エトキシジグリコールの基本情報・配合目的・安全性
化粧品表示名 | エトキシジグリコール |
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医薬部外品表示名 | ジエチレングリコールモノエチルエーテル |
部外品表示簡略名 | ジグリコールエチルエーテル、エチルカルビトール、エトキシジグリコール |
INCI名 | Ethoxydiglycol |
配合目的 | 溶剤 |
1. 基本情報
1.1. 定義
以下の化学式で表される、一価アルコール(∗1)であるエタノールと二価アルコールであるグリコール(∗2)の二量体であるジエチレングリコール(∗3)が結合した吸湿性をもつエーテルアルコールです[1a][2a]。
∗1 一価アルコールとは、一分子中に1個のヒドロキシ基(-OH)をもつアルコールのことです。
∗2 多価アルコールとは、一分子中に2個以上のヒドロキシ基(-OH)をもつアルコールのことであり、ヒドロキシ基がn個結合したものはn価アルコールともよばれます。グリコール(glycol)は2つの炭素原子(C)に1個ずつヒドロキシ基(-OH)をもつ二価アルコール(ジオール)です。多価アルコールはヒドロキシ基(-OH)の影響で高い吸湿性と保水性を有しており、化粧品においては保湿剤・基剤に用いられることが多いです。
∗3 複数の分子結合がまとまって機能する複合体を多量体(重合体)といいますが、ジエチレングリコールとは2個のエチレングリコールが脱水縮合し二量体(平均重合度2)として機能する重合体です。ギリシャ語で「2」を「ジ(di)」ということから、ジエチレングリコールと呼ばれます。
1.2. 物性
エトキシジグリコールの物性は、
沸点(℃) | 比重(d 20/4) | 屈折率(n 20/D) |
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201.9 | 0.9790 | 1.4273 |
このように報告されています[2b]。
1.3. 化粧品以外の主な用途
エトキシジグリコールの化粧品以外の主な用途としては、
分野 | 用途 |
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塗料 | 主にラッカーの溶媒に用いられています[3a]。 |
これらの用途が報告されています。
2. 化粧品としての配合目的
- 溶剤
主にこれらの目的で、スキンケア製品、ハンドケア製品、マスク製品、洗顔料、シャンプー製品、コンディショナー製品、クレンジング製品、アウトバストリートメント製品、ボディソープ製品、メイクアップ製品、ネイル製品など様々な製品に使用されています。
以下は、化粧品として配合される目的に対する根拠です。
2.1. 溶剤
溶剤に関しては、エトキシジグリコールは多少の吸湿性を有しており、水、エタノール、エーテル、アセトン、エチレングリコール、油脂、鉱物油、樹脂、高分子化合物などに可溶であるため[2c][3b][4]、原料を溶かし込む溶媒として用いられるほか、スキンケア系化粧品においてはグリセリンなど多価アルコール系保湿剤と同様の目的で、洗浄系製品においては可溶化剤・乳化助剤として用いられています[1b][5]。
3. 配合製品数および配合量範囲
配合製品数および配合量に関しては、海外の2002-2003年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。
4. 安全性評価
- 外原規2021規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2021に収載
- 40年以上の使用実績
- 皮膚刺激性:ほとんどなし-最小限
- 眼刺激性:詳細不明
- 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし
このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般に安全性に問題のない成分であると考えられます。
以下は、この結論にいたった根拠です。
4.1. 皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)
Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ[6]によると、
- [ヒト試験] 12名の被検者に2%エトキシジグリコールを含むペーストマスクを対象に21日間累積刺激性試験を閉塞パッチにて実施し、累積刺激を0-630のスケールで評価したところ、累積刺激スコアは36であり、実質的に非刺激とみなされた(Hill Top Research,1979)
- [ヒト試験] 213名の被検者に2%エトキシジグリコールを含むペーストマスクを対象にHRIPT(皮膚刺激性&感作性試験)を実施したところ、この試験を通じてこの試験物質は最小の皮膚刺激剤であり、また皮膚感作の兆候は観察されなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1979)
- [ヒト試験] 93名の被検者に1%エトキシジグリコールを含むボディローションを対象にHRIPT(皮膚刺激性&感作性試験)を実施したところ、この試験を通じてこの試験物質は最小の皮膚刺激剤であり、また皮膚感作の兆候は観察されなかった(Testkit Laboratories,1981)
このように記載されており、試験データをみるかぎり共通して皮膚感作なしと報告されており、また皮膚刺激は非刺激-最小限の刺激が報告されていることから、一般に皮膚感作性はほとんどなく、皮膚刺激性は非刺激-最小限の皮膚刺激を引き起こす可能性があると考えられます。
4.2. 眼刺激性
試験結果や安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細不明です。
5. 参考文献
- ⌃ab日本化粧品工業連合会(2013)「エトキシジグリコール」日本化粧品成分表示名称事典 第3版,229.
- ⌃abc大木 道則, 他(1989)「ジエチレングリコールモノエチルエーテル」化学大辞典,930-931.
- ⌃ab有機合成化学協会(1985)「ジエチレングリコールモノエチルエーテル」有機化合物辞典,360.
- ⌃鈴木 一成(2012)「ジエチレングリコールモノエチルエーテル」化粧品成分用語事典2012,648.
- ⌃日光ケミカルズ株式会社(1977)「多価アルコール類」ハンドブック – 化粧品・製剤原料 – 改訂版,76-94.
- ⌃Cosmetic Ingredient Review(1985)「Final Report on the Safety Assessment of Butylene Glycol, Hexylene Glycol, Ethoxydiglycol, and Dipropylene Glycol」Journal of the American College of Toxicology(4)(5),223-248. DOI:10.3109/10915818509078692.