クエン酸とは…成分効果と毒性を解説

緩衝 収れん
クエン酸
[化粧品成分表示名称]
・クエン酸

[医薬部外品表示名称]
・クエン酸

柑橘類の果実に多量に含まれますが、工業的にはデンプン質などの糖類を糸状菌により発酵して得られる有機酸であり、水溶性および結晶性のα-ヒドロキシ酸(AHA:alpha hydroxy acid)です。

クエン酸は、動植物内においては通常ナトリウムなどの塩類として存在しています。

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、スキンケア化粧品、洗顔料・洗顔石鹸、ボディ&フットケア製品、洗浄製品、ピーリング化粧品、メイクアップ化粧品、シート&マスク製品などに使用されています(文献1:2014)

pH調整による緩衝

pH調整による緩衝に関しては、まず前提知識として緩衝溶液(Buffer Solution)について解説します。

緩衝溶液とは、外からの作用に対して、その影響を和らげようとする性質をもつ溶液であり、つまりある程度の酸または塩基(アルカリ)の添加あるいは除去または希釈(∗1)にかかわらず、ほぼ一定のpHを維持する作用を有する溶液のことです(文献4:1998-1999)

∗1 溶液を薄めることです。

たとえば人間の皮膚は弱酸性であり、入浴などで中性に傾いたとしてもすぐに弱酸性に保たれますが、これは緩衝作用が働いているためです。

化粧品においては、pHが変動してしまうと効果を発揮しなくなる成分や品質の安定性が保てなくなる成分などが含まれており、化粧品の内容物がpH変動要因である大気中の物質に触れたり、人体の細菌類に触れても品質を保つ(pHを保つ)ために、代表的な緩衝剤のひとつとしてクエン酸(酸性)とクエン酸Na(塩基性)との組み合わせが使用されています(文献2:1990)

収れん作用

収れん作用に関しては、乳酸は酸性および親水性であり、酸性に寄せることで化学的に収れん作用を起こすことができるため、収れん性化粧水に使用されます(文献3:1989)

実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の2011年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を表しており、またリンスオフ製品というのは、洗い流し製品(シャンプー、洗顔料、クレンジングなど)を指します。

クエン酸の配合製品数および配合量の調査結果(2011年)

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クエン酸の安全性(刺激性・アレルギー)について

クエン酸の現時点での安全性は、

  • 医療上汎用性があり有効性および安全性の基準を満たした成分が収載される日本薬局方に収載
  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
  • 10年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:濃度およびpHにかかわらず、実質的にほとんどなし
  • スティンギング:5%濃度以上かつpH5以下において可能性あり
  • 皮膚刺激性(皮膚炎を有する場合):濃度にかかわらず、実質的にほとんどなし
  • 眼刺激性:10%濃度で最小限、30%濃度で軽度-中程度
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし
  • 皮膚感作性(慢性蕁麻疹を有する場合):ほとんどなし-わずか

このような結果となっていますが、ほとんどの場合、クエン酸Naと併用してpH調整の緩衝剤として使用されるため、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

また、収れん作用として用いる場合においても国内では安全性が最も重視されるため、皮膚に負担のかかる濃度での使用はほとんどないと考えられますが、皮膚炎やバリア機能の低下した皮膚を有する場合、濃度やpHによってはスティンギングが起こる可能性も考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2014)によると、

  • [ヒト試験] 被検者の擦過した前腕にクエン酸、酢酸、アコニット酸、酒石酸、アスコルビン酸それぞれ0.1-0.2mLを5分適用し、スティンギング反応(刺すような刺激)および一次刺激性を比較したところ、クエン酸は最もスティンギングが高く、また一次刺激性はかなり低いスコアを示した(Laden K,1973)
  • [ヒト試験] 20人の被検者(男性6人、女性14人)に5%クエン酸水溶液(pH2)50μLを朝晩1日2回4日間連続で閉塞パッチ適用し、水分蒸散量や皮膚の色を観察したところ、皮膚刺激は観察されなかった(chlicmann-VVillers S, et al,2005)
  • [ヒト試験] 20人の被検者(男性6人、女性14人)に5%クエン酸水溶液(pH4)50μLを朝晩1日2回4日間連続で閉塞パッチ適用し、水分蒸散量や皮膚の色を観察したところ、皮膚刺激は観察されなかった(chlicmann-VVillers S, et al,2005)
  • [ヒト試験] 133人の被検者に1%クエン酸水溶液を48時間閉塞パッチ適用したところ、陽性反応は示されなかった(Torgcrson RR, et al,2007)
  • [ヒト試験] 10人の患者にほぼ16%クエン酸のスティンギング(チクチク感のある刺すような痛み)をpH3,5および7で最大スコアを60として測定したところ、pH3,5および7のスティンギングスコアはそれぞれ38,35.4および23.6であった(Smith WP,1996)
  • [ヒト試験] 10人の患者にほぼ5%クエン酸のスティンギング(チクチク感のある刺すような痛み)をpH3,5および7でスティンギングスコアを1-5のスケールで測定したところ、pH3,5および7のスティンギングスコアはそれぞれ2.3,2.1および1.1であった(Smith WP,1994)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、5%濃度以下およびpH2以上において共通して皮膚刺激性なしと報告されているため、5%濃度以下およびpH2以上において皮膚刺激性はほとんどないと考えられます。

