エチドロン酸4Naとは…成分効果と毒性を解説

キレート
エチドロン酸4Na
[化粧品成分表示名称]
・エチドロン酸4Na

[医薬部外品表示名称]
・ヒドロキシエタンジホスホン酸四ナトリウム液、ヒドロキシエタンジホスホン酸4Na液

水溶性のエチドロン酸の四ナトリウム塩です。

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、洗浄製品、洗顔料&洗顔石鹸、メイクアップ化粧品、スキンケア化粧品などに使用されています(文献1:2017)

製品自体のキレート作用

製品自体のキレート作用に関しては、まず前提知識として化粧品における金属イオンの働きおよびキレート作用について解説します。

金属イオンは、化粧品成分の酸化を促進し、変臭や変色の原因となったり、透明系の化粧品に濁りや沈殿を生じさせたりするなど、化粧品の品質劣化の原因となったり、また効能成分の作用を阻害することがあるため(文献2:2006)、製品中の金属イオンの働きを抑制(封鎖)する目的でキレート剤が配合されます。

たとえば硬水中で石鹸を使用すると硬水に含まれるカルシウムイオンにより水に溶けず洗浄力のないカルシウム石鹸(金属石鹸)ができますが、エチドロン酸4Naはカルシウムや鉄などの陽イオンをキレートする作用を有しているため、このカルシウムイオンをキレートすることで金属石鹸化を防止し、石鹸の起泡性を維持することができるため、石鹸などに配合されます(文献3:2012)

またヘアカラーの変色防止やパーマ剤の安定剤としても用いられます(文献3:2012)

ヒドロキシエタンジホスホン酸四ナトリウム液(ヒドロキシエタンジホスホン酸4Na液)は医薬部外品(薬用化粧品)への配合において配合上限があり、配合範囲は以下になります。

種類 配合量 その他
薬用石けん・シャンプー・リンス等、除毛剤 2.0 ヒドロキシエタンジホスホン酸及びその塩類として合計
育毛剤 0.20
その他の薬用化粧品、腋臭防止剤、忌避剤 0.10
薬用口唇類 配合不可
薬用歯みがき類 配合不可
浴用剤 配合不可
染毛剤 ヒドロキシエタンジホスホン酸及びヒドロキシエタンジホスホン酸四ナトリウムの合計として2.0
パーマネント・ウェーブ用剤

実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の2017年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を表しており、またリンスオフ製品というのは、洗い流し製品(シャンプー、洗顔料、クレンジングなど)を指します。

エチドロン酸4Naの配合状況調査結果(2017年)

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エチドロン酸4Naの安全性(刺激性・アレルギー)について

エチドロン酸4Naの現時点での安全性は、

  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
  • 10年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし-軽度(データなし)
  • 眼刺激性:詳細不明
  • 皮膚感作性:ほとんどなし(データなし)
  • 光毒性・光感作性:なし

このような結果となっており、配合上限濃度以下および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2017)によると、

  • [動物試験] 3匹のウサギに30%エチドロン酸4Na水溶液0.5mL(活性酸195mg相当)をOECDテストガイドライン404に基づいて4時間半閉塞パッチ適用し、72時間観察したところ、1時間で最小の紅斑が観察されたのを除いてPII(Primary Irritation Index:皮膚一次刺激性指数)は8.0のうち0であり、皮膚刺激の兆候はみられなかった(European Chemicals Agency,2016;,OECD Screening Information Dataset,2004)
  • [動物試験] 4匹のウサギに31%エチドロン酸4Na水溶液5,000mg/kg(活性酸1,650mg相当)を24時間閉塞パッチ適用し、14日間にわたって観察したところ、ほとんどのウサギで重度の皮膚への影響がみられ、これは壊死とそれに続く痂皮形成および/または痂皮組織の剥離を特徴とし、観察期間を通して持続した(European Chemicals Agency,2016)
  • [動物試験] 3匹のウサギに30%エチドロン酸4Na0.5mLをOECD404ガイドラインに基づいて半閉塞パッチ下で適用し、72時間観察したところ、PII(Primary Irritation Index:皮膚一次刺激性指数)は1時間で1であったが、24,48および72時間では0であった(European Chemicals Agency,2016)
  • [動物試験] 6匹のウサギに31%エチドロン酸4Na水溶液を24時間閉塞パッチ下で2箇所に適用し、24,48,72時間後および7,10,14日後に観察したところ、すべてのウサギに浮腫、紅斑および痂皮が期間中ずっと改善することなく観察され、いくつかの部位では壊死や落屑も観察された。PII(Primary Irritation Index:皮膚一次刺激性指数)は5であり、皮膚刺激性に分類された(European Chemicals Agency,2016;OECD Screening Information Dataset,2004)
  • [動物試験] 6匹のウサギに31%エチドロン酸4Na(151mg酸相当)を4時間閉塞パッチ下で2箇所に適用し、24,48,72時間後および7,10,14日後に観察したところ、4匹のウサギにおいて軽度の紅斑およぎ痂皮が7日まで続き、10日まで改善されなかった。24時間で浮腫の兆候は1つしかなく、いずれの試験部位でも48時間までに皮膚刺激の兆候は観察されなかった。PII(Primary Irritation Index:皮膚一次刺激性指数)は0.3であり、軽度の皮膚刺激性に分類された(OECD Screening Information Dataset,2004)
  • [動物試験] 3匹のウサギのそれぞれ4箇所に31%エチドロン酸0.5mLを4および24時間適用し、1,24,48,72時間後および14日目まで観察したところ、4時間適用した部位において3匹に軽微な刺激または紅斑が認められ、24時間適用部位においては5匹に浮腫をともなう重度の紅斑を示し、そのうち1匹は両方の部位で表皮組織の損傷を有したが、すべての皮膚反応は10日目までに解決した。14日目に6匹のウサギは1箇所または両方の部位で刺激を示し続けたため、わずかな皮膚刺激性であると結論づけた(European Chemicals Agency,2016)

