カラギーナンとは…成分効果と毒性を解説


・カラギーナン
[医薬部外品名]
・カラギーナン
紅藻類(学名:Rhodophyta 英名:red algae)の主としてスギノリ科(学名:Gigartinaceae)およびミリン科(学名:Solieriaceae)の細胞膜から抽出・精製によって得られる、化学構造的にガラクトースとアンヒドロガラクトースを主成分とし、硫酸基をもつ直鎖含硫黄多糖類(海藻抽出物:植物系水溶性高分子)です。
国内では天草を原料とした寒天を古くから利用していたように、海外とくにアイルランド地方では紅藻類を原料としたカラギーナンを利用してきた歴史があり、14世紀にはアイリッシュモス(Irish moss)と呼ばれ広く知られるようになり、19世紀から商業ベースで取引されるようになっています(文献4:2009)。
現在使用されているカラギーナンは、硫酸基の結合数や結合位置、アンヒドロ基の含有量などで性質が異なり、主にκ(カッパ)、ι(イオタ)およびλ(ラムダ)の3タイプに分類されており、それぞれの特性は、
κ(カッパ) | ι(イオタ) | λ(ラムダ) | ||
---|---|---|---|---|
溶解性 | 冷水 | 不溶 | 不溶 | 可溶 |
熱水 | 可溶 (70-80℃) |
可溶 (70-80℃) |
可溶 | |
アルコール | 約40%濃度まで可溶 | 約40%濃度まで可溶 | 約40%濃度まで可溶 | |
ゲル化に関与する因子 | K⁺,Ca²⁺イオンでゲル強度増大 | Ca²⁺イオンでゲル強度増大 | ゲル化能なし | |
ゲルの特性 | ゲル化性 | もろいゲル | 粘弾性のゲル | – |
ゲル化点(℃) | 40-45 | 40-45 | – | |
融点(℃) | 60-65 | 60-65 | – | |
離水傾向 | 大 | 小 | – | |
物性の変化 | 耐熱 | ○ | ○ | ○ |
耐酸 | △ | △ | △ | |
耐塩 | ○-△ | ◎ | ◎ | |
耐酵素 | ◎ | ◎ | ◎ |
このように報告されています(文献2:2016)。
実際の使用においてこれらは明確に分かれておらず、成分表示には「カラギーナン」としか記載されないため、使用者にとってこれらの分類を考慮する必要はないと考えられます。
日本においては主に食品分野で、ゲル化目的でゼリー類、デザート類に、分離防止目的でアイスクリームなどに使用されています(文献3:-)。
化粧品に配合される場合は、
これらの目的で、洗浄製品、スキンケア化粧品、ボディ&ハンドケア製品、シート&マスク製品などに使用されています(文献1:2015)。
増粘・ゲル化作用
増粘・ゲル化作用に関しては、カラギーナンは3つのタイプに分類され、以下の表のように、
κ(カッパ) | ι(イオタ) | λ(ラムダ) | |
---|---|---|---|
ゲル化に関与する因子 | カリウムイオン | カルシウムイオン | ゲル化しない |
ゲル化性 | 金属イオンにより硬くて脆いゲルになり、ガラクトマンナンにより柔軟で弾力性のあるゲルになる | 金属イオンにより柔軟で弾力性のあるゲルになる | ゲル化しない |
離水傾向 | 金属イオンによるゲルは離水が多く、ガラクトマンナンによるゲルは離水が少ない | 少ない | ゲル化しない |
それぞれ異なるゲル特性を示し(文献3:-)、また異なるカラギーナンを組み合わせることで様々なテクスチャーが得られます(文献4:2009)。
カッパカラギーナンは、ガラクトマンナンの一種であるローカストビーンガムとの併用で、以下のグラフのように、
ゲル強度が大幅に増し、他のゲル化剤では得られないユニークなテクスチャーのゲルをつくることができます(文献3:-;文献4:2009)。
実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の2013-2015年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。
以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を表しており、またリンスオフ製品というのは、洗い流し製品(シャンプー、ヘアコンディショナー、ボディソープ、洗顔料、クレンジングなど)を指します。
カラギーナンの安全性(刺激性・アレルギー)について
- 薬添規2018規格の基準を満たした成分が収載される医薬品添加物規格2018に収載
- 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
- 10年以上の使用実績
- 皮膚刺激性:ほとんどなし(データなし)
- 眼刺激性:ほとんどなし-最小限
- 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし
このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。
以下は、この結論にいたった根拠です。
皮膚刺激性について
化粧品配合量および通常使用下において、一般的に皮膚刺激はほとんどないと考えられますが、詳細な安全性試験データがみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。
眼刺激性について
Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2015)によると、
- [動物試験] ウサギの眼に食品グレードのイオタカラギーナンを対象に眼刺激性試験を実施したところ、眼をすすがなかったウサギでは眼刺激性は観察されず、眼をすすいだウサギでは最小限の眼刺激性であった(Guillot,1982)
と記載されています。
試験データをみるかぎり、非刺激性-最小限の眼刺激性が報告されているため、最小限の眼刺激性が起こる可能性があると考えられます。
皮膚感作性(アレルギー性)について
Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2015)によると、
- [動物試験] モルモットに食品グレードのイオタカラギーナンを対象に皮膚感作性試験を実施したところ、皮膚感作剤ではなかった(Guillot,1982)
と記載されています。
試験データをみるかぎり、皮膚感作性なしと報告されているため、皮膚感作性はほとんどないと考えられます。
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カラギーナンは安定化成分にカテゴライズされています。
成分一覧は以下からお読みください。
参考:安定化成分
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文献一覧:
- Cosmetic Ingredient Review(2015)「Safety Assessment of Polysaccharide Gums as Used in Cosmetics」Final Report.
- 日光ケミカルズ(2016)「高分子」パーソナルケアハンドブック,106-134.
- “多糖類.com”(-)「カラギーナン」, <https://www.tatourui.com/about/type/06_carrageenan.html> 2019年5月27日アクセス.
- 林 良純(2009)「カラギナンの特性と利用法」繊維学会誌(65)(11),412-421.
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