エチルパラベンとは…成分効果と毒性を解説

防腐
エチルパラベン
[化粧品成分表示名称]
・エチルパラベン

[医薬部外品表示名称]
・パラオキシ安息香酸エチル

[慣用名]
・パラベン

化学構造的に、安息香酸エステルのパラ位にフェノール性ヒドロキシ基を持つパラオキシ安息香酸のエチルエステルです。

パラベンは、1924年に強酸性のpH領域でしか効果を示さないサリチル酸や安息香酸に代わる薬剤を見出すためにSabatschkaによって紹介され(文献4:1924)、1934年にスイス薬局方にメチルパラベンが、1942年にアメリカでメチルパラベンが採用されました。

1947年には米国薬局方にメチルパラベンおよびプロピルパラベンが認可され、1977年にはFDA(Food and Drug Administration:食品医薬品局)にも0.1%濃度上限で食品への添加が認可されています(文献5:2018)

日本国内では1988年に厚生省薬務局(現 厚生労働省)より医療用医薬品の添加物の記載についての通知があり、医薬品の投与経路ごとに添加物の記載容量が定められています。

本質的に不揮発性(∗1)、安定であり、広いpH域で効果を有しており、また広いスペクトルの微生物に対して相対的に活性です。

∗1 揮発性とは、液体が常温で気体になる性質であり、不揮発性とはその逆で、液体が常温で気体にならない性質のことです。

パラベン類は皮膚を通して体内に浸透しますが、表皮に存在する酵素であるカルボキシルエステラーゼによってパラヒドロキシ安息香酸またはその抱合体に加水分解され、5-72時間以内に尿中に排泄されることが報告されています(文献1:1984;文献2:2017)

また、慢性投与試験から得られたデータは、パラベンが体内に蓄積しないことを示しており、これらの結論は1984年から2008年において同様です(文献1:1984;文献2:2017)

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、スキンケア化粧品、ボディ&ハンドケア製品、メイクアップ化粧品、洗顔料&洗顔石鹸、日焼け止め製品、洗浄製品、シート&マスク製品などに使用されています。

製品自体の抗菌・防腐作用

製品自体の抗菌・防腐作用に関しては、1990年にアメリカのMallincrodtによって報告されたパラベン類の抗菌活性検証によると、

大豆寒天培地を用いたin vitro試験において、化粧品の腐敗でよく見受けられる様々なカビ、酵母および細菌に対するメチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベンおよびブチルパラベンのMIC(minimum inhibitory concentration:最小発育阻止濃度)を検討したところ、以下のグラフのように(∗2)

∗2 MICの単位であるppm(parts per million)は100万分の1の意味であり、1ppm = 0.0001%です。

微生物 MIC(ppm)
メチル エチル プロピル ブチル
枯草菌(グラム陽性桿菌)
Bacilus subtilis ATCC 6633
2,000 1,000 500 250
黄色ブドウ球菌(グラム陽性球菌)
Staphylococcus aureus ATCC 6538
2,000 1,000 500 125
表皮ブドウ球菌(グラム陽性球菌)
Staphylococcus epidermidis ATCC 12228
2,000 1,000 500 250
大腸菌(グラム陰性桿菌)
Escherichia coli ATCC 8739
2,000 1,000 500 500
肺炎桿菌(グラム陰性桿菌)
Klebsiella pneumoniae ATCC 8308
1,000 500 500 250
チフス菌(グラム陰性桿菌)
Salmonella typhosa ATCC 6539
1,000 1,000 500 250
腸内細菌(グラム陰性桿菌)
Proteus vulgaris ATCC 13315
1,000 500 250 125
セラチア(グラム陰性桿菌)
Serratia marcescens ATCC 8100
1,000 1,000 500 500
エンテロバクター・クロアカ(グラム陰性桿菌)
Enterobacter cloacae ATCC 23355
1,000 1,000 500 250
緑膿菌(グラム陰性桿菌)
Pseudomonas aeruginosa ATCC 9027
4,000 > 2,000 > 1,000 > 1,000
緑膿菌(グラム陰性桿菌)
Pseudomonas aeruginosa ATCC 15442
4,000 > 2,000 > 1,000 > 1,000
シュードモナス・スタッツェリ(グラム陰性桿菌)
Pseudomonas stutzeri
2,000 1,000 500 500
カンジダ(酵母)
Candida albicans ATCC 10231
1,000 500 250 125
出芽酵母(酵母)
Saccharomyces cerevisiae
1,000 500 125 32
コウジカビ(カビ)
Aspergillus niger ATCC 9642
1,000 500 250 125
アオカビ(カビ)
Penicillium chrysogenum ATCC 9480
500 250 125 63
白癬菌(カビ)
Trichophyton mentagrophytes
250 125 63 32

パラベン類は、広範囲に極めて高い抗菌活性を示し、最近に対するよりも酵母やカビに対して効果的であり、またグラム陰性菌よりもグラム陽性菌に対してより効果的であることがわかった。

