シクロデキストリンの基本情報・配合目的・安全性

シクロデキストリン

化粧品表示名称 シクロデキストリン
医薬部外品表示名称 α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、γ-シクロデキストリン
化粧品国際的表示名称(INCI名) Cyclodextrin
配合目的 安定化、効果持続 など

1. 基本情報

1.1. 定義

以下の化学式で表される6-8個のグルコース分子がα-1.4結合で環状に連なった環状オリゴ糖(∗1)です[1][2a]

∗1 加水分解によってそれ以上簡単な糖を生じない最も単純な糖を単糖とよび、単糖が2-10個結合した糖をオリゴ糖(少糖)とよびます。また単糖が10個以上結合した糖は多糖とよびます。オリゴ糖は結合している糖の数によって、単糖が2個結合したものを二糖、3個結合したものを三糖という呼び方をすることもあります。

シクロデキストリン

化粧品においては区別なく「シクロデキストリン」と表示されますが、医薬部外品においてはα-,β-,γ-に分けて表示されます。

1.2. 分布

シクロデキストリンは、現在ではデンプンにいくつかの細菌類が産生するシクロデキストリン生成酵素(Cyclodextrin glucanotransferase)を作用させることで得られますが、1891年に腐敗したジャガイモから発見された経緯があり、自然界にも存在しています[3]

1.3. 性質と種類

シクロデキストリンは、上図では内側と外側をヒドロキシ基(-OH)が円形に並んでいるようにみえますが、実際は以下の図のように、

シクロデキストリンの立体構造

環状分子内に空洞をもつ立体構造であり、ヒドロキシ基(-OH)は上縁部と下縁部で円形に並び、外側が親水性、内側(空洞部)が疎水性を示すきわめて特異な物質であることが知られています[2b]

化粧品に使用されるシクロデキストリンは、6-8個のグルコースが環状に結合したものであり、グルコース分子の数によってそれぞれ、

シクロデキストリンの種類 グルコースの数 空洞の内径(Å) 水への溶解性
α-シクロデキストリン 6 5-6 可溶
β-シクロデキストリン 7 7-8 難溶
γ-シクロデキストリン 8 9-10 可溶

α-,β-,γ-シクロデキストリンとよばれており、グルコースの結合数が増えるほど分子量および空洞の内径が大きくなります[2c]

1.4. 作用メカニズム

シクロデキストリンは、筒状の立体構造の上縁部と下縁部にヒドロキシ基(-OH)が並び、分子全体としては親水性が高いのですが、空洞部には親水性の基が存在せず、ジエチルエーテル程度の疎水的空間を形成しているため、空間に入る大きさの疎水性をもつ分子が加えられると空洞内の水分子は追い出され、加えられた分子の疎水部が空洞中に収まる包接現象が起きることが知られています[2d][4]

主に食品分野、医療分野、化粧品分野を中心にこのシクロデキストリンの包接現象が応用されています。

1.5. 化粧品以外の主な用途

シクロデキストリンの化粧品以外の主な用途としては、

分野 用途
食品 疎水性分子を取り込み包接化する性質を利用して香料、香辛料、色素、その他の不安定な物質の安定化、乳化、無臭化、粉末化などに用いられています[5]
医薬品 α-デキストリンが粘稠化、溶解補助目的の医薬品添加剤として経口剤、眼科用剤に、β-シクロデキストリンが安定・安定化、矯味、賦形、溶解補助目的の医薬品添加剤として経口剤、外用剤、歯科外用剤および口中用剤に用いられています[6][7]

これらの用途が報告されています。

2. 化粧品としての配合目的

化粧品に配合される場合は、

  • 包接による安定化
  • 徐放による効果持続性の付与

主にこれらの目的で、スキンケア化粧品、ボディ&ハンドケア製品、メイクアップ化粧品、洗顔料、クレンジング製品、ボディソープ製品、マスク製品、シャンプー製品、コンディショナー製品、トリートメント製品、アウトバストリートメント製品、フレグランス製品、入浴剤など様々な製品に使用されています。

