カプリル酸グリセリルとは…成分効果と毒性を解説

防腐
カプリル酸グリセリル
[化粧品成分表示名称]
・カプリル酸グリセリル

[医薬部外品表示名称]
・グリセリン脂肪酸エステル

化学構造的に炭素数8の飽和脂肪酸(中鎖脂肪酸)であるカプリル酸を疎水基(親油基)とし、多価アルコール(∗1)の一種であり、3個の水酸基(ヒドロキシ基)をもつグリセリンを親水基としたモノエステル(∗2)であり、多価アルコールエステル型のグリセリン脂肪酸エステルに分類される分子量218.29の非イオン界面活性剤(ノニオン界面活性剤)です(文献2:2019)

∗1 多価アルコールとは、非常に高い吸湿性と保水性をもっているため化粧品に最も汎用されている保湿剤です。名称に「アルコール」がついているので勘違いしやすいですが、一般的なアルコール(エタノール:エチルアルコール)は一価アルコールであり、多価アルコールと一価アルコールは別の物質です。二価以上を多価アルコールといい、グリセリンは三価アルコールです。

∗2 モノエステルとは分子内に1基のエステル結合をもつエステルであり、通常はギリシャ語で「1」を意味する「モノ(mono)」が省略され「エステル結合」や「エステル」とだけ記載されます。2基のエステル結合の場合はギリシャ語で「2」を意味する「ジ(di)」をつけてジエステルと記載されます。

非イオン界面活性剤は一般的に乳化力を有しており、それらを目的として化粧品に配合されることが一般的ですが、カプリル酸グリセリルは抗菌性を有している中鎖脂肪酸であるカプリル酸と結合していることから(文献3:2012)、一般的に製品自体の抗菌・防腐目的で配合されます。

また、カプリル酸はヤシ油またはパーム核油から得られるため、天然由来の抗菌剤・防腐剤としてプロモーションされることがあります。

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、メイクアップ化粧品、スキンケア化粧品、洗浄製品、シート&マスク製品などに使用されています。

製品自体の抗菌・防腐作用

製品自体の殺菌・防腐作用に関しては、2013年に太陽化学によって報告されたカプリル酸グリセリルの抗菌性検証によると、

大腸菌、黄色ブドウ球菌およびクロコウジカビに対する1%カプリル酸グリセリル懸濁液の防腐効果を21日目まで検討したところ、以下の表のように、

菌種 防腐効果
初期値 7日目 14日目 21日目
大腸菌(グラム陰性桿菌) 1.6 × 10⁷ < 10 < 10 < 10
黄色ブドウ球菌(グラム陽性球菌) 3.4 × 10⁷ < 10 < 10 < 10
クロコウジカビ(カビ) 2.0 × 10⁵ 9.2 × 10³ 3.0 × 10⁴ 6.1 × 10³

カプリル酸グリセリルは、大腸菌および黄色ブドウ球菌に対しては菌接種7日目で生菌数は検出限界以下にまで減少した。

また、防腐剤の効きにくいクロコウジカビに対しては、初期値と比較して21日目の生菌数に10⁻²程度の減少がみられ、検出限界以下までの減少ではないが、低濃度でも発育阻止効果を示した例もあることから、有効であると考えられた。

このような検証結果が明らかにされており(文献4:2013)、カプリル酸グリセリルに大腸菌、黄色ブドウ球菌およびクロコウジカビに対する抗菌・防腐作用が認められています。

また、カプリル酸グリセリルは油溶性であり、水には溶けにくいため、水溶性の製剤に配合する場合は一般的に可溶化剤として、ポリグリセリン脂肪酸エステルなど親水性非イオン界面活性剤が併用されます。

実際の使用製品の種類や数および配合量は、海外の1998-1999年および2014-2015年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を表しており、またリンスオフ製品というのは、洗い流し製品(シャンプー、洗顔料、クレンジングなど)を指します。

カプリル酸グリセリルの配合製品数と配合量の調査結果(1998-1999年および2014-2015年)

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カプリル酸グリセリルの安全性(刺激性・アレルギー)について

カプリル酸グリセリルの現時点での安全性は、

  • 10年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし(データなし)
  • 眼刺激性:詳細不明
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし(データなし)

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について

– 個別事例 –

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2015)によると、

  • [個別事例] 90%カプリル酸グリセリル、6%ジカプリル酸グリセリル、4%遊離グリセリンなどで構成されているスキンケアクリーム塗布後に数年間顔面湿疹の既往がある女性にいくつかのアレルゲンシリーズおよび24時間閉塞パッチ適用を実施したところ、90%カプリル酸グリセリルを含む製品で明確な紅斑および小胞反応が生じた。さらに追加のパッチテストとして5%カプリル酸グリセリルを含む軟膏を適用したところ、+++の陽性反応を示し、0.1%および1%カプリル酸グリセリルを含む軟膏ではそれぞれ+および+++の陽性反応を示した(VG Herbert,2013)

と記載されています。

10年以上の使用実績がある中で重大な皮膚刺激および皮膚感作の報告がみあたらないため、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に皮膚刺激および皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられますが、詳細な安全性試験データがみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。

眼刺激性について

試験結果や安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細は不明です。

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カプリル酸グリセリルは安定化成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:安定化成分

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文献一覧:

  1. Cosmetic Ingredient Review(2015)「Safety Assessment of Monoglyceryl Monoesters as Used in Cosmetics」Final Amended Report.
  2. “Pubchem”(2019)「Glyceryl 2-caprylate」, <https://pubchem.ncbi.nlm.nih.gov/compound/Glyceryl-2-caprylate> 2019年10月21日アクセス.
  3. 髙橋 美貴, 他(2012)「中鎖脂肪酸カプリン酸の Candida 菌糸形発育阻止作用と口腔カンジダ症治療効果」Medical Mycology Journal(53)(4),255-261.
  4. 高橋 宏輝, 他(2013)「カプリル酸グリセリルを抗菌成分とした新規防腐製剤の開発」Fragrance Journal(41)(5),54-57.

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