ただし、5%および16%濃度かつpH3,5および7において濃度依存的かつpH依存的にスティンギングが報告されているため、5%濃度以上かつpH5以下においてスティンギングが起こる可能性があると考えられます。

国内においては、ほとんどの場合でpH調整による緩衝目的にクエン酸Naと併用して用いられ、濃度は当然ながら1%未満であり、pHは中性に近い状態に調整されるため、緩衝目的においては皮膚刺激はほとんどないと考えられます。

– 皮膚炎を有する場合 –

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2014)によると、

  • [ヒト試験] アトピー性皮膚炎を有した49人の被検者に2.5%クエン酸を含む水溶液を20分間閉塞パッチ適用したところ、即時反応(非免疫学的接触性蕁麻疹)はなかった(Lahti A,1980)
  • [ヒト試験] 702人の接触性皮膚炎患者にほぼ100%クエン酸を48時間パッチ適用したところ、皮膚反応は観察されなかった(Rcider N,2005)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、皮膚刺激および即時皮膚反応なしと報告されているため、皮膚炎を有している場合において、濃度にかかわらず一次刺激はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2014)によると、

  • [動物試験] 3匹のウサギの眼に10%および30%クエン酸水溶液0.1mLを滴下し、Draize法に従って眼刺激性を評価したところ、10%濃度において眼刺激スコアは9.3で最小限の眼刺激性、30%濃度において眼刺激スコアは16.0で軽度-中程度の眼刺激性であった(F. Hoffmann-LaRoche Ltd,2001)
  • [動物試験] ウサギの眼にクエン酸(濃度および用量不明)を適用し、眼刺激性を評価したところ、24時間から72時間で角膜刺激スコアは2.8、虹彩刺激スコアは0.0、結膜刺激スコアは1.7であった(Kowalski RL,1991)

と記載されています。

試験結果では、10%濃度で最小限の眼刺激性、30%濃度で軽度-中程度の眼刺激性が報告されているため、10%濃度以上において濃度依存的に最小限以上の眼刺激性が起こると考えられます。

皮膚感作性(アレルギー性)について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2014)によると、

  • [ヒト試験] 56人の被検者に4%クエン酸を含むキューティクルクリームを対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施したところ、皮膚刺激および皮膚感作の兆候は示されなかった(linical Research Laboratories Inc,2007)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、皮膚感作性の報告はないため、皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられます。

– 皮膚炎を有する場合 –

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2014)によると、

  • [ヒト試験] 慢性蕁麻疹または血管浮腫患者を含む91人の被検者に2.5%クエン酸水溶液を皮膚に1滴たらし、検査用の針を皮膚の表面に押し当てて15分後に反応を観察するプリックテストを実施したところ、3人の被検者に陽性反応が観察され、このうち1人は安息香酸およびプロピオン酸でも陽性反応を示した(Malanin G, et al,1989)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、3人の被検者を除いて皮膚感作の報告はないため、慢性蕁麻疹または血管浮腫を有する場合において皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられますが、まれに皮膚感作を起こす可能性があると考えられます。

∗∗∗

クエン酸は安定化成分、収れん成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:安定化成分 収れん成分

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文献一覧:

  1. Cosmetic Ingredient Review(2014)「Safety Assessment of Citric Acid, Inorganic Citrate Salts, and Alkyl Citrate Esters as Used in Cosmetics」International Journal of Toxicology(33)(2),16S-46S.
  2. 田村 健夫, 他(1990)「皮膚収れん剤」香粧品科学 理論と実際 第4版,246-247.
  3. 西山 聖二, 他(1989)「基礎化粧品と皮膚 (Ⅱ)」色材協会誌(62)(8),487-496.
  4. 西山 成二, 他(1998-1999)「緩衝溶液についての一考察 -緩衝溶液および混合緩衝溶液の緩衝作用-」順天堂医学(44),S1-S6.

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