アスコルビン酸とは…成分効果と毒性を解説

酸化防止 美白成分 抗老化成分
アスコルビン酸
[化粧品成分表示名称]
・アスコルビン酸

[医薬部外品表示名称]
・アスコルビン酸

[慣用名]
・ビタミンC、L-アスコルビン酸

栄養素ビタミンCとしてよく知られている水溶性有機化合物です。

化粧品における皮膚に対するアスコルビン酸には、

  • チロシナーゼ活性阻害による色素沈着抑制作用
  • ドーパキノンおよび黒化メラニン還元による色素沈着抑制作用
  • 線維芽細胞増殖およびコラーゲン合成促進による抗老化作用

など様々な作用・効果がありますが(文献2:1992;文献3:1999;文献4:2014)、アスコルビン酸はビタミン類の中でも光、熱、酸化に対して最も不安定なビタミンであり、酸化防止剤として配合することはあっても水溶液中でアスコルビン酸を長期間安定して配合することは困難でした。

そのため、国内においては、1960年代からアスコルビン酸の一部を化学修飾して安定性および/または皮膚浸透性を高めたビタミンC誘導体が使用されてきており、現在では安定性、皮膚浸透性、機能性を向上させた多種多様なビタミンC誘導体が汎用されています(文献4:2014)

これらビタミンC誘導体の多くは、皮膚に浸透し、皮膚に存在する酵素による分解・代謝を通じてアスコルビン酸となり、アスコルビン酸としての効果を発揮するため、ビタミンCの前駆体という意味で「プロビタミンC」(∗1)と呼ばれます(文献5:2015)

∗1 近年のビタミンC誘導体の中には、ビタミンC誘導体そのままで、ビタミンC誘導体としての作用・効果を発揮するように開発されたものもあり、厳密にはプロビタミンCと呼べないものもありますが、便宜上、ビタミンC誘導体はまとめてプロビタミンCと呼ばれます。

一方で、医療分野で用いられていたDDS(Drug Derivery System)を化粧品に応用することで、アスコルビン酸のままで高い安定性および皮膚浸透性を備えたうえで製品に配合できる技術が開発され、皮膚に存在する酵素を介さず、アスコルビン酸を直接肌に届けることが可能になりました。

DDSとは、本来的には体内の薬物分布を量的・空間的・時間的に制御し、コントロールする薬物伝達システムのことですが、化粧品分野においては、有効成分の安定性を高め、皮膚への浸透が困難な有効成分を位皮膚内に届け、皮膚内における有効成分の量的・経時的分布をコントロールするために使われる技術であり、わかりやすい例としては、水溶性有効成分を油性の膜で包むことで皮膚に浸透させるような技術です。

これらDDSを用いた処方技術によって高い安定性および皮膚浸透性を有したアスコルビン酸は、そのままのビタミンCという意味で「ピュアビタミンC」と呼ばれます。

一般的に、ピュアビタミンCとして販売しているものは、DDS技術を使用してビタミンCの作用・効果を皮膚内で発揮できるよう処方されており、配合量も5%~25%と高配合のため、化粧品成分表示一覧では最初のほうに記載されています。

一方でそれ以外でアスコルビン酸が配合されている場合は、製品自体の酸化防止剤として配合されており、配合量も微量のため、化粧品成分表示一覧では最後のほうに記載されています。

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、スキンケア化粧品に使用されています(文献1:2005)

製品自体の酸化防止

製品自体の酸化防止に関しては、アスコルビン酸は天然に存在する抗酸化物質であり、製品中の成分の代わりにアスコルビン酸が酸化されることにより、製品そのものの酸化を防止するというメカニズムによる酸化防止目的で配合されることがあります(文献6:1990;文献7:2013)

アスコルビン酸自体は、酸化した後は共鳴により安定化されるため、ほかの分子を次々とラジカルにしていくような連鎖反応を防ぎます(文献7:2013)

チロシナーゼ活性阻害およびメラニン産生抑制による色素沈着抑制作用

チロシナーゼ活性阻害およびメラニン産生抑制による色素沈着抑制作用に関しては、まず前提知識としてメラニン生合成のメカニズムおよびチロシナーゼについて解説します。

以下のメラニン生合成のメカニズム図をみてもらうとわかりやすいと思うのですが、

紫外線におけるメラニン生合成までのプロセス

紫外線を浴びるとまず最初に活性酸素が発生し、様々な情報伝達物質(メラノサイト活性化因子)をメラノサイトで発現するレセプター(受容体)に届けることで、メラノサイト内でメラニンの生合成がはじまり、ユーメラニン(黒化メラニン)へと合成されます。

メラノサイト内でのメラニン生合成は、まずアミノ酸であるチロシンに活性酵素であるチロシナーゼが結合することでドーパ、ドーパキノンへと変化し、最終的に黒化メラニンが合成されます。

この一連のプロセスによって黒化メラニンが生合成されますが、アスコルビン酸(ビタミンC)には、以下のように、

  • ドーパキノンをドーパに還元 [色素沈着抑制作用]
  • 黒化メラニンを淡色メラニンに還元 [メラニン淡色化作用]