以下は、化粧品として配合される目的に対する根拠です。

2.1. 包接による安定化

包接による安定化に関しては、シクロデキストリンは包接機能を有しており、光、紫外線、熱に不安定な物質や酸化、加水分解されやすい物質を包接することでこれら不安定な物質を安定化することから、不安定な成分の安定化目的で様々な製品に使用されています[8a][9a]

シクロデキストリンと併用される主な不安定物質としては、ビタミン・ビタミン様物質、抗酸化物質、ペプチド、疎水性植物エキス、香料、色素、アルカロイド、不飽和脂肪酸を含む植物油などがあります。

2.2. 徐放による効果持続性の付与

徐放による効果持続性の付与に関しては、シクロデキストリンは包接機能を有しており、この包接は水分子を介在させることによって解離が起こることから、活性成分を徐々に放出しながら効果を持続できることが知られており、香りや薬理活性などそれぞれの効果を長期にわたって持続させる目的で使用されています[8b][9b]

肌表面には常に発汗などで水分を保っているため解離が起こりやすい状態にありますが、たとえば発汗時に清涼感・冷感を感じたい場合にメントールを包接したシクロデキストリンを肌に接触させて運動すると、発汗によってメントールが解離し、冷感作用によって発汗時にも爽快感を感じることが可能です。

3. 配合製品数および配合量範囲

実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の2013-2015年の調査結果になりますが、以下のように報告されています(∗3)

∗3 以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を表しており、またリンスオフ製品は、洗い流し製品(シャンプー、ヘアコンディショナー、ボディソープ、洗顔料、クレンジングなど)を指します。

シクロデキストリンの配合製品数と配合量の調査結果(2013-2015年)

4. 安全性評価

シクロデキストリンの現時点での安全性は、

  • 食品添加物の既存添加物リストに収載
  • 薬添規2018規格の基準を満たした成分が収載される医薬品添加物規格2018に収載
    (α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン)
  • 外原規2021規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2021に収載
  • 20年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし(データなし)
  • 眼刺激性:詳細不明
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし(データなし)

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

4.1. 皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)

食品添加物の既存添加物リスト、医薬品添加物規格2018および医薬部外品原料規格2021に収載されており、20年以上の使用実績がある中で重大な皮膚刺激および皮膚感作の報告がみあたらないため、化粧品配合量および通常使用下において、一般に皮膚刺激および皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられますが、詳細な安全性試験データがみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。

4.2. 眼刺激性

試験結果や安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細不明です。

5. 参考文献

  1. 日本化粧品工業連合会(2013)「シクロデキストリン」日本化粧品成分表示名称事典 第3版,474-475.
  2. abcd平井 英史(1990)「シクロデキストリンの化学」化学と教育(38)(2),158-162. DOI:10.20665/kakyoshi.38.2_158.
  3. 和田 幸樹(2011)「シクロデキストリン誘導体の特性及び利用:ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンを中心に」応用糖質科学:日本応用糖質科学会誌(1)(4),322-326. DOI:10.5458/bag.1.4_322.
  4. 佐藤 充克(2001)「シクロデキストリンの開発と特性について」化学と教育(49)(1),4-7. DOI:10.20665/kakyoshi.49.1_4.
  5. 樋口 彰, 他(2019)「シクロデキストリン」食品添加物事典 新訂第二版,164.
  6. 日本医薬品添加剤協会(2021)「α-シクロデキストリン」医薬品添加物事典2021,274-275.
  7. 日本医薬品添加剤協会(2021)「β-シクロデキストリン」医薬品添加物事典2021,275-277.
  8. ab寺尾 啓二(2012)「シクロデキストリンの食品・化粧品への応用」化学と教育(60)(1),18-21. DOI:10.20665/kakyoshi.60.1_18.
  9. ab鴨井 一文(2013)「化粧品分野への応用」シクロデキストリンの応用技術,93-102.

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