と記載されています。

試験データは約30%濃度で試験が実施されていますが、医薬部外品において配合上限は0.1%であり、また化粧品もこれに準じた配合量で使用されており、いくつかの試験ではこれらの配合量に準じた濃度においては非刺激性または軽度の刺激性であると報告されているため(文献1:2017)化粧品配合範囲内において、皮膚刺激性は非刺激-軽度の刺激性であると考えられます。

ただし、実際の使用濃度において有効な試験データがみあたらないため、化粧品・医薬部外品において有効な試験データがみあたりしだい追補します。

眼刺激性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2017)によると、

  • [動物試験] 3匹のウサギの眼に30%エチドロン酸4Na水溶液0.1mLを点眼し、1,24,48,72時間後に経過観察したところ、最大平均眼刺激スコアは6.7であり、軽度の眼刺激性と評価された(OECD Screening Information Dataset,2004)
  • [動物試験] 6匹のウサギに31%エチドロン酸4Na水溶液0.1mLを点眼し、1,24,48,72時間後および7日後に採点したところ、2匹のウサギに疼痛反応がみられ、そのうち1匹の兆候は72時間で消失した。また点眼後1時間のうちに4匹のウサギの眼に混濁がみられ、24時間で結膜の赤みがみられたが、すべての眼刺激は7日後には消失した(OECD Screening Information Dataset,2004)
  • [動物試験] 3匹のウサギの眼に23%エチドロン酸4Na水溶液0.1mLを点眼し、点眼後にすすぎ、点眼24時間後にDraize法に基づいて眼刺激スコアを評価したところ、1時間後の眼刺激スコアはそれぞれ42,35,42(まぶたの部分的な浮腫や結膜の適度な赤みがみられた)で、24時間後の刺激スコアはそれぞれ33,29,35(浮腫や赤みが治まりはじめる)、48時間後は28,19,28、72時間後は21,13,19、120時間後は13,6,10(わずかな角膜混濁)、168時間後は6,2,4となっており、中程度の眼刺激性と評価された(OECD Screening Information Dataset,2004)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、約30%濃度で試験が実施されていますが、医薬部外品への配合ではリンスオフ製品において2%濃度まで配合が認められているため、化粧品配合範囲において眼刺激性はほとんどなし-わずかな眼刺激性が起こる可能性があると考えられます。

皮膚感作性(アレルギー性)について

化粧品配合量および通常使用下において、一般的に皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられますが、詳細な安全性試験データがみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。

ただし、化粧品使用において有効な試験データがみあたらないため、化粧品・医薬部外品において有効な試験データがみあたりしだい追補します。

光毒性・光感作性について

エチドロン酸4Naは、化学構造的に紫外線を吸収しないため、試験の必要性がないとされています(文献1:2017)

安全性についての捕捉

エチドロン酸はビスホスホネート構造を持つ有機リン化合物ですが、リンは富栄養化物質(∗1)であるため、2次的な水質汚濁の原因となり、水質汚濁による湖沼の透明度の低下や水道水のろ過障害および異臭味問題なども生じることが懸念されるため、環境を考慮した企業では使用を控える成分であると考えられます。

∗1 富栄養化とは、湖沼に窒素やリンといった栄養塩類が多くなり、生物の成育に適する条件が高まることで生物種も豊富になる状態のことであり、富栄養化によって異常発生したプランクトンの死骸が湖沼底に沈降・堆積すると嫌気性の分解が起こり、硫化水素などを発生させて魚介類を大量死させるといった事象が、新しい2次的水質汚濁の原因として問題とされています。

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エチドロン酸4Naは安定化成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:安定化成分

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文献一覧:

  1. Cosmetic Ingredient Review(2017)「Safety Assessment of Etidronic Acid and Salts of Etidronic Acid as Used in Cosmetics」Final Report.
  2. 日光ケミカルズ(2006)「金属イオン封鎖剤」新化粧品原料ハンドブックⅠ,476-480.
  3. 鈴木 一成(2012)「ヒドロキシエタンジホスホン酸四ナトリウム」化粧品成分用語事典2012,631.

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