カプリン酸グリセリルとは…成分効果と毒性を解説

防腐
カプリン酸グリセリル
[化粧品成分表示名称]
・カプリン酸グリセリル

[医薬部外品表示名称]
・グリセリン脂肪酸エステル

化学構造的に炭素数10の飽和脂肪酸(中鎖脂肪酸)であるカプリン酸を疎水基(親油基)とし、多価アルコール(∗1)の一種であり、3個の水酸基(ヒドロキシ基)をもつグリセリンを親水基としたモノエステル(∗2)であり、多価アルコールエステル型のグリセリン脂肪酸エステルに分類される分子量246.34の非イオン界面活性剤(ノニオン界面活性剤)です(文献3:2019)

∗1 多価アルコールとは、非常に高い吸湿性と保水性をもっているため化粧品に最も汎用されている保湿剤です。名称に「アルコール」がついているので勘違いしやすいですが、一般的なアルコール(エタノール:エチルアルコール)は一価アルコールであり、多価アルコールと一価アルコールは別の物質です。二価以上を多価アルコールといい、グリセリンは三価アルコールです。

∗2 モノエステルとは分子内に1基のエステル結合をもつエステルであり、通常はギリシャ語で「1」を意味する「モノ(mono)」が省略され「エステル結合」や「エステル」とだけ記載されます。2基のエステル結合の場合はギリシャ語で「2」を意味する「ジ(di)」をつけてジエステルと記載されます。

非イオン界面活性剤は一般的に乳化力を有しており、それらを目的として化粧品に配合されることが一般的ですが、カプリル酸グリセリルは抗菌性を有している中鎖脂肪酸であるカプリル酸と結合していることから(文献4:2012)、一般的に製品自体の抗菌・防腐目的で配合されます。

また、カプリン酸はヤシ油またはパーム核油から得られるため、天然由来の抗菌剤・防腐剤としてプロモーションされることがあります。

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、メイクアップ化粧品、洗浄製品、洗顔料、スキンケア化粧品、シート&マスク製品などに使用されています。

製品自体の抗菌・防腐作用

製品自体の殺菌・防腐作用に関しては、2004年にナリス化粧品によって公開された技術情報によると、

法定5菌種とされている黄色ブドウ球菌(グラム陽性球菌)、大腸菌(グラム陰性桿菌)、緑膿菌(グラム陰性桿菌)、カンジダ(酵母)およびクロコウジカビ(カビ)に対するカプリン酸グリセリル、メチルパラベンおよびフェノキシエタノールそれぞれ0.2%濃度のBG水溶液の抗菌性試験を実施した。

判定基準として、◎:顕著な菌数の減少、○:菌数の減少、△:穏やかな菌数の減少、☓:菌数の変化なし、の4段階にて評価したところ、以下の表のように、

試料 菌株
細菌 真菌
カプリン酸グリセリル
メチルパラベン
フェノキシエタノール
BG水溶液のみ

カプリン酸グリセリルは、細菌に対してフェノキシエタノール以上、真菌に対してはメチルパラベンおよびフェノキシエタノール以上の抗菌性を示した。

このような検証結果が明らかにされており(文献5:2004)、カプリン酸グリセリルに細菌および真菌に対する抗菌・防腐作用が認められています。

実際の使用製品の種類や数および配合量は、海外の1998-1999年および2014-2015年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を表しており、またリンスオフ製品というのは、洗い流し製品(シャンプー、洗顔料、クレンジングなど)を指します。

カプリン酸グリセリルの配合製品数と配合量の調査結果(1998-1999年および2014-2015年)

スポンサーリンク

カプリン酸グリセリルの安全性(刺激性・アレルギー)について

カプリン酸グリセリルの現時点での安全性は、

  • 10年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし-最小限
  • 眼刺激性:ほとんどなし-軽度
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2004;文献2:2017)によると、