また、生育阻害のためには室温で水に溶けるよりも多くの量を必要とするため、緑膿菌に対し特に効果がないことがわかった。

このような検証結果が明らかにされており(文献6:1990)、エチルパラベンに製品自体の抗菌・防腐作用が認められています。

抗菌活性は、ブチルパラベンまでは化学構造的にアルキル側鎖が長くなるに従って増大するため、抗菌活性の強さは、

ブチル > プロピル > エチル > メチル

ですが、抗菌活性が強いほど水に溶けにくいため、実際には以下のように、

メチル > エチル > プロピル > ブチル

メチルパラベンが最も汎用されています。

パラベン類の作用メカニズムは、菌膜破壊、微生物の細胞内部タンパク変性および補酵素との拮抗反応が報告されています(文献6:1990)

パラベン類は、他の防腐剤および防腐作用を有する成分と組み合わせて使用されることも多く、その理由は以下のように、

  • 活性のスペクトル増大
  • より低濃度の防腐成分の使用によって毒性学的なリスクの減少
  • 単一の防腐剤に対する耐性菌の出現防止
  • 相加的または相乗的な活性

これらのひとつまたは複数の効果を意図して処方するためです。

エチルパラベンはポジティブリストであり、化粧品に配合する場合は以下の配合範囲内においてのみ使用されます。

種類 最大配合量(g/100g)
粘膜に使用されることがない化粧品のうち洗い流すもの パラオキシ安息香酸エステル及びそのナトリウム塩の合計量として1.0。
粘膜に使用されることがない化粧品のうち洗い流さないもの
粘膜に使用されることがある化粧品

また、パラオキシ安息香酸エチルは医薬部外品(薬用化粧品)への配合において配合上限があり、配合範囲は以下になります。

種類 配合量 その他
薬用石けん・シャンプー・リンス等、除毛剤 1.0 パラオキシ安息香酸及びそのエステルとして合計。この項のパラオキシ安息香酸エステルとは、パラオキシ安息酸イソブチル、パラオキシ安息香酸イソプロピル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸ブチル、パラオキシ安息香酸ロピル及びパラオキシ安息香酸メチルに限る。
育毛剤 1.0
その他の薬用化粧品、腋臭防止剤、忌避剤 1.0
薬用口唇類 1.0
薬用歯みがき類 1.0
浴用剤 1.0

実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の2003-2005年および2016-2017年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を表しており、またリンスオフ製品というのは、洗い流し製品(シャンプー、洗顔料、クレンジングなど)を指します。

エチルパラベンの配合比較調査(2003-2005年および2016-2017年)

国内における配合量に関しては、2003年に国立医薬品食品衛生研究所によって報告された化粧水中のパラベン量の調査によると、

化粧水中のパラベンとフェノキシエタノールの配合量

このような調査結果が明らかにされており(文献7:2003)、エチルパラベンの量は、他のパラベンおよび/またはフェノキシエタノールと相乗効果を得ることによって、平均として0.013%、最大でも0.041%ほどに抑えられていることがわかります。

また2009年に東京農業大学大学院農学研究科および東京食品技術研究所によって報告された口紅中のパラベン量の調査によると、

口紅中のエチルパラベンの配合量

このような調査結果が明らかにされており(文献8:2009)、エチルパラベンの量は、他のパラベンおよび/またはフェノキシエタノールと相乗効果を得ることによって、平均として0.007%、最大でも0.015%に抑えられていることがわかります。

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エチルパラベンの安全性(刺激性・アレルギー)について

エチルパラベンの現時点での安全性は、

  • 医療上汎用性があり有効性および安全性の基準を満たした成分が収載される日本薬局方に収載
  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
  • 80年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし-軽度
  • 眼刺激性:ほとんどなし-最小限
  • 皮膚感作性(ブチルパラベンのみ):ほとんどなし
  • 皮膚感作性(パラベンミックス – 皮膚炎または皮膚感作経験を有する場合):皮膚感作率約2%

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

ただし、皮膚炎または皮膚感作経験を有する場合は、接触性皮膚感作が起こる可能性があるので注意が必要です。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:1984)によると、

  • [ヒト試験] 111人の被検者に0.2%エチルパラベンを含む保湿ローションを対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施したところ、3人の被検者に軽度の皮膚刺激が観察された(Techni-Med Consultants,1980)
  • [ヒト試験] 111人の被検者に0.2%エチルパラベンを含むナイトクリームを対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施したところ、3人の被検者に軽度の皮膚刺激が観察された(Techni-Med Consultants,1980)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、共通して非刺激-軽度の皮膚刺激と報告されているため、一般的に皮膚刺激性は非刺激-軽度の皮膚刺激が起こる可能性があると考えられます。

眼刺激性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:1984)によると、

  • [動物試験] 多くのウサギに0.1%-0.8%濃度範囲のメチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベンおよび/またはブチルパラベンを含む製品を点眼し、眼刺激性を評価したところ、ほとんどの製品で眼刺激性の兆候はなく、いくつかの製品において最小限-わずかな眼刺激性がみられた(CTFA,1980;1981)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、眼刺激性なしと報告されているため、眼刺激性はほとんど起こらないと考えられます。