黒化メラニンになる前に還元して黒化メラニンを防止する作用と、黒化メラニンそのものを還元して色素を薄くする作用があります。

このような背景からチロシナーゼ活性を抑制・阻害およびメラニンの還元(淡色化)は色素沈着防止という点で重要であると考えられます。

アスコルビン酸には、チロシナーゼ活性阻害およびメラニン産生抑制による色素沈着抑制作用が認められており、かつよく知られています(文献2:1992;文献3:1999;文献4:2014)

線維芽細胞増殖およびコラーゲン合成促進による抗老化作用

線維芽細胞増殖およびコラーゲン合成促進による抗老化作用に関しては、まず前提知識として皮膚におけるコラーゲンの役割と線維芽細胞について解説します。

以下の皮膚の構造図をみてもらうとわかるように、

皮膚の構造と皮膚の主要成分図

コラーゲンは、真皮において線維芽細胞から合成され、水分を多量に保持したヒアルロン酸コンドロイチン硫酸などのムコ多糖類(グリコサミノグルカン)を維持・保護・支持し、内部にたっぷりと水分を抱えながら皮膚のハリを支える膠質状の性質を持つ枠組みとして規則的に配列しています(文献8:2002)

ただし、加齢や過剰な紫外線によって線維芽細胞数が減少することで、コラーゲン量も減少していくことが知られており、線維芽細胞の増殖を促進することはハリのある若々しい肌を維持するために重要であると考えられています。

アスコルビン酸には、線維芽細胞増殖およびコラーゲン合成促進による抗老化作用が認められており、かつよく知られています(文献2:1992;文献3:1999;文献4:2014)

実際の使用製品の種類や数および配合量は、海外の2000-2001年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

アスコルビン酸の配合製品数と配合量の調査結果(2000-2001年)

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アスコルビン酸の安全性(刺激性・アレルギー)について

アスコルビン酸の現時点での安全性は、

  • 医療上汎用性があり有効性および安全性の基準を満たした成分が収載される日本薬局方に収載
  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
  • 10年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:10%以下濃度においてほとんどなし
  • 眼刺激性:詳細不明
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし

これらの結果から、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2005)によると、

  • [ヒト試験] 被検者に10%アスコルビン酸を含むスキンケア製品を4日間連続で閉塞パッチ適用し、対照としてアスコルビン酸を含まないスキンケア製品を適用したところ、対照製品の皮膚一次刺激スコアは0.38であり、10%アスコルビン酸を含むスキンケア製品の皮膚一次刺激スコアは0.40であった。10%アスコルビン酸を含むスキンケア製品は最小限の皮膚刺激性であり、許容範囲であると考えられた(CTFA,1998)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、対照とほぼ同じ皮膚刺激性が報告されているため、10%以下濃度において皮膚刺激性はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

詳細な試験データはみあたらず、データ不足により詳細は不明です。

皮膚感作(アレルギー性)について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2005)によると、

  • [ヒト試験] 29人の被検者に10%アスコルビン酸を含むフェイシャルトリートメント0.1mLを対象にHRIPT(皮膚累積刺激&感作試験)を実施したところ、この使用条件下では接触感作反応を示す可能性は低いと結論付けられた(KGL Inc,1998)
  • [ヒト試験] 103人の被検者に5%アスコルビン酸を含むクリームを対象にHRIPT(皮膚累積刺激&感作試験)を実施したところ、5%アスコルビン酸を含むクリームは皮膚感作を誘発しなかった(Hamison Research Laboratories Inc,2000)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、共通して皮膚感作性なしと報告されているため、皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

∗∗∗

アスコルビン酸は安定化成分、美白成分、抗老化成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:安定化成分 美白成分 抗老化成分

∗∗∗

文献一覧:

  1. Cosmetic Ingredient Review(2005)「Final Report of the Safety Assessment of L-Ascorbic Acid, Calcium Ascorbate, Magnesium Ascorbate, Magnesium Ascorbyl Phosphate, Sodium Ascorbate, and Sodium Ascorbyl Phosphate as Used in Cosmetics」International Journal of Toxicology(24)(2),51-111.
  2. 三羽 信比古(1992)ビタミンCの知られざる働き―生体への劇的な活性化メカニズム.
  3. 三羽 信比古(1999)バイオ抗酸化剤プロビタミンC―皮膚障害・ガン・老化の防御と実用化研究.
  4. 伊東 忍, 他(2014)プロビタミンC―分子デザインされたビタミンCの知られざる働き.
  5. 伊東 忍(2015)「百花斉放, プロビタミンCの時代」Fragrance Journal(43)(9),14-19.
  6. 田村 健夫, 他(1990)「ビタミン類」香粧品科学 理論と実際 第4版,242-245.
  7. 中村 成夫(2013)「活性酸素と抗酸化物質の化学」日本医科大学医学会雑誌(9)(3),164-169.
  8. 朝田 康夫(2002)「真皮の構造は」美容皮膚科学事典,30.

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