  • [ヒト試験] 58人の被検者に15%カプリン酸グリセリルを含むパラフィンを対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を閉塞パッチにて実施したところ、いずれの被検者も試験期間中に皮膚刺激および皮膚感作を誘発しなかった(International Research Services Inc,1995)
  • [動物試験] 3匹のウサギに0.05%カプリン酸グリセリルを含む製剤を適用し、皮膚刺激性を評価したところ、2匹に最小限の紅斑がみられたが、24時間後には消失した(CiTOXLAB Hungary Ltd,2011)
  • [動物試験] モルモットに0.05%カプリン酸グリセリルを含む製剤を対象に皮膚感作性試験(Buehler法)を実施したところ、皮膚感作性は認められなかった(CiTOXLAB Hungary Ltd,2011)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、皮膚感作はありませんが、最小限の皮膚刺激が報告されているため、皮膚感作性はほとんどないと考えられますが、皮膚刺激性は非刺激-最小限の刺激性を引き起こす可能性があると考えられます。

眼刺激性について

食品安全委員会の安全性データ(文献2:2017)によると、

  • [動物試験] 3匹のウサギの片眼に0.05%カプリン酸グリセリルを含む製剤を点眼し、眼刺激性を評価したところ、点眼1時間後に2匹に結膜発赤がみられたが、48時間後には回復した(CiTOXLAB Hungary Ltd,2011)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、軽度の眼刺激が報告されているため、眼刺激性は非刺激-軽度の眼刺激を引き起こす可能性があると考えられます。

∗∗∗

カプリン酸グリセリルは安定化成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:安定化成分

∗∗∗

文献一覧:

  1. Cosmetic Ingredient Review(2004)「Final Report of the Amended Safety Assessment of Glyceryl Lau rate, Glyceryl Lau rate SE, Glyceryl Laurate/Oleate, Glyceryl Adipate, Glyceryl Alginate, Glyceryl Arachidate, Glyceryl Arachidonate, Glyceryl Behenate, Glyceryl Caprate, Glyceryl Caprylate, Glyceryl Caprylate/Caprate, Glyceryl Citrate/Lactate/Linoleate/Oleate, Glyceryl Cocoate, Glyceryl Collagenate, Glyceryl Erucate, Glyceryl Hydrogenated Rosinate, Glyceryl Hydrogenated Soyate, Glyceryl Hydroxystearate, Glyceryl Isopalmitate, Glyceryl Isostearate, Glyceryl Isostearate/Myristate, Glyceryl Isostearates, Glyceryl Lanolate, Glyceryl Linoleate, Glyceryl Linolenate, Glyceryl Montanate, Glyceryl Myristate, Glyceryl Isotridecanoate/Stearate/Adipate, Glyceryl Oleate SE, Glyceryl Oleate/Elaidate, Glyceryl Palmitate, Glyceryl Palmitate/Stearate, Glyceryl Palmitoleate, Glyceryl Pentadecanoate, Glyceryl Polyacrylate, Glyceryl Rosinate, Glyceryl Sesquioleate, Glyceryl/Sorbitol Oleate/Hydroxystearate, Glyceryl Stearate/Acetate, Glyceryl Stearate/Maleate, Glyceryl Tallowate, Glyceryl Thiopropionate, and Glyceryl Undecylenate」International Journal of Toxicology(23)(2),55-94.
  2. 食品安全委員会(2017)「カプリン酸グリセリル」対象外物質評価書.
  3. “Pubchem”(2019)「Glyceryl 2-caprate」, <https://pubchem.ncbi.nlm.nih.gov/compound/Glyceryl-2-caprate> 2019年10月22日アクセス.
  4. 髙橋 美貴, 他(2012)「中鎖脂肪酸カプリン酸の Candida 菌糸形発育阻止作用と口腔カンジダ症治療効果」Medical Mycology Journal(53)(4),255-261.
  5. 株式会社ナリス化粧品(2004)「抗菌剤及びそれを配合してなる化粧料」特開2004-043336.

スポンサーリンク

TOPへ