皮膚感作性(アレルギー性)について

– エチルパラベンのみ –

– 健常皮膚を有する場合 –

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:1984)によると、

  • [ヒト試験] 111人の被検者に0.2%エチルパラベンを含む保湿ローションを対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施したところ、3人の被検者に軽度の皮膚刺激が観察されたが、皮膚感作の兆候はみられなかった(Techni-Med Consultants,1980)
  • [ヒト試験] 111人の被検者に0.2%エチルパラベンを含むナイトクリームを対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施したところ、3人の被検者に軽度の皮膚刺激が観察されたが、皮膚感作の兆候はみられなかった(Techni-Med Consultants,1980)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、共通して皮膚感作性なしと報告されているため、一般的に皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

– 数種類のパラベン(∗3) –

∗3 数種類のパラベンとは、種類は不明ですが複数のパラベンの混合物です。

– 健常皮膚を有する場合 –

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:1984)によると、

  • [ヒト試験] 30人の被検者に5%パラベンを含む軟膏をパッチテストしたところ、いずれの被検者においても皮膚感作反応はみられなかった(W F Schorr,1966)
  • [ヒト試験] 260人の被検者に5%パラベンを含む軟膏をパッチテストしたところ、いずれの被検者においても皮膚感作反応はみられなかった(W F Schorr,1968)
  • [ヒト試験] 160人の被検者に1%パラベンを含む軟膏をパッチテストしたところ、いずれの被検者においても皮膚感作反応はみられなかった(H J Cramer,1963)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、皮膚感作性なしと報告されているため、健常な皮膚を有する場合において、複数のパラベンに対して皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

– パラベンミックス(∗4) –

∗4 パラベンミックスとは、25種類のジャパニーズスタンダードアレルゲンのひとつに指定されているパラベンミックス(メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン、ベンジルパラベンの混合物)であり(文献3:2009)、接触性皮膚感作試験では一般的に各3%濃度で15%パラベンミックスを使用します。

– 以前に皮膚感作または皮膚炎を経験している場合 –

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:1984)によると、

  • [ヒト試験] 2,061人の被検者に15%パラベンミックスを含む軟膏をパッチテストしたところ、44人(2.1%)の被検者に感作反応が示された(North American Contact Dermatitis Group,1972)
  • [ヒト試験] 1,862人の被検者に15%パラベンミックスを含む軟膏をパッチテストしたところ、40人(2.1%)の被検者に感作反応が示された(North American Contact Dermatitis Group,1979-1980)
  • [ヒト試験] 5,799人の被検者に14%パラベンミックスをパッチテストしたところ、66人(1.13%)の被検者に感作反応が示された(N Hjorth,1962)
  • [ヒト試験] 4,097人の被検者に15%パラベンミックスを含む軟膏を24時間Chamber適用したところ、14人(0.3%)の被検者に感作反応が示された(M Hannuksela,1976)
  • [ヒト試験] 192人の被検者に15%パラベンミックスを48時間Chamber適用したところ、7人(3.6%)の被検者に感作反応が示された(J E Fraki,1979)
  • [ヒト試験] 1,312人の被検者に15%パラベンミックスを含むパラフィンを48時間パッチテストしたところ、31人(2.3%)の被検者に感作反応が示された(J E Fraki,1979)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、平均して約2%の被検者に皮膚感作の兆候が報告されているため、皮膚感作および皮膚炎を有するまたは過去に有していた経験がある場合において、接触性皮膚感作反応が起こる可能性があると考えられます。

パラベンミックスは、基本的に接触性皮膚反応が観察されたときにパラベンが原因であるかどうか特定するために用いられるものなので、必然的に皮膚炎や皮膚感作の経験を有する場合のみ(健常な皮膚の場合はパラベンミックスを使用する機会がない)となります。

∗∗∗

エチルパラベンは安定化成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:安定化成分

∗∗∗

文献一覧:

  1. Cosmetic Ingredient Review(1984)「Final Report on the Safety Assessment of Methylparaben, Ethylparaben, Propylparaben, and Butylparaben」International Journal of Toxicology(3)(5),147-209.
  2. Cosmetic Ingredient Review(2017)「Safety Assessment of Parabens as Used in Cosmetics」Draft Tentative Report for Panel Review.
  3. 日本皮膚科学会接触皮膚炎診療ガイドライン委員会(2009)「接触皮膚炎診療ガイドライン」日本皮膚科学会誌(119)(9),1757-1793.
  4. T Sabalitschka(1924)「Chemische Konstitution and Conservierungsvermogen.」Chemiker Zeitung(48),703.
  5. FDA(2018)「184.1490 Methylparaben」CFR – Code of Federal Regulations Title 21
  6. T E Haag, et al(1990)「パラオキシ安息香酸のエステル」香粧品 医薬品 防腐・殺菌剤の科学,49-62.
  7. 徳永 裕司, 他(2003)「市販化粧水中のフェノキシエタノールおよびパラベン類の分析法に関する研究」Bulletin of National Institute of Health Sciences(121),25-29.
  8. 高畑 薫, 他(2009)「市販口紅中のパラベン類およびフェノキシエタノール含有量とその摂取量の推定」日本食生活学会誌(20)(2),143-150.

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