ペンタステアリン酸ポリグリセリル-6の基本情報・配合目的・安全性

ペンタステアリン酸ポリグリセリル-6

化粧品表示名 ペンタステアリン酸ポリグリセリル-6
医薬部外品表示名 グリセリン脂肪酸エステル
INCI名 Polyglyceryl-6 Pentastearate
配合目的 安定化(未分類) など

1. 基本情報

1.1. 定義

以下の化学式で表されるステアリン酸5個のカルボキシ基(-COOH)にポリグリセリン-6(∗1)のヒドロキシ基(-OH)を脱水縮合(∗2)したペンタエステル(∗3)です[1]

∗1 複数の分子結合がまとまって機能する複合体を多量体(重合体)といいますが、ポリグリセリン-6とは6個のグリセリンがまとまって6量体(平均重合度6)として機能する重合体です。またギリシャ語で「6」を「ヘキサ(hexa)」といい、ヘキサグリセリンともよばれます。

∗2 脱水縮合とは、分子と分子から水(H2O)が離脱することにより分子と分子が結合する反応のことをいいます。脂肪酸とアルコールのエステルにおいては、脂肪酸(R-COOH)のカルボキシ基(-COOH)の「OH」とアルコール(R-OH)のヒドロキシ基(-OH)の「H」が分離し、これらが結合して水分子(H2O)として離脱する一方で、残ったカルボキシ基の「CO」とヒドロキシ基の「O」が結合してエステル結合(-COO-)が形成されます。

∗3 モノエステルとは分子内に1基のエステル結合をもつエステルであり、通常はギリシャ語で「1」を意味する「モノ(mono)」が省略され「エステル結合」や「エステル」とだけ記載されます。5基のエステル結合の場合はギリシャ語で「5」を意味する「ペンタ(penta)」をつけてペンタエステルと記載されます。

ペンタステアリン酸ポリグリセリル-6

1.2. 物性・性状

ペンタステアリン酸ポリグリセリル-6の物性・性状は(∗4)

∗4 融点とは固体が液体になりはじめる温度のことです。またヨウ素価とは油脂を構成する脂肪酸の不飽和度を示すものであり、一般にヨウ素価が高いほど不飽和度が高い(二重結合の数が多い)ため、酸化を受けやすくなります。

状態 白-微黄色の粒
融点(℃) 53-60
ヨウ素価 3(不乾性油)

このように報告されています[2a][3]

2. 化粧品としての配合目的

化粧品に配合される場合は、

  • 油脂成分の結晶化防止

主にこれらの目的で、ペンシル系メイクアップ製品、クリーム系スキンケア製品などに使用されています。

以下は、化粧品として配合される目的に対する根拠です。

2.1. 油脂成分の結晶化防止

油脂成分の結晶化防止に関しては、ペンタステアリン酸ポリグリセリル-6はワックス成分を含むペンタエステルであり、植物油脂の結晶化を防止するための結晶調整目的で主にペンシル系メイクアップ製品、クリーム系スキンケア製品などに使用されています[2b]

3. 配合製品数および配合量範囲

実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の2014-2015年の調査結果になりますが、以下のように報告されています(∗5)

∗5 以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を指し、またリンスオフ製品は、洗い流し製品(シャンプー、ヘアコンディショナー、ボディソープ、洗顔料、クレンジングなど)を指します。

ペンタステアリン酸ポリグリセリル-6の配合製品数と配合量の比較調査結果(2014-2015年)

4. 安全性評価

ペンタステアリン酸ポリグリセリル-6の現時点での安全性は、

  • 外原規2021規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2021に収載
  • 15年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし(データなし)
  • 眼刺激性:詳細不明
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし(データなし)

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

4.1. 皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)

試験データはみあたりませんが、現在の使用法および化粧品配合濃度において安全であると結論付けられていること[4]、15年以上の使用実績がある中で重大な皮膚刺激および皮膚感作の報告がみあたらないことから、化粧品配合量および通常使用下において、一般に皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられます。

4.2. 眼刺激性

試験結果や安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細不明です。

5. 参考文献

  1. 日本化粧品工業連合会(2013)「ペンタステアリン酸ポリグリセリル-6」日本化粧品成分表示名称事典 第3版,885.
  2. ab日光ケミカルズ株式会社(2021)「ポリグリセリン脂肪酸エステル」製品カタログ,27-28.
  3. Parchem Fine & Specialty Chemicals(-)「Polyglyceryl-6 Pentastearate」Typical Product Specifications.
  4. M.M. Fiume & B. Heldreth(2016)「Safety Assessment of Polyglyceryl Fatty Acid Esters as Used in Cosmetics(∗5)」, 2023年2月13日アクセス.
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