クオタニウム-18ベントナイトとは…成分効果と毒性を解説


・クオタニウム-18ベントナイト
[医薬部外品表示名]
・ジメチルジステアリルアンモニウムベントナイト
化学構造的に粘土鉱物のベントナイトに陽イオン界面活性剤の第四級アンモニウム塩の一種であるクオタニウム-18を反応させて得られる分子量180.06の疎水性の有機変性粘土鉱物です(文献3:2020)。
化粧品に配合される場合は、
これらの目的でメイクアップ製品などに使用されています。
疎水性増粘・顔料分散安定化
ベントナイトはスメクタイト型粘土の一種であり、スメクタイト型粘土はその層状構造を有する結晶片が水中で膨潤(∗1)し、剥離分散することにより増粘(親水性増粘)しますが、有機溶媒中では分散できないことが知られています(文献4:1974)。
∗1 膨潤とは、水分を含んで膨れる(膨張する)ことです。
このような背景から、ベントナイトの結晶層の層間に陽イオン界面活性剤をインターカレート(∗2)し親水性から疎水性に変更することによって、有機溶媒中で膨潤して剥離分散することを可能にしており(文献5:2014)、疎水性増粘および顔料分散安定化目的で化粧下地、口紅、アイシャドー、アイブロー、リキッドファンデーションなどに使用されています。
∗2 インターカレート(Intercalate)とは、分子または分子集団の空隙に他の元素が侵入する可逆反応のことであり、クオタニウム-18ベントナイトの場合は、ベントナイトの層間に存在する陽イオンをクオタニウム-18にイオン交換することを意味します。
実際の使用製品の種類や数および配合量は、海外の2001年および2018-2019年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。
以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を表しており、またリンスオフ製品は、洗い流し製品(シャンプー、ヘアコンディショナー、ボディソープ、洗顔料、クレンジングなど)を指します。
クオタニウム-18ベントナイトの安全性(刺激性・アレルギー)について
- 外原規2021規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2021に収載
- 20年以上の使用実績
- 皮膚刺激性:ほとんどなし
- 眼刺激性:ほとんどなし
- 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし
このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般に安全性に問題のない成分であると考えられます。
以下は、この結論にいたった根拠です。
皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について
- [ヒト試験] 50名の被検者に約4%クオタニウム-18ベントナイトを含むアイブローを対象にHRIPT(皮膚刺激性&感作性試験)を実施したところ、いずれの被検者も皮膚刺激、皮膚疲労感および皮膚感作の兆候は観察されなかった(National Lead Co,1953)
- [動物試験] 10匹のウサギの健常および擦過した皮膚にクオタニウム-18ベントナイトを1日おきに5回各6時間適用し、Draize法に基づいて各適用後にPII(Primary Irritation Index:皮膚一次刺激性指数)を評価したところ、PIIは0であり、この試験物質はウサギの皮膚に対して非刺激性であった(Elementis Specialties,2015)
- [動物試験] 12匹のモルモットに0.1%クオタニウム-18ベントナイト生理食塩水を対象にDraize法に基づいて皮膚感作性試験を実施したところ、この試験物質はモルモットに対して皮膚感作の兆候はなかった(Elementis Specialties,2015)
と記載されています。
試験データをみるかぎり、共通して皮膚刺激および皮膚感作なしと報告されているため、皮膚刺激性および皮膚感作性はほとんどないと考えられます。
眼刺激性について
- [動物試験] 10匹のウサギの片眼に10%クオタニウム-18ベントナイト生理食塩水0.1mLを点眼し、点眼後に眼刺激性を評価したところ、いずれのウサギも点眼24時間後で眼刺激はみられなかった(National Lead Co,1953)
- [動物試験] 10匹のウサギの片眼に10%クオタニウム-18ベントナイト生理食塩水を点眼し、Draize法に基づいて点眼後に眼刺激性を評価したところ、この試験物質はウサギの眼に対して非刺激性であった(Elementis Specialties,2015)
と記載されています。
試験データをみるかぎり、共通して眼刺激なしと報告されているため、眼刺激性はほとんどないと考えられます。
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クオタニウム-18ベントナイトは安定化成分にカテゴライズされています。
成分一覧は以下からお読みください。
参考:安定化成分
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参考文献:
- Cosmetic Ingredient Review(1990)「Final Report on the Safety Assessment of Quaternium-18, Quaternium-18 Hectorite, and Quaternium-18 Bentonite」Journal of the American College of Toxicology(1)(2),71-83.
- Cosmetic Ingredient Review(2019)「Safety Assessment of Quaternium-18 and Quaternium-18 Bentonite as Used in Cosmetics」Re-Review for Panel Consideration.
- “Pubchem”(2020)「Bentoquatam」, <https://pubchem.ncbi.nlm.nih.gov/compound/Bentoquatam
> 2020年1月18日アクセス. - S Olejnik, et al(1974)「Swelling of Montmorillonite in Polar Organic Liquids」Clays and Clay Minerals(22),361-365.
- 皆瀬 慎(2014)「有機変性粘土鉱物の工業的利用」オレオサイエンス(14)(5),205-211.