリン 7 1,135 7-8
γ-シクロデキストリン 8 1,297 9-10

グルコースの結合数によって呼び方がα,β,γと異なり、またグルコースの結合数が増えるほど分子量が増え、空洞が広くなります(文献2:1990)

化粧品成分表示においては区別なく「シクロデキストリン」と表示・記載されますが、医薬部外品においてはα,β,γに分けて表示・記載されます。

シクロデキストリンの特徴は、グルコースの環状構造を有することによる包接作用であり、空洞部に不安定な機能成分などを取り込むことで、包接化合物として機能成分を安定化させることから、医療、食品、工業、化粧品など様々な分野で汎用されています。

包接のメカニズムは、環状で囲まれた外側は水溶性であり、また空洞部の内側はジエチルエーテル低度の疎水性であり、空洞内には水分子が入った状態となりますが、疎水性の機能成分がシクロデキストリンに接触することで、シクロデキストリンの空洞内の水分子が追い出され、疎水性の機能成分が空洞に収まることで安定化するというものです(文献2:1990;文献3:2001)

一般的に、食品分野においては肉の特異臭や大豆臭を防止する目的でハムやソーセージなどの加工肉、豆乳などに、苦味成分を抑制するために柑橘類のジュース類に、香りを保持するためにワサビ、粉末ワサビなどに利用され、医薬分野においては酸化、光、などの安定化や溶解性の向上などに利用されています(文献2:1990)

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、スキンケア化粧品、ボディケア製品、メイクアップ化粧品、日焼け止め製品、洗浄製品、洗顔料、シート&マスク製品、香水、入浴剤など様々な製品に使用されています(文献1:2015)

包接による不安定成分の安定化

包接による不安定成分の安定化に関しては、光、紫外線、熱に不安定な物質や酸化、加水分解されやすい物質を包接することで安定化させる目的で使用されます(文献5:2012)

不安定成分の性状が気体、液体または固体のいずれであっても、水分子が介在することでシクロデキストリンと包接し、安定化させるためには水分子を除去する必要があるので、包接体はいずれにおいても固体粉末となります。

活性成分の徐放による効果の持続作用

活性成分の徐放による効果の持続作用に関しては、まず徐放について解説します。

シクロデキストリンによる包接は可逆であり、水分子が介在することによって包接と解離が起こるため、水分の存在下で活性成分を徐々に放出しながら効果を持続することができます。

肌表面には常に発汗などで水分を保っているため解離が起こりやすい状態にありますが、たとえば発汗時に清涼感・冷感を感じたい場合にメントールを包接したシクロデキストリンを肌に接触させて運動すると、発汗によってメントールが解離し、冷感作用によって発汗時にも爽快感を感じることが可能です(文献5:2012)

疎水性物質の水への可溶化・分散化

疎水性物質の水への可溶化・分散化に関しては、水に溶けにくい成分をシクロデキストリンに包接し、水に溶かすまたは水中に分散する目的で使用されます(文献5:2012)

粘度調整

粘度調整に関しては、粘度の高い物質をシクロデキストリンが分子レベルで包接することで分子間力を断ち切り、粘度を下げることで粘度を調整する目的で使用されます(文献5:2012)

線状高分子を包接することによるゲル化

線状高分子を包接することによるゲル化に関しては、環状高分子であるシクロデキストリンの空洞にPEG(polyethylene glycol:ポリエチレングリコール)などの線状高分子を以下の図のように、

ロタキサン構造

ロタキサン構造(∗1)をネックレス状に結合したポリロタキサン構造を形成することで、大きく伸び縮みする・つぶしても元に戻る・引っ張っても切れにくいゴムのようなテクスチャーのゲルを形成するため、シート・パック製品などに使用されます(文献4:2007)

∗1 ロタキサン構造とは、環状分子(リング)の穴を線状分子(軸)が貫通した構造のことです。

実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の2013-2015年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を表しており、またリンスオフ製品というのは、洗い流し製品(シャンプー、洗顔料、クレンジングなど)を指します。

シクロデキストリンの配合製品数と配合量の調査(2013-2015年)

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シクロデキストリンの安全性(刺激性・アレルギー)について

シクロデキストリンの現時点での安全性は、

  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
  • 10年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし(データなし)
  • 眼刺激性:詳細不明
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし(データなし)

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について

食品および医薬品にも古くから汎用されていることから、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に皮膚刺激および皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられますが、詳細な安全性試験データがみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。

眼刺激性について

試験結果や安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細は不明です。

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シクロデキストリンは安定化成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:安定化成分

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文献一覧:

  1. Cosmetic Ingredient Review(2015)「Safety Assessment of Polysaccharide Gums as Used in Cosmetics」Final Report.
  2. 平井 英史(1990)「シクロデキストリンの化学」化学と教育(38)(2),158-162.
  3. 佐藤 充克(2001)「シクロデキストリンの開発と特性について」化学と教育(49)(1),4-7.
  4. 諸星 さやか, 他(2007)「シクロデキストリンを有するポリマーゲルの合成」生産研究(59)(2),114-116.
  5. 寺尾 啓二(2012)「シクロデキストリンの食品・化粧品への応用」化学と教育(60)(1),18-